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インタビュー:ユリシーズに訊く、カメラアクセサリーへのこだわり


 ストラップやケースといったカメラアクセサリーをはじめ、フォトフレームやアルバムなどの雑貨を扱うオンラインショップ「フォトライフ・ラボラトリー ユリシーズ」。ユリシーズ代表の魚住謙介氏にお話を伺う機会を得たので、インタビューを掲載する。また、先日紹介したレザーストラップ「スプートニク」の製造工程の一部始終も見学することができた。こちらについても一連の流れを写真で紹介したい。

本革製のDP1&DP2用ボディスーツ グリップ付き(1万4,700円〜1万5,200円) レザーストラップ「クラシコ」(5,985円)
レザーストラップ「スプートニク」(3,780円) 麻紐ストラップ「ガーランド」(3,990円)
本革&帆布カメラケース「ヴィータ」(1万5,750円) 本革カメラケース「ボルセリーノ」(6,615円)
マスカーニ・フォトアルバム (モノクローミア・ネーロ)(1,680円) マスカーニ・フォトフレーム (ローザクリスタッリ・ピッコロ)(2,100円)
ユリシーズ製品群 ユリシーズ代表の魚住謙介氏。博多「味の魚住」2代目でもある

自分がものを作って発表したら、案外受け入れてもらえるのではないか

――「ユリシーズ」をはじめたきっかけについてお聞かせください。

 もともと、学生の頃から趣味として写真をやっていました。カメラバッグやストラップは、その時その時で自分の好みに合ったものを使っていました。でも、何年経っても本当に「もうこれで十分」と思えるようなものには巡り会わなかったので、少しずつ不満が溜まっていきました。

 時には、勢い余って自分でバッグの絵を描いて、東京のバッグ工房に持って行ったりだとか、無理なお願いをしたりもしました(笑)。けれども、自分の理想に近いものを追求していくと、最終的には「自分で作らなければ無いんだ」ということに気付きました。

 実は6年くらい前から、購入したカメラや写真用品のインプレッションなどを載せるブログをやっているのですが、あるとき、自分がセミオーダーした製品を掲載したところ、「同じものを自分も欲しい」という読者が出てきたんです。ひょっとしたら、自分がここでものを作って発表したら、案外受け入れてもらえるのではないかと思うようになりました。

 けれども、ブログを商売に走らせるというのは個人的にかなり抵抗があったので、別のWebサイトを開設するという形をとりました。それが今のユリシーズになります。

商品撮影もすべて魚住氏自身で行なっている ユリシーズのシンボルは「カエル」

――ユリシーズのマークが「カエル」であることの由来を教えてください。

 「ユリシーズ」は、欧州の有名な叙事詩が出典で「遠くて長い航海」という意味があります。それまで趣味で写真をやっていた「井の中の蛙」が、事業として写真に関わることを決めて井戸の外に飛び出したということを、カエルと長い航海になぞらえました。それに、人生もまた長い航海を泳ぎ続けていくもの、という意味も含んでいます。写真は、撮り手の営みや時代を写し取るものだからです。

――ユリシーズのコンセプトとは何でしょうか。

 「お客様が自分の生きた時間の記録を残し、次の世代に引き継いで伝えていく、そのお手伝いをすること」です。銀塩の時代は、写真が必ずプリントという形で残っていました。けれどデジタルな写真が主流になった今、写真データはふとしたことで簡単に、跡形もなく消えてしまいます。デジタルの今だからこそ、写真をプリントして、アルバムやスクラップブックに残し、あるいはフォトフレームに入れて部屋に飾り、折にふれて見返すということをすべきだと思うんです。

 その入り口として、まずはお客様に写真を撮っていただく必要があります。そのためには、常にカメラが傍らになくてはなりません。ですから、ストラップにしろケースにしろ、カメラアクセサリーは、常にカメラを身に付け持ち出したくなるような魅力を備えている必要があると考えています。

キーワードは「趣味性と利便性をバランス良く両立したもの」

――製品ができるまでの流れについてお聞かせください。

 忘れっぽいので、日頃からアイディアノートを持ち歩いて、思いついたことを書き留めておきます。ある程度煮詰まってくると、もう少し具体的な形に書き起こしていきます。アイディアを形にしていく中で、いつも根底にあるのは「まず自分が欲しいもの」です。もちろんお客様のニーズにも出来る限りお応えしますが、それが自分の中で咀嚼・吸収できないときは商品化しません。

