切り貼りデジカメ実験室

SIGMA SD1 Merrillで試す“空き缶フード付き”ヘリオス85mm F1.5

SIGMA SD1 Merrillに装着した、異様にギラギラ輝く銀色のレンズ。旧ソ連製の「Helios(ヘリオス)85mm F1.5」だが、自作の金属製フードを装着し迫力が一層増している。まるで純正品のようにフィットしたこのフード、100円ショップで買った桃缶が素材とはとても思えない(笑)。


個性的すぎる描写の旧ソ連製ハイスピードレンズ

 85mm F1.4クラスのレンズは、昔から現在に至るまで高性能ポートレートレンズの定番だ。

 その元祖はカールツァイス・イエナの「Biotar(ビオター)75mm F1.5」だが、これを旧ソ連がコピーして製造したと言われるのが、今回紹介するHelios 85mm F1.5である。

 しかし両レンズの重量を比較すると、Helios 85mm F1.5(885g)は、Biotar 75mm F1.5(398g)の2倍近くもあって、とてもコピー品とは思えない。コピーするだけで重くなるのが旧ソ連のテクノロジーなのかは不明だが、ともかくガラスの塊と言った感じの、存在感だけはものすごいレンズなのである。

 存在感だけでなく、Helios 85mm F1.5はその個性的すぎる描写でも有名で、と言うかその個性が知れ渡るに従い徐々に値段が上がり品薄になりつつあると言えるかも知れない。元は旧ソ連製の粗悪品に過ぎず、ぼくはこのレンズを数年前に中古ショップで安く手に入れたが、それこそ100gいくらで計算すると、これほど安いレンズは他になかったかも知れない(笑)。

 ともかく使いこなしの難しいレンズで、ぼくもその存在感に惹かれて入手したものの、すっかり持て余してしまっていた。しかしふと、このレンズにカッコいい金属製フードを装着するアイデアが閃いてしまったのである。Helios 85mm F1.5はどうも純正のレンズフードが存在しないらしく、これではレンズ本来の性能を発揮できないだろう。

 まぁ、ネタをばらせば缶詰の缶をレンズフードに転用したわけだが、上手く組みあわせれば見てくれも悪くなく、実用性も十分なフードができるのだ。

―注意―
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カメラの確認と撮影の工夫

まずはHelios 85mm F1.5の外観。アルミ鏡筒でギラギラ輝いているが、どうも錆びやすいようで磨いても今ひとつ綺麗にならない。“メカゴジラ”と呼んでいる人もいるようだが、ぼくの世代だとまさに言い得て妙だと思える。全長94mm、最大径82mm、フィルター径66mmで、このクラスのレンズとしてはまさに横綱級だ。そのためかこのクラスには珍しく回転式の三脚座を備えている。
レンズを反対方向から見たところだが、なぜか先端の絞り指標と、根本近くの距離指標が180度ズレている。このレンズはどうも他の個体もこのようにズレているようで、設計が間違っているのかも知れない(絞りは手動プリセット式)。
最新鋭の「SIGMA 85mm F1.4 EX DG HSM」と並べてみると、こちらも負けないボリュームで、全長87.6mm、最大径86.4mm、重量725g、フィルター径77mmである。もちろん85mm F1.4 EX DG HSMは贅沢な設計の大型化が高性能に結びついているのだが、Helios 85mm F1.5にそう言うところがあるかは微妙だと言える。
Helios 85mm F1.5のマウントは、ネジ径とピッチはライカL39マウントと同じで、フランジバックはM42マウントとほぼ同じという、旧ソ連独自のゼニットマウントを採用している。しかし購入時には、L39→M42変換リングが付属していて、様々なカメラに装着可能だった。ところがぼくは、最近の引越のどさくさで、このリングをなくしてしまったのだ……。
そこで、エムユーケイ カメラサービス横浜関内から、「M42-M39アダプタリング」(左)を購入。こういう、ふつうなら何に使うのか分からないリングを扱ってくださるメーカーやショップの存在は実に有り難い。さらにオリエンタルホビーが扱うKIWI fotosの「シグマSAマウント-M42レンズアダプター」(右)も入手した。
先のマウントアダプターを使い、Helios 85mm F1.5をSD1 Merrillに装着。なかなかスゴイ組み合わせになったが、このクラスのレンズにしてはレンズフードがないのが寂しい。大昔の大口径レンズでマルチコーディングもされておらず、逆光には強いと言えないレンズなのである。
そこで登場するのが桃の缶詰。世の中に缶詰はいろいろ出回っているが、最適な素材として今回はこれを選んでみたのだった。
桃缶をパカッと開けると、当然のことながら桃が入っている(笑)。この中身はスタッフが美味しくいただいて、作業を進めよう。
缶の底は缶切りで切り抜く。当然ながらこの作業をしなければ、レンズフードにはならない。
さらに外周の紙を取り除き、内側に黒ラシャ紙を貼ると、レンズフード本体ができ上がる。
次に用意するのが、Helios 85mm F1.5に付属していたフィルターのリング(66mm径)。元はモノクロ用イエローフィルターだが、ガラスを外してリングだけにしたものだ。
この66mm径のフィルターネジが、空き缶の口側にピッタリと収まるのが、今回の改造のキモである。これによって実に簡単確実に、この自作フードをレンズに装着することができるのだ。
フードを装着したHelios 85mm F1.5をあらためてSD1 Merrillに装着してみたが、予想以上にカッコイイではないか。ブリキ缶のシルバーと、レンズ鏡筒のシルバーの輝きが、妙にマッチして違和感がない。
SIGMA 85mm F1.4にもかなり立派なレンズフードが用意されているが、それと比較してだいたい同じ長さになった。さて、その効果はいかに……?
  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • すべてRAWで撮影し「SIGMA Photo Pro」で現像しています。
絞り開放で簡単なテストを行なってみたが、まずはレンズフードなし。西日が差す逆光気味のシチュエーションで、全体にフレアが掛かった描写になっている。SD1 Merrill / Helios 85mm F1.5 / 約7.1MB / 4,704×3,136 / 1/2,500秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:晴れ / 85mm
次にレンズフードを装着し、同じ構図で撮った写真だが、明らかにコントラストが増している。自作フードの効果は確かに確認できた。うれしい(笑)。SD1 Merrill / Helios 85mm F1.5 / 約7.8MB / 4,704×3,136 / 1/2,500秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:晴れ / 85mm


