コーワPROMINARレンズ リレーレビュー

野鳥写真編:単焦点の高画質と心地よさを再認識

コンパクトなシステムにも魅了される

建築、テーブルフォト、旅行、星空と撮る対象を変えながら続く「コーワPROMINARレンズ リレーレビュー」。今回は中野耕志さんに、野鳥撮影をお願いしました。

野鳥の姿を求めて冬の北海道に向かった中野さん。コーワPROMINARレンズはどんな絵を見せてくれるのでしょうか。

今回もテレフォトレンズ「PROMINAR 500mm F5.6 FL」が大活躍。マイクロフォーサーズ用PROMINARレンズが捉えた雄大な風景作品もあります。(編集部)

左からKOWA PROMINAR 8.5mm F2.8、KOWA PROMINAR 12mm F1.8、KOWA PROMINAR 25mm F1.8(撮影:桃井一至)
今回もテレフォトレンズのPROMINAR 500mm F5.6 FLが登場。色収差を低減するため、フローライト・クリスタル(蛍石)やXD(eXtra low Dispersion)レンズを奢った超望遠レンズだ。マウントアダプターを変えることで、350mm、500mm、850mmの3種類に焦点距離を変化させられるのも特徴。

コーワPROMINARレンズ(マイクロフォーサーズ用)とは……

ベテランのカメラユーザーなら名前を聞いたことがあるかもしれません。あの「コーワPROMINARレンズ」が、マイクロフォーサーズ用の単焦点MFレンズで復活。往年のPROMINARの流れをくむ興和光学株式会社が設計・製造するだけあり、オールドファンも納得の見た目と描写力が、レンズマニアの間で話題となっています。

ラインナップは、KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8、KOWA PROMINAR 12mm F1.8、KOWA PROMINAR 25mm F1.8の3製品。いずれもブラック、シルバー、グリーンをラインナップする。詳細はこちらのページで。

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コンパクトな撮影機材で北海道へ

冬の北海道、とくに道東エリアは風景はもちろん野鳥や野生動物など被写体には事欠かないので、毎冬のように訪れているお気に入りの撮影地だ。しかしながら今シーズンの北海道は記録的に雪が少なく、冬らしい写真を撮るのはいつになく厳しいらしい。年明けからは積雪や流氷の状況などを常にチェックしつつ北海道を訪れるタイミングをうかがうも、いっこうに好条件にならないまま冬が終わろうとしていた。

そして迎えた3月初め、北海道付近の低気圧が発達して全道的に風雪が強まった。おそらくラストチャンスになるであろうそのタイミングを狙って釧路空港に飛んだ。撮影は3日間という短期決戦だ。

今回の旅の相棒は、コーワのPROMINAR単焦点レンズ群。KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8、KOWA PROMINAR 12mm F1.8、KOWA PROMINAR 25mm F1.8のマイクロフォーサーズ用レンズ3本と、PROMINAR 500mm F5.6 FLの合計4本だ。マイクロフォーサーズカメラとの組み合わせた場合の35mm判換算での焦点距離は、それぞれ17mm、24mm、50mm、1,000mmと、撮影システムとしては極端だが、そのぶん目的意識を持って撮影ができるはずだ。

カメラボディはオリンパスOM-D E-M5Mark IIとOM-D E-M5の2台を持参した。マイクロフォーサーズシステムのみを持ち込んだため、いつもの一眼レフカメラシステムに比べると撮影機材が非常にコンパクト。飛行機内への持込や、徒歩での移動が楽で機動性の高さを実感した。

現地に到着すると、3月とはいえ北の大地はまだ真冬の表情を見せており、撮影初日は大荒れ。主要な峠道は吹雪で通行止めで、平野部でも地吹雪のため撮影どころではない。結局その日は移動のみで終わった。もちろんそれは想定内であり、撮影は嵐が過ぎ去った翌朝が勝負だ。地面や木々を真っ白な新雪が覆い、もっとも美しい光景が見られるからである。風の弱い夜、放射冷却で冷え込めば霧氷なども期待できるはずだ。

撮影2日目。峠からの朝日を狙うも、まだ雪が止まずに道路も未だ通行止め。しかたなく動ける範囲で撮影およびロケハンを実施する。膝下まで雪が積もった森の中を歩きながら野鳥を探すと、樹の洞で寝ているエゾフクロウをみつけた。

KOWA PROMINAR 500mm F5.6 FL / OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / F8 / 1/125秒 / ISO200

寝ているフクロウを驚かさないようにPROMINAR 500mm F5.6 FLを三脚にセットし、ファインダー上に捉える。野鳥撮影では超望遠レンズが必需品だが、500mmレンズといえども短いことがほとんどだ。その点マイクロフォーサーズカメラとの組み合わせでは35mm判換算で1,000mm相当として使えるので、野鳥撮影では非常に使い勝手がよい。

PROMINAR 500mm F5.6 FLはマニュアルフォーカス専用レンズで、粗動と微動の2つのフォーカスリングがあるが、このような撮影では微動リングでピントを追い込んでいく。EVFまたは背面液晶モニターでフクロウの顔を拡大表示して、確実にピントを合わせた。超望遠レンズではブレが大敵なので、メカニカルショックを抑えるために電子シャッターまたは電子先幕シャッターを利用するといい。

午後にはだいぶ雲量も少なくなったので、こんどは摩周湖へ。カルデラ湖の岸に立つダケカンバをPROMINAR 12mm F1.8で撮影した。

KOWA PROMINAR 12mm F1.8 / OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / F5.6 / 1/1,500秒 / ISO200

