交換レンズレビュー

AT-X 70-200mm F4 PRO FX VCM-S

トキナー初の手ブレ補正・超音波モーターを採用

今回はD800で試用した。発売はニコン用が5月30日。実勢価格は税込12万4,200円前後。ニコン用以外についてはアナウンスされていない

 トキナー待望の望遠ズーム「AT-X 70-200mm F4 PRO FX VCM-S」の販売が5月30日に開始された。発表からすでに2年余り。首を長くして待ち続けてきた写真愛好家もいたことだろう。

 35mmフルサイズ対応の本レンズは、同社初となる手ブレ補正機構とリング型超音波モーターを採用。ボケ味を重視した光学系とコンパクトな鏡筒も特徴としている。

デザインと操作性

 ボディのデザインテイストに関しては従来と同じとする。フォーカスリングおよびズームリングのラバーの意匠にも変更はない。鏡筒先端に金色の帯を巻いているのも同じだ。

 細かなところでは、ズームリングに刻まれた焦点距離の書体などもこれまた従来通りである。個人的にはこの際デザインを大きく変えてしまってもよかったように思えなくもない。

フィルター径は67mm

 全長は167.5mm、最大径82mm、質量は980g。手元に届いたものはニコンマウントであるが、同じ焦点距離と明るさの「AF-S NIKKOR 70-200mm F4G ED VR」とくらべてみると、本レンズは全長が11mm短くコンパクトに仕上がる。

 ただし、質量は130g重く、手に持つとずしりとくる感じはある。とはいえ、同じ焦点距離で開放F2.8クラスとくらべると遥かに軽量で、むしろ適度に安定して構えることのできる重さといってよい。

 手ブレ補正機構は前述のとおり同社としてはじめてのもの。名称はVCM(手ブレ補正モジュール)といい、補正効果はシャッター速度に換算して約3段とする。使用した印象としては、シャッターボタンの半押しを行うと直ちにファインダーに絵が張り付いたと例えてもよいほど素早く起動する。

側面に手ブレ補正のON/OFFスイッチを備える

 このところ、手ブレ補正機構の補正効果を4段分とするものも少なくないが、不足のない補正効果があり引け目を感じるようなことはないように思える。

 超音波モーターによる操作性の向上もこれまでの同社のレンズにはなかったもの。AF合焦後シームレスにMF操作が可能となり、フォーカスの微調整も容易としている。また、AF駆動は静寂性に優れるとともに、フォーカシング速度も速くデフォーカスからのピント合わせでもストレスを感じるようなことはない。さらに、フォーカスリングの操作感も適度なトルク感で心地よく感じられる。

付属の花形フードを装着したところ

遠景の描写は?

 開放絞りからワイド端、テレ端とも線が細くキレのある描写だ。1段ほど絞るとさらに解像感は向上。それは焦点距離が変動してもほとんど変わるようなことはなく、さらに画面四隅も中央部に迫る描写で均一性も高い。

 また絞りを開いたときに発生する周辺光量の低下も比較的よく抑えられており、開放から1段絞ったF5.6では、ほとんど見分けがつかなくなる。色のにじみに関しても、気にならないレベルといってよいだろう。

 回折現象による解像感低下が始まるのは、F11あたりから。そのことからこのレンズの描写のピークは、焦点距離に関わらず絞りF8あたりと考えて差し支えない。ディストーションについてはワイド端でタル状、テレ端で糸巻き状のものが発生する。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

・中央部

広角端

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F4
F5.6
F8
F11
F16
・周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F4
F5.6
F8
F11
F16
共通設定:D800 / 0EV / ISO100 / 70mm

・中央部

望遠端

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F4
F5.6
F8
F11
F16
・周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F4
F5.6
F8
F11
F16
共通設定:D800 / 0EV / ISO100 / 200mm

ボケ味は?

