インタビュー:リコーに聞く「GR DIGITAL IV」の進化(前編)

~2年分の技術を詰め込んだ“撮影の道具”

 リコーが10月21日に発売したコンパクトデジタルカメラ「GR DIGITAL IV」の開発者インタビューをお届けする。外観を見ると前モデルまでと同じような印象を受けるが、画質、速写性能、撮影機能、操作性を中心により進化させ意欲作だ。(本文中敬称略)

今回話を伺ったメンバー。前列左から山本勝也氏(インターバル合成を担当)、横山宏二氏(メカおよび外装を担当)。後列左から新浪紀克氏(ソフト設計全般を担当)、北條大輔氏(画質設計を担当)、樋口博之氏(商品企画を担当)

 話を伺ったのは、リコー パーソナルマルチメディアカンパニー企画室 商品企画グループ グループリーダー シニアスペシャリストの樋口博之氏(商品企画を担当)、同ICS設計室 設計1G スペシャリストの横山宏二氏(メカおよび外装を担当)、同ICS設計室 設計3Gの新浪紀克氏(ソフト設計全般を担当)、ICS設計室 設計3G スペシャリストの山本勝也氏(インターバル合成を担当)、ICS設計室 設計2Gの北條大輔氏(画質設計を担当)。

GR DIGITAL IV

“最強のストリートスナップカメラ”を目指せ

――改めてGR DIGITALとはどんなカメラなのでしょうか?

樋口:高画質と携帯性を高い次元で両立させた撮影するための道具、と社内ではいっています。目新しい機能を重視せずに、ユーザーの意見を取り入れて、コンセプトを磨いていくという進化のさせ方をしているカメラです。それは撮影するための道具であるからです。ターゲットはこれまで通りカメラ、写真が趣味のハイアマチュアやプロの方です。

――コンセプトは「最強のストリートスナップカメラ」です。

樋口:もともとGR DIGITALは、携帯性が高くどこにでも持って行けるカメラなので、ストリートスナップはやりやすいカメラだと思います。ただ、携帯性だけでは他にも小さなカメラはあります。高画質、AF速度、自分の意思を伝えられる操作性そういったことが重要になります。開発中に社内で、前モデルに比べてもまだまだやれることはあると、ここを目指そうと言うことでコンセプトにしていたのですが、最終的にカメラのキャッチフレーズとして外部に出しました。

コンセプトを「最強のストリートスナップカメラ」とした(発表会のスライドより)

――GR DIGITALユーザーがカメラに対して持っている要望は何でしょうか?

樋口:毎回、満足度調査をやっているのですが、これまでの機種は製品全体の満足度自体は非常に高かったのです。ただ、個別項目で見ると満足度の低い部分もあって、AFの速度だとか、高感度の画質、晴天下で液晶が見えにくいといった部分では満足度が低かった。今回、GR DIGITAL IVではその辺りを集中的に改善しています。

初代の「GR DIGITAL」は2005年10月の発売(発表会のスライドより)

夜景以外にも活用できる「インターバル合成モード」

――今回の目玉機能ともいえる「インターバル合成モード」とは何でしょうか?

山本:仕組みとしては、直前に撮影した画像と比較して明るい画素だけを元の画像に置き換えるということを繰り返していくものです。ある位置の画素に着目すると、撮影した期間の中で明るさが最大となる値を最終結果として記録しているということになりますね。三脚でカメラを固定して撮りますが、数百枚写すと星が線になり、風景などは変化しませんのでそのまま写るのです。

 一般的な長時間露光では、夜景部分が白トビしてしまうので見栄え良く撮るのは難しい。それに、長時間露光をすれば都会では星のバックが浮き上がってしまいますし、絞れば星が目立ちません。星の光跡と夜景を共存させられるのがこの機能の素晴らしいところです。カメラではJPEGにする前のRAWで合成を行なっていますので、星が綺麗に繋がりますし発色も良いのです。

星の動きを光跡として記録できる「インターバル合成」機能を初めて搭載したインターバル合成モードの撮影例(発表会のスライドより)

 
 インターバル合成で天体写真を撮る手法(比較明合成)は以前から知られていました。私自身、趣味で星景写真を撮影していて、2008年からフリーウェアを使って作品を作っていました。この方法だと肉眼で星が見えてないと思っても、合成が終わると光跡が綺麗に残るんですね。星は暗いところに行って撮る、というイメージがありますが、この手法だと東京でも写すことができます。そうした感動がこんな小さなカメラに入っていることに、ユーザーが喜んでもらえると思っていつか提案しようと思っていました。

樋口:今回「多重露光撮影モード」を搭載することになるのですが、そのときに山本が「こういう機能があるぞ」といってインターバル合成モードを提案してくれたんです。私は天体写真に興味は無かったのですが、サンプルを見てロマンがあるなと思って搭載を決めたのです。GR DIGITALはもともと“どこにでも持っているカメラ”ですから、例えば出張で北海道に行ってたまたま星が綺麗だったとする。そんな時にも撮れるカメラなのでこの機能はマッチしていると思いました。

インターバル合成の操作シーケンス。RL2はシャッターボタン、RL1は再生ボタン

山本:光跡を撮る際のコツをいくつかお話しします。GR DIGITALも含めてリコーのデジタルカメラには「無限モード」があります。これはフォーカスを無限に合わせる機能ですが、まずこれに設定します。一眼レフカメラで無限遠に設定するのは、実はすごく難しい作業なのです。星を撮る場合は開放側のほうがよく写りますので、F1.9~F2.8位に設定するとよいです。それから試し撮りで自分が適正だと思う明るさよりも、ちょっと派手すぎるかなというくらい明るめに露出を設定するとかなりキレイに撮れます。今はカメラに付けっぱなしにできる超小型三脚がありますので、これを活用すると撮影のチャンスが圧倒的に増えますね。

インターバル合成を担当した山本勝也氏。「なんといってもインターバル合成がイチオシです(笑)。本当に撮れるのかと疑われてしまいますが、天気さえ良ければさほど星が見えていない夜空でも試していただきたいです。光跡が撮れますので感動してもらえると思います。そこから風景と合わせたり星座を撮ったり発展していってほしいですね

 それから上級者の方が気になる部分だと思いますが、これまであったインターバル撮影の間隔は最短で5秒でしたが、インターバル合成モードでは最短1秒間隔で撮影できるようになっています。より星が綺麗に繋がるように配慮しています。また、通常のインターバル撮影機能では露光が10秒以上になるとノイズリダクションのために同じ時間の処理待ちが発生していました。インターバル合成モードの時にはこの処理を省略することができるようにしました。画質を保ちつつ待ち時間がないように努力しました。

――なるほど。インターバル合成モードは、言わば“天体撮影モード”なわけですね。

山本:それが他にもおもしろい使い方があるのです。例えば蛍。50枚や100枚といった星よりは少ない枚数でよいのですが、少ない蛍でもたくさん蛍が飛んでいるように写ります。星や蛍というと夜に限定するような印象がありますが、昼間に太陽をこの機能で撮ると太陽の光跡を写すことができます。また、積極的に撮影間隔を開けて(10分程度)合成することで、空に複数の太陽がある写真を撮ることもできます。ユーザーの方には、是非とも夜以外の撮影にもチャレンジしていただきたいですね。

 デジタルならではという点では、撮影中に半押し操作をすることで、一連の撮影を止めずに合成の途中経過を見ることもできるようにしました。撮影に失敗していないかを簡単に見ることができます。飛んでいる飛行機がフレームに入ってしまったかどうか、といったことを確認できます。

 最近は星の動きなどを動画にする微速度動画が流行っています。そこで、光跡の写真と微速度動画のための素材(静止画)撮影を同時にできた方がよいと考えました。微速度動画用の素材としては撮影経過の画像をそのまま記録するモードと、光跡が徐々に伸びていく様を記録した画像を保存するモードの2種類が選べます。静止画と動画用素材の保存を両立するために、撮影中にレリーズボタンを最後まで押し込むと静止画の記録を仕切り直すこともできます。これは近くを通る車の光など、邪魔な光が入ってしまったりした場合を想定してのものです。この操作を行なっても、動画用素材は途切れることなく記録し続けるようにしています。微速度動画では、邪魔な光が入っても一瞬の数フレームですから作品としては成立するためです。

インターバル合成やバルブ撮影の際にあると便利なケーブルスイッチ「CA-2」も用意する

――さらに進めて、カメラ内で微速度動画を生成することはできないのでしょうか?

