レビュー・使いこなし
FUJIFILM X70(外観・機能編)
硬派かつフレンドリーな広角コンパクト
(2016/2/8 08:00)
富士フイルムXシリーズに、35mm判換算28mm相当のレンズ一体型モデルが加わった。35mm相当のX100T、光学4倍ズームのX30に次ぐレンズ一体型モデルだ。広角28mmのコンパクト機と言えば、リコーGR II、ライカQ、シグマdp1 Quattroなど、強豪揃いである。そうしたカテゴリーへの新機種投入だけに自ずと期待が高まる。まずはX70の外観と機能性を見ていこう。
定評ある心臓部に、新設計のレンズ
X70はAPS-Cサイズ1,630万画素のX-Trans CMOS IIセンサーと、画像処理エンジンEXR Processor IIを採用している。18.5mm F2.8のフジノンレンズを搭載し、35mm判換算28mm相当となる。このレンズはX70のために新設計されたもので、レンズ構成は5群7枚、うち2枚が非球面レンズである。デジタルカメラの心臓部はX-T1やX100Tと同様で、レンズは新設計。このことだけでもいかに力の入ったモデルかが伝わってくるだろう。
外観は高級感あふれる仕上がりだ。普及価格帯モデル的なX30よりも、ハイエンド仕様のX100Tに近い外観である。サイズはX100Tよりひとまわり以上小さく、リコーGR IIと同程度のサイズ感だ。特徴的なのはレンズの形状である。鏡胴が飛び出さないため、電源オンの状態でもスマートな佇まいだ。薄い鏡胴に絞りリングとコントロールリングを搭載し、軍艦部に目を転じると、シャッタースピードダイヤルと露出補正ダイヤルが並ぶ。
X100Tのようにアナログテイストを重視しており、既存のXシリーズを使ったことのある人なら速やかに使いこなせるだろう。その一方で、液晶パネルは180度のチルトとタッチ操作に対応し、いまどきのコンパクトデジタルカメラとしての要素をもれなく盛り込んである。趣味性と先進性をバランス良く取り入れたコンパクト機だ。
絞りリング+コントロールリングを装備
操作性で注目したいポイントを見ていこう。まずはコントロールリングだ。レンズ鏡胴に組み込まれたコントロールリングは、液晶メニューからISO、ホワイトバランス、フィルムシミュレーションなどが割り当てできる。MF時はフォーカスリングとして使用可能だ。
特におもしろいのがデジタルテレコンバーターの割り当てである。本機は35mm相当、50mm相当のデジタルテレコンバーターを搭載しており、コントロールリングを回すとライブビュー画面が該当する画角に切り替わる。初期状態では露出モードがP、S、Aの場合、コントロールリングにデジタルテレコンバーターが割り当てられている。コントロールリングがズームリング的な役割となり、直感的に操作できるだろう。
シャッタースピードダイヤル脇のオートモード切替レバーも重宝する。このレバーを「AUTO」にセットすると、撮影モードが「アドバンストSRオート」に切り替わる。アドバンストSRオートはカメラがシーンを自動解析して撮影設定を最適化するモードだ。要は高品位撮影できるフルオートである。撮影セッティングを隅々までカスタマイズした状態から、ワンアクションで誰でも使えるフルオートに切り替えられるわけだ。観光地などで人にカメラを渡して撮ってもらいたいとき、この機能が役に立つはずだ。
似た方向性の機能としては自分撮りが挙げられる。本機は180度の液晶チルトが可能で、液晶を180度起こして自分撮りできる状態にすると、自動的に瞳AFで被写体を捉えてくれる。オートモード切替レバーともども、硬派な見た目とは裏腹にフレンドリーな操作性のカメラだ。
撮影性能はインテリジェントハイブリッドAFが特徴的だ。スピード面に長けた像面位相差AFと暗所に強いコントラストAFを組み合わせたシステムである。あらたにゾーンモードとワイド/トラッキングモードを搭載し、全77点のフォーカスエリアを用いて動いている被写体を的確に捉える。従来からのシングルポイントモードも利用可能だ。
GR IIしかり、ライカQしかり、広角28mmのハイエンドコンパクトはその多くが硬派なカメラだ。X70もダイヤル主体のアナログ操作を数多く取り入れ、フィルム時代のいかにもメカニカルなカメラを彷彿とさせる。Xシリーズの広角スナップシューターとして誰もが納得のいくモデルだ。
しかしながらその一方で、自分撮り可能な液晶チルト、タッチパネル操作、オートモード切替レバーなど、カジュアル層を意識した機能がいくつもある。ここが既存の広角28mmハイエンド機と異なる点だ。ただ硬派なだけでなく、フレンドリーな側面がある。この点こそがX70のアドバンテージと言えるだろう。