交換レンズレビュー

フォクトレンダーHeliar 40mm F2.8

マウントアダプターと組み合わせて使うマニアックなレンズ

 CP+2014のコシナのブースに一風変わったレンズが参考展示してあった。ニッケルショートエルマーのような丈の短い沈胴式で、奇妙なことにフォーカシングレバーがない。聞けば同社のVM-Eクローズフォーカスアダプターと併用して使うのだと言う。

VM-Eクローズフォーカスアダプターを併用する沈胴式レンズ。希望小売価格は税込4万9,680円。今回はソニーα7Sで試用した

 見るからにプロトタイプっぽい外観ゆえに、本当に製品化されるのか微妙な印象を抱いた記憶がある。あのときのレンズが、ほぼそのままの姿で登場した。それが「ヘリアー40mm F2.8」である。

ヘリコイドを持たないため、鏡胴を伸ばした状態でも全長21.4mmと薄いレンズだ
フィルター径は37mm。2種類のレンズフードをねじ込んで使用する

 本製品はVM-Eクローズフォーカスアダプター専用レンズだ。VMマウント(ライカM互換)を採用しているがピントリングはなく、VM-Eクローズフォーカスアダプター側でピント調整する。コシナはすでにVM-Eクローズフォーカスアダプター専用のS/C→VMアダプターを発売しており、ヘリアー40mm F2.8はVM-Eクローズフォーカスアダプターを中核するレンズシステムの第2弾というわけだ。

ピント調整のために別途VM-Eクローズフォーカスアダプターが必要となる

 本レンズはクラシカルなデザインが特徴的だ。ライカのエルマー5cm F3.5やズマール5cm F2のような、沈胴スタイルを採用している。エルマーやズマールは、ミラーレス機に付けて沈胴すると内部干渉してしまう。ヘリアー40mm F2.8はそうした心配がなく、沈胴してスマートなスタイルで携行可能だ。

ライカM互換マウントなのでM型ライカなどに装着可能だが、レンズ単体ではピント調整できない
VM-Eクローズフォーカスアダプターでピントを合わせ、最短撮影距離0.5mまで寄れる
沈胴するとレンズの全長はわずか12.6mm。もちろん内部干渉の心配は無用だ

 外観面ではもうひとつ特徴がある。それはレンズフードだ。本製品はドーム型とストレート型、ふたつのレンズフードが付属する。実用面ではひとつあれば十分だが、あえてふたつ付属するところにこの製品の趣味性の高さをうかがい知ることができる。特にドーム型フードは通好みな人に人気のあるスタイルで、本製品を購入する動機のひとつになりそうだ。

本レンズには2種類のレンズフードが付属。ドレスアップ的な要素も考慮したレンズだ
ドーム型フードを装着した状態。絞り羽根は10枚で、絞り込むと円形に近い形状になる
ストレート型フードはニッケル仕上げを採用。深めのキャップも付属している

 操作性の良さも本レンズの利点のひとつだ。特に沈胴式のエルマー5cm F3.5と比較すると、本レンズの使い勝手の良さが浮き彫りになる。古いエルマーは絞りレバーがレンズ前面にあり、その都度フロント面を覗き込まなくてはならない。さらにフォーカシングレバーを動かすとレンズ鏡胴自体が回転するため、指標位置がぐるぐるとまわってしまう。

 その点ヘリアー40mm F2.8は、レンズ先端が絞りリングになっているものの、刻印は側面にあり、速やかに絞り値を確認して調整できる。また、ピント調整はVM-Eクローズフォーカスアダプターが担っているため、レンズ鏡胴は回転しない。常にレンズ指標は真上を向いている。

レンズ先端が絞りリングになっている。クリックのない無段階式の絞りリングだ

 沈胴式スタイルでありながら、絞り操作とピント操作を完全に独立した作業として行えるのだ。沈胴レンズの使いづらさを上手に解消した製品である。

 レンズ構成は3群5枚で、1枚の非球面レンズを採用する。トリプレットタイプの発展形である3群5枚を、現代の技術で再構成したという。描写は堅実でありながらも硬くなりすぎず、オールドレンズファンが好みそうな描き方だ。

 また、開放近辺ではほどよく周辺光量が落ち、ノスタルジックな描写も楽しめる。ボケ味はなだらかで、逆光性能も優秀だ。このあたりは現行レンズだけあって、破綻のない描写を見せてくれる。

作品

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
コントラストは開放から良好で、シャドウの締まりが良い。発色も心地よさがある。α7S / 1/200秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 40mm
ほぼ最短で開放撮影してみた。前後のボケはなだらかでクセが少ない。α7S / 1/320秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 40mm
奥にピントを合わせ、手前の柵をボカしてみた。スムーズな前ボケが印象的だ。α7S / 1/160秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO100 / 40mm
電球にピントを合わせ、遠景をボカす。F2.8でも35mmフルサイズ機ならこれだけボケを稼げる。α7S / 1/1,600秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 40mm
光の射し込まないシーンでも、申し分ないコントラストの高さだ。α7S / 1/320秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO100 / 40mm
F4で壁を狙う。隅々までシャープな描き方だが、硬くなりすぎない自然な写りだ。α7S / 1/2,000秒 / F4 / +0.7EV / ISO100 / 40mm
逆光条件でもフレアやゴーストはよく抑えられている。積極的に逆光撮影できるだろう。α7S / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 40mm
アンダー目で薄暗がりを強調した。シャドウに粘りが感じられる。α7S / 1/500秒 / F2.8 / -1.3EV / ISO100 / 40mm
開放の周辺減光を活かし、白いベンチを際立たせてみた。α7S / 1/320秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO100 / 40mm
F8まで絞って撮影した。フルサイズ環境でも流れることなく、周辺部までしっかり解像している。α7S / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 40mm
最短で手前の花にピントを合わせた。背景のボケはややざわつき気味か。α7S / 1/125秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 40mm
壁の細かい凹凸までよくとらえている。ナチュラルなコンラストが心地良い。α7S / 1/200秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 40mm

澤村徹

(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp