デジカメドレスアップ主義

昭和のレジェンドレンズが甦る

α7 II + Kistar 55mm F1.2

  • ボディ:ソニー α7 II
  • レンズ:木下光学研究所 キスター55mm F1.2
  • マウントアダプター:レイクォール CY-SαE
  • フォーカスリングアダプター:TAAB,LLC.社 TAAB(ヘフティ)
  • カメラケース:ユリシーズ α7 II/α7R II ボディスーツ(ブラック/オープンタイプ)
  • ストラップ:ヴァイヒィエ・ブリーゼ 40mm“unleash wings”Strap

木下光学研究所、その名を聞いて心当たりある人は、おそらく皆無に等しいだろう。これまで業務用レンズをメインに製造してきた同社が、はじめて写真用レンズを手がけることになった。しかも昭和のレジェンドレンズ、富岡光学のトミノン55mm F1.2の復刻版だという。今回はこの復刻レンズを中心にしたドレスアップを紹介しよう。

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木下光学研究所のキスター55mm F1.2は、トミノン55mm F1.2の復刻版である。昨今、こうした復刻オールドレンズがちょっとしたトレンドだ。無一居のタンバールリメイク花影S1 60mm F2.2、ロモグラフィーのペッツバールレンズやルサール+、そして復刻トリオプラン100mm F2.8のクラウドファンディングも記憶に新しい。しかし、木下光学のキスター55mm F1.2はこうした事例と一線を画している。構造的な復刻のみならず、開発思想すら受け継いでいるからだ。

キスター55mm F1.2は税込13万4,136円。マップカメラと木下光学研究所で販売している。発売は9月30日だ
ヤシコンと同形状のKCYマウントを採用。ヤシコン用マウントアダプターでミラーレス機などに装着する
開放F1.2が赤く刻印され、大口径であることを誇らしげに強調する。フィルター径は55mmだ
鏡胴のデザインとサイズ感はヤシコンのプラナーT* 50mm F1.4に似ている。小ぶりの鏡胴で大口径F1.2を実現している

実は同社の会長である木下三郎氏は、かつて富岡光学に勤め、トミノン55mm F1.2の光学設計を担当していた。今回の復刻プロジェクトでは、当時の開発者の愛弟子がキスター55mm F1.2の設計を担当している。設計図からただ再生産するのではなく、設計思想をも含めた復刻作業が本プロジェクトの真骨頂だ。販売はマップカメラで取り扱いがあり、木下光学研究所でも直販が行われる。描写については作例部分で改めて後述しよう。

さて、めざとい人はレンズ外周のレバーに気づいたことだろう。これはTAABという後付けフォーカシングレバーだ。ライカをはじめとするレンジファインターカメラのレンズには、ピントリングにこうしたレバーを持つものがあり、これを後付けするのがTAABである。TAABは3サイズ展開で、ミニが44〜57mm、スタンダードが50〜64mm、ヘフティが64〜76mm口径のレンズに対応する。ここでは最大サイズのヘフティをキスター55mm F1.2に付けている。

TAABはイデアミクスが代理店となり、Amazon、マップカメラ、オリエンタルホビーなどで取り扱いがある
フォーカシングレバーがあるレンズの一例。こうしたレバーがTAABの元ネタだ
TAABはミニ、スタンダード、ヘフティの3サイズ展開。価格は税別1,900円〜2,500円だ
商品は小さな缶に入っている。カメラアクセサリーとしてはめずらしいパッケージングだ

見た目は樹脂製でしなやかに伸びそうだが、実物は思った以上に固い。これは操作中にズレたり外れたりしないように、あえて固い素材を用いたという。取り付けに少々手こずるが、一度装着してしまえば気兼ねなく使える。ちなみに、装着位置はライカレンズに倣い、無限遠で7時方向にレバーがくるように取り付けた。たかがレバーと言うなかれ。ピント操作は格段に快適になり、知らず知らずのうちに指先がレバーを探すようになる。一度使うと元に戻れないタイプの製品だ。

ドレスアップ面を見ていこう。レザーケースはユリシーズのものだ。ユリシーズのケースは以前フルカバードタイプを紹介したことがあり、今回はオープンタイプを選んでみた。液晶チルトに対応しているのが特徴だ。また、底面にフリップカバーがあり、ケースを付けたままバッテリー交換できる。無論、メモリカードもそのまま交換可能だ。

ユリシーズのボディスーツは税込1万7,820円。α7 IIとα7R IIの兼用ケースだ
カラーバリエーションはブラック、チョコ、ネイビーの3色展開だ
オープンタイプなので背面が大きく空き、液晶チルトが可能だ
側面のホックボタンでフリップカバーを外し、バッテリーをダイレクトに交換できる

ストラップはヴァイヒィエ・ブリーゼの新作、40mm“unleash wings”Strapを合わせた。40mmのワイドストラップに、スタッズとパンチングで翼を描いている。これまでスタッズによる意匠はロックやバイカーズ風のものが多かったが、本製品はどことなくモードっぽい見え方が新鮮だ。レザーはグラデーション染めされており、使い込むほどに濃淡が出てくる。写真のストラップはひと夏使い込んだサンプルで、ほどよくエイジングが出てきたところだ。

ヴァイヒィエ・ブリーゼの40mm“unleash wings”Strapは税込2万5,920円だ
スタッズのサイズを使い分け、翼を繊細に描く。ヴァイヒィエ・ブリーゼの真骨頂だ
ストラップの両端はパンチングで翼を描く。グラデーションレザーの濃淡も特徴だ
スタッズとパンチングを組み合わせ、モードな雰囲気を醸し出す

キスター55mm F1.2の描写を見ていこう。1970年代に登場したトミノン55mm F1.2を復刻しただけあって、開放で柔らかく、絞るほどに鋭さを増す。この緩急の付き方はオールドレンズファンを虜にするだろう。単層コートのレンズだが、フードなしで撮影してもフレアに悩まされることは少なかった。オリジナルのトミノンと比べると、ごくわずかにコントラストが強い。しかしながら、ボケ方はオリジナルとそっくりで、両者の写真を混ぜて並べたら見分けがつかないほどだ。

本レンズはKCYマウントという独自マウントを採用している。わかりやすく言うとヤシカ/コンタックス互換マウントだが、マウントアダプター経由でデジタルカメラに付けることを想定したマウントだ。ヤシコンマウントの自動絞りなどには未対応なので、フィルムカメラと組み合わせるときは要注意だ。また、ミラーレス機では制約なく使えるが、キヤノンのフルサイズデジタル一眼レフとの組み合わせではミラー干渉のリスクがある。なお、APS-CのEOSでは問題なく撮影できる。

α7 II / Kistar 55mm F1.2 / 1/4,000秒 / F1.2 / ±0EV / ISO100 / WB:オート
α7 II / Kistar 55mm F1.2 / 1/1,250秒 / F2.8 / ±0EV / ISO100 / WB:オート
α7 II / Kistar 55mm F1.2 / 1/8,000秒 / F1.2 / ±0EV / ISO100 / WB:オート
α7 II / Kistar 55mm F1.2 / 1/400秒 / F1.4 / ±0EV / ISO100 / WB:オート
α7 II / Kistar 55mm F1.2 / 1/80秒 / F1.4 / ±0EV / ISO100 / WB:オート
α7 II / Kistar 55mm F1.2 / 1/8,000秒 / F1.2 / ±0EV / ISO100 / WB:オート

澤村徹

(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp