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インタビュー:ペンタックスに訊く「K-01」のこだわり

〜目指したのは“カメラ史上全く新しいデザイン”

 ペンタックスが16日に発売したレンズ交換式デジタルカメラ「K-01」は、著名インダストリアルデザイナーのマーク・ニューソン氏を起用し、斬新なデザインで話題になっている。またミラーレス機で有りながら、従来からのKマウントを採用しているのも大きな特徴になっている。今回はK-01のデザインをはじめとする商品戦略をペンタックスに伺った。(本文中敬称略)

今回話を伺ったメンバー。前列左から山元康裕氏、飯川誠氏。後列左から若代滋氏、大鹿雄也氏、細川哲生氏

 お話を伺ったのは、ペンタックスリコーイメージング マーケティング統括部 商品企画グループ プロダクトチーム主任企画員の若代滋氏(商品企画と開発のコーディネートを担当)、同マーケティング統括部 販売サポートグループの大鹿雄也氏(マーク・ニューソン氏とのやり取りを担当)、同開発統括部 第1開発部 部長の山元康裕氏(画質設計、回路設計、ファームウェアを担当)、同開発統括部 第3開発部マネージャーの飯川誠氏(DA 40mm F2.8 XSの設計を担当)、同開発統括部 第2開発部 マネージャーの細川哲生氏(ボディのメカ設計を担当)。

DA 40mm F2.8 XSを装着したK-01

個性やこだわりを持つユーザーに

――まず、K-01の企画意図とターゲットユーザーを教えてください。

若代:ペンタックスではこれまでにデジタル一眼レフカメラをカラフル、カジュアルにして、全く新しいユーザー層を獲得することに成功しました。今回はカラーだけではなく、デザイン自体を差別化してカメラの歴史上まったく新しいデザインを採用することで新規のユーザーを獲得したいと考えています。“かっこいいものが欲しい”という方向けですが、特に自分の個性やこだわりを主張したい層をイメージしています。

――発表してからの反響はどうでしょうか?

若代:過去に無いモデルだけに賛否両論あるだろうと予想していましたが、覚悟していたよりは賛成意見が多いですね。CP+2012でも行列ができるくらい、是非触りたいという方が大勢ブースにいらっしゃいました。非常に注目して頂いているのは実感しています。

商品企画を担当した若代滋氏。「デジタルフィルターやカスタムイメージといったアーティスティックに撮れる機能も盛り込んでいます。デザイン的にかっこ良いだけでなく写真もかっこ良く撮れるという想いを込めました」

――K-01の構想はどれくらい前からあったのですか?

若代:Kマウント機のミラーを外して何か付加価値を提供できないか、という考え自体はかなり古くからありましたが、コンセプトを真剣に考え始めたのは2009年からですね。

――今回のシステムのメリットはなんでしょうか?

若代:これまでは、どうしてもペンタプリズムのためにペンタ部が盛り上がっていました。今回レフレックスミラーやペンタプリズムを外すことによって、機構上の制約がなくなり、“デジタル一眼レフカメラといえばこういうデザイン”というイメージを大きく変えることができました。これが一番のメリットだと考えています。

 そこにマーク・ニューソン氏という“カメラとはこうあるべき”という固定概念のない方のデザインを取り入れることで、新しいデザインが生み出されたと思います。

ボディ上部にペンタプリズムなどは無い 上カバーの内側

 また単純にミラーレスにすることでのメリットである、ミラーショックがない点や撮像素子による正確なAF、AEが実現できます。従来のデジタル一眼レフカメラにとって、ライブビュー機能はメインのフィーチャーではありませんでした。今回そこに注力し、Kマウントによる高精度なライブビュー撮影をペンタックスで初めて実現しました。

――ミラーレス機ということでは「PENTAX Q」がありますが、棲み分けはどのようになりますか?

