インタビュー

ソニーに聞く「α7R」「α7」のこだわり

フルサイズの高画質をコンパクトボディに凝縮

 ソニーが11月15日に発売した「α7R」と「α7」は世界初の35mmフルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラとして話題になっている。今回は、同社の開発陣に両機の気になる部分を伺った。(本文中敬称略)

お話を伺ったメンバー。前列左からクリエイティブセンター&CMFデザイングループ シニアデザイナーの曽我部卓氏(デザインを担当)、デジタルイメージング事業本部 商品設計部門の須藤貴裕氏(設計のリーダー)、同事業本部 商品企画部門 商品企画2部2課 プロダクトプランナーの郷大助氏(商品企画を担当)。後列左から同事業本部 コア技術部門 光学設計部 2部の細井正晴氏(レンズの光学設計を担当)、デジタルイメージング事業本部 デジタルイメージングアプリケーション設計部門 3部3課の長谷川陽一氏(AF制御を担当)、デジタルイメージング事業本部 商品設計部門 プラットフォーム設計部の佛崎建氏(画質設計を担当)。

デバイスを内製できるソニーならではの強みを発揮

――最初に「α7R」と「α7」の企画意図をお聞きしたいと思います。

郷:α7Rは、最高の画質を求めるハイアマチュアからプロフェッショナルの方に、ぜひお使い頂きたいモデルです。プロフェッショナルの方のサブカメラとしてもお使い頂けると考えております。一方でα7は、初めてフルサイズカメラを購入する方々から小型軽量なフルサイズを求めていたベテランユーザーまで、幅広い層をターゲットにしています。どちらのモデルにも共通したポイントは、35mmフルサイズのイメージセンサーを小型ボディに凝縮したところです。特にα7Rは最高の解像感を実現することを目指して、有効約3,640万画素のイメージセンサーを光学ローパスフィルターレスで搭載しています。

α7R(右)とα7(左)。

――α7R/α7はEマウントですが、NEXではなくαという名称になりました。

郷:今までも、AマウントカメラもEマウントカメラも同じ“α”というブランドだったのですが、これからはこれまで以上にひとつのシステムカメラとして認識していただきやすくするためにこのような名称にしました。

――NEXという名称はもう使われないのですか?

郷:今後の新製品では使う予定はありません。

――α7R/α7においてソニーならではの強みがあるとすれば、どのあたりでしょうか?

郷:やはりカメラの完成品メーカーでありながら、半導体やイメージセンサーを内製していることでしょう。最新のイメージセンサーを使い、ソニーの小型化技術を最大限生かして、こうした凝縮されたボディに仕上げたところがソニーならではといいますか、ソニーにしかできないポイントになっていると思います。

商品企画を担当した郷大助氏。

――今回は型番に“7”を使いましたが、由来を教えてください。

郷:新しいブランディングによる最初の機種ですし、フルサイズの戦略的なモデルですから、エースナンバーを付けたということです。

――“9”ではないのですか?

郷:“9”にもエースナンバーというイメージを持っていただいているかもしれませんが、これまでもこういった戦略的な機種に7を使って来ておりますので、“7”を使いました。

――ちなみにミノルタに「α-7」という銀塩の機種がありましたが特に関係はないですよね?

郷:直接の関係はございません。

Eマウントでフルサイズを実現した苦労

――今回、Eマウントで35mmフルサイズになっていますが、Eマウントの企画当初からフルサイズの搭載は予定があったのでしょうか?

郷:Eマウント導入当初から、いつかはフルサイズイメージセンサーを積んだカメラが作れたらという想いはありました。しかしながら、小型化などの技術的ハードルが非常に高いものでした。今回、その課題をブレークスルーしたことで商品化できたということです。

35mmフルサイズセンサーを搭載した。

――Eマウントフルサイズ機の実現には、相当な苦労があったのではないでしょうか。

須藤:そうですね。このカメラはとにかく小さくありたかったので、特に1/8,000秒のシャッターユニットを搭載するのに苦労しました。これはボディサイズにかなり影響を与えるんですね。そのスペックを緩めれば実現は簡単ですが、それではお客様が求めておられるものと違うものになってしまいます。そこは妥協せずに、とにかくこのサイズに持ってきました。パズルみたいなもので、部品を削りつつ、1回でき上がっても何回もやり直しましたね。分解モデルを見ると、凝縮されているのがおわかり頂けると思います。

設計のリーダーを務めた須藤貴裕氏。

 フルサイズ一眼レフカメラの画質はいいのだけれど、重さから躊躇して持ち歩きが減ってしまうようなカメラにはしたくなかったのです。今までもEマウント機は小型で攻めてきましたし、私自身Eマウントカメラの設計者だったので、とにかくどこのメーカーもつくれないような小さくて、すごいものをつくらなければ、という意志で目標を曲げませんでした。

α7Rの分解モデル。

――ところで、具体的にEマウントでフルサイズのカメラを計画したのはいつぐらいですか?

須藤:時期は伏せさせてもらいますが、長い間検討してきたのは事実です。

――ちなみに“Eマウントのフルサイズ”ということではハンディカムの「NEX-VG900」(2012年10月発売)がありますが、須藤さんはあちらのマウントやメカも担当されているのですか?

須藤:VG900は担当していません。

NEX-VG900

――そうなのですか。α7R/α7とVG900のマウントは同じものですよね? 違うのですか?

須藤:Eマウント自体は規格化されているのでみんな一緒です。ただ、メカも含めると違ってきます。設計しているチームも異なります。すぐ近くで設計していますし、いっしょにできることはいっしょにやっています。

大きく進化をとげたコントラストAF

――今回、像面位相差AFを搭載しているのはα7のみになっています。

郷:α7Rはコンセプトである最高の解像感を提供するために今回の有効約3,640万画素、ローパスフィルターレス仕様のイメージセンサーの搭載を決めました。このセンサーには像面位相差AFは搭載されていません。しかし、α7RはコントラストAFながらBIONZ Xの高速読み出しおよびAFアルゴリズムの最適化でAF速度を向上しています。

――ではα7RのコントラストAFについて詳しく教えてください。

長谷川:APS-Cセンサーのモデルと比較すると、フルサイズのイメージセンサーを搭載した場合、被写界深度が浅くなります。これはピント合わせのときのピントの移動量が増えるということです。コントラストAFでは、そのままではこの移動距離の増加がAF時間の増加ということになります。ここで、単純にレンズの動作速度を上げてしまうと、今度はAF精度を保つことが難しくなってくるため、その解決が大きな課題でした。

AFを担当した長谷川陽一氏。

 今回のコントラストAFでは、「空間被写体検出」という新技術を使った「ファストインテリジェントAF」の搭載とBIONZ Xの高速化で、NEX-7比で最大35%ほどAF時間短縮を実現しました。フルサイズ機にふさわしい高速で、高精度なAFになっています。

 空間被写体検出というのは、簡単に言うとピントのずれている量を予測して、ピントが合ってないところではレンズを高速に動かします。一方、合焦が近いところでは精度を確保するために、ある程度速度を落としてフォーカスレンズの動きを最適化することでAF時間を短縮しています。これがファストインテリジェントAFです。

 コントラストAFでよくある合焦時の迷いや、初動の感触や迷いなどを改善し、できるだけなじみのある一眼レフを使っている時の感触に近いAFレスポンスと感触を目指して開発しました。ソニー史上最高のコントラストAFだと思っています。

 それからフォーカス関連の進化についてはもう2つありまして、今回フレキシブルスポットAFのエリアのサイズをS/M/Lの3段階に切り替えられるようになりました。フルサイズで被写界深度が浅いですから、ユーザーが狙った被写体をピンポイントで狙えるような枠設定として設けました。

AFエリアの選択に小さいSサイズが加わった。
ピンポイントで合焦できるという。

 もう1つは瞳AFという機能で、今まで顔検出の機能はあったのですが、顔の中でどこに合うかというところまではコントロールできませんでした。今度はさらに認識の技術を向上させ、瞳を検出してそこに優先的にフォーカスする機能を設けました。

――瞳AFは、例えば斜めの顔だったら近いほうの目に合わせる?

長谷川:はい。至近側の目に合わせます。

須藤:真横は別ですが、斜めの顔でもかなり認識率は高いですね。

――ファストインテリジェントAFは、FEレンズ(フルサイズのEマウントレンズ)のみの対応ですか?

長谷川:一番恩恵を受けるのはFEレンズです。ただ、今までに出したAPS-Cレンズでも効果の大小はありますが発揮できます。

――α7RにAマウントのレンズを付けた場合はどうでしょうか?

