写真展

ベンジー写真展「島へ ~魂のデブリ~」

(ニコンサロン)

「デブリ」とは「火山泥流などの堆積物」という意味である。

2013年11月20日、小笠原諸島の西之島近海に火山噴火による新しい陸地が誕生した。いまだ噴火は収まらず、新しい島は西之島を大きく飲み込むように成長している。この出来事は日々の生活の中でつい忘れてしまいがちだが、我々が「地震と火山の国」日本に住んでいるのだと再認識をすることになった。

伊豆諸島の三宅島もまた約20年周期に噴火すると言われている火山島だ。最近では2000年に噴火し、島民は火山ガスの影響で4年半もの避難生活を強いられた。そして今年2月、ようやく帰島10周年を迎えることができた。

作者がはじめて島を訪れたのは1987年。83年の噴火で溶岩流に飲み込まれた阿古地区の非日常的な光景と自然の再生に興味を持ち、90年までインスタントフィルムによるコラージュ作品「滅びと再生」を制作している。

2008年にたまたま見かけたテレビの旅番組、偶然にもそこにはあの懐かしい三宅島の風景があった。翌年、三宅島の雑種犬「ロック」のブログに引き寄せられるように再び島へ。

そして、情報収集のために島民たちのブログを見ているうちに彼らの写真の面白さに気が付き、作者は「「三宅島」島民4人と1ぴき」写真展を企画・プロデュースすることになった。

すると、彼らと話し合ううちに「どうして20年周期に噴火する島へ帰りたくなるのだろう?」という理解し難い思いが募ってきた。つまり20年前の自分では気にもしなかったことが不思議と気になりだしたのだ。そして作者は何度も訪問するうちに「もしかしたら三宅島それ自体が島民たちの魂を呼び寄せているのではないか? これは三宅島のすべてのものに宿るという神様の仕業に違いない」と思えてきたのだ。帰島への想い、それは「原風景」というよりは古きよき時代の信仰の名残のようなものに近いのかもしれない。三宅島は古代から「噴火と再生」を繰り返している。彼らはその大自然の中でその一部として生かされているのだ。

そして、いろいろあり、作者は6番目の島民「ベンジー」として20年ぶりにまたゼロから写真を始めることになった。

「デブリ」、それは魂の記憶の歴史。

インスタントフィルムによるコラージュなど、モノクロ・カラー約100点。

(写真展情報より)

会場・スケジュールなど

  • ・会場:新宿ニコンサロン
  • ・住所:東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階
  • ・会期:2015年10月20日火曜日~2015年11月2日月曜日
  • ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • ・休館:会期中無休
  • ・入場:無料

作者プロフィール

1964年岐阜県生まれ。東京綜合写真専門学校研究科卒業。88年~91年に写真展「HEART ISLAND」、「miyake」を開催し、写真集「miyake」を発表。

2011年に写真活動を再開し、同年「「三宅島」島民4人と1ぴき」(コニカミノルタプラザ)を企画・プロデュース。写真展に13年「「土に還る」~はじまりの島へ~」(コニカミノルタプラザ)がある。

(本誌:河野知佳)