若代:K-01はAPS-Cサイズに相当する大型センサーを積んでいまして、バッテリー容量も一眼レフカメラと同等です。最高感度ISO25600や連写が6コマ/秒といった高いスペックを持たせつつ、斬新なデザインを採用しています。

 一方、PENTAX Qはびっくりするくらい小さいというサイズ感を重視して、システムとしての小型軽量を追求したモデルなんですね。性能を求めるというのはどのカメラにも共通したことですが、優先順位がK-01とPENTAX Qでは異なるということです。ユーザーによって何を重視するかで、バリエーションを持たせています。

小型軽量を追求したPENTAX Q(写真は3月16日に発売した1,600セット限定の「PENTAX Q Limited Silver」)

Kマウント資産を活かすため“新マウントはあり得ない”

――ずばりライバルは?

若代:これが難しいんですよ(笑)。PENTAX Qはハイエンドコンパクトと張り合うところもあれば、ミラーレスと呼ばれているカメラもライバル機になっていますよね。

 K-01に関しては、小型化を図ってセンサーもバッテリーも小さいというものではなく、デジタル一眼レフカメラに近い性能のカメラといえます。それと同時にミラーレスでもあるので、デジタル一眼レフカメラとミラーレスカメラの両方がライバルになるかなと考えています。しかし、ピンポイントでこれというライバルモデルは想定していません。

――他のミラーレス機と比べた場合のアドバンテージは何でしょう?

若代:Kマウントを維持していることによるレンズラインナップの充実と、画質を中心とした基本性能が一般的なミラーレス機に比べると優れていると考えています。ライブビュー専用機ですがバッテリーライフも約540枚を確保しています。

K-01ではすべてのKマウントレンズが使用可能

――Kマウントを採用することは最初から決めていたのでしょうか? フランジバックを短くした新しいマウントも考えられます。

若代:当然他社さんがされているように、フランジバックを詰めてボディを薄型化するという発想はアイデアとしてはありました。しかし、そうすると新規のマウントを起こすことになります。新しいマウント作れば、Kマウントをやめて新しいマウントに舵を切っていくことになります。

 しかし、安易にその選択に踏み切るのではなく、ユーザーも我々も持っているKマウントレンズの資産を十分に活かした、新しいカメラを開発したいと考えました。

ロンドンにいるニューソン氏とのやり取りに苦心

――ペンタックスとしてマーク・ニューソン氏にデザインを依頼するのは初めてですが、なぜ同氏を起用したのですか?

大鹿:今回ペンタックスとして新しいコンセプトを立ち上げるに当たって、ニューソン氏の過去の作品の革新性を高く評価しました。加えて、携帯電話や調味料のボトルなど日本でのデザイン経験が非常に豊富という点も考慮して起用を決めました。ニューソン氏に打診したのは、2010年の12月でした。

マーク・ニューソン氏

――依頼を受けたときのニューソン氏はどんな反応を見せましたか?

大鹿:ニューソン氏も「是非やりたい」ということで、非常に乗り気でした。とても協力してくれて、おもしろいコラボレーションになったと思います。

――ニューソン氏がカメラのデザインを手がけるのは初めてだったのですか?

大鹿:はい。今まで経験が無いと言うことでした。ただK-01のように既存にないものを考えるときに、過去にカメラデザインの経験があるかないかというのはさほど重要ではありません。

マーク・ニューソン氏とのやり取りを担当した大鹿雄也氏。「使っていくうちに細かいこだわりが少しずつ見てくるカメラだと思いますので、そういった部分を楽しんで頂けたらと思います」

――K-01のデザインのポイントはどこでしょうか?

大鹿:1つめは「Timeless」(不朽)。陳腐化することなく、時代を超越していつまでもモダンなデザインであることですね。2つめは「Trusty」(信頼)。モノとしての信頼感があるということ。3つめは「Touchable」(感触)で、手にしたときの感触を大切にしています。例えば、一風変わったラバーのパターンやアルミのパーツなどからそれを感じて頂けるものと考えています。

――ニューソン氏から最初にこのデザインが届いたときにどう思いましたか?