 ユリシーズのものづくりは大抵の場合「不便だ」と思ったことから始まります。たとえば海外に取材に行ったときに、コンパクトデジタルカメラを常に身につけておきたいとします。飛行機の乗り継ぎで国境をまたいで移動するとき、その都度セキュリティチェックで身につけている金属製品を外して、チェックが終わったら戻すという作業を繰り返さなければなりません。そういうときに、着脱が素早くできるバッグがないものかと思うわけです。

 もちろん着脱できる製品はたくさんありますが、現状では化学繊維を素材とした製品が主流で、素材や質感的に納得できるものがなかなかないのです。自分が欲しいのは「趣味性と利便性をバランス良く両立したもの」。それは、いまユリシーズで扱っているもの全部に共通しているキーワードでもあります。

 ユリシーズでは本革製のカメラストラップを取扱っていますが、カメラとの接合部以外に金属部品を極力使わないようにしています。メタルバックルやリベットなどを使用した製品はお洒落ですしファッションとしてはアリだと思いますが、ユリシーズとしてそれらを使わないのは、金属部品とカメラが接触してカメラが傷付くのを防ぐためです。そういった目線を大切にしながら製品作りに取り組んでいます。

日頃からアイディアノートを持ち歩いている DP1用ボディスーツとGR DIGITAL III用ボディスーツのプロトタイプ

 製品を発案するにあたっては、デザインを起し、パターンを作るところまでをやってから、工房に引き継いでいます。職人さんには、内寸、アール(丸み)、厚み、パーツデザインなど、細かいところまで落とし込んだ内容を伝えています。ものによっては、厚紙でモックアップを作って持っていくということもします。

 製品の発案から最終形になるまでには、早くて1か月、長い時は3か月くらいかかります。工房と意見交換を重ねて、完成までに3回くらいプロトタイプを作ります。職人さんの意見は非常に貴重で、カメラケース「ヴィータ」の例でいえば、職人さんのアイデアで、機能性は損なわずに背面ホックの数を減らしてコストを抑え、当初よりシンプルに仕上げることができました。

今後も機能性とデザインや質感のバランスを大事にしたい

――今後、ユリシーズの事業をどのように展開していきたいとお考えですか。

 お客様が実際に手に取って商品を確かめられるように、実店舗での製品販売を進めていきたいと考えています。現在、福岡の写真ラボ「アルバス」さんと、大阪のプリントショップ「イナバカメラ」さんにお声掛けいただいて、一部の商品をお取り扱いいただいています。パートナーが見つかれば、お客様のご要望が非常に多い関東圏でも販売したいですね。

 また、OEM事業も視野に入れています。すでにアルバスさんからのご依頼で、ショップオリジナルのカメラストラップを制作させていただいていて、今後はカメラアクセサリーの設計や企画を請け負う仕事もしていこうと考えています。

――今後の製品開発の方向性についてお聞かせください。

 今後も、機能性とデザインや質感のバランスを大事にしたいです。「あれもできる、これもできる」といった、いわば便利グッズの方向には行きません。たとえば、長さを調節できるストラップをお使いの方にヒアリングすると、一旦自分の好みの長さを見つけたあとは、二度と長さを調節しないということをよく耳にします。便利さは必要最小限で、という方向性でやっていくつもりです。

 お客様の中にはプロカメラマンの方も多くいらっしゃるのですが、ご意見をうかがっていると、プロもアマチュアも実はそれほどニーズに違いはなくて、求められているものは似ているんです。そういった助言を活かしながら、ユリシーズならではのテイストを加えて製品開発を進めていきたいと考えています。

 カメラバッグに関しては、しばらくは大きめのサイズの製品を制作していくつもりです。たとえば今開発中のカメラバッグは「カメラ“も”入る普段使いのバッグ」というコンセプトで、現行の「ボルセリーノ」といったカメラケースよりも大きなものになる予定です。また、ボディバッグのような、体に寄り添うような形状のバッグも開発しています。

 ストラップについては、フラッグシップクラスの重いデジタル一眼レフカメラなどに対応した製品を制作中です。お客様がフォーマルな恰好をされている時に着けていても違和感のないようなデザインのものにしたいと思っています。

「スプートニク」のできるまで

 スプートニクは、ストラップの紐部分を円形のループ状とし、紐を引っ張って円の直径を小さくすることで、手首にフィットさせるタイプの革製ストラップ。価格は3,780円。ここでは、職人が部品からスプートニクを完成させるまでの一連の流れを写真で掲載する。

スプートニクの素材となるパーツ 菱目打ちで縫い糸を通すための穴を開ける
パーツを組み合わせ、丁寧に縫い進めていく 縫製終了後、形を整えるために余計な部分を削り取っていく
処理剤を塗布する 完成


(本誌:関根慎一)

2010/5/21 14:19