長谷川:LA-EA3というトランスルーセントミラー非搭載タイプのマウントアダプターを付けた場合ですと、従来のコントラストAFの動きになってファストインテリジェントAFには対応していません。Aマウントレンズは機構的にコントラストAFにあまり向いていない構成で展開されてきたので、ファストインテリジェントAFを実現するには非常に難しいところがあるのです。今回その代わりに、LA-EA4というトランスルーセントミラーを搭載したしたマウントアダプターも用意しています。そちら使って頂ければ位相差AFでかなり高速なAFをお使い頂けます。

マウントアダプターLA-EA4(左)とLA-EA3(右)。

――LA-EA4を使った場合の位相差AF速度は、Aマウント機と変わりませんか?

長谷川:ほぼ同等になっています。

――ファストインテリジェントAFはα7でも働いているのですか?

長谷川:α7にはファストインテリジェントAFと同じ技術が入っており、加えて像面位相差AFも併せ持つファストハイブリッドAFを実現しています。今回NEX-6/5Tから測距点数を増やしていて、99点から117点にしています。カバーエリアも、APS-Cサイズの時と同じカバーエリアを保っています。つまり広いエリアを保持したまま測距点数も増やしています。α7は高速な像面位相差AFの恩恵によりAF連動連写は約5コマ/秒を達成しています。

 測距点の多点化とワイドなAFエリアのおかげで、動く被写体への合焦能力が大幅に向上しました。従来機種のNEX-6/5Tでは撮影が難しかったようなサッカー、カヌー、陸上競技などでもパフォーマンスの違いを実感いただけると思います。

 ファストハイブリッドAFは、一眼レフ中級機の位相差検出方式のAF同等の実力を目指して開発してきましたが、肩を並べるようなところまで行けたと思っています。

――ところでα7R/α7のEVFは、「サイバーショットDSC-RX1」のオプションのEVF「FDA-EA1MK」と同じものでしょうか?

郷:それとは違って、新規のEVFになっています。0.5型の236万ドットという数字自体は同じですが、コントラストが約3倍、輝度が約30%向上しておりデバイス自体が異なるのです。

回折ボケ低減機能はどの程度の効果なのか?

――では、絵づくりの特徴を教えてください。

佛崎:画像処理エンジンが「BIONZ X」に変わり、3つの進化がありました。1つ目が「ディテールリプロダクション技術」です。これまでデジタル撮影では輪郭が強調されることで画像が不自然に見えると感じていた方もいらっしゃったかもしれませんが、今回は解像感を保ちつつ自然な描写にして質感を上げています。

 2つ目は絞りによる回折の低減です。風景撮影などで絞り込むと、シャープ感が無くなることを気にされていた方もいらっしゃると思います。今回、絞り値に応じて最適なフィルターを掛けることで回折ボケを軽減させています。

 3つ目は、従来からあるエリア分割ノイズリダクションがディテールリプロダクション技術と相まって、ノイズとディティールの両面で改善しています。

画質設計を担当した佛崎建氏。

――ディテールリプロダクション技術は具体的にはどういう処理をしているのですか?

佛崎:従来の単純な輪郭強調ではエッジに縁取りのような線が付くことがあったのですが、今回その処理は浅めにして、違った処理でディテールを復元する仕組みを入れています。

――その“違った処理”というのはどういったものでしょうか?

佛崎:この詳細はお答えできませんが、被写体に応じた適応的なシャープネス処理や局所的なコントラスト処理を施しています。

――続いて回折低減処理ですが、昨今は各社で同様の効果を謳う処理が採用され始めています。ソニーではどのような処理で実現しているのですか?

佛崎:レンズのデータから回折ボケを戻すための逆のフィルターを算出し、画像に適用しています。

――レンズのデータというのはあらかじめレンズを個別に計測しておくのですか? それとも設計時のデータを使うのでしょうか?

佛崎:設計データをベースに、実機で確認して最適化しています。

――補正用のデータというのはレンズのほうに入ってるのですか。

佛崎:それについても詳細は控えさせてください。

――これはどのレンズでも対応しているのですか?

佛崎:どのレンズでも効果はあります。Aマウントレンズにも対応しています。

――深い被写界深度を得たい場合は、回折ボケを気にせずいくらでも絞り込んで大丈夫、という理解でよろしいのでしょうか?