若代:最初に見たときに非常に工夫されているな、と感じました。例えばモードダイヤルの下には絞りを動かすためのモーターが入っていまして、この部分が煙突のような形状になっています。これも指摘されなければ、こういうデザインなんだろうと思うだけですが、そういう部分をうまく隠し込んであって、デザインの中に無駄がないと思いました。

 グリップも本格的なレンズ交換式カメラではもっと明確に握りの部分を出しますが、K-01はさほど膨れてはいません。しかし、ラバーの縦のストライプによって持ちやすくなっているのです。

 それからマウントロックボタンも普通は独立したボタンを設けますが、これはボディラインと一体になったボタンになっています。さらにはストラップホールが本体に合せて丸みのある形状になっていたりと、一点一点が素晴らしくてどんどんこのカメラが好きになっていきました。

レンズ取り外しボタンはボディと一体のラインに納めた ストラップホールもボディのラインに合せた形状にした
コネクタカバーもボディと同じラバーのフタにした

――実際にはどういった流れでデザインができあがっていくのでしょうか。

大鹿:3次元のデータと要望を記したリストで、ここをこうして欲しいということを英訳して伝えます。我々はカメラのメーカーなので、使い勝手の部分で重視しているところもあります。ニューソン氏とのやりとりの中で、譲れる部分と譲れない部分の調整をしていきました。

 ニューソン氏はロンドン在住で、ペンタックスの開発スタッフが直接出向いて調整を行なったこともありましたが、基本的にはインターネットでやりとりしました。

K-01(右)とK-r(左)の底カバー。「マーク・ニューソンファンの方からは、サインがどうして底面なんだ? という指摘があるかもしれませんが、これもニューソン氏の指定なのです」(若代氏)

――デザインを作り上げる中で苦労したところはどんなところですか?

大鹿:遠隔地とのやりとりですので、通常より時間が掛かることがまずあります。それから技術的な説明をする部分で、間違いがあってはいけないので、確認や翻訳を念入りに行なう必要がありました。意思の疎通には非常に注意を払いました。

若代:パーツの試作品ができては送って、というのを繰り返しました。やはり現物での確認が必要になってくるので、輸送費は高く付いていますね(笑)。

細川:例えばボディのラバーは、ニューソン氏の最初の提示では細かいパターンのものでした。しかし、これですとゴミが目立つのと滑りやすくなるので、粗いパターンのサンプルを送って見てもらったりと普段以上に手間をかけています。

ニューソン氏とやり取りしたラバーのサンプル。写真ではわからないがストライプ幅に微妙な違いがある

「K-01コレジャナイロボモデル」は出るのか?

――カラーも斬新ですが、ニューソンさんの指定ですか?

大鹿:はい。日本では「ブラック×ブラック」、「ブラック×イエロー」、「ホワイト×ブラック」の3色ですが、欧州ではホワイトの代わりにシルバーを販売します。

欧州向けのブラック×シルバー

若代:カラーリングについては幾つか案があったのですが、あまり多いと在庫のリスクも出てきますので、3案に絞ろうと考えていました。K-xやK-rで比較的受け入れられていたこともありホワイトを選定したのですが、ニューソン氏から「日本市場は理解しているが欧州ではホワイトよりシルバーのほうがよい」との指摘があって、シルバーを採用することにしました。国内でシルバーを販売する予定は今のところありませんが、ご要望が多ければ日本での発売も無いわけではありません。

K-01のカラーバリエーション

――ブラック×イエローはカメラとしては珍しいですし、目立ちますね。

若代:黄色は警告色というか非常に目に入りやすい色な上に、ブラックとのコントラストが効いています。ブラック×イエローは斬新なデザインに加えて斬新なカラーリングということで、当初好きな人は限定的だと思っていましたが、今は好意的な方が多いということを感じています。

ブラック×イエロー

――ペンタックスは多色展開が得意ですが、K-01でもレギュラーカラー以外の登場があるのでしょうか?