ワイドな風景を撮るのに扱いやすいPROMINAR 12mm F1.8は、35mmフルサイズ換算で24mm相当の画角が得られる。非常にシャープでヌケの良いレンズで、力強く生きるダケカンバの枝の1本1本までしっかりと解像してくれてた。絞り開放付近でもシャープだが、適度に絞るとより鮮鋭度が増すし、周辺部の画質が向上する。

そして迎えた最終日。外に出ると満天の星空が。今日こそは日の出を拝めそうだ。屈斜路湖を見下ろす峠に辿り着くと、気温はマイナス15度くらいだが、身も凍るほどの風が吹きつけている。

KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8 / OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / F8 / 1/125秒 / ISO200

ここでの撮影では、PROMINAR 8.5mm F2.8をチョイスした。

画面手前には強風にえぐられた風紋とササを入れ、奥には結氷した屈斜路湖と朝日を配置して撮影。雪原のブルーとサーモンピンクのグラデーションが美しく、厳しさと美しさが同居した北の大地を表現できた。超広角レンズではディストーションが気になるが、このレンズは歪みが少ないので地平線や水平線を入れるときも安心だ。

峠で朝日の撮影を終えたら、次は川沿いでの被写体探しだ。よく冷えた朝には、河畔林に霧氷がつく可能性が高いからである。麓に降りると、予想通り霧氷の森が広がっていた。

こんどはPROMINAR 25mm F1.8をカメラに装着し、腰まである吹きだまりをラッセルして撮影ポイントへ。

KOWA PROMINAR 25mm F1.8 / OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / F8 / 1/180秒 / ISO200

川面から立ち上るけあらしが河畔林の枝に氷の造型をつくる。PROMINAR 25mm F1.8はそんな美しい氷細工を繊細に描写してくれた。逆光の条件下にもかかわらず、ゴーストやフレアも目立たず、耐逆光性能の高さをうかがい知れる。

撮影条件のいい朝はとても忙しい。光が良いうちにこまめに移動しながらカット数を稼いでいく。次なる被写体はオオハクチョウだ。

KOWA PROMINAR 25mm F1.8 / OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / F8 / 1/1000秒 / ISO200

まずはPROMINAR 25mm F1.8で生息環境を取り入れたショットを狙う。結氷した湖と雪山を背景に暮らすオオハクチョウ。このような場合は鳥と背景のバランスを考えながら構図を決めるので、手持ちで鳥までの距離やカメラの高さを微調整しながらの撮影。場合によってはバリアングル液晶/チルト液晶を利用してローポジションからの撮影も有効だ。

こちらはオオハクチョウの飛翔をPROMINAR 500mm F5.6 FLで撮影。

KOWA PROMINAR 500mm F5.6 FL / OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / F8 / 1/1,500秒 / ISO200

飛んでいる鳥をマニュアルフォーカスで追い続けるのは難しいので、慣れないうちはある程度の距離(15〜20mくらい)にあらかじめピントを固定しておき、その距離に鳥が通過するタイミングを狙ってシャッターを切る「置きピン」で、撮るといい。

オオハクチョウを撮影していると、近くにツグミがやってきた。

KOWA PROMINAR 500mm F5.6 FL / OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / F8 / 1/750秒 / ISO200

ツグミは冬に渡ってくる鳥で、体長約25cmほど。小鳥の撮影では焦点距離800〜1,000mmが扱いやすいが、PROMINAR 500mm F5.6 FLとマイクロフォーサーズカメラを組み合わせれば、1,000mm F5.6のレンズとして使える。それでいてシステム重量が2.5kg程度。じゅうぶんな望遠撮影ができるのに機動性が高いシステムだ。光学系にフローライトクリスタル(蛍石)を採用しており、画質は絞り開放からクリアでシャープ。羽毛の1本1本まで解像して、野鳥の生命感まで写し取ってくれるかのようだ。

PROMINAR 500mm F5.6 FLとOLYMPUS OM-D E-M5 Mark IIの組み合わせ。1,000mm相当の超望遠撮影が可能だ。

単焦点レンズの存在が作品のクオリティを変える

今回はわずか3日間の道東滞在ではあるものの、最終日には狙い通りのシーンを撮影できて結果的に満足の取材だった。持参したレンズも35mm判換算で17mm、24mm、50mm、そして1,000mmという極端な焦点距離ラインナップで、ある程度割り切った被写体選びが必要だったが、逆にそれが強い意志となり作品に反映できたと思う。

思い起こせば僕が北海道に通い始めた25年ほど前はまだマニュアルフォーカス全盛期だし、今ほど高性能なズームレンズが無かったのですべて単焦点レンズでの撮影が普通だった。今回コーワプロミナーのレンズで撮影を行い、その当時を懐かしく思い出すとともに、あらためて単焦点レンズの心地よさを再認識した。

連載の最後に……

5回にわたってお送りした「コーワPROMINARレンズ リレーレビュー」。いかがでしたでしょうか。様々な撮影ジャンルの写真家に使ってもらったことで、PROMINARレンズの実力が垣間見えたのではと思います。

いずれの写真家も画質を高評価したのと同時に、マニュアルフォーカス操作が与える心理的な効能についても触れています。女性フォトグラファーには、クラシカルなボディデザインが受けていました。こうしたPROMINARらしい魅力は、この連載でとりあげた以外の撮影ジャンルでも、幅広くマッチするのではないでしょうか。(編集部)

制作協力:興和光学株式会社

中野耕志

1972年生まれ。東京農業大学卒業。おもに野鳥や飛行機の撮影を得意とし、雑誌や広告などに作品を発表する。「Jetscape〜飛行機の飛ぶ風景」「Birdscape〜鳥のいる風景」を2大テーマに、国内外を飛び回る。近刊に「F- 14TOMCAT」(ソフトバンククリエイティブ)、「野鳥の撮影テクニック」(誠文堂新光社)などがある。