佛崎:いくらでもというわけではありません。例えばF5.6が一番いいレンズの場合、F8はF5.6とほとんど同等の画質で、F11でもそこそこの画質を保っています。しかし、F16まで絞るとやや回折の影響が見られます。

――そうしますと、自分が許容できる回折ボケのF値から2段ぐらいは余計に絞っても大丈夫でしょうか?

佛崎:そうですね。何段改善という数字はレンズの特性やセンサーの画素サイズによるところもありますので、従来あった「絞ると画質劣化が気になる」という度合が改善されると理解して頂くと良いと思います。

――ノイズの面はどうでしょうか?

佛崎:今回も「マルチショットNR」を搭載していますが、従来6枚加算してノイズを低減させていたところを今回は4枚に減らした上、画質は同等以上になっています。BIONZ Xにより1枚1枚の処理速度も向上しておりますので、体感する処理時間がかなり減っているのがポイントです。

――α7Rが光学ローパスフィルターレスで、α7は光学ローパスフィルターを採用している理由は?

郷:α7Rのほうはプロ、ハイアマチュアの方に最高の画質を提供したいという意図がありましたので、今、選び得る最高の解像感を実現するために有効約3,640万画素、かつローパスフィルターレスというセンサーの選択をさせていただきました。

 α7のほうは逆に、より広いお客様にフルサイズを使っていただきたいというコンセプトがありまして、全体としてカメラのバランスを重視しています。バランスを取るという意味で、ローパスフィルターありで、像面位相差AFを搭載したイメージセンサーを選択しました。

――α7Rのモアレは実際にはどれくらい出るのでしょうか?

佛崎:α7Rも被写体のパターンによってはモアレが出ることもありますが、撮影時に被写体との距離や構図を工夫する事である程度回避できるため、思ったほどは影響を受けることはないと思います。

須藤:α7Rのコンセプトの実現には、ローパスフィルターレスによるメリットの方が大きいと考えています。解像感の違いを実感いただけると思います。

――ローパスフィルターレスということでは、「サイバーショットDSC-RX1R」(有効2,430万画素)がそうでした。α7RはRX1Rより画素数が増えてますが、画素数が増えるとモアレや偽色というのは出にくくなるものでしょうか?

郷:はい。出にくくなります。

4K動画は今後に期待

――今回、4K静止画の出力機能を搭載していますが、このメリットを教えて頂けますか?

郷:フルサイズセンサーで高画質を生み出すカメラを作りましたので、高精細な画像を表示するポテンシャルを持つ4Kテレビと組み合わせることで、まさに高解像の写真を楽しんでいただく、そうしたソリューションを提案させていただきました。

 もし4Kテレビをお持ちだったら、何万円もするサイズのプリントと同じようなサイズで、日頃から鑑賞できるようになります。なかなかそうした大きなサイズに引き延ばす機会は多くないと思います。

――従来のカメラでは、4Kのテレビに接続しても2Kの静止画しか出せないわけですね?

郷:そうです。

――タイミング的に難しい所はあると思いますが、4Kの動画撮影機能を搭載する考えはありませんでしたか?

須藤:このコンパクトなサイズで4K動画に対応させるとなると、やはり発熱ですとか消費電力の問題がハードルになってきます。総合的な商品性を考えて4K動画の内部記録は見送らせて頂きました。

――4Kの動画をこういったカメラで撮りたいという方の声というのは、まだ少ないでしょうか。

郷:現時点では大多数の方からご要望いただいているわけではありませんが、4Kの画質を今後体感いただく機会が増えれば様相は変わっていくと考えています。引き続きお客様の声に耳を傾けながら可能性を探っていきたいと思います。

今までに無い第3の形を追求したデザイン

――従来のαシリーズとは大きく違うデザインですね。

曽我部:そうですね。今回はAマウント機の小型版やEマウントカメラにフルサイズセンサーを入れました、というようなスタイルではない第3の形を追求しました。スタイリング的には、垂直と水平にこだわっています。EVFの部分も直線で構成し、全体的に硬質なものにすることでフルサイズセンサーを搭載した凝縮感を出しました。特にEVFの部分は、遠くから見てもすぐにα7R/α7だとわかる特徴的な造形にしました。

