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ミラーレス一眼が導く市場環境の変化



 ペン(Pen)シリーズ発売50周年記念サイトをオリンパスが開設し、業績説明会では菊川剛社長による「6月15日15日発表、7月第1週の発売」も予告された。いよいよオリンパスからもマイクロフォーサーズ対応ボディがお披露目される。

公開された決算説明会の資料からは、オリンパスのマイクロフォーサーズ機にかける意気込みが伝わる

 すでにモックアップの展示でも明らかなように、オリンパスが開発しているマイクロフォーサーズ機はファインダーを省略し、背面液晶モニターでフレーミングを行なうスタイルを採用する。業務用ハイビジョンカメラで使われる高解像フィールドシーケンシャル型LCDを採用した電子ビューファインダー(EVF、あるいはLVF)を持つ一眼レフスタイルのパナソニックLUMIX Gシリーズとは、また異なったテイストだが、テクノロジーの観点から見ると両者が目指しているものは同じだ。

 センサー像をリアルタイムにキャプチャー、撮影者に適切な情報を表示しながら撮影させるスタイルは、マイクロフォーサーズ規格を発端に他フォーマットにも広がっていくだろう。中には、今後はミラーレスのシステムが急速に増加し、市場を席巻するといった極端な意見もある。しかし、そこまでの急峻な変化が本当に訪れるのだろうか?

(なお、記事中ではEVF、背面液晶でのライブビューなどを含め、電子像でフレーミングを行なう機種を、まとめて”ミラーレス一眼”と呼ぶことにして話を進めたい)

受け入れられたEVF。LUMIX Gシリーズは市場シェア9%台に

 LUMIX Gシリーズが発売されたとき、多くの人が注目していたのは、果たして画質や遅延といった問題が解決していないEVFのみでの撮影を、一眼レフカメラの光学ファインダーに慣れたユーザーが許してくれるだろうか?という点だった。

 しかし、フタを開けてみるとDMC-G1の販売は好調に推移し、もともとの販売予定台数が少なかったこともあるだろうが、予想を超える販売と幅広いユーザー層の話題をさらった。その理由は3つある。

 ひとつはパナソニックの狙い通り、ミラーレス化による軽量コンパクト化が功を奏し、女性比率を上げることに成功したことだ。一般に一眼レフユーザーの女性比率は15〜17%程度と言われているが、LUMIX Gシリーズのユーザーは30%が女性だ。

初のマイクローフォーサーズ機、パナソニックの「LUMIX DMC-G1」 背面には液晶モニターとともにEVFを装備
4月にはHD動画記録に対応した「LUMIX DMC-GH1」も登場

 もうひとつは幅広い年齢層に受け入れられた事である。一眼レフユーザーの年齢層は40歳以上が多く、全体の65%程度を占める。30歳以上で区切ると90%を超え、20代、10代は合計で1割にも満たない。LIMIX Gシリーズでは若干、20代の構成比が増えているそうだが、全体に30代から60代まで幅広い年齢層に均等に分布している。つまり、大きく業界平均とは変わらないという結果なのだが、これこそがLUMIX Gシリーズが成功した理由である。

 LUMIX Gシリーズは当初より、EVFを活用したコンパクトデジカメ世代向けの機能を備え、一眼レフの世界に踏み込めなかったユーザー層を表向き狙っているように見えた。しかし、実はその一方でクラシックレンズの取り付けを強く意識し、マニュアルフォーカスのアシスト機能などを取り入れている。

 DMC-GH1の発表時には、この“裏の狙い”もハッキリとさせ、マウント部とセンサー部の間の造形を変更。後ろ玉が飛び出たレンズとの互換性を向上させたり、パナソニック純正のライカMマウントアダプタを発売するなどの配慮を行なっている。

 電子ファインダー専用のレンズ交換式カメラという、一見ラディカルなカメラでありながら、クラシックカメラ好き向けにも配慮したことで、ユーザー層をまんべんなく分散させることができた。

 DMC-GH1は折からの不況や、高コストなレンズをキット販売していることから決して安くない価格設定になっていることなどを考慮し、かなり保守的な予定販売数を見積もっていたのだろう。各所で品切れを起こしているが、そうした読み違いによる機会損失があったにも関わらず、LUMIX Gシリーズ合計で9%以上のシェアを獲得した。

オリンパスの登場でミラーレス一眼市場が定着

 さて、このような予想以上の成功の中で、マイクロフォーサーズにオリンパスの機種が加わる。以下の理由から、ミラーレス一眼が一気に市場での立ち位置を確かなものにするだろう。

 前述したようにオリンパスはLUMIX Gシリーズとは異なるタイプ、テイストのボディを投入する。高級コンパクトをそのままレンズ交換式にしたようなオリンパスのボディと一眼レフカメラに近いフォルムのLUMIX Gシリーズは、互いに補完し合う間柄だ。

フォトキナ2008に合わせてオリンパスが開発発表したマイクロフォーサーズ機 背面。EVFはない

 将来はオリンパスも一眼レフタイプのマイクロフォーサーズ機を、パナソニックも高級コンパクト機風のマイクロフォーサーズ機を開発するだろうが、規格を立ち上げ、第1世代目が揃った時点で好みに応じたボディのチョイスができるというのは心強い。

 レンズに関してもパナソニック、オリンパスが、それぞれに並行して開発することで、必要な焦点距離のレンズが早期に揃う事が予想される。

 両社の話を総合すると、ボディ開発や内蔵するシステムLSI、そのうえで動かすソフトウェアなどは、(E-330などの時代とは異なり)各社ごと別々に開発しているとのことなので、最低限必要なレンズやアクセサリ、それにセンサーなどを共有しつつ、ボディや絵作りのテイストは全く違うというものができるだろう。

