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インタビュー:リコーに聞く「GR DIGITAL IV」の進化(後編)

〜“かなりコストがかかった”ホワイトエディション

 前編に続いてリコー「GR DIGITAL IV」の開発者インタビューをお届けする。後編ではデザインの変更ポイントやホワイトエディションについてのほか、GR DIGITALの今後についてまとめた。(本文中敬称略)

今回話を伺ったメンバー。左から北條大輔氏(画質設計を担当)、山本勝也氏(インターバル合成を担当)、新浪紀克氏(ソフト設計全般を担当)、横山宏二氏(メカおよび外装を担当)、樋口博之氏(商品企画を担当)

 話を伺ったのは、リコー パーソナルマルチメディアカンパニー企画室 商品企画グループ グループリーダー シニアスペシャリストの樋口博之氏(商品企画を担当)、同ICS設計室 設計1G スペシャリストの横山宏二氏(メカおよび外装を担当)、同ICS設計室 設計3Gの新浪紀克氏(ソフト設計全般を担当)、ICS設計室 設計3G スペシャリストの山本勝也氏(インターバル合成を担当)、ICS設計室 設計2Gの北條大輔氏(画質設計を担当)。

GR DIGITAL IV

「レンズはかなりハイレベル」

――レンズはGR DIGITAL IIIと同じものを採用しています。

樋口:我々は、GR DIGITAL IIIのレンズがかなりハイレベルなものであると認識しています。ですので今回はレンズを変えるのではなく、その素性の良いレンズの性能をより引き出すためにローパスフィルターに手を入れたわけです。“現時点で究極のレンズ”といったら言い過ぎかも知れませんが、たいへん性能の出ているレンズだと思っています。

レンズは従来と同じだが“ハイレベル”だとする

――液晶モニターは“白画素”を追加した新型ですがメリットは何でしょうか?

北條:白ドットを加えた「RGBW」という4ドット構成になり、高輝度でも表示できるようになったのが一番の特長です。GR DIGITAL IIIで見づらいという声があった晴天の屋外でかなり見やすくなっています。周囲の明るさに合わせて輝度を自動的に調整する機能も入っていますので、使い勝手も向上していると思います。同じ輝度であれば、従来の液晶モニターよりも消費電力が少ないのもメリットでしょう。

GR DIGITAL IV(左)とGR DIGITAL III(右)の液晶モニターを最大輝度にしたところ。新モデルの方が明るいのがわかる。

 それからGR DIGITAL IVでは、液晶モニターのホワイトポイントを理想的な白に近づけており、色再現としてはより自然な方向になっています。GR DIGITAL IIIはホワイトポイントがかすかに黄色寄りでしたので、見比べると違いがわかると思います。

――16:9の撮影モードを新設しました。

樋口:テレビに映して観賞したいという声が前々からありまして、それなら16:9が必要だろうということで搭載しました。また、16:9という横長のフォーマットは写真としてもおもしろいものが撮れるのでは? という声が少なからずあったのも搭載した理由になっています。

ボディも細かい部分を見直し

――外観デザインの変更ポイントを教えてください。

横山:これまで好評だったもGRのデザインを踏まえて、使いやすい形で新しさを出しています。ボディの稜線は先進性や精密感が出るように、面取り加工を施しました。内側の稜線が強調して、少し小さく見えるように意図しています。

上下の稜線が面取りされ、よりシャープに見えるようになった
GR DIGITAL IV(左)とGR DIGITAL III(右)。見比べると違いがよくわかる 下側も同様の処理を施した

横山:グリップの盛り上がりが始まる位置もGR DIGITAL IIIに比べて、外側に1.7mm移動させました。レンズとグリップの距離が空いたので指の大きな人でもレンズに当たりにくくなるよう配慮しました。また、背面の親指が当たる位置のラバーも面積を増やしています。

GR DIGITAL IV(左)とGR DIGITAL III(右)。新型では、ラバー部分をグリップ側に少し移動させた。ラバーへの繋がりも滑らかになった
ボディー形状検討のためのクレイモック

樋口:ホットシューの出っ張りは前モデルに比べて0.3mm低くしています。GR DIGITAL IIIで3型液晶モニターを搭載した関係でホットシューが上に出ていましたが、ポケットから出すときに引っかかるという声があり、できるところまで低くしました。

GR DIGITAL IV(左)とGR DIGITAL III(右)。写真ではわかりにくいが、ホットシューを0.3mm低くしている

横山:背面の十字キーがディスクタイプになっているのも新しい点です。真っ暗な所でも指で簡単に探せて押しやすくなっています。

GR DIGITAL IV(左)とGR DIGITAL III(右)。十字キーがディスク状になった。また親指が当たる部分のラバー面積も増えた 前モデルではグリップの上にあったマイクは、レンズの左下に移動した。パッシブAFセンサーが付いたためだ

――操作面で新しい「Fnボタンペア設定」とは何でしょうか?

樋口:Fn1とFn2のボタンに任意の機能を割り当てられるのですが、これらの割り当てのセットをあらかじめ作っておける機能です。十字キーの上ボタンとコマンドダイヤルでこのセットを素早く切り替えることができます。こういった部分でも速写性をを向上させています。

十字キー上を押すとFn1とFn2の割り当てが表示される さらにコマンドダイヤルを回すと、あらかじめ設定していた4つのセットが表示され選ぶことができる

――今回はグリップの交換サービスも行ないますね。

樋口:初代の時から要望があり、計画もあったのですが、技術的に難しかったのでこれまでできませんでした。それが、このたび技術が確立して実現しました。木目調、カーボン調、レザー調の3種類です。カメラに着けると、プラスチック製だとは思えないほどです。交換サービスの詳細は後日発表します。

グリップ交換サービスで提供するパーツ。左上は木目調、右上はレザー調、下はカーボン調
木目調の装着例(発表回での展示) カーボン調の装着例(発表会での展示)
レザー調の装着例(発表会での展示)
ホワイトに木目調を装着した際のイメージ

横山:樹脂に模様を転写していますが、交換グリップの表面にはちゃんと凹凸が付いています。転写式は4社のものを検討して、最も質感の良いものを選びました。個人的には木目がおすすめですね。

――新型のメタルレンズキャップ「GL-1」を用意しました。

樋口:カメラマンの方で、GR DIGITALを裸でカメラバッグに入れているという話を良く聞きます。するとレンズにゴミが付いてしまったり、取り出す際に指をレンズバリアに引っかけてしまったりするので、ケースに入れればいいと思うのですが、それだと速写ができなくなるというのです。そこで、専用のキャップを作りました。電接点があるので、キャップを外さないと電源が入らないようにしました。これからの季節ですと、コートのポケットにそのまま入れられるので活躍すると思います。

メタルレンズキャップ「GL-1」 キャップの裏の接点により、キャップを外さなければ電源が入らないようにした
GL-1を装着した場合、オプションのソフトケース「GC-4」の下カバーのみが装着可能

――GR DIGITAL IVがこの価格になっている理由を教えてください。

樋口:初代からこのくらいの価格で販売していただいています。デジタル一眼レフカメラの価格が下がってきていますが、GR DIGITALでしか撮れない写真というものもありますから、価格は単純に比較できるものではありません。例えばデジタル一眼レフカメラの価格が下がったからといって、GR DIGITALの価値が下がるものではないとご販売店からも評価を頂いているからだと思います。

電子水準器は今回からあおり方向も対応。「表示はこだわっていて、1カ所で2軸を確認できるようになっています。このカメラの場合は手持ち撮影が主になるので、視点を動かさずに見やすくしています」(樋口)

ホワイトエディションは「かなりコストが……」

――今回、「GR DIGITAL IV ホワイトエディション」を出しましたがどのような狙いがあるのでしょうか?

GR DIGITAL IV ホワイトエディション。ストラップやメタルレンズキャップも白のものが付属する

GR DIGITALはずっと黒でデザインもほとんど変わっていません。中には変化が欲しいというユーザーもいます。ただデザインは変えたくないので、色の変化で提案できたらという思いがありました。GR DIGITALの5周年を記念した「GR PARTY」(2010年10月)の時にカラーモデルを並べてアンケートを採ったのですが、ホワイトが一番評価が高かったのです。加えて、海外の代理店からもホワイトが是非欲しいという声があり、1万台限定という形ですがホワイトを商品化しました。「白と黒のどちらにするか迷う」といった声もあり、反響は大きかったですね。

GR PARTYで参考展示したデザインバリエーション
GR PARTYで高評価だったホワイト。このときはグリップがトカゲ革風だった

樋口:限定にした大きな理由は、かなりコストが高いからです。価格的にはちょっと無理をしていますね。それから、GR DIGITALはやはりブラックがベースのカラーなのでそのイメージを大切にするためです。ほかに、シルバーや光沢のあるピアノブラックも検討しましたが、黒のGR DIGITALと対比されるものとしてはホワイトという選択になりました。

 ペンタックスと一緒になったことで良く聞かれるのですが、“GR DIGITALコレジャナイロボモデル”といったものを出す予定は今のところありません(笑)。

――ホワイトエディションはレンズ鏡筒が黒ですが、白くしなかったのでしょうか?