若代:当初の案から漏れている色もありますので、市場環境を見ながら展開することも無くはないかなと思います。しかしこの3色が基本のイメージになっていますので、積極的に多色展開することは考えていないですね。

――“K-01コレジャナイロボモデル”の可能性は?

若代:正直、全く考えていません(笑)。今回はニューソン氏とのコラボレーションなので、ザリガニワークスさんをまぜることはないですね。

2010年に限定100台で発売した「K-rコレジャナイロボモデル」。デザイン会社「ザリガニワークス」とのコラボレーションで実現した

――“K-01”のロゴもニューソン氏のデザインなのですか?

若代:はい。起動画面、同梱のストラップ、化粧箱までニューソン氏のデザインになっています。

ボディのロゴと起動画面
同梱のストラップ

――そのほか外観で新しい部分はありますか?

若代:我々として“そこを指摘してきたか!”と驚いたのは再生ボタンの表示ですね。これは各社三角のアイコンになっていますが、この機種は“PLAY”の表記になっています。ほかの表示との一体感を重視しているのだと思いますが、ボタンと表示が整然と並んでいてわかりやすく使いやすさに繋がると思います。

再生ボタンの表示は“PLAY”に メニュー画面などは従来のスタイルを踏襲

 GUIに関しては基本的に従来のユーザーインターフェースを踏襲しています。ペンタックスのカメラとしてそこは統一しておきたかったのです。ただ、例えばHDR機能を専用モードで設けて露出幅を電子ダイヤルで簡単に操作できたり、仕上がり具合も簡単に切り替えられるといった操作性の向上は図っています。細かいところでは、メニュー画面の背景にも起動画面のイメージが表示されるようになっているのも新しい点ですね。

――今回のシリーズは、今後ずっとニューソン氏のデザインになるのでしょうか?

大鹿:コンセプトを共有できるものがあればその可能性を排除するものでは無いですが、現時点でニューソン氏で継続するという話は特にありません。

K-5よりすっきり感のある絵作り

――今回のイメージセンサーの工夫点は何ですか?

山元:ライブビュー専用機ということで、デジタル一眼レフカメラの「K-5」などとは違い消費電力の少ないセンサーを採用しています。

 画素数はK-r(有効約1,240万画素)よりアップしていますが、ノイズは大きく減っています。ノイズレベルとしてはK-5が最も少なく、それに近いレベルでほんのちょっと劣るのがK-01というイメージです。

画質設計、回路設計、ファームウェアを担当した山元康裕氏。「小気味よい操作感でしゃきっとした絵が簡単に撮れるので、いろいろな場面で使って頂けると思います」

――画素ピッチはどれくらいですか。

山元:4.78μmです。

――今回、K-5以上に画素数を上げることは考えませんでしたか?

山元:バックエンドの処理能力なども勘案して、バランスがいい画素数として有効約1,628万画素としました。

――センサーのメーカーは?

山元:ソニー製です。

APS-Cサイズ相当の有効約1,628万画素CMOSセンサーを採用

――K-01のローパスフィルターはK-5と同じタイプでしょうか?

山元:ローパスフィルターの画素ピッチに関しては、K-5と同じになっています。

――画質面でK-5とはどう違いますか?

山元:これまでペンタックスでは、高感度時の色ノイズを消すことに注力してきました。今回はそれに加えて、低周波の輝度ノイズも低減するようにしています。常用域の高感度であるISO3200〜ISO12800ではK-5よりもすっきり感はあると思います。

 さらに今回は被写体のエッジの処理も工夫しています。K-5、K-rよりもエッジがきれいに出ます。しゃきっと感があるといえます。こうしたノイズ処理やエッジの処理は、画像処理エンジンの進化によるところが大きいですね。K-01では、新型の画像処理エンジン「PRIME M」を採用しています。

PRIME Mを搭載するメイン基板の1つ

――PRIME Mの特徴はほかにもありますか?