デザインを担当した曽我部卓氏。

 それから、例えば一眼レフカメラでは普通マウントの付け根はエプロンの盛り上がりでファインダー部分と繋がっていますが、今回はそこをフラットにするなど、伝統的なスタイルを取りつつも、今までに無い新しいディテールを盛り込んでいます。一見オーソドックスなデザインに見えるかも知れませんが、よく見ていくと、だんだんこれまでと違う新しさを感じていただけるのではないかなと思います。

直線基調のデザインを採用した。

――なるほど。ミラーレス機ではあるものの、確かにNEXのデザインとも異なりますね。

曽我部:EVFが光軸上に配置されているというのが、Eマウントカメラとの大きな違いになっています。Aマウントの大きな望遠レンズを使われることも想定していますから、ここはAマウント機からの流れを汲んで光軸のセンターにEVFを配置しました。液晶モニターも光軸のセンターに揃えています。一方で、Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZAのようなコンパクトなレンズを付けたときには、スナップカメラとして違和感なくお使い頂けるデザインでもあると考えています。

――EVFとグリップを除くと、DSC-RX1のデザインに近いようにも見えますが、関連はありますか?

曽我部:DSC-RX1はフルサイズセンサー搭載カメラとして先行するイメージモデルでした。RX1をレンズ交換式にしてほしいという要望も実際にありました。最高の高画質と凝縮感と言う点で共通するものがありますし、同じ時代のキャラクターに共通点があるソニーのカメラとして意識はしています。

サイバーショットDSC-RX1。

須藤:設計から言えば、NEX-7やNEX-6のようにEVFを本体に埋め込んだような構成にすると、本体がかなり大きくなってしまいます。そうなると、DSC-RX1のレンズ交換版といったサイズ感からかけ離れてしまいます。その辺りを検討して今のデザインになったという面もあります。

――グリップにもこだわりがありそうですね。

曽我部:ボディがAマウントよりも小さいので、大きなグリップだとアンバランスになってしまいます。そこで、コンパクトかつホールドしやすいグリップを検討していきました。こだわりのひとつは、人差し指部の深い指掛けです。実はこれまでのEマウントカメラのグリップよりも浅いのですが、この深い指掛けにより大きいレンズを装着したときも安定して保持できるようになっています。

ホールドしやすいように工夫したグリップ。
大きめのAマウントレンズを付けてこのように提げても指が掛かりやすくした。

須藤:グリップに関しては、デザイナー、メカデザイン、私を含めて「いや、こうじゃない」、「これじゃ大きすぎて握れない」とかなり議論しましたね。

曽我部:グリップの違いにもこれまでのEマウントカメラとα7R/α7のコンセプトの違いが良く現われていると思います。

レンズもコンパクトさを追求

――FEレンズの開発で難しかった所はどこでしょうか?

 細井:当然レンズの玉自体が大きくなってくるので、動かすために必要なモーターのパワーも増えてきます。APS-CのEマウントレンズの延長線で設計してしまうと、そういった問題によりレンズが非常に大型化してしまいます。そこで、APS-Cレンズで培った技術をさらにブラッシュアップして対応しました。

 フルサイズ化しながらも、どのレンズもインターナルフォーカシングとしています。これによってフォーカス時に静かに速く動かすことができ、静止画だけではなく動画を撮る際にもうるさくなく、かつスムーズに合焦できるようにしています。

左からSonnar T* FE 35mm F2.8 ZA、Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA、FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS、Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS。
FE 70-200mm F4 G OSS。

――今回出る5本のFEレンズの中にSonnar T* FE 35mm F2.8 ZAがありますが、これは同じ35mmながらDSC-RX1のレンズとは当然異なりますね。

細井:また違うレンズになります。

――やはり交換式にするわけですから、一緒というわけにはいかない?

細井:そうです。DSC-RX1よりも多少長くバックフォーカスを確保しないといけませんから、DSC-RX1のレンズをそのままを使うことはできないのです。レンズの構成も変えなければなりません。インターナルフォーカシングにした時に一番いいレンズ構成にしています。DSC-RX1はレンズ一体型ですからバックフォーカスを詰めることができるので、それに最適化した光学設計をしています。写りとしては、どちらも優劣つけがたいぐらい高いパフォーマンスを持っています。

FEレンズの光学設計を担当した細井正晴氏。

――本当でしたら5本のレンズそれぞれについて詳しくお聞きしたいところですが、時間の関係もありますので、ズバリそれぞれの特徴を教えて頂けますか?

