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ユリシーズの新作カメラバッグ座談会レポート
「カメラも入るトートバッグ」を目指して議論が繰り広げられる
Reported by 関根慎一(2014/12/18 08:00)
クラウドファンディングサイトkibidango(きびだんご)は、カメラバッグやストラップの企画・販売を行うフォトライフ・ラボラトリー ユリシーズの新作カメラバッグ開発に向けた座談会を12月5日に開催した。
ユリシーズは2013年4月12日、当時の新作カメラバッグ「チクリッシモ」のクラウドファンディングプロジェクトを目標金額100万円でスタート。目標金額を即日達成し、4月30日の応募締め切りまでに226人、合計655万3,000円の支援金額が集まった。kibidangoが実施したプロジェクトの中でも、現時点で2番目の支援金額を記録している。
今回の座談会は、チクリッシモプロジェクトの支援者やユリシーズの顧客を招いて、新作カメラバッグのアイディアや意見を募る趣旨。当日は14人の参加者が集まったが、ほぼ全員がチクリッシモを購入して日々使用しているリアルなユーザー。ユリシーズ代表の魚住謙介氏とともに、新作カメラバッグへの意見や要望、アイディアを出し合い、熱い議論を繰り広げていた。
「トートバッグ」という以外は白紙からのスタート
座談会では、魚住氏が用意したいくつかの質問に参加者が回答することを繰り返して、新作カメラバッグのコンセプトを形にしていった。新作カメラバッグはトートバッグ型ということ以外は何も決まっていないので、参加者がどのような製品を望んでいるかをヒアリングする目的もあった。最終的な目的は「カメラも入るトートバッグ」をつくること。
参加者にはポストイットが配られ、質問に対する回答を記入する。記入したポストイットは壁に貼り付け、1つ1つに対して魚住氏がコメントし、時には記入者に話を聞く場面も見られた。
1問目は「トートバッグのイメージ」。参加者の中にある一般的なトートバッグの良い点・悪い点を書き出して、参加者が抱くトートバッグのイメージを"棚卸し"した。
良い点は「出し入れしやすい」「なんでも入れられる」「気を遣わずに使える」「シーンを問わず使える」といった意見が挙げられた。気負わずラフに使える利便性が評価されており、ユニークな使い方としては「丸めてメインのバッグに入れておき、いざというときに予備のバッグとして使える」という意見もあった。
悪い点は「肩掛けしているとずりおちる」「下の方に物が詰まって上の方の空間が無駄になる」「学生っぽい」「安っぽい」「雨天時に使いにくい」「中の整理が大変」「自立しない」など多岐に渡った。
傾向としては、見栄えがあまり良くなく、一般的に仕切りの類がないため、収納物のマネジメントがしにくいという点で不満を持たれているようだった。特に肩掛けで使うとずり落ちやすいことから手を添えて使わざるを得ず、片手が塞がることをストレスに感じている参加者が多かった模様だ。
トートはカメラバッグ向きではない?
二問目は「トートバッグにカメラと日用品を入れた場合のメリットとデメリット」について。一般的なカメラバッグはその構造上、カメラ機材の収納専用になりがちだが、バッグとして使う以上は、日用品を入れて使うという運用方法もあり得る。トートバッグでそうした使い方をする場合のメリットとデメリットを議論した。
メリットでは「機材が取り出しやすいのでスナップ撮影に向いている」「開口部が広くて中が見えやすい」「気張らない感じがおしゃれ」などが挙がった。
一般的なトートバッグはカメラバッグのようにきっちりとした仕切りがあるわけではないので、機材を入れるとごちゃつきやすく、収納できる機材は少なめになるが、その点を割り切って、カメラを一台だけ入れて気軽に使えることをメリットとして捉える見方があるようだ。
また、収納できる機材が少なくなる点を長所ととらえて"足を使って撮るようになるのが良い"とする考えも挙げられた。
このほか「カメラおたくだと思われにくい」との意見も見られた。ちなみに参加者が持参した機材は、OLYMPUS OM-D E-M5、ソニーα900、α7R、FUJIFILM X-T1、X-E2、PENTAX K-3、ライカM8など。普段から交換レンズを数本持ち歩くというコアなカメラファンもいた。
デメリットは「肩掛けの時、中が見にくくて探しにくい」「カメラに長いストラップを着けておくと絡まる」「底が汚れやすい」「持ったままでは撮りにくい」「他のものと干渉する」「機材の位置が定まらない」「機材を守る強度が低い」「機材を入れると表面が凸凹する」「開口部が大きいので盗難が心配」などこちらも数多く挙がっている。
トートバッグをカメラバッグとして使ったことのある参加者も多く、概ね一致したのは、強度面で全幅の信頼が置きにくいという点だった。開口部の大きさはメリットではあるが、雨天時などにはデメリットにもなりうる見方もある。本格的にカメラバッグとして使うには、クリアしなければならない問題が多いということが分かった。
バッグの中が見にくいまま機材を探さなくてはならない問題については、魚住氏もチクリッシモを設計する際に意識したポイントがあるという裏話を披露した。
