奥入瀬渓流ホテルに聞く:シグマ「交換レンズ無料レンタルサービス」開始の狙い
奥入瀬渓流ホテル |
青森県十和田市の奥入瀬渓流ホテルは、シグマ製交換レンズの無料レンタルサービスを6月18日より実施している。
リゾートホテルが主体となってホテルで交換レンズを無料貸し出しするという試みは、全国的に見ても珍しい試みといえる。交換レンズ貸出しサービス実施にいたるまでの経緯と現状について、奥入瀬渓流ホテル総支配人の山下圭三氏にお話を伺った。
なお、このサービスは、6月18日から10月31日の期間中、同ホテルの宿泊客を対象に、シグマ製の交換レンズを貸し出すもの。
借用期間はホテルへのチェックイン時からチェックアウトまで。一度に借りられる本数は2本まで。宿泊期間中は何度でも借り直せる。
借りられるレンズは下記の通り。
- 10-20mm F4-5.6 EX DC HSM
- 17-70mm F2.8-4 DC Macro OS HSM
- 18-200mm F3.5-6.3 DC OS HSM
- APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM
- 70-300mm F4-5.6 DG OS
- Macro 70mm F2.8 EX DG
現在、同じく星野リゾートが運営している山梨・北杜市の「ホテルリゾナーレ」でも同様のサービスを実施している。
奥入瀬渓流ホテルは、十和田八幡平国立公園内に流れる景勝地・奥入瀬渓流沿いに建つリゾートホテル。2004年11月まで奥入瀬渓流グランドホテルの名称で営業。2005年11月より星野リゾートが運営している。営業期間は4月~11月。12月~3月は冬季休業。所在地は青森県十和田市大字奥瀬字栃久保231。
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奥入瀬渓流ホテル総支配人の山下圭三氏 | レンズ貸し出しコーナー |
その場で2本まで借りられる。宿泊中は何度でも借り直せる | ナチュラリスト・久末正明氏による作例も展示している |
■レンズ交換の楽しみを伝えたい
――交換レンズレンタルサービスのコンセプトをお聞かせください。
我々とシグマ様が共通して持っているのは「楽しさを伝えたい」という想いです。
我々としては、この美しい「奥入瀬」が写真撮影のメッカになってほしいという想いがあって、その自然を写真に残す楽しみを伝えたいと考えています。
また、デジタル一眼レフカメラをダブルズームレンズキットなどで購入されたお客様は、普段の撮影がすべてそのレンズでまかなえてしまうので、交換レンズの追加購入にいたらないということがあります。レンズを交換することでいろいろな絵が撮れるのが一眼レフカメラの楽しみなので、シグマ様としても「レンズ交換の楽しみを伝えたい」というミッションをお持ちなのです。
――サービス実施のきっかけをお聞かせください。
もともとは、星野リゾート代表取締役社長の星野佳路とシグマの山木社長が話をしている中で、シグマ様から「一緒にやりましょう」とご提案頂いたものです。私の方には、星野(社長)から奥入瀬渓流ホテルとリゾナーレで今回のサービスを実施してみてはどうかという提案を受けました。
奥入瀬渓流は美しいところですので、写真を撮るニーズはあると踏んでいましたし、私自身も着任以来、料理や渓流の写真を撮るようになっていたので、ホテルのアクティビティとしてカメラに関するプログラムを考えていました。実際、6月18日にサービスを開始した初日には、レンズ無料貸し出しサービスの存在を知って、元の宿泊先を変更してまで当館をご利用くださったお客様がいらっしゃいました。
撮影目的で奥入瀬を訪れるお客様は長期滞在される方が多く、比較的割安な宿を選ぶ傾向がありましたので、実施するとなると、ホテル単体では実現が難しかったのです。そういった状況の中、今回のご提案があったのは大変ありがたいことでした。