樋口:コストという理由も多少ありますが、全部を白くしてしまうと締まりが無くなっておもちゃっぽくなってしまうためです。ホットシューの内側も最初は白にしていたのですが、黒の方が締まりがあるので、製品版では黒くしています。

横山:技術的にやろうと思えば鏡筒を白くすることは可能ですが、コストはかかってしまいますね。

メカおよび外装を担当した横山宏二氏。「パッと見にはさほど変わっていないように見えますが、細かい積み重ねがあります。触ってもらえれば感じてもらえると思います。ホワイトエディションはおすすめですよ」

――ホワイトエディションの塗装は特殊なものなのでしょうか?

横山:塗装自体は特殊なものではありませんが、艶を出すのがかなり難しく5回くらいやり直してやっとこのレベルに達しました。全体の質感を合わせるのも大変で、担当者にはかなり頑張ってもらいました。

リコー、ペンタックスともしばらくは現状維持

――GR DIGITALシリーズの今後について教えてください。2年後には“GR DIGITAL V”を見ることができますか?

樋口:コンセプトである高画質、携帯性という部分をさらに磨いていきます。まだやることはあると思います。後継機も期待していてください。

――10月1日に「ペンタックスリコーイメージング株式会社」が発足しました。カメラ作りはどう変わっていくのでしょうか?

樋口:一緒になったばかりで、いま手をつけ始めたところです。まだ具体的なことが言える段階ではありません。リコーグループとしては、独自のリーダーシップポジションをデジタルカメラ市場で確立していきたいと考えています。国や地域、商品セグメント、現在のポジションなどを考えつつ、両ブランドの最適化を図っていきます。

――両ブランドで重複しているのはどの辺りと考えていますか?

樋口:仕様や価格など、いくつかの視点から重複部分があるのは認識しています。そこを理解した上で、ラインナップの見直しも行なっていきます。

――カメラ開発の拠点はどうなりますか?

樋口:現在のままです。リコーは新横浜、ペンタックスは板橋区になります。製造拠点も従来のままです。効率的になるようにその都度見直しはしていきますが、今のところ具体的な変更の予定があるわけではありません。

インタビューを行なったリコー新横浜事業所(神奈川県横浜市)。リコーカメラの開発拠点でもある

――「GXR」もこのまま進めていくわけですね。

樋口:今まで通りやっていきます。次のユニットもいま仕込んでいるところです。どんなものかはまだ言えませんが(笑)。

――リコーのカメラは海外で認知度が低くなっています。海外でのシェアをどのように考えていますか?

樋口:リコーブランドは国内に比べると海外の認知度はまだ低いという認識はあります。この点は、ペンタックスリコーイメージングも含めたリコーグループとしてトータルで強化していきたいと考えています。

――では、海外ではペンタックスの流通網でリコー製品を販売することも考えにあるのでしょうか?

樋口:その方向で検討しており、可能性としてはあり得ます。“ペンタックスリコーイメージング”という社名にしたのは、両者を扱っていくという意思の表れと受け取っていただいて良いと思います。

――現在、カメラのシェアはどれくらいですか?

樋口:もともとシェアは狙っていませんが、リコーブランドのカメラとしては国内では3%位ですね。海外ではもう少し低いと思います。

――ところで、GR DIGITALやGXRの立役者ともいえる湯浅一弘氏(リコーパーソナルマルチメディアカンパニープレジデント)が9月末で退職されたと聞きました。

樋口:退職した時期がペンタックスリコーイメージングの発足と重なっていますが、これはたまたまで、ペンタックスの買収があったからではないと本人から聞いています。ご自身で前々からそういうこと(退職)は考えていたようです。

湯浅一弘氏(GR DIGITAL IVの発表会場で。9月15日撮影)

――新しいリーダーはどなたですか?

樋口:中田克典がパーソナルマルチメディアカンパニーのプレジデントに就任しました。もともとパーソナルマルチメディアカンパニーに所属していた経歴もあり、コンシューマー製品には精通しています。DVDなどのドライブを扱う部門のトップや、カメラ営業部門のトップを務めた人物です。今回、光学ユニットカンパニーのプレジデントも兼任する形になっています。




(本誌:武石修)

2011/11/15 00:00