細井:まず、今ありましたSonnar T* FE 35mm F2.8 ZAですが、このレンズはサイズが特徴です。他のレンズと並べてわかるとおり、とにかくコンパクトです。それでいて同時にカールツァイスレンズにふさわしい光学性能を追求しています。ですから、こういった小さなボディと組み合わせて気軽にスナップ撮影などに使っていただくのにふさわしい1本です。

 次に、Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZAですが、やはりカールツァイスにふさわしい高い解像性能が特徴ですね。F1.8の明るいレンズですので、光量が厳しい暗いシチュエーションでも使っていただけるような1本です。

 FE 28-70mm F3.5-5.6 OSSとVario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSSは、いわゆる標準ズームレンズになります。28-70mmのほうはズームレンジと明るさを抑えたお手軽なレンズになっていますが、解像性能もフルサイズに耐える性能を持っています。加えて、フルサイズの標準ズームながら300gを切っており非常に軽いです。手ブレ補正機構も入っていて使いやすいレンズになっていると思います。24-70mmのほうは、より描写にこだわりがある方向けに、光学性能をさらに追求したレンズという位置づけです。

 最後にFE 70-200mm F4 G OSSですが、今のところFEレンズで唯一のGレンズです。Gレンズですので当然高い性能を持っているのに加えて、ナノARコーティングも採用しています。これによってゴーストやフレアーをさらに抑えています。

須藤:α7R/α7が防塵防滴ボディなのに合わせて、今回のFEレンズはすべて防塵防滴仕様になっているのもポイントです。

――新レンズのうち単焦点は35mmと55mmですが、単焦点レンズとして一番要望の高い焦点距離なのでしょうか?

細井:使用頻度の高い焦点距離ですし、α7R/α7のコンパクトで高画質という特長をトータルで活かしやすいまとめ方ができるため、最初にラインナップするレンズとしました。

――35mmの一眼レフカメラでポピュラーなレンズの明るさというと、35mmであればF2であるとか50mmならF1.4、ズームレンズも24-70mmや70-200mmではF2.8があります。今回のFEレンズはそれらに比べるとF値を欲張っていませんが、これはコンパクトさを重視したということでしょうか?

細井:そうです。カメラの大きさとのバランスで、現状考え得るベストのスペックを考えた結果です。もちろんより明るいレンズを望まれるお客様がいらっしゃいますので、今後より大口径のレンズの開発に積極的に取り組んでいきます。

――FEレンズの今後ですが、2014年に「超広角F4ズーム」、「大口径単焦点」、「マクロレンズ」がでるとアナウンスされています。これらのレンズについてもう少し詳しく教えて頂けませんか?

細井:申し訳ないのですが、いま発表しているロードマップ以上のことについては今日お話しすることはできません。なお、その後も2015年中に計15本以上をラインナップする予定になっています。

FEレンズのロードマップ(α7R/α7の発表会より)。

カメラの使い分けを提案

――α7R/α7は、一眼レフあるいはミラーレスの市場でどういうポジションに立つのでしょうか?

須藤:フルサイズセンサー搭載かつ小型軽量ボディを実現したレンズ交換式カメラということで、今までにないジャンルのカメラといえると思います。ですから、このカメラによって新しい市場をぜひつくり上げていきたいと考えています。

――最初に「ハイアマチュアからプロの方に使って欲しい」というお話がありましたが、既存の一眼レフから乗り換えを狙ったものでしょうか?

須藤:小型高性能という部分を重視してこちらに乗り換えて頂けるお客様もなかにはいらっしゃるかと思いますが、α7R/α7が今のままで現在のデジタル一眼レフカメラのすべての撮影領域をカバーできるとは思っていません。

 35mmの一眼レフやコンパクトカメラ、中判カメラなどを複数持っていて、それぞれ使い分けるといったことはプロやハイアマチュアの方々なら当然のようにされてきたことだと思います。同じように、デジタルになっても並行してカメラを使い分けるという活用法がどんどん生まれてきて欲しいと思っています。

インタビューはソニー本社(東京都品川区)で行なった。

(本誌:武石修/撮影:國見周作)