山本:今は撮影と並行して合成処理を何とか行なっているという状態です。動画ファイルは1コマずつファイルに入れ込まなければなりませんので、メモリーカードへのアクセスなども発生してしまいます。処理能力を考えると現時点では難しい。将来搭載するかはユーザーの要望次第ですね。

――多重露光を搭載した意図は何でしょう?

樋口:特に海外のユーザーから要望が多かったので搭載してみました。多重露光は、作品を作る上で撮影者の技量が試される難しい撮影ですよね。そういったモードは、GR DIGITALのユーザーにマッチしているというのも搭載した理由になっています。GR DIGITAL IVでは、5枚まで重ねることができます。合成を取り消せるアンドゥの機能も付いています。それから、1枚ごとに露出モードを変えられるのも特長だと思っています。

5枚までの多重露光が可能になった。2枚目以降を撮影した際に取り消しもできる

初代GR DIGITALの“青”を再現

――今回から「ブリーチバイパス」と「ボジフィルム調」というエフェクトを搭載しました。

樋口:最近はポジフィルムが減ってきて、使いたくてもなかなか使えない状態です。そこで、ポジフィルの色合いをカメラで作れたら楽しめるのではないかと考えて搭載しました。市場では同様なモードでかなり強調した色を作るカメラメーカーが多いですが、それだと最初は良くても飽きてしまうので、我々は普通の撮影でも使える色味にしています。パッと見、変わらないじゃないかと思われるかも知れませんが、その辺りは狙っています。

北條:ポジフィルム調は、実在のある銘柄を目標に色作りをしました。その銘柄は赤やイエローがこってりした独特な発色で、完全に再現が難しい色なのですが、イメージは近づけることができたと思います。ブリーチパイパスとポジフィルム調では、周辺減光も表現できるようになっています。この減光具合は、銀塩カメラ「GR1」(1996年発売)のレンズの周辺光量落ちを目標に再現しています。かなり落ちますね。

画質設計を担当した北條大輔氏。「画質自体の進化ももちろんありますが、画像設定の自由度も前モデルよりかなり広くしています。ユーザー好みの絵を作りやすくなっています。新しいエフェクトも加わっているので飽きの来ないカメラになっていると思います」

樋口:ブリーチバイパスの方は、海外での強い要望から搭載を決めました。ペンタックスにも「銀残し」がありますが、そちらとは違った色合いになっていますね。

――それと関連する機能ですが、画像設定ブラケットも珍しい機能ですね。

樋口:発売してから大変好評な機能です。他社さんでいうと「ピクチャースタイル」や「ピクチャーコントロール」といったものに相当するのが地味な名前ですが「画質設定」です。この画質やエフェクトの中から3つを選んで、ブラケット撮影できる機能です。1回のシャッターで、ブリーチバイパス、ポジフィルム調、スタンダードといった写真を記録できます。

1回の露光で3つのエフェクトを個別に記録できる

――今回新しくなった画像処理エンジン「GR ENGINE IV」について教えてください。

北條:画質の向上という部分が大きいですね。まず、後述するローパスフィルターの薄型化に伴い、モアレや偽色の軽減処理を追加しています。それから、オートホワイトバランスのアルゴリズムを見直すことで色再現性が向上しました。GR DIGITAL IIIでは屋外の特定シーンでマゼンタ方向に転ぶ事がありましたが、GR DIGITAL IVではより安定するようになっています。

 高感度の画質では、GR DIGITAL IIIは色ノイズが多めでした。GR DIGITAL IVでは、新しいノイズリダクションの処理を追加して、色ノイズを効果的に抑えています。また、GR DIGITAL IIIに比べて高輝度側の色抜けを抑えています。その結果、高輝度側で色が粘るようになったので、綺麗にグラデーションが残るようになっています。

