交換レンズレビュー

AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR

小型軽量かつ描写に磨きのかかった高倍率ズームレンズ

 「AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR」は、DXフォーマット対応の高倍率ズームレンズ。ズーム倍率は約16.7倍とし、35mm判換算で27mmから450mm相当の画角をカバーする。

今回はD7100で試用した。発売は4月。実勢価格は税込8万9,770円前後

 光学系はEDレンズ3枚、非球面レンズ3枚を含む12群16枚。コンパクトな鏡筒に押し込まれるが、高倍率ズームレンズとしては圧倒的ともいえる解像感、コントラストを誇る。

 さらに従来よりも補正効果のアップした手ブレ補正機構VRの搭載により、望遠側の撮影でもたいへん心強い。加えて超音波モーターSWM(Silent Wave Motor)の搭載により静粛性に優れ、高速のAFを実現しているのも特徴とする。

デザインと操作性

 これまでニコンの高倍率ズームというとレンズ専業メーカーのものにくらべ大きく重いものであったが、本レンズは一回り以上小さく、しかも軽量。

従来のAF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-5.6G ED VRに比べて、小型軽量化を図っている

 ちなみ従来からある本レンズと近いスペックのレンズ「AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-5.6G ED VR」は全長120mm、最大径83mm、質量は830gであるのに対し、本レンズは全長99mm、最大径78.5mm、質量は550gとする。

テレ端でのレンズの繰り出しはさすがに大きい。ワイド端時のほぼ倍の長さとなる

 望遠での撮影の際、ブレを少しでも抑えたければレンズ先端を持つとよいだろう。ズームリングの操作感で気になったところといえば、ワイド側からテレ側にズーミングすると途中重く感じるところがあることである。個体差なのかも知れないが、今後改善を希望するところである。なお、移動や収納の際に便利なズームロック機能を備える。

側面のスイッチ類

 前述のとおりAF駆動用にSWMを採用し、ストレスのないスピーディなピント合わせを実現する。ただし、残念ながらフルタイムMFには未対応だ。望遠レンズの使用ではAF合焦後ピント位置の微調整をしたくなることも少なくないので、こちらも今後に期待したいところである。

遠景の描写は?

 ワイド端およびテレ端とも、画面の四隅にわずかにユルい部分が見受けられ、線もやや太めの描写であるが、それ以外は絞り開放から高倍率ズームとして十分キレのよい描写といえる。

 コントラストの高い被写体なら単焦点レンズと見分けがつかないようなこともありそうだ。画面周辺部で発生することの多い色のにじみについてもよく抑えており、A3ノビサイズにプリントしても気になるようなこともないだろう。

 また、回折現象による解像感の低下は、F11あたりから見受けられるようになる。周辺減光についてはワイド端開放値でやや強めに感じられるほかは、極々一般的なレベル。F8あたりから気にならなくなりそうである。もっともこのレンズの描写のピークはワイド端、テレ端とも総合的にF8あたりといってよい。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

広角端

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F3.5
F4
F5.6
F8
F11
F16
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F3.5
F4
F5.6
F8
F11
F16
共通設定:D7100 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 18mm

望遠端

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F6.3
F8
F11
F16
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F6.3
F8
F11
F16
共通設定:D7100 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 300mm

ボケ味は?

 テレ側に限っていえば素直なボケ味である。フォーカスした部分からのボケの始まりには不自然なものは感じられず、ナチュラルにデフォーカスへと変化する。

 焦点距離によっては二線ボケが現れることもあるが、さほどネガティブな印象はない。むしろ描写的に何かと不利なことの多い高倍率ズームというジャンルの製品であることを考えると満足できるボケ味である。

広角端

絞り開放・最短撮影距離(48cm)で撮影。D7100 / 1/1,250秒 / F3.5 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 18mm
絞り開放・距離数mで撮影。D7100 / 1/2,000秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 18mm
絞りF5.6・距離数mで撮影。D7100 / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 18mm

望遠端

絞り開放・最短撮影距離(48cm)で撮影。D7100 / 1/400秒 / F6.3 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 300mm
絞り開放・距離数mで撮影。D7100 / 1/320秒 / F6.3 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 300mm
絞りF11・距離数mで撮影。D7100 / 1/320秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 300mm

 なお、撮影した画像を見るかぎり、筆者は後ボケよりも前ボケのほうがより素直なボケに感じられた。球面収差の補正によるものか気になるところである。

逆光は?