実写作品と使用感

 実写はHelios 85mm F1.5の特徴を引き出すため、すべて絞り開放で行なった。また、RAWで撮影した画像のうち風景写真をモノクロに現像し、植物の写真はカラーのまま現像してみた。どちらも“幽玄”とでも言えるような、このレンズ特有の描写である。

 また、せっかくなので85mm F1.4 EX DG HSMで撮影した写真も掲載する。最新レンズと旧ソ連製レンズの描写の違いを、楽しんでもらえればと思う。

 さて、SD1 Merrillの使い勝手だが、このカメラのファインダーは撮影画像より被写界深度が深く見えるので、Helios 85mm F1.5のピント合わせはなかなかに難しい。しかもRAWで撮ると書き込みに時間が掛かってすぐにピントチェックできず、もどかしい思いをする。まぁその辺の欠点は高画質と引き替えでもあるし、DPシリーズと共通のシグマ製デジカメの特徴と言っていいだろう。

 それ以外の点で、SD1 Merrillはオーソドックスな使いやすさがあり、無駄を省いたソリッドなイメージのカメラだ。もちろん、純正AFレンズを装着した場合の使い勝手も上々である。


・Helios 85mm F1.5

SD1 Merrill / Helios 85mm F1.5 / 約6.6MB / 4,704×3,136 / 1/8,000秒 / F1.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:カスタム / 85mm
SD1 Merrill / Helios 85mm F1.5 / 約6.7MB / 4,704×3,136 / 1/6,000秒 / F1.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴れ / 85mm
SD1 Merrill / Helios 85mm F1.5 / 約5.5MB / 4,704×3,136 / 1/8,000秒 / F1.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:カスタム / 85mm
SD1 Merrill / Helios 85mm F1.5 / 約6MB / 4,704×3,136 / 1/5,000秒 / F1.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:カスタム / 85mm
SD1 Merrill / Helios 85mm F1.5 / 約6.1MB / 4,704×3,136 / 1/8,000秒 / F1.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:カスタム / 85mm
SD1 Merrill / Helios 85mm F1.5 / 約5.2MB / 4,704×3,136 / 1/2,000秒 / F1.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴れ / 85mm
SD1 Merrill / Helios 85mm F1.5 / 約5.8MB / 4,704×3,136 / 1/1,250秒 / F1.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴れ / 85mm
SD1 Merrill / Helios 85mm F1.5 / 約7MB / 4,704×3,136 / 1/4,000秒 / F1.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴れ / 85mm
SD1 Merrill / Helios 85mm F1.5 / 約7.5MB / 4,704×3,136 / 1/4,000秒 / F1.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴れ / 85mm
SD1 Merrill / Helios 85mm F1.5 / 約9.2MB / 4,704×3,136 / 1/2,000秒 / F1.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴れ / 85mm
SD1 Merrill / Helios 85mm F1.5 / 約6.8MB / 4,704×3,136 / 1/1,250秒 / F1.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴れ / 85mm
SD1 Merrill / Helios 85mm F1.5 / 約8.1MB / 4,704×3,136 / 1/5,000秒 / F1.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:カスタム / 85mm


・85mm F1.4 EX DG HSM

SD1 Merrill / 85mm F1.4 EX DG HSM / 約7.4MB / 4,704×3,136 / 1/6,000秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:晴れ / 85mm
SD1 Merrill / 85mm F1.4 EX DG HSM / 約7.2MB / 4,704×3,136 / 1/8,000秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:カスタム / 85mm
SD1 Merrill / 85mm F1.4 EX DG HSM / 約7.6MB / 4,704×3,136 / 1/1,600秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:カスタム / 85mm
SD1 Merrill / 85mm F1.4 EX DG HSM / 約6.2MB / 4,704×3,136 / 1/4,000秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:カスタム / 85mm
SD1 Merrill / 85mm F1.4 EX DG HSM / 約7.4MB / 4,704×3,136 / 1/4,000秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:カスタム / 85mm
SD1 Merrill / 85mm F1.4 EX DG HSM / 約10MB / 4,704×3,136 / 1/2,000秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:カスタム / 85mm

糸崎公朗

1965年生まれ。東京造形大学卒業。美術家・写真家。主な受賞にキリンアートアワード1999優秀賞、2000年度コニカ フォト・プレミオ大賞、第19回東川賞新人作家賞など。主な著作に「フォトモの街角」「東京昆虫デジワイド」(共にアートン)など。毎週土曜日、新宿三丁目の竹林閣にて「糸崎公朗主宰:非人称芸術博士課程」の講師を務める。メインブログはhttp://kimioitosaki.hatenablog.com/ Twitterは@itozaki