若代:今回は動画撮影にも注力していまして、H.264形式のフルHD撮影が可能です。720pでは60fps対応です。PRIME Mを採用したのは動画機能を強化する意味が一番大きかったですね。“M”はMovieの略です。

 K-5やK-rの「PRIME II」は静止画に特化した画像処理エンジンとして優れた部分もあるので、すべての面でPRIME Mが高性能とはいえません。解像性能はPRIME IIの方が優れていますが、ノイズ処理能力ではPRIME Mが勝っています。画質評価にはいろいろなファクターがあるので、等倍で見てどちらがきれいかはユーザーによって判断が分かれるのではないでしょうか。玄人の方は、K-5を評価する傾向があるのではないかと思います。

――絵作りの方向が変わったということなのでしょうか?

若代:色ノイズの押さえ込みや繊細な描写というこれまでの基本的な考え方は維持しています。ただ、それぞれの画像処理エンジンの特長を活かしながらチューニングしていますので、最終的に出てくる絵は多少違ってきますね。これはユーザー層も考慮したもので、K-5ですとある程度ノイズを残しつつ解像を重視しています。

コントラストAFを従来比2倍に高速化

――画質面以外のK-5との機能差はどのあたりでしょうか?

若代:先ほど申し上げました動画機能の向上がまずあります。加えてライブビューの表示もよりなめらかになっているので、ライブビュー撮影ではK-01が上といえます。

山元:撮影後のクイックビューはK-01のほうが速く表示できますので、きびきびした操作感という部分もK-01が上回っています。

若代:一方で光学ファインダーを搭載している点を含め、静止画を撮影することに関しては圧倒的にK-5が勝っています。これは、動体を捕捉する性能や最高感度がISO51200といった部分ですね。それからK-01は、K-r同様に防塵防滴ではありません。K-5は防塵防滴仕様ですのでそこも差になっています。

デジタル一眼レフカメラ「K-5」(写真は限定1,500セットで3月23日に発売した「K-5 Silver Special Edition」)

――AF速度はどれくらい速くなっていますか?

山元:K-5やK-rから見てコントラストAFでは2つの改善点があります。まず、ジョイント式レンズ(レンズ内モーター非搭載タイプ)ではフォーカス駆動速度を最大2倍に高速化しています。もう1つは撮像素子からの出力の扱いを工夫しまして、コントラストAFの信頼性を向上させました。コントラストAFはピントの山をスキャンして合焦させますが、オーバースキャンの度合いが減っています。これも高速化に寄与していまして、体感ではかなり速くなっています。

――位相差AFとの比較ではどうでしょう?

山元:位相差AFはピークを見つけてからのオーバースキャンがありませんので、その部分は位相差AFのアドバンテージになりますね。コントラストAFでこれを超えるのは今後の課題です。ただAFの精度という面では、撮像素子からのダイレクトなデータで行なっている分コントラスト式が有利といえますので、今回はこちらで訴求していきたいと思います。

――動画撮影中のAFも高速化しているのですか?

若代:K-5やK-rでは動画撮影中にAFができなかったのですが、今回から可能になりました。ただ、K-01にはレンズ駆動のためのカプラー用モーターや絞り動作用モーターなどが入っており、モーター音が記録されてしまう問題が出てきます。そこで、駆動音の記録を低減させるためにAFをゆっくり動かす工夫をしています。ただ、まったく動作音がなくなるわけではありません。録画中のAFはまだ我々としても納得できる状況ではなく、今後の課題です。

K-01の外装パーツ 同K-r

小型化のための工夫

――ボディのメカは従来機と共通なのでしょうか?

細川:ミラーボックス周りは、大まかにはK-rをベースにしています。一方メイン基板はこれまでボディ後ろに大きなものを1枚置いていましたが、今回は2枚に分割して両方をグリップ側に寄せています。これで基板1枚分、ボディを薄くできました。当然シャシーもそれに合うように改良しています。

外装を外したK-01 同K-r
K-r(右)では大きく1枚だったメイン基板を、K-01(左)では2段に重ねてグリップ側に寄せている
下から見たところ。左がK-01、右がK-r。メイン基板の工夫などで薄型化を実現した。

 薄型化という面では、バッテリーがK-rに比べて一回り大きなものなのでニューソン氏からもある程度薄くして欲しいという要望が有り苦労しました。グリップ側は最大限に薄型化しています。一方でグリップと反対側はもう少し削ぐこともできたのですが、ニューソン氏の“グリップ側の本体の部分とラインを合せる”というデザインがありこのようになっています。

メカ設計を担当した細川哲生氏。「我々もずいぶん見慣れましたが、それでも飽きの来ないデザインですね」

 また手ブレ補正機構「SR」のユニットも、これまで左右と下にあった磁石を2辺にまとめることで、ボディの小型化に貢献しています。

SRユニットの比較。K-01用(左)は、K-r用(右下)やK-5用(右上)に比べて小型化している SRユニットの背面。磁石に合せてコイルもL字型に配置した

――手ブレ補正機構の効き具合は従来と比べてどうでしょう?

若代:K-5などはシャッター速度換算で“最大4段分”という言い方をしていまして、これは本当にマックスの数字です。K-01では通常補正する分として“3段分”と表記することにしました。これらは表記方法が異なるだけで、実際の補正効果はほぼ同じと言って良いでしょう。

――今回は光学ファインダーや位相差AF機構にまつわる部材を省いていますが、思ったほど“安価な印象”はありません。

細川:当然減った部品のコストは浮いているのですが、今回は外装の金属部品があり得ないくらい高価だったため、カメラ全体としては“あれっ?”というくらい高くなってしまいました。

若代:ニューソン氏のこだわりで、ダイヤルやスイッチは絶対にアルミ削りだしでなければだめだという指定があったのです。

大鹿:ニューソン氏が“ここだけは絶対変えてくれるな”と言っていたのが、このアルミパーツなんですね。「ブラック×ブラック」と「ブラック×イエロー」がわかりやすいんですが、上から見て銀色のパーツがすべてアルミ製です。ストラップホールもアルミなんですよ。

シルバーの部分がアルミのパーツ コマンドダイヤルもアルミ製

若代:精密に機械加工されたアルミパーツをこうもふんだんに使うという発想はペンタックスのデザイナーにはありません。仮にそんなデザインを出してきたら設計担当がノーと言いますから、社内のデザイナーはある程度コストを気にしてデザインします。ニューソン氏もコストが掛かることくらいはわかっているはずなんですが、そこは妥協したくなかったのだと思います。今回はデザインに結構お金を使っているということになりますね。

上面の比較。K-r(左)はモードダイヤル、電源レバー、コマンドダイヤルなどがプラスチック製だ

――ところでEVFに対応させる案はなかったのでしょうか?

若代:外付けEVFですと専用コネクタが必要になってきますので、それによってデザイン上の縛りが出てきてしまいます。今回はそうした縛りを排除したいということで、EVFには対応しないことにしました。また内蔵EVFの場合はせっかくペンタプリズムを外したところに載せることになってしまいますから、内蔵の考えもなかったですね。

ペンタ部には内蔵ストロボを納めているが、突出を抑えている

――K-01はアストロトレーサーには対応しませんでした。

若代:今回画像処理エンジンを新規にしていますので、アストロトレーサーに対応する部分をゼロから作り直さなければならなくなりました。電磁駆動式のSRを積んでいますので原理的には対応できるのですが、今回は対応を見送りました。要望が非常に多ければ、ファームウェアアップデートで対応させるつもりです。

パンケーキならぬ“ビスケットレンズ”を開発せよ

――今回、キットレンズにもなっている世界最薄の「DA 40mm F2.8 XS」を開発しました。

飯川:企画を進めていたときに、開発サイドではボディ厚みを気にしていました。他社のミラーレスカメラですと“薄く小さく”という製品が多いのですが、K-01はそれらとはコンセプトがだいぶ違っていますので逆にレンズはできるだけ薄くしようということになりました。

全長9.2mmと薄いDA 40mm F2.8 XS

 こうしたレンズはパンケーキレンズと呼ばれますが、企画担当からは「パンケーキよりもっと薄い“ビスケット”みたいなレンズにしてくれ」という話が来ていました。この薄さはそこから来ています。

――このレンズのデザインもニューソン氏ですね。

飯川:はい。我々が基本の骨格となる大きさをニューソン氏に提案しまして、細かいブラッシュアップをして頂いたということです。新レンズは「クイックシフトフォーカス」の搭載を見送ることで、薄型化を実現しました。クイックシフトフォーカスは、AF合焦後にMFでピントの微調整ができる機能です。

DA 40mm F2.8 XSの設計を担当した飯川誠氏。「従来のレンズとは違ったデザインが個性的ですし、写りも文句無いレベルです。是非このレンズを使って欲しいですね」

――DA 40mm F2.8 XSの特徴を教えてください。

飯川:薄さと軽さですね。重さは52gなので、レンズ単体で持ったときに従来レンズ「DA 40mm F2.8 Limited」(90g)より軽さを実感できると思います。Kマウントレンズでは最軽量になります。

 光学系はDA 40mm F2.8 Limitedと同じですが、SPコーティングと円形絞りを新たに採用しています。基本的な光学性能はDA 40mm F2.8 Limitedとほぼ同様ですが、絞りの部分で描写性能を上げています。

絞ってもほぼ円形を維持しているのがわかる

 このレンズは、従来のKマウント機でも使うことができるのもポイントですね。今回、薄型にするために内部構造や部品の精度を一段上げて作っています。それによって、K-01専用レンズにしなくてもこまでのものができたと自負しています。

電源をONにしたところ。レンズ中央部が沈胴式になっている

K-01専用レンズの需要は未知数

――ミラーボックスの空きスペースを利用したK-01専用レンズも開発発表しています。

若代:CP+2012に参考出品した「K-01専用Kマウントレンズ」ですね。今回ミラーを外したことでデザインの自由度を高めたわけですが、同時にミラーボックスの空洞部分をレンズ設計の自由度として活かせるのではないか? という発想は初期からありました。通常のKマウントレンズではあり得ないほどの薄さにできると考えています。

CP+2012で展示した「K-01専用Kマウントレンズ」。後玉が通常より出ている

 ただ今回、40mmというスペックですとミラーボックスのスペースを使わずとも、非常に薄くできることがわかり、どうせならK-5やK-rでも使える方が良いだろうということでDA 40mm F2.8 XSを優先しました。

 K-01専用レンズについては、K-01のコンセプトが受け入れられてそうしたレンズの要望が高まってきたときに市場投入したいと考えています。しかしミラーの無いタイプのカメラだけでしか使えないので、どの程度受け入れられるのかは未知数ですね。

――K-01の登場に合せて、PENTAX Q用の「ユニークレンズシリーズ」のようなものをKマウントで出す考えはありませんか?