オートホワイトバランスの改善で色再現性が向上した(発表会のスライドより)高輝度の白トビも抑えた(発表会のスライドより)

――“GRブルー”と呼ばれる青色の再現も意識したそうですね。

樋口:初代GR DIGITALのときから青の表現が独特だといわれていました。合わせ込んできてはいるのですが、2代目、3代目でも“初代の青はよかったね”という声が一部から聞かれていました。そこで、GR DIGITAL IVでは初代の青の表現を今まで以上に意識した絵作りにしています。

――新搭載の「ダイナミックレンジ補正」は従来の「ダイナミックレンジダブルショット」とどう違いますか?

北條:ダイナミックレンジダブルショットは明るい画像と暗い画像を合成するものですが、撮影間隔の長いCCD機種では三脚が必要でした。一方、ダイナミックレンジ補正は1枚の画像でダイナミックレンジの拡大効果を得られる機能です。画面を数百の領域に分割して被写体の輝度解析を行ない、最終的には画素単位で露出補正をするようなイメージで補正をしています。

ダイナミックレンジ補正では、手持ちでも見た目に近い明るさに表現できる

樋口:ダイナミックレンジダブルショットの方が補正の幅は広いですが、ダイナミックレンジ補正は手持ちで撮れるということです。ダイナミックレンジ補正は「効果:弱」でISO125から、「効果:中」でISO160から、「効果:強」でISO200からと、設定により最低感度は変わりますが、ISO80やISO100に比べると少しはノイズがでますね。

北條:ただ、画像の補正情報をもとに最適な強さのノイズリダクションを行なうように工夫しています。

ローパスフィルターを“薄型化”してレンズの力を引き出す

――センサーの画素数は1,000万画素と前モデルから据え置いています。

樋口:我々としては、画素数を追いかけて高感度の画質を落とすことはしません。現在1/1.7型で1,000万画素以上のCCDセンサーはありませんが、仮にいま1,400万画素や1,600万画素のセンサーがあったとしても高感度画質が落ちるのであれば採用することは無いですね。

――撮像素子自体は前モデルと同じものですが、今回はローパスフィルターを改良したと聞いています。

北條:GR DIGITAL IIIよりもローパスフィルターを薄くしています。薄くすることで特に高周波側の分離効果が弱くなり、解像力が高まります。つまり、レンズの実力をより出しやすくなったと言えます。ただし、トレードオフでモアレや偽色が出やすくなりますが、これらは画像処理によりGR DIGITAL IIIと同等まで抑えています。

ローパスフィルターの改善で解像力が増したという(発表会のスライドより)

 実は、ローパスフィルターの無いタイプも試作して検討しました。しかし画像処理を行なってもモアレや偽色をGR DIGITAL III同等まで抑えることが難しく、採用は見送りました。今回はバランスをとって“薄型化”を選択したということです。

――昨今は各社で「裏面照射型CMOSセンサー」の採用が進んでいますが、搭載を考えませんでしたか?

樋口:そうですね。我々としては、1/1.7型ではGR DIGITAL IVに搭載したCCDセンサーが現時点で一番画質の良いセンサーだと考えています。

――動画記録はVGAまでと、今のデジタルカメラの水準から見ると寂しいものがあります。

樋口:センサー選択時に、HD動画を撮影できるセンサーを使うことも実はできました。しかし、HD動画対応のセンサーは消費電力がかなり増えてしまうんです。そのセンサーは動画の時だけではなく、静止画の時も消費電力が大きい。GR DIGITALのユーザーが、HD動画とショット数のどちらを採るかというと、ショット数を採るだろうという判断です。電池が無くなれば写真は撮れません。どこにでも持って行けるというカメラのコンセプトですからショット数を選択したと言うことです。

新浪:カメラ制御の見直しなどでも低消費電力化を図っていまして、ショット数は前モデルの約370枚から約390枚に増えています。

ソフト設計全般を担当した新浪紀克氏。「ソフトの面から一番苦労したのはインターバル合成と多重露光です。使いやすいユーザーインターフェースにするために、量産寸前まで追い込みました。操作性も大きく向上しているので感じていただきたいです」

