メーカー直撃インタビュー:伊達淳一の技術のフカボリ!

キヤノン EOS 5Ds、EOS 5Ds R

撮り比べて分かったローパスフィルターの効果

発売日:2015年6月18日
実勢価格:50万5,000円前後(EOS 5Dsボディ、左)、53万8,000円前後(EOS 5Ds Rボディ、右)

約50.6メガピクセルのフルサイズセンサー搭載の高解像度モデルで、偽色や色モアレに配慮したローパスフィルター搭載の「EOS 5Ds」と、ローパスフィルター効果をキャンセルした「EOS 5Ds R」の2モデルを用意。

EOS 5D Mark IIIの基本機能を踏襲しつつ、モーターとカムギアでミラー制御を行う低振動メカを採用、デュアルDIGIC6による高速並行処理により、連写スピードも約5コマ/秒を実現するなど、快速・快適を損なわない高画素モデルだ。

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本インタビューは「デジタルカメラマガジン2015年7月号」(6月20日発売、インプレス刊)に掲載されたものに、誌面の都合で掲載できなかった内容を加筆して収録したものです。(聞き手:伊達淳一、本文中敬称略)


他社から高画素モデルが登場して国内外でユーザーの要望が高まった

――EOS 5Ds/5Ds Rの開発コンセプト、EOSシリーズでの位置付け、プロ向けなのか、それともパーソナルユーザー向けなのか。想定しているターゲット層を教えてください。

立花:EOSシリーズすべてに共通するテーマは“撮影領域の拡大”です。皆さんが撮れる領域をできるだけ広げていこうと、さまざまな撮影スタイルやニーズに応じて、ラインアップを拡充してきました。その中で、昨今、要望が多かった“高画素”にコンセプトを絞り、“高画素を生かした高画質”を求めるお客さまに対し、徹底的に高画素という要素に特化して開発したのが、今回のEOS 5DsおよびEOS 5Ds Rです。

開発者側としては、5D系は“ハイアマチュア向け”という位置付けという意識があることにはありますが、実際には、非常に多くのプロカメラマンが5D系で仕事をしていますし、逆に、プロ向けとして開発したEOS-1D Xも多くのアマチュアカメラマンに愛用していただいております。

そのため、プロ向け、アマチュア向けの線引きが非常にむずかしいのですが、“5Ds/5Ds R”という5D系の型番を冠している以上、ハイアマチュアの方々に多く使っていただければ、と思っています。ただし、今回は、今までの5D系以上に、プロユースを意識した設計になっているのも事実です。

――22メガピクセルの5D Mark IIIに対し、5Ds/5Ds Rは50メガピクセルと2倍以上の画素数になり、高画素に特化したとはいえ、あまりにも画素数に差がありすぎる気がします。50メガピクセルという画素数を選択した理由とは?

立花:画素数が多ければ多いほど高精細な描写が得られますし、さまざまな使い方ができるようになります。画素数だけでいうと弊社でも、1億2,000万画素のイメージセンサーを技術発表していますが、残念ながらすぐに製品に採用できる状況ではありません。

いくら高画素に特化したモデルとはいえ、「快速・快適」にお使いいただくためには連写スピードや高感度特性といった要素も無視できませんので、ある一定レベルの連写スピードや高感度特性を保った上で、どこまで画素数を増やせるかを検討しました。その結果、現時点の技術で可能だったのが50メガピクセル、という画素数だったのです。

また、22メガピクセルの5D Mark IIIに対し、高画素ならではの画質差を明らかに感じてもらうには、30メガピクセル前後の画素数では力不足です。50メガピクセルを選択したことで、5D Mark IIIよりも常用最高感度は低下し、連写スピードも若干落ちています。しかしながら、2倍以上の画素数にすることで“高画素を生かした高画質”をより明確に実感していただけると考え、50メガピクセルという画素数を選択しました。

――確かに、12メガピクセルの初代5Dから、21メガピクセルの5D Mark IIになったときは、あまりにも高精細な描写に対する驚きと、その一方で、いくらなんでも画素数を増やしすぎではないか、というネガティブな思いが自分の中で交錯していました。

それが今では22メガピクセルの5D Mark IIIでは画素数が足りないと不満を言っている自分がいたりして(笑)。そう考えると、画素数を一気に2倍以上にするくらいでないと、圧倒的な画質差は感じられないのかもしれませんね。

ところで、今回の5Ds/5Ds Rは、高画素に特化したスペシャルモデルとしての位置付けだと思いますが、キヤノンとして、フルサイズで最もバランスの良い画素数は、現状ではどのくらいだと考えているのでしょうか? すでに、APS-Cでは、24メガピクセルのEOS 8000DやEOS M3が登場し、フルサイズよりも画素数が多くなっていますが……。

立花:5D Mark IIIの22メガピクセルという画素数も、5D Mark IIIを開発している時点において、最もバランスが良い画素数と考えて選択したものです。21メガピクセルの5D Mark IIに対し、大幅に画素数を増やすという選択肢もありましたが、当時の選択としては、画素数よりも連写スピードや感度を上げ、上位機種並みのAFを搭載することが、撮影領域の拡大につながると考えました。

5D Mark IIIが発売されてから3年以上経っていて、その間に技術も進歩していますし、市場のニーズも変化していますので、当然、最適な画素数も変わってきます。将来機種については何もコメントできませんが、いずれの機種も採用される画素数が、その時点において我々が考える最適な画素数と言えるでしょう。

(写真左から)
立花 淳氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第二事業部 専任主任

服部光明氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第二開発センター 主任研究員

西沢秀太氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第二開発センター

中野晋吾氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第二開発センター

――ユーザーからフルサイズEOSに対して寄せられる要望において、画素数が現状では足りないという声はどの程度の比率を占めますか?

立花:比率としては決して多いわけではありません。とはいえ、過去機種と比較して、5D Mark IIIはこの点に関する要望は多かったと言うことも事実です。

通常、高画素化を求める声は国内の方が多いのですが、5D Mark III発売後に他社から高画素モデルが発売されたこともあり、他機種以上に海外でも高画素を求める要望が多かったのです。

そのような高画素を求めるユーザーに対し、連写スピードや高感度の性能をできるだけ犠牲にしない範囲で高画素化を推し進めたスペシャルモデルというのが、今回の5Ds/5Ds Rということになります。

――個人的には、高画素化による高精細描写も魅力ですが、それ以上に高感度と連写スピードも重視しているので、フルサイズなら36メガピクセル前後、APS-Cなら16メガピクセル前後の画素ピッチが、レンズの解像性能を考えると最もキレが良い描写が得られ、ISO 3200あたりまでは強力なノイズリダクションをかけなくてもノイズが目立ちにくいと思っています。

なので、5D Mark IIIの後継機は、28〜36メガピクセルあたりの画素数に抑え、連写スピードはできれば7コマ/秒、高感度の画質は5D Mark IIIと同等以上、欲を言えば1段高感度画質が向上してISO 12800まで躊躇なく使える、というのが僕の理想ですね。

立花:貴重なご意見ありがとうございます(笑)。

なぜ1D系ではなく5D系をベースにしたのか?

――ところで、なぜ5D Mark IIIをベースに高画素モデルを開発したのでしょう? プロモデルである1D系の高画素モデルを待ち望んでいるプロやハイアマチュアも多いのではないでしょうか? ファインダーの見えやレリーズのフィーリング、耐久性や信頼性は、やはり1D系ならではのアドバンテージがあると思うのですが……。

立花:先ほど、プロ向けとハイアマチュア向けモデルの境界線が曖昧になってきている、という話をしましたが、EOS-1Ds Mark IIIに続き、ほぼ同じ画素数の5D Mark IIを発売したところ、プロの方も含め、多くのお客さまが5D Mark IIに流れるという結果となりました。

その後の調査でも、画質優先の業務をされているプロから「大きくて重くて値段も高い1D系の高画素モデルは要らない」というご意見を多数いただきました。そもそも1D系は、高速連写を実現するためのメカ設計がベースとなっていて、高速連写を求めなければあそこまで大きな筐体とこだわりのメカは必要ありません。

報道やスポーツなど高速連写を必要とする現場を除けば、今や多くのシーンでプロの機材として5D系が使われているという認識を持っています。ですので5D Mark IIIはレリーズタイムラグの短縮やシャッターフィーリングの改善、ファインダー視野率も約100%にするなど、上級者の皆さまにもご満足いただけるよう、さまざまな機能を向上させています。

「1Dxの高画素モデルを作ってほしい」という声がないわけではありませんが、全体的に見れば少数派で、前述のような取り組みが評価されたのか、圧倒的に5D系を支持する声が多いのが現状です。

――ラインアップ上で1D系を“フラッグシップ”という呼び方を止めて、“報道・スポーツモデル”のようなスペシャルモデル的な存在に位置付ければ、1D系に対して5D系が下位機種、というヒエラルキーを感じずにすむかもしれませんね。

立花:フィルム時代には、EOS-1シリーズといえども、カメラ単体では最終モデルのEOS-1vでも最高3.5コマの連写スピードで、ドライブブースターを装着することで10コマ/秒の高速連写を実現しています。

同じEOS-1でも、高速連写を求めないシーンではドライブブースターを外して、小型・軽量化を図ることができました。今は、そのポジションを5D系が担っているように感じています。

――確かにそういう側面もありますね。フラッグシップに求められる要素として5D系に決定的に足りないといえば、内蔵のアイピースシャッターですね。

三脚撮影時は、ライブビューを使うケースが多くなってきたとはいえ、まだまだファインダー撮影にこだわるユーザーも多く、ファインダーへの逆入光を考えると、やはりアイピースシャッターが内蔵されていた方が便利だし、一眼レフとしての風格も感じられますね。耐久性の面はどうですか?

立花:1D系と5D系ではシャッターユニットの耐久が、40万回と15万回とだいぶ違います。連写スピードが速い1D系は撮影枚数も飛躍的に増えるので、それに耐えられるだけの耐久性を持たせる必要があります。

それ以外のさまざまな面でも品質を向上させる必要があり、そのぶん、コスト的にもかなり違ってきてしまいます。

中野:50メガピクセルの高画素を手軽に使ってもらいたい、ということで5D系を選択しましたが、メカ設計の立場としては1D系をベースにした方が、ボディの剛性が高いので、振動や放熱面を考えると設計しやすい部分もあります。

――なるほど。1D系の高画素モデルが登場しない理由がよく分かりました。さて、5Ds/5Ds Rの外観は5D Mark IIIとほとんど同じですが、5D Mark IIIと画素数以外、何が違っているのでしょう?

立花:外観上の違いとしては、塗装を高級感のある材料に変更しています。また、メニュー画面を操作する際の利便性を考え、レンズ着脱ボタンの下あたりに、左手の指がかりを設けています。軍艦部のCanonロゴの大きさも若干変わっています。モードダイヤルもテカリの少ない落ち着いたデザインにしています。後は機種名を表す化粧板とストラップですね。

――ストラップの刺繍は、5Dsが金で、5Ds Rが銀なんですね。なんだか逆に感じます。

立花:5Dsは1Dsをオマージュし、イメージカラーをゴールドとしました。これを製品ロゴやストラップの刺繍に使用しています。対してローパス効果キャンセルの5Ds Rは、極限まで解像にこだわる特殊用途向けと考え、5Dsとの差別化のためイメージカラーをシルバー+赤「R」としました。


――機能やメカ的な違いはどうですか?

中野:内部のメカ機構は、フルモデルチェンジに近い変更を行っています。50メガピクセルの解像性能を最大限に引き出せるよう、モーターとカムギヤによるミラー駆動でミラーアップやミラーダウン時にミラーを適切に減速することで衝撃を緩和しています。

さらに、三脚ネジ穴(三脚座)を保持する底面シャーシを肉厚にして剛性を高めるなど、ブレ対策を徹底的に行っています。ファインダーの光学系は基本的には5D Mark IIIと同じですが、必要に応じて必要な情報のみを透過表示できる「インテリジェントビューファインダーII」を採用し、水準器を常時表示したり、新たに搭載されたクロップ撮影時にマスク表示できるようになっています。

また、縦2層構造の63分割デュアルレイヤーiFCL測光センサーから、約15万画素RGB+IR測光センサーになり、被写体の色を加味した「252分割評価測光」や、顔や色で被写体を追尾する「EOS iTR AF」、蛍光灯や水銀灯照明のちらつきを抑え露出を安定化する「フリッカーレス撮影」も加わりました。

クイック設定画面の表示項目やレイアウトも、撮影者が自由にカスタマイズできるのも特徴です。

デュアルレイヤーiFCL測光センサー:5D Mark IIIは、R/G波長とB/G波長のそれぞれを検知する2層構造のiFCL測光センサーが搭載されていて、被写体の色味をある程度考慮した自動露出制御を行っている

約15万画素RGB+IR測光センサー:かなり大雑把ではあるが、撮影画面の色情報を取得できるので、明るさだけでなく色も考慮した露出やAF制御が可能。また、赤外線も検知できるので、光源の種類やフリッカーの有無なども判別できるのが特徴だ
約15万画素RGB+IR測光センサー
EOS iTR AF:RGB測光センサーからの色情報を利用し、最初にピントを合わせた被写体の特長(色や顔)を検出して、その情報を元に適切なAFフレームを自動選択できる機能

フリッカーレス撮影:蛍光灯や水銀灯は、電源周波数に連動して明滅しているので、シャッターを切るタイミングによって露出が変わったり、画面の一部がムラになってしまうことがある。最も明るくなった瞬間に露光を行うのがフリッカーレス撮影だ

――画素数が増えると、より高いピント精度が求められると思うのですが、EOS iTR AFが搭載された以外、61点高密度レティクルAFに何か改良が加えられているのでしょうか?

中野:特に変えていません。画素ピッチは7D Mark IIなどと変わらないので、これまでのAFでも十分な精度が得られると判断しました。やはり一番こだわったのは、50メガという画素数を生かし切るために、ミラー駆動系の振動対策とボディ全体の剛性アップに手を加えている点です。

61点高密度レティクルAF:中央の縦5点がF2.8対応クロス測距、F5.6対応クロス測距が行えるのは最高41点と、画面周辺部まで精度の高いクロスセンサーが配置されているので、被写体パターンに影響されず、高い捕捉性能が得られるのが特徴だ
61点高密度レティクルAFのセンサー
AFフレーム

ミラーショックの低減を可能にしたモーターによる高精度なミラー制御

――振動対策について、もっと具体的な話を伺えますか?

中野:もともと5D Mark IIIでも画面ブレとか振動対策を図っていて、最初はこのまま十分通用すると考えました。しかし、もっと振動を抑えて1D系並みにしたい、ということで、ミラーメカを根本的に変えています。

具体的には、これまではバネの力を利用してミラーアップ/ダウンをしていたのですが、そうするとミラーの速度コントロールができません。ミラーアップが開始すると、後はバネの力でそのまま跳ね上がるので、ミラー停止直前での減速がむずかしく、ミラーアップによる衝撃が問題となってきます。

また、バネをチャージするための駆動レバーが前後方向に動くので、カメラ内部に縦方向(ミラーアップ時の振動)と前後方向の2つの振動源を抱えていました。そこで、5Ds/5Ds Rでは、ミラーや振動レバーによる振動を抑えるため、ミラーアップもミラーダウンもすべてモーターとカムによって制御するように全面的に機構を変え、ミラーの動く速さを適切にコントロールできるようにしました。

モーターで駆動することのメリットは、内部で大きい駆動レバーを動かす必要がなくなるので、そのぶん、振動や慣性モーメントによる揺れが少なくなりますし、速度制御を細かくコントロールできるようになるので、ミラーアップおよびミラーダウンする瞬間に急減速させ、ミラーによる衝撃を緩和させています。

――バネの力で一気にミラーアップするよりも、モーターの力でミラーを上げ下げする方が瞬発力に欠け、時間がかかるような気がするのですが、レリーズタイムラグや像消失時間が遅くなっていないのでしょうか?

中野:実は、かえってモーターの方が瞬発力があるんです。バネの力でミラーアップするといっても、モーターを回してストッパーを解除し、バネの力で跳ね上げるので、そこにタイムラグが生まれます。

しかし、モーターでミラーをダイレクト駆動すれば、すぐにミラーを動かすことができるので、実際のミラーの動き出しは若干ですがモーター駆動の方が速く、ミラーが上がり切る直前にモーターの電圧をコントロールしてミラーを減速し、衝撃を和らげています。

ミラーアップする直前でミラーの動きはゆっくりとなりますが、ミラーがバウンドしている時間が短く、ミラーの動き出しも若干速いので、トータルのレリーズタイムラグは従来とほぼ同じです。ただ、数値は変わっていませんが、ミラーアップ完了直前で減速するため、ミラーがゆっくり上がっている感じに見え、その分、レリーズタイムラグや像消失時間が長く感じられるかもしれません。

――ミラーをモーター駆動にすると、レリーズタイムラグや像消失時間が多少犠牲になると思っていました。振動対策ですが、ミラーだけでなく、シャッターも振動源ですよね? シャッターには何か対策を施していませんか?

中野:もともと振動の少ないシャッターだったので、シャッターに関しては従来と同じ方式です。全体的な剛性を高めることで、シャッターの衝撃にも耐えられるように、という考え方を採用しています。そのため、先ほどご説明したように、三脚座の保持方法も変えて、三脚撮影時のブレを抑えられるようにしています。

5D Mark IIIと同じ構造の三脚座でもほとんど問題ないのですが、50メガピクセルという画素数を最大限に生かした描写が得られるよう、この筐体でできることはやろう、というモチベーションを持って、開発に取り組みました。

モーターでカムギアを動かして振動を抑えるミラー機構
バネの力でミラーを跳ね上げる従来方式では、ミラーショックを抑えるのが難しいので、モーターとカムギアを組み合わせてミラーの速度を絶妙にコントロール。内部のメカ機構もシンプルになり、複合揺れも軽減

――今のお話は三脚撮影時の話ですよね。手持ち撮影時でも影響するブレ対策は何か行っていないのでしょうか? 例えば、ミラーやシャッターの振動がボディに伝わり、センサーを保持しているフレームも共振して、それが極小なブレとなって写りに影響する、なんて可能性はありませんか?

中野:まったくないとは言えませんが、手ブレの方が大きいですね。そういう意味では、マウントを支えている部材の強度を高めて、ブレが伝わりにくいように配慮しています。

――あまりガチガチにボディを固めてしまうと、かえってシャッターやミラーの振動を吸収できずに、振動がボディに跳ね返ってくる可能性はありませんか? 特に連写したときなど1コマ目は大丈夫だけど、2コマ目以降、跳ね返ってきた振動で画面ブレを生じてしまう、なんてことはありませんか?

中野:実際、連写すると共振する周波数はあります。なので、締結部とかをうまく工夫して、そういった共振が起こりにくい構造にしています。

――そもそも5D系に採用しているシャッターユニットは、幕速が少し遅めですよね?

中野:1D系に比べると遅めです。

――ストロボ同調スピードは確か1/200秒ですよね。やはり、ストロボ同調速度を1/250秒まで引き上げると、シャッターの衝撃もより大きくなりますよね?

中野:衝撃も増えるので、よりボディの剛性を高めなければなりませんし、シャッターチャージする力も必要になるので、電圧の高いバッテリーやパワーの大きいモーターが必要になります。そこは、やはり1D系のメカの素晴らしさがあります。

それと、振動対策ではありませんが、センサーや周辺回路から発生する熱をいかに逃がすかという点も課題でした。16チャンネルで高速読み出しする50メガピクセルCMOSセンサーと、デュアルDIGIC6という熱源を内部に抱えているにも関わらず、(1D系に比べれば)表面積が狭く、そのぶん放熱できる量が少ないので、いかに効率良く放熱させるか、という点は苦労しました。放熱という点でも、設計する側としては、本当は1D系のボディの方が有利なわけです(笑)。

――なるほど。僕は、1D系は強力なバネとストッパーでミラーを力技で高速に動かしているぶん、振動が激しく高画素モデルには不向きなので、あえて5D系のボディを採用したのかと思っていましたが、むしろ設計者としては、1D系ボディの方がいろいろと有利な部分があるんですね。

中野:現在のEOS-1D Xのボディをそのまま流用して50メガピクセルのCMOSセンサーを搭載するわけにはいかないかもしれませんが、1D系はそもそも剛性が高いので、いろいろと設計しやすいのは確かです。

――ただ、当然のことながら価格はかなり高くなると……。

中野:そのため、50メガピクセルの描写をより多くのお客さまに体験していただけるよう、1D系ではなく、5D系のボディを選択したわけです。機動性も高まりますし。風景撮影には少しでも機材が軽い方が有利ですから。

――「ミラーアップ撮影」に「レリーズタイムラグ設定」が加わりましたが、これはどんな機能ですか?

立花:従来のミラーアップ撮影は、シャッターボタンを押すとミラーアップ、もう1回シャッターボタンを押すとシャッターが切れるという仕様です。2回シャッターボタンを押す煩わしさを解消しよう、と設けたのが「レリーズタイムラグ設定」で、1/8秒〜2秒まで5段階にレリーズまでの遅延時間を設定することができます。

風景撮影や超望遠撮影で少しでもミラーショックを抑えようとミラーアップ撮影される方がいらっしゃいますが、50メガピクセルの5Ds/5Ds Rでは、そうしたケースがさらに増えるだろうと考え、シャッターボタンを1回押せば、ミラーアップ後、設定秒数が経過してからレリーズ、という動作を行えるようにしました。

――ミラーアップ撮影ってメニューの中にありますよね。感覚的には、ドライブモードで設定できた方がアクセスしやすいと思います。

それに、僕はケーブルレリーズを忘れて撮影に出かけてしまうことが多く、その際、2秒セルフタイマーを利用するのですが、セルフタイマーでシャッターボタンを押した瞬間にミラーアップするようにしてくれれば、ミラーアップ撮影を意識することなく、ミラーアップ撮影できると思うのですが……。

立花:そのような仕様を採用することも、将来的にはあるかもしれませんね。

――そもそもライブビュー撮影を使えば、ミラーアップ状態になりますし、デフォルトでは電子先幕シャッターで撮影されるので、シャッターショックも抑えられるので、もはやミラーアップ撮影は個人的に不要だと思うのですが……。

立花:ライブビューという方法も、ブレ低減には非常に効果があります。ただ、ファインダー撮影にこだわられるお客さまも多いので、ミラーアップ撮影機能もより使いやすい形に機能強化を図りました。


ローパスフィルターが原則必要というキヤノンのスタンスに変更はない

――5Ds Rは、ローパスフィルターレスではなく、ローパス効果キャンセルモデルということですが、フルサイズで50メガピクセルもあれば、もはやローパスフィルターは不要ではありませんか?

服部:50メガピクセルになっても、被写体によっては偽色や色モアレが出やすいものがあります。特に、服など布地や建物のタイルを撮ったときに、条件にはまると偽色や色モアレが目立ちます。

そのため、50メガピクセルであってもローパスフィルターは必要と考えています。ただ、そうしたリスクを承知で、究極の解像を求めるお客さま向けに、ローパス効果をキャンセルした特別モデルとして5Ds Rもご用意しました。

ローパスフィルター効果を打ち消すEOS 5Ds Rの仕組み
通常は2枚のローパスフィルターで高周波成分を水平/垂直方向に分離。5Ds Rでは片方のローパスフィルターを90度回転させ、一度分離させた光を元に戻している

――ローパスフィルター効果のある5Dsなら、偽色や色モアレを防げるのでしょうか?

服部:ローパスフィルターがあっても、偽色や色モアレを完全に防げる訳ではありませんが、出る頻度や出たときの強度が全然違います。

――ローパスフィルターがあろうとなかろうと出るときは出る、出ないときは出ないということであれば、思い切ってローパスフィルターレスにして、カメラ内画像処理でより色モアレや偽色を低減するという手法が2つの機種を作り分ける必要もなくスッキリする気がするのですが……。

服部:すでに偽色や色モアレを抑えるような画像処理を行っているのですが、それでも取り切れないものがあるので、光学ローパスフィルターはまだ必要と考えています。

――ローパスフィルターキャンセルモデルの5Ds Rの方がなぜ価格が高いのでしょう? ローパスフィルターの方向を一部変えるだけなら部材費は変わらないと思うのですが……。

中野:基本的には構成材料に大きな違いはありませんが、専用設計の構成のため、コストがかかっています。

――それは5Dsの方が販売数量が多いと考えているからで、5Ds Rの方が生産台数が多くなるなら、むしろローパスキャンセルの部材の方が安くなってもおかしくないですよね。新宿のとある量販店で5Dsと5Ds Rの予約状況を聞いたところ、9割以上が5Ds Rを予約しているとのことでした。

もちろん、予約してまで買いたいという方はこだわりのあるお客さまなので、5Ds Rが圧倒的に人気なのでしょうが、50メガピクセルの解像をより引き出せるモデルを選択したい、というのは、自然なことだと思います。

立花:私も5Ds/5Ds Rの取材を受けるようになって、販売会社に比率を問い合わせたのですが、最初は5Dsと5Ds Rの比率は3:1でした。ちょっと前に聞いたときには2:1に、つい最近では3:2になっていました。確かに、当初見込んでいたよりも5Ds Rの比率が高くなってきていますが、扱いやすさから考えると最終的には5Ds Rよりも5Dsの方が多いと考えています。

――実際、5Dsと5Ds Rの試作機をお借りして、EF24-70mm F2.8L II USMで撮り比べてみたのですが、回折の影響が少ないF値を選んで撮影しても、その差はごくわずかで、確かに両機種で撮影した画像を2枚並べてピクセル等倍でチェックすれば、5Ds Rの方がハイライトの立ちが鋭いぶん、シャープに見えるので、なんとか見分けが付くのですが、300dpiでプリントするとほとんど差が分からなくなります。

印刷物になると網点がかかるので、300%拡大にしてもその差を伝えられるかどうか、微妙ですね。偽色や色モアレも、5Dsと5Ds Rでは出る部分が変わるだけで、ちょっと画角やF値を変えただけでも出る場所が変化します。

そういう意味では、5Ds、5Ds Rのどちらも大きな差はないので、思い切ってローパスフィルターレスで設計すれば、もう少しだけ安くできたのではないでしょうか。

立花:ローパスフィルターレスに一本化すれば、もう少し安くできたかもしれませんが、キヤノンとしては“ローパスフィルターは必要”という立場に変わりはありませんし、ローパスフィルターキャンセルモデルの5Ds Rのみ提供するという考え方はありませんでした。

生産現場も販売会社も2つの機種を作り分けるというのは簡単なことではなく、本音を言えば1機種に絞れればよかったのですが(笑)。

――ローパスフィルター効果キャンセルと、完全にローパスフィルターレスにするのとでは、画質に差があるのでしょうか?

服部:実際の画像で、両者の差が分かることはないと思います。


新ピクチャースタイルの「ディテール重視」とは?

――画素数が増えたことで画像処理を変えていますか?

服部:ピクチャースタイルに新しく「ディテール重視」というモードを追加しました。また、既存のピクチャースタイルも含め、シャープネス項目に「細かさ」と「しきい値」という2つのパラメーターを調整できるようにし、これまでより細部に対し、どのようにシャープネスを強調するのか、柔軟に調整できるようにしています。

ただし、既存のピクチャースタイルについては、シャープネスのかけ方を含め、初期設定では従来と同じ仕上がりが得られるようにしています。

新しいピクチャースタイルのディテール重視モード
従来よりも輪郭強調の線が細く、コントラスト差の低い部分まで解像感を際立たせた絵作りで、ハイライトの階調もスタンダードより軟調な特性になっている

――「細かさ」と「しきい値」は、何を調整するパラメーターなのでしょう?

服部:「細かさ」の数値を低くするほど、輪郭強調のエッジが細くなります。また「しきい値」を低くすると、よりコントラストの低い部分にまで輪郭強調がかかるようになります。

従来のスタンダードは「細かさ」と「しきい値」がどちらも「4」になっていますが、ディテール重視は「細かさ」と「しきい値」が両方とも最小の「1」になっているので、より細かい部分まで線の細い輪郭強調がかかるのが特徴です。

これらはあくまで初期設定ですので、スタンダードのシャープネス項目の「細かさ」と「しきい値」を「1」に設定すれば、スタンダードの絵作りのまま、線の細いシャープネスに仕上げることができます。

ピクチャースタイルに追加された細かさとしきい値のパラメーター
「細かさ」を小さくするほど輪郭強調の線が細く「しきい値」を小さくするほど低コントラスト部分までシャープネスがかかるが、高感度ではノイズが目立ちやすくなる

――その場合、色や階調はスタンダードとディテール重視で違いはありますか?

服部:ディテール重視の方が高輝度部の階調性を重視して、ハイライトの階調を軟らかくしています。彩度はほとんど同じですが、細かい部分でチューニングを加えています。

――従来のDPPの「アンシャープマスク」にも「細かさ」と「しきい値」というパラメーターがありますが、ピクチャースタイルのシャープネス項目と意味は同じですか?

服部:同じです。DPPに合わせてピクチャースタイル側の名称も統一しています。

――ディテール重視という新しいピクチャースタイルは、5Dsや5Ds Rのような高画素モデルにのみ搭載されるのでしょうか? それとも、今後はKissシリーズなどのエントリーモデルも含め、広く搭載されていくのでしょうか?

服部:基本的には今後発売されるEOS全機種に搭載していくつもりです。

立花:この春のエントリーモデルは、発表は5Ds/5Ds Rと同時でしたが、発売時期の関係でディテール重視を搭載することができませんでした。ただ、すべての機種ではありませんが従来のEOSでも、RAWで撮影して新バージョンのDPP(Digital Photo Professional)で処理すれば、ディテール重視で仕上げることは可能です。

――最近は解像感を向上させるため、ローカルコントラストを強調する「明瞭度」や、回折現象を低減する処理を画像処理に採り入れるメーカーも出てきましたが、キヤノンではこうした画像処理は採用していないのでしょうか?

服部:今のところ、そういった処理は採り入れていません。明瞭度とは少し機能は異なりますが、オートライティングオプティマイザを使用することで画像の明暗バランスやコンラストが整えられ明瞭な画像にすることができています。

回折低減処理については、カメラ内では行っていませんが、RAWで撮影してDPPの「デジタルレンズオプティマイザ」という機能で、レンズ収差補正を含め、回折による解像感の低下を補正することができます。

立花:デジタルレンズオプティマイザは、非常に膨大な処理を行っているので、残念ながら現時点ではカメラ内の画像処理エンジンでは処理が追いつかず、RAW現像ソフトでの対応となっています。

――収差補正といえば、5Ds/5Ds Rにレンズ光学補正データをEOS Utilityで登録しようとしたときに、すでにレンズ名にチェックが入っていて、「このレンズは当カメラに登録する必要がありません」と表示され、チェックを外せないレンズが何本かありました。

EF11-24mm F4L USMやEF16-35mm F4L IS USM、EF100-400mm F4.5-5.6 IS II USM、EF24-105mm F3.5-5.6 IS STMなど、最近発売されたレンズばかりですが、こうしたレンズの補正データはあらかじめボディ内のROMに書き込まれているのでしょうか?

服部:最近発売されたレンズについては自動的に補正ができる仕組みとなっており、レンズ光学補正データをカメラに登録する必要はありません。

――5Ds/5Ds Rは、高画素にこだわったぶん、高感度の性能は5D Mark IIIよりも落ちているのは理解できますが、画素ピッチ的にほとんど同じ7D MarkIIの最高感度がISO 16000なのに対し、5Ds/5DsRの最高感度はISO 6400というのが不思議です。この違いはどこからくるのでしょうか?

西沢:フルサイズである5Ds/5Ds Rは、APS-Cサイズのセンサーと比べて入射光角度の違いなどによりノイズ以外の特性も異なります。詳細はお話しできませんが、常用感度の設定にあたっては、ノイズレベルだけではなく、キヤノン社内におけるさまざまな基準があり、総合的に画質を判断し5Ds/5Ds Rでは最高感度をISO 6400にしています。

――ピクセル等倍で見たときのノイズレベルに大きな違いがないとすれば、なおさら5Ds/5Ds Rをフルサイズで使えば、7D Mark IIよりも高密度でプリントできるので、相対的にノイズの粒が細かく見え、(同じサイズにプリント出力した場合)、5Ds/D5s Rの方がより高感度がキレイ、つまり常用最高感度が7D Mark IIよりも高くなければおかしくありませんか? それとも、機種に応じて、評価基準が異なっているのでしょうか?

西沢:機種によって評価基準は変えていません。先ほどお話ししたように、ノイズだけで評価すればそのとおりですが、それ以外の評価項目もあり、そうした社内基準と照らし合わせた結果、5Ds/5Ds Rの常用最高感度はISO 6400、7D Mark IIはISO 16000と判断しました。

オートホワイトバランスのモードが増える

――EOSでは初めてクロップ撮影機能が搭載されましたが、クロップしても連写スピードが速くならないのが残念です。ボディメカとしては5D Mark IIIの6コマ/秒くらいのコマ速は出せてもおかしくないと思うのですが……。

西沢:クロップ撮影時でもフル画素を読み出しているので、クロップ撮影しても連写スピードは変わりません。RAWの場合には、50メガピクセルのフルサイズの画像にクロップ枠が埋め込まれて記録されます。

――オートホワイトバランスが「雰囲気優先」と「ホワイト優先」の2つのモードになりましたが、具体的にどんなシーンで差が出るのでしょう? 電球タイプの照明だけですか?

服部:従来からあるオートホワイトバランスが、自然な赤みを残す「雰囲気優先」です。これに対して、不自然にならない範囲でできるだけ白を白く再現するのが「ホワイト優先」です。基本的には電球色に特化していますので、それ以外の照明では差が出ないようにしています。夕景を撮影したときには若干の差は出ることはありますが、どちらも夕景の雰囲気を損なわないように適度な赤味を残すようなアルゴリズムにしています。

オートホワイトバランスが2つに
追加された「ホワイト優先」は従来よりも白を白く再現する

――同じ色温度でも照度によって差が出ますか?