石ヶ戸の瀬付近 (画像提供:奥入瀬渓流ホテル) | 阿修羅の流れ (画像提供:奥入瀬清流ホテル) |
――貸し出し用のレンズ数量についてお聞かせください。
交換レンズ6種類、各マウント合わせて全部で30本ほどご用意しております。レンズのチョイスはシグマ様にお任せしました。人気のレンズは「APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM」と「Macro 70mm F2.8 EX DG」です。数量については、事前にご相談いただければ、できるだけお客様のご要望にお応えします。
九段の滝の手前 (画像提供:奥入瀬渓流ホテル) | 雲井の滝 (画像提供:奥入瀬渓流ホテル) |
――宿泊客のサービス利用率についてお聞かせください。
現在の利用数は11件で、個人のお客様の利用率としては0.6%前後です。奥入瀬渓流ホテルでは、ホームページで宿泊予約をされるお客様よりもツアーでいらっしゃるお客様の方が多いので、どうしても訴求しきれていない部分があるということもあり、お客様がホテルにいらっしゃってから貸し出しコーナーをご覧いただき、ご利用いただくという販促パターンとなっています。サービスをご利用されるお客様は40代の男性が多いようです。
訴求という部分に関して、「このサービスの存在を知っていたら、一眼レフを持ってきたのに」というお客様の声もありますので、今後もサービス内容の周知に努めていきたいと考えています。
――サービス利用者からの声にはどのようなものがありますか。
お客様にご回答いただいたアンケートには「今までできなかった撮影が楽しめた」とあります。無料で借りられることもあって、これまで交換レンズに興味のなかったお客様が、さまざまな交換レンズを実際に試せる良い機会になっているようです。実際にご利用いただいたお客様からの評判も上々です。
――11月以降にサービスを継続する予定はありますか。
今のところありませんが、個人的な心情としてはずっと続けたいですね。
石ヶ戸渓流 (画像提供:奥入瀬渓流ホテル) | 阿修羅の流れ (画像提供:奥入瀬渓流ホテル) |
■ホテルのコンセプトは「記憶に残る朝」
奥入瀬渓流ホテルのコンセプトは「記憶に残る朝」。山下総支配人によれば、「奥入瀬渓流の魅力が最も引き出されるのは朝6時~8時の時間帯」という。1年を通して清流が流れる奥入瀬渓流のイメージを館内で表現するために、「朝」に特化したプログラムを実施している。
コンセプトを具現化するにあたっては、現地ガイドと一緒に奥入瀬の森を散策しつつ、花や野鳥の撮影を楽しむアクティビティや、八甲田山中に佇む樹廻り6.01mのブナの巨木「森の神」を観察するツアーを実施。
また、渓流沿いという立地を活かし、渓流そばに設置したテラスで朝食を摂る「メイプルリーフ」、早朝の渓流を散策後、渓流沿いで朝食を摂るプログラムなど、奥入瀬渓流の朝を印象付けるイベントを各種用意している。
メイプルリーフの様子 | ラウンジで注文できるスイーツ「林檎のクリスタル」 |
ラウンジ「森の神話」は朝5時から営業。地元青森のリンゴを使ったスイーツ各種を用意する。
夕食は、地元・青森の食材を使ったバイキングが自慢。顧客前調理を旨とした「森のサラダ」をメインに据えた。星野リゾートの中でも高い顧客満足度を誇るという。
バイキング会場はサラダをメインに据える | 顧客の好みを聞きながら調理する |
森のサラダ | 地場野菜のヒバの香蒸し |
ラウンジ「森の神話」 | 源泉かけ流しの露天風呂「八重九重の湯」 |
奥入瀬渓流ホテルは、光熱費や集客の関係から12月~3月の期間中は休業している。山下総支配人は「満足度と利益率の改善をはかり、『お客様から1年を通じて開けてほしい』と言われるような宿を目指したい」と語る。
【2010年7月28日】貸し出し用レンズについて、「事前に要望があれば用意しているもの以外のレンズも準備できる」旨の内容を削除しました。
2010/7/23 00:00