パッシブAFの復活でAF時間は半減

――今回GR DIGITALとしては初めて手ブレ補正機構(センサーシフト式)を搭載しました。

樋口:初代の頃はプロの声も手ブレ補正機構は搭載しなくて良いというものでしたが、GR DIGITAL IIではプロの方々からも手ブレ補正機構が欲しいという声が聞こえてきました。次のGR DIGITAL IIIで手ブレ補正機構の搭載を検討したのですが、見送りました。当時の技術では、手ブレ補正機構を搭載するとボディがかなり厚くなってしまうことがわかったためです。GR DIGITALのコンセプトは携帯性ですから、ボディを厚くするのはあり得ません。そこで、GR DIGITAL IIIでは開放F1.9というレンズを明るくする方策を採りました。その後、薄型の手ブレ補正機構を開発することができたため、GR DIGITAL IVに搭載することになったのです。

手ブレ補正の効果は約3.2段分(発表会のスライドより)

横山:ボディの大きさを全く変えずに手ブレ補正機構や、パッシブAFセンサーなどの部品を新しく入れるのが一番苦労しました。誤解されるといけないのですが、前モデルに比べてカタログ上の厚みが増えているのは、CIPAが規定しているカタログ表記のガイドラインに合うようにしたためです。前モデルから大きくなったわけではありません。

北條:手ブレ補正の効果は約3.2段分です。社内の測定(OK)基準では、手ブレ補正機構を使えば最大で1/2秒程度までは手ブレを抑えられます。

樋口:ユーザーからは、手ブレ補正機構を入れるなんて潔くないという声も一部ありました。ただ、28mm相当の広角単焦点レンズであっても場合によってはブレます。リコーカメラの基本コンセプトである“撮影領域の拡大”に照らし合わせた結果、搭載すべきだろうという判断に至りました。手ブレ補正機構を搭載した事による画質へのマイナス面は何もありません。

商品企画を担当した樋口博之氏。「RING CUBEでは貸出機も用意していますので、撮影してもらえれば進化の度合いを感じてもらえると思います。スペック表には現れてこない良さが詰め込まれたカメラです」

――パッシブAFセンサー(外部AFセンサー)が復活した理由を教えてください。

新浪氏:合焦時間を高速化するためです。パッシブAFセンサーにより被写体までの距離がわかっているので、コントラストAFのスキャン時間を大幅に減らすことができました。その結果、通常のAFが0.5秒から0.2秒に、マクロ時は1.2秒から0.6秒(ともに前モデル比)と半分以下を実現しました。AF制御シーケンス改善などで、コントラストAF自体の速度も上げています。特にマクロAFでは、制御アルゴリズムを変えたことが高速化に大きく寄与しています。

レンズの左上にパッシップAFセンサーを搭載した
GR DIGITAL IVでは、パッシブAFセンサーとコントラストAFの両方を利用するパッシブAFセンサー利用、AF制御アルゴリズム変更によりAF時間は半減した
パッシブAFセンサーは、撮影画面に対して縦横34%の中央部分を常時測距して距離情報を得る

 パッシブAFセンサーは「CX5」にも搭載していますが、そこから改良を重ねて精度を上げています。感度をアップさせて低輝度に強くなったのに加えて、低コントラストでも測距できるようにしています。ちなみにGR DIGITAL IVでは連写中もピント合わせが行なえるようになりましたが、このときもパッシブAFセンサーを使っています。

樋口:今回、初代GR DIGITALに対してパッシブAFセンサーの性能が格段に良くなったことで、初代GR DIGITALにはない新しい機能を搭載しています。コントラストAFを使わなくても、パッシブAFセンサーのみで結構精度が出せることから、GR DIGITAL IVでは、パッシブAFセンサーのみを使うAFモード「スナップモード(オート)」を搭載しています。これを使うと0.1秒もかからない位で合焦します。これまでの「スナップモード」はピント位置を固定しておくだけでしたが、GR DIGITAL IVでこれにオートが加わった形になります。

後編に続く)




(本誌:武石修)

2011/11/14 00:00