 ボケ味にこだわったというだけに、ズームレンズとしては素直で嫌みのないものだ。ボケ味は球面収差の残存量によって変化する。しかし、前後どちらかのボケ味をクセのないものとすると、もう一方が二線ボケやニゴリのあるボケになりやすい。

 一般には後ボケを優先させるので、前ボケはその犠牲になることが多いのだが、本レンズは処理が巧みでどちらのボケ味も不満のないものである。もちろんあくまでもズームレンズとしてであるが、ポートレートなどボケを活かすようなシーンでは、より本レンズの真価が発揮されることだろう。

広角端

絞り開放・最短撮影距離(100cm)で撮影。D800 / 1/500秒 / F4 / +0.3EV / ISO100 / 70mm
絞り開放・距離数mで撮影。D800 / 1/200秒 / F4 / +0.7EV / ISO100 / 70mm
絞りF5.6・距離数mで撮影。D800 / 1/160秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 70mm
絞りF8・距離数mで撮影。D800 / 1/80秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 70mm

望遠端

絞り開放・最短撮影距離(100cm)で撮影。D800 / 1/400秒 / F5 / +0.3EV / ISO100 / 200mm
絞り開放・距離数mで撮影。D800 / 1/250秒 / F4 / +0.7EV / ISO100 / 200mm
絞りF5.6・距離数mで撮影。D800 / 1/160秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / 200mm
絞りF8・距離数mで撮影。D800 / 1/80秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / 200mm

逆光は?

 撮影した画像を見るかぎり、太陽が直接画面に入らない場合ではゴーストは見当たらず、フレアも皆無といってよいレベル。建物のガラスに太陽光が反射する厳しい条件であるが、文句のない結果である。

 一方太陽が画面のなかに入る場合では、その対角線上にゴーストが現れる。ただし、この条件であれば、他のレンズでも似たようなものは出るはずなので、ことさら本レンズ特有の欠点と決めつけられるものではない。

 むしろ、フレアの発生がほとんど見当たらないことも含め、上々の結果といってよいだろう。ちなみに、コーティングについては、カタログなどを見ると多層膜コーティングとのみ記されている。

 なお、今回画面に太陽光が入る作例撮影はワイド端のみとさせていただいた。テレ側ではその狭い画角ゆえに太陽にレンズを向けファインダーをのぞくとたいへん危険なので、本レンズユーザー限らず、逆光撮影の際はくれぐれも気をつけて欲しい。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。D800 / 1/1,000秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 70mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。D800 / 1/8,000秒 / F5.6 / -1EV / ISO400 / 70mm

作品

ワイド端に近い焦点距離85mmで撮影。絞りは開放から1段絞ったF5.6としているが、ピントの合った部分のキレはたいへんよい。ボケ味は後ボケ同様、前ボケもナチュラルでクセのないものである。金属部分の質感描写はなかなかのものだ。D800 / 1/200秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / 85mm
焦点距離は140mm、絞りはF5.6としている。絞り羽根9枚による円形絞りのため、開放絞りでなくてもボケ味は美しい。画面右上の玉ボケは口径食のためラグビーボール状になるが、同現象は光学特性上避けることのできないことも多いので、気にする必要はないだろう。D800 / 1/200秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 140mm
条件的には厳しいテレ端200mm、開放絞りでの撮影だが、解像感やコントラストの低下はまったく感じさせない。前ボケはやや硬めに感じられるものの、不自然な印象はない。AF合焦後シームレスにMF操作できるため、このような撮影シーンでは重宝する。D800 / 1/250秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 200mm
こちらも開放絞りf4での撮影。ピントの合った部分のキレがよく、立体感のある描写だ。背景のボケも素直。画面中央から外れたところに被写体を置いているが、像の流れや色の滲みなど見受けられず、均一性の高い描写特性である。D800 / 1/400秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 170mm

まとめ

 トキナーは、これまで手ブレ補正機構を搭載するレンズも、超音波モーターを搭載するレンズもライナップしていなかった。これらの機構は、特に望遠系のレンズではマストといえるものだけに、その状況を淋しく感じていたのは筆者だけでないだろう。

 それゆえ両機構を搭載する本レンズの登場は、今後の同社の行方をも占うものである。発表から2年以上の歳月を経てようやく発売にこぎ着けたわけだが、それだけに完成度の高いレンズに仕上がっている。

 本テキスト執筆時点での実勢価格は税込12万4,200円とクラスとして比較リーズナブルなプライスタグを提げるが、願わくなら別売の三脚座リング(実勢価格は税込2万3,760円前後)も入手しやすい価格にしてほしく思えた。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。