服部:明るさも考慮しています。明るいシーンは少し赤味が残るように、暗いシーンではより赤味を抑えるようなチューニングにしています。これは従来の「雰囲気優先」も同じです。

従来よりも赤味を補正して、白を白く見せるのが「ホワイト優先」ですが、マニュアルセットでホワイトバランス調整するよりもほんのわずかに赤味を残すようにしているので、完全に電球の雰囲気を取り除かないように配慮しています。

立花:最近のエントリーモデルに搭載しているSCNモード「料理モード」は「ホワイト優先」的なオートホワイトバランス(ユーザー側でのオン/オフは不可)をすでに採り入れています。

海外のレストランなどでは電球照明により赤味が強すぎる場合があるというご意見を多数いただき、以前から開発に検討を依頼していました。ようやく5Ds/5Ds Rで「ホワイト優先」という形で実現することができました。

――電球色といっても、最近は純粋な白熱電球は少なくなり、電球色の蛍光灯やLED照明が多くなってきましたが、そうした蛍光灯やLED照明に対しても最適化されているのでしょうか?

服部:蛍光灯やLED照明は、電球色でも特性が微妙に異なっているので、市販されているさまざまな光源を調べ、最適化を図っています。

――5Ds/5Ds Rだけに限った話ではありませんが、なぜキヤノンのフルサイズEOSはストロボを内蔵しないのですか?

立花:高感度性能が向上していることも一因ですし、ストロボ撮影がお好きでない方がいらっしゃるということもあります。要望はいろいろ調査しています。さまざまなご意見がある中で、小型・軽量を望まれる声の方が多いんですよ。

もちろん、内蔵ストロボがあった方が便利なのは承知していますが、中途半端な性能のストロボを内蔵してペンタ周りが大きくなるよりも、全体としてのまとまりを優先しています。

本格的なストロボ撮影をしたい方は外付けストロボをご使用いただく形をとることで、少しでも小型で機動力の高いボディを提供する方が、多くのユーザーの満足度は高くなるという判断です。

アルゴリズムの改良でライブビューAF速度が2倍に

――ストロボではなく、ワイヤレス発光をコントロールできるコマンダー機能を内蔵してくれるとありがたいですね。

それと、5Ds/5Ds Rを使ってみて驚いたのが、ライブビューAFがかなり高速になっていることです。カタログを見ても、ライブビューの拡大表示倍率が16倍にアップしたことは書かれていますが、ライブビューAFの高速化には特に触れられていません。いったいどんな改良を行ったのでしょう?

立花:エンジンが新規になり高速演算が可能となったため、アルゴリズムを改善し、ライブビューAF時の読み出し周波数が上げられました。その効果で5D Mark IIIの約2倍ほどライブビューAFが速くなっています。使い勝手はかなり向上しているので、ぜひお使いいただきたいです。

――なるほど。もし、アルゴリズムの改善でここまで高速化できるのなら、5D Mark IIIの最後のメジャーファームアップに期待したかったんですけど、ハード的に高速化しているなら無理ですね。

5Ds/5Ds Rの画素数はそれほど自分にとって重要度は高くありませんが、ライブビューAFが速くなっているのは、正直うらやましく思いました。EF400mm F2.8L IS II USMとEF11-24mm F4L USMを長期分割払い中なので、さすがにすぐには買えませんけどね(笑)。本日はどうもありがとうございました。

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実写ミニレビュー
〜細かいパターンをギリギリ解像する倍率でモアレが出るEOS 5Ds R〜

フルサイズで画素数が50メガピクセルを超えれば、もはやローパスフィルターレスモデルに一本化して、少しでも価格を抑えた方が良いのではないか? と思っているのだが、キヤノンとしてはローパスフィルターは必要だという。

実際、5Dsと5Ds Rをお借りして、さまざまな被写体を撮影してみたが、偽色や色モアレは5Dsであっても5Ds Rであっても出るときは出るし、出ないときは出ない。ただ、洋服の生地や鳥の羽根など非常に細かいパターンを持った被写体を、そのパターンが解像するかしないかのギリギリの倍率で撮影すると、あるポイントで盛大にモアレが発生する。

カワセミの剥製をAPS-Cクロップで引き気味に撮影。実際によくある撮影倍率だが、5Ds Rの方が輝度モアレが強く、羽根がおかしな模様になっている
等倍切り出し
EOS 5Ds
EOS 5Ds R

そういったツボにハマってしまった場合、ローパスフィルター効果をキャンセルした5Ds Rでは、レタッチで救済不可能なほどの色モアレが生じてしまうことがある。確率としてはそう多くはないとはいえ、わずかな解像感向上と引き換えに、描写が破綻してしまうシーンが出てしまうことを、キヤノンとしてはよしとしないということだろう。

例えるなら、すべての科目で90点以上の成績が得られる5Dsに対し、ほとんどの科目で5Dsを2〜3点上回る好成績ながら、ごく一部の苦手な科目は80点を下回る、というのが5Ds Rだ。個人的には5Ds Rのキレの良さに惹かれるが、集合写真など洋服を引き気味に撮影することが多いのであれば、やはり5Dsの方が安心だろう。

伊達淳一

(だてじゅんいち):1962年広島県生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒。写真誌などでカメラマンとして活動する一方、専門知識を活かしてライターとしても活躍。黎明期からデジカメに強く、カメラマンよりライター業が多くなる。