若代:CP+2012に合せてPENTAX Q用の「MOUNT CAP LENS」(仮称)を発表しましたが、実はこういったアイデアはPENTAX Qを出す以前からありました。遊び心のあるレンズをKマウントでも出す可能性もあるかなとは思っています。

PENTAX Q用の「MOUNT CAP LENS」(仮称) PENTAX Q用には「PENTAX-04 TOY LENS WIDE」といったトイカメラのような描写が楽しめる低価格レンズをラインナップしている

 ただ、色々と遊べるのはPENTAX Qだと思うんですね。センサーサイズが大きいというのは、“遊ぶ”上ではデメリットにつながるところがあります。それだけ大きなイメージサークルをカバーするにはレンズも大きくなり、コストも掛かってしまう。遊び心のあるレンズにしてはどうしてこんなに本格的なサイズなんだ、ということになってしまいます。コンセプトが中途半端になりますよね。

デジタル一眼レフ継続も、K-r後継機は“予定無し”

――今後はK-01のシリーズをどのように発展させていくのでしょうか?

若代:今回、デザインに関して過去に前例の無いカメラを作りました。そのほかにも色々アイデアはありまして、当然その中にはデザイン的なものもあります。K-01開発の過程でボツになったデザインが浮上してくるかもしれません。

 それからミラーを外したことによって、機能的な部分をアップさせるといったアイデアもあります。Kマウントという資産を使えるんだけれども過去に無いカメラを提案していきたいと思います。

――“K-01”という機種名の由来は?

若代:Kマウントの“K”に、K-5やK-rといった一眼レフとは違うシリーズということで“01”としました。「K-1」にすると違うものを想像される方が多いようなので(笑)、それと区別したということもあります。

――今後は「K-0?」といった機種が登場するわけですね。

若代:Kマウントでミラーが無いというコンセプトで、過去に例の無いカメラということになると「K-02」といった形になるのかなと思います。

――さてK-rは生産を終了したとのことですが、K-01はK-rの後継機なのでしょうか?

若代:コンセプトが全く違いますので、一般論での“後継機”とは違うと考えています。ただ同じくエントリーモデルとしての価格帯になっていますので、ポジションとしてはK-rと同じと思っています。

2012年に入ってから生産を終えたK-r(2010年10月発売)

――ではK-rの真の後継機が別に出るのでしょうか?

若代:先々のことはお答えできませんが、現時点でその予定はありません。

――K-5などデジタル一眼レフカメラのラインも、K-01のようなミラーの無いタイプにしていくのでしょうか?

若代:いいえ、現時点でデジタル一眼レフカメラをやめるという考えはありません。デジタル一眼レフカメラもどんどん進化させる余地があると思っていますので続けていきます。

――K-01と同じように、中判デジタル一眼レフカメラの「645D」をミラーレス化することはできませんか?

若代:ミラーをなくすことで、ミラーショックが無くなりブレにくくなるといったメリットはK-01同様にあると思います。当然その選択肢も有りだとは思っているので、実際に検討はしています。しかし現時点で発売の予定があるかと言えば、“ありません”と答えることしかできません。

645D。先般チャプター11の適用を申請したコダック製センサーを使用しているが、供給に問題は無いとのこと

――K-01を発売するに当たって、東日本大震災とタイの洪水の影響はあったのでしょうか?

若代:K-01もこれまで通りボディをフィリピン、レンズをベトナムで生産していますので直接的な被害はありませんでしたが、タイで生産している部品もあったので多少影響はありました。今回、一部のサプライヤーが被災したことを受けて、部品の調達先を複数確保するなど対策を強化しています。

――ペンタックスはリコーグループ入りしましたが、それに伴う現場の変化も出ているのでしょうか?

若代:4月1日から体制が変わる形になっていまして、そこで効率化をどんどんやっていく予定です。今はそのための準備を始めているといった段階です。

CP+2012ではペンタックスとリコーが共同のブースで出展した インタビューはペンタックスリコーイメージング本社(東京都板橋区)で行なった

【2012年3月26日】DA 40mm F2.8 XSに関する「エアロ・ブライト・コーティング」との誤記を「SPコーティング」に修正しました。





(本誌:武石修、インタビュー撮影:國見周作)

2012/3/26 00:00