「右目と左目で見える範囲にはズレがあって、目と視認対象が近いほどその影響が大きい。例えば肩に掛けたバッグの中身を探るとき、右目で見えていても左目で見えない部分が大きいので『探しにくい』と感じる。できるだけ両目で中が見えるようにすることが大事なのです。チクリッシモではバッグを前に回したとき、身体の正面に近い位置に来ることで、両方の目で見える範囲ができるだけ同じになるように気をつけて作りました」
日用品とカメラ機材の重量は以外と重い
今回、座談会の参加者には事前に"バッグの中に入れたい物を持ってきてほしい"とのお願いをしており、参加者はそれぞれ機材を詰め込んだバッグを持参していた。座談会では「新作のカメラバッグに入れることを考えているバッグの中身は何か」の確認を目的としてバッグの中身を見せていたが、趣味を同じくする他人のバッグの中身を見る機会は普段あまりないこともあり、互いに興味津々で、会話も弾んでいる様子だった。
ここで「参加者がバッグに入れたいもの」の実際の重さを量ってみるという試みを行なった。ある参加者が持参したバッグの中身は、概ね次の通り。
- コンパクトデジタルカメラ
- タブレット端末
- モバイルバッテリー
- 仕事の書類
- 眼鏡
- エコバッグ(買い物用)
- 財布など
- 化粧品類などの日用品
この内容で、重量は5.6kg。当人曰く「何かがあった時に困るので、すぐ対応できるように最低限このくらいは持ち歩いている。これに加えてカメラ機材を持ち歩きたい」とのことだ。なおカメラ機材は、ミラーレスカメラ1台と交換レンズ4本。車を使う時は、三脚も持ち運ぶという。カメラ機材をバッグに収納した状態の重量は3.5kg。この日、この参加者が持ち歩いていた機材は合計で9.1kgとなった。
そのほか、計量に参加した参加者の荷物の重量は4.2kg~9kg前後と幅広かった。中には、カメラがカバンに入らないのでバッグを肩に掛け、カメラは常に手で持ち、空いた手で折り畳み自転車を転がして通勤しているという参加者もおり、魚住氏も「わりと無謀な量を入れようとしている方が多いことがわかりました」と笑っていた。
なおチクリッシモの場合、使っていて疲れない重量は4kg前後としている。容量的にはこれ以上詰め込む事もできるが、4kg以上になると身体の方がきつくなってくるという。なおチクリッシモは現在、両肩で背負えるように改良中とのことだ。
日常的に使えるバッグが人気
三つ目の質問は「どんなシーンで使えるトートバッグが欲しいか」。道具の形は使い方次第で決まるとの考えをもとに、参加者の考える理想的なカメラバッグの使い方を探った。
回答としては「買い物」「散歩」「通勤」「ポタリング」など、普段使いを思わせるシーンが並んだほか、「旅行」「イベント」という非日常で使うイメージの回答も目立った。
全体的な傾向として、どんなシーンでも使える/なんでも入れられるというトートバッグの良さを活かしつつ、カメラの保護も両立したいという強度面での補強を望む声が多かった。中には海や池沼などで撮影をする際に持って行けること、汚れても気兼ねなく洗えることを挙げる声もあった。
新作カメラバッグには、トートバッグの気軽さはもちろん、カメラバッグとして一定のタフさも必要とされているように感じられた。
トートバッグ+αの機能性が必要
四問目は「どんなデザインがいいか」。バッグの具体的な姿形や素材、機能性といった、実際の使い勝手に直結する項目についての希望を尋ねた。
参加者からの希望は十人十色で多岐にわたるが、代表的なものとしては「肩に掛けてもずり落ちない」「間口を閉められる」「仕切りをつける」「縦型にして長い物が入るようにする」「持ち手(ストラップ)の長さが可変(あるいは交換)」「オールレザー」といった要望が挙げられる。
そのほかユニークなアイディアとしては「飲み物やレンズを入れておけるような、部分的に防水のポケット」や、トートをベースとして、場合によっては背負えたり、肩に掛けられるような3WAYバッグなど。「ハードな帆布を使うと服が削れて毛玉ができやすいので避けてほしい」との意見もあった。
希望価格は平均3~4万円
最後の質問は「価格」。希望通りのトートバッグが完成したとして、カメラバッグにいくらまで出せるかを訊いた。
もっとも多かった価格帯は3~4万円。ユリシーズの新作バッグということで、チクリッシモを基準にしたことを感じさせる価格設定だ。参考までに、チクリッシモの一般向け販売価格は3万5,640円(税込)。魚住氏によれば「企画当初、チクリッシモはもっとリーズナブルな価格にしたかったのですが、そこは国内生産の厳しいところ。関係諸氏にかなり頑張っていただいて、最終的にこの価格になりました」とのこと。
結果として希望価格の下は8,500円、上は15万円とかなりばらつきが出た。価格は素材によっても左右されるが、5万円以上の高額な価格帯に設定した参加者は「オールレザーが前提」と口を揃える。逆に8,500円に設定した参加者は「家内が買い物に出かける際、ちょっとミラーレスカメラを入れておくような用途だとそのくらいが限界」と話した。
新作バッグのプロジェクトは2015年開始
ユリシーズでは今回の座談会で得られた意見を反映し、2015年には"カメラも入れられる"トートバッグのプロジェクトをkibidangoで開始する予定。今後はトートバッグの試作品が見せられるようになった段階で、2回目の座談会を開催するとのことだ。
ユリシーズの新作カメラバッグには、既存のトートバッグにない独自の構造・機能性が求められているだろう。参加者の希望をすべて採り入れるわけにもいかないだろうが、今回得られた意見をもとに、最終的にどのような形に落とし込んだ製品が出てくるのか、楽しみに待ちたい。