写真展

八木隆太写真展「鼓動」

(ニコンサロン)

20世紀から21世紀へと時代が変わり、ハイテクノロジー化とシステム化が進む現代の社会は、生活の豊かさの向上や先進技術の進歩には目を見張るものがある。しかし、そういった表層的な社会の躍進とは裏腹に、社会全体の雰囲気には閉塞感が漂う。

テレビで流されるニュースからは様々な問題や犯罪が報じられ、先行く将来に不安を忍ばせる。文明の進歩とは対照的に、社会の人々の暮らしぶりからは、低迷という言葉が滲み出し、パズルのピースが上手く噛み合っていないようなちぐはぐな印象を受ける。

インターネットの普及はコミュニケーション方法に影響を与え、スマートフォンやパソコンは欠かせないツールとなった。コミュニケーションの表現方法でさえもデジタル化が広まり、伝統工芸品や手工芸品が衰退の一途を辿る。人間の感覚や勘を頼った技術はハイテクノロジー化へと移行していくこの時代にあって、写真の世界もデジタル化が進んでいる。デジタル化が広く浸透していくのは時代の流れであり、致し方ないことである。

しかし、表現の世界において利便性や結果重視の思考がもたらす影響も考えなければいけない。

手間暇をじっくりかけ、生まれ持った心と体を使い、自己の内にある不可視なものを型にする。もし、表現という人間だけに与えられた能力を他者の益へと向けられたなら、不協和音にも似たパズルのピースは上手く嵌め込むことができるのではないだろうか。モノクロ27点。

(写真展情報より)

会場・スケジュールなど

  • ・会場:ニコンサロンbis大阪
  • ・住所:大阪市北区梅田2-2-2ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階
  • ・会期:2015年4月16日木曜日~2015年4月22日水曜日
  • ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • ・休館:会期中無休
  • ・入場:無料

作者プロフィール

1981年宮城県生まれ。2009年東京綜合写真専門学校写真芸術第二学科卒業。11年同校研究科卒業。

写真展に、12年「蜃気楼」(Juna21 新宿・大阪ニコンサロン)がある。

(本誌:河野知佳)