 オリンパスのマイクロフォーサーズ機登場により、マイクロフォーサーズ規格はレンズ交換式カメラ市場の中で、しっかりとその立ち位置を確保し、新市場として定着するに違いない。

 ただし、一眼レフ市場は縮小し、プロ向けとハイアマチュア向け以外のレンズ交換式カメラは、今後数年内にミラーレス一眼が席巻する……というほどに、急速な市場変化があるとの予測には疑問がある。だが、ゆっくりとした市場環境の変化は起こり始める。

交わりそうで交わらないミラーレス一眼と一眼レフの市場

フォーサーズとマイクロフォーサーズを比較(オリンパス提供、以下同)

 レンズ交換式という切り口では、ミラーレス一眼も一般的な一眼レフも、同じカテゴリの製品に見える。しかし、この二つはいろいろな意味で交わらない市場だ。同じ顧客を取り合うことはあるだろうが、それはごく一部の事象にしか過ぎない。

 なぜなら、この二つは決定的にユーザー層が異なるからだ。

 LUMIX Gシリーズユーザーの年齢構成比は、20代がやや多いものの一眼レフカメラ全体とそう大きくは変わらないと書いたが、同じ構成比率でもその意味は異なる。高年齢層の購買者は主にクラシックカメラファン層。若年層は初めてレンズ交換式を買う人や女性が中心。この二つの異なるピークを持つカーブが重なり、トータルで似た構成比になっている。

 今後、ミラーレス一眼市場が固定化する中で増えていくユーザーは、クラカメファンではなく、まだ一眼の世界に入ってきていない一眼予備軍だ。

 現在、一眼レフカメラの販売台数はコンパクト機の10%をやや下回る程度だが、購入を検討したことがある人は、その2倍もいる。つまり一眼カメラ購入検討者のうち2/3は購入には至っていないことになる。ミラーレス一眼市場が形成するのは、主にそうしたコンパクト機よりも高機能・高画質なカメラを検討したけれども、サイズや重さ、操作性などの面で不安を覚えて購入しなかった人たち、それに一眼レフカメラを購入したけれど、重さや大きさ、使いこなしの難しさに耐えかねた人が中心になる。

 これに対して一眼レフカメラの市場は、傾向として過去に一眼レフカメラの原体験を持っているユーザーが主に支えている。今の瞬間だけを見ると、ほかに選択肢がないため軽量・コンパクトの一眼レフをユーザーは選択しているが、これらのユーザーはミラーレス一眼の機能・性能が改良されるごとにミラーレス一眼へと流れていくだろう。

 一眼レフ市場では保有するレンズを資産として活用するため、既存のマウントとの互換性を重視するユーザーも多いので、急激に一眼レフを買うユーザーがいなくなることはなく、急激に市場が縮小するわけではない。徐々に減っていく可能性はあるが、ユーザーの世代交代が終わるまでは大きくは変わらない。

 このように書くとミラーレス一眼が一眼レフのエントリー用製品として機能するように読めるかもしれないが、それも少し違う。フランジバックの短いミラーレス一眼には、既存のレンズが利用できるが、ミラーレス一眼向けに開発したレンズは一眼レフカメラには使えない。一眼レフカメラのエントリー商品として、ミラーレス一眼が機能するかどうかは未知数である。

 2つの異なるレンズ交換式カメラの市場は、大きく交わらずに共存していくのではないだろうか。

それでも、一眼レフカメラメーカーはミラーレス一眼へと向かう

 ここまでミラーレス一眼と一眼レフの機能面での違いは、あえて議論せずに話を進めた。それぞれには得手・不得手があり、片方の弱点はもう片方の長所になっている。たとえば速写性の低さやファインダー像の遅延などはミラーレス一眼の抱える問題だ。しかし、一方で詳細なシーン認識や撮影像のシミュレーション表示、撮像面上で高精度のフォーカスを検出するといったことは一眼レフカメラではできない。

 新たなレンズシステムの構築やミラーレス一眼から一眼レフへとステップアップすることを誘導しづらいことなども考え合わせれば、一眼レフカメラ市場で支配的なメーカーは、ミラーレス一眼へとは踏み出しづらいかもしれない。

 しかし、それでも彼らはミラーレス一眼という新しい市場に挑戦せざるを得ないと予想している。なぜなら前述したように、一眼レフ購入検討者の1/3しか実際に購入してくれていないという現実があるからだ。

 コンパクトデジタルカメラでカメラの愉しさを知った消費者に、そこで知った写真撮影のノウハウを活かして使える手軽なレンズ交換式カメラは、ミラーレス方式の方が開発しやすい。彼らをより上位のカメラへと導くには、ミラーレス一眼のシステムが必要不可欠だ。

 急に一眼レフカメラが買えなくなるといったことはないだろうが、ゆっくりと確実にミラーレス一眼システムは足場を固め、一眼レフシステムとは別の市場が育っていくことになるだろう。





本田雅一
PC、IT、AV、カメラ、プリンタに関連した取材記事、コラム、評論をWebニュースサイト、専門誌、新聞、ビジネス誌に執筆中。カメラとのファーストコンタクトは10歳の時に親からお下がりでもらったコニカEE Matic。デジタルカメラとはリコーDC-1を仕事に導入して以来の付き合い。

2009/6/2 00:00


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