 ゴーストおよびフレアの発生はわずかに見受けられるものの、気にならないレベル。コントラストの低下もわずかである。ナノクリスタルコートは採用されていないが、内面反射に対し十分な対策が施されているといってよい。

 ちなみに、本レンズ専用のフード(HB-39)は別売としている。フレアやゴーストの低減のためにも本レンズの購入を検討している人は、併せて手に入れるとよいだろう。

 なお、逆光の作例はワイド端のみとさせていただいた。テレ側ではその狭い画角ゆえにファインダーをのぞくとたいへん危険だからだ。本レンズユーザーに限らず、画角の狭いレンズの使用ではくれぐれも気をつけていただきたい。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。D7100 / 1/640秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 18mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。D7100 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 18mm

 太陽が画面に入らないが、直射光が前玉に当たっているような条件では、画面内に雲のようなフレアが発生した。しかしこれは付属の花形フードを装着することで簡単に回避することができる。高倍率ズームの広角端であることを考えれば優れた逆光耐性だといえるだろう。

作品

高倍率ズームとしては不足を感じさせない解像感だ。大気中の水蒸気が多かったためか、わずかにもやが出ているが、コントラストも十分で不足のない描写である。D7100 / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 22mm
光線は弱いながらも逆光での撮影だが、ゴーストの発生は見受けられない。コントラストも文句ないものといえるだろう。ちなみにフードは別売。ぜひ揃えておきたいアクセサリーだ。D7100 / 1/200秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 85mm
テレ端では、線の太さはあるものの高倍率ズームとしては上々の結果。絞りF8だが、周辺減光もこのレベルで抑えているのも立派といってよい。シャッター速度は1/500秒。手持ちでの撮影としているが、ブレもよく抑えられている。D7100 / 1/500秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 300mm
開放に近い絞り値であるものの、ピントの合った部分のキレはよい。画面周辺部の画像の破綻もほとんど見受けられず、ボケ味も嫌みのないものである。画像を見る限り高倍率ズームで撮ったとは思えない描写だ。D7100 / 1/800秒 / F6 / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 185mm
合焦面から次第にアウトフォーカスとなるなかで、そのボケ味はとても自然だ。画面周辺部で発生することの多い倍率色収差も、カメラ側の補正機能が働いていることもあり、まったく気にならないレベル。D7100 / 1/500秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 65mm
光線の状態が良好なこともあるが、ヌケはたいへんよい。加えて画面周辺部の描写も不足を感じさせず、高い次元で描写の均一性を誇る。解像感も高く、画面を横に横断する橋の欄干の様子がどの位置のものでもよくわかる。D7100 / 1/500秒 / F7 / 0EV / ISO100 / プログラム / 44mm

まとめ

 正直に言えば、かつて高倍率ズームレンズは画質面で妥協せざるを得ない時代があった。特にフィルム時代、いわゆる高倍率ズーム黎明期ではその傾向が強かったように記憶している。

 しかし現在は高倍率ズームの描写特性も飛躍的に向上し、今や標準ズームレンズや望遠レンズに引けをとらないものばかりといってよい。そのようなかで登場した本レンズはさらに描写に磨きがかかり、今まで高倍率ズームを敬遠してきた層にも強く訴求できるものである。

 加えて鏡筒は、軽量でコンパクト。撮影はデジタル一眼レフの優れた描写で楽しみたいが、レンズを何本も用意するのは勘弁と考えるワガママなニコンユーザー必見の高倍率ズームである。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。