イベントレポート

オールドレンズ限定フォトコンテストの表彰式が開催

風景・人物・オールドレンズの3部門 マニュアルフォーカスで捉えた見事な一瞬

「アルティザン・アンド・アーティスト 第2回フォトコンテスト」の授賞式が代官山北村写真機店サイネージスペースで行われた。

アルティザン・アンド・アーティストが開催するフォトコンテストは今回で2回目。1回目は、「ARTISAN&ARTIST Photo Contest 2016【Life with CAMERA】」として、2016年7月12日〜8月1日の応募期間で開催されていた。

ただしこちらは同社のイメージ画像を募るもので、テーマは「フォトライフの楽しみや、センスを感じられる日常写真」「記念写真のようなものやカメラ目線のものは避け、比較的動きのあるもの」だった。

今回は趣旨を変え、「風景」「人物」「オールドレンズ」という3部門による応募を実施。3部門からグランプリを各1作品選出した。

各グランプリの賞品は、風景部門がカメラバッグ「RR4-06C」。人物部門がカメラバッグ「LNCAM-1500」。オールドレンズ部門が「ライカ エルマーL 35mmF3.5」だった。

なお、審査員長は、写真家・ライターの澤村徹さんが担当している。

風景部門グランプリ
サトウジュンさん「ORION THE EXPRESS」
D4S / AF-S Nikkor 20mm f/1.8G ED / Kenko プロソフトン A

サトウジュンさんのコメント
この写真は、安曇野で1月1日に撮影したものです。星座早見盤を確認しながらSLとオリオンが入る角度を調整して撮りました。実は、フォトコンテストに応募したのが初めてで、しかも、作品として撮影したのも初めてでした。ですから、とても思い入れのある作品になりました。

選評
今回のフォトコンテストは海外の写真が殊の外多く、見ているだけで世界を旅するような興奮があった。とは言え、銀河鉄道で宇宙へ連れて行ってもらえるとは思わなかった。しかもアイディア一発の写真ではなく、じっくりと作り込まれた一枚だ。オリオン座の星々を丸く見せるために、いくつもの撮影上の工夫が見て取れる。アイディアと努力の賜物だ。

人物部門グランプリ
川原圭一さん「Rhythmic gymnastic」
ライカMモノクローム / Nokton 50mm f1.1

川原圭一さんのコメント
新体操クラブの中学3年生が被写体です。全国大会に出るような上手な子で、普段は練習を見させてもらえないのですが、5分だけ時間をもらって撮影しました。今度、高校生になるということで、新体操クラブを卒業するのですが、プリントを渡せて、しかもこういった賞を取れて、箔が付いたのかなと思います。

選評
これから跳躍しようする体操選手、彼女の張り詰めた気持ちが空気をかすかに震わせる。ソリッドな構図、白を基調としたモノクローム、それらは躍動する直前の緊張を象徴するかのようだ。その場を目にする以上に、この写真は臨場感を伝えてくれる。

オールドレンズ部門グランプリ
米山好人さん「鎌倉」 / ライカM8.2 / Industar-69 28mm F2.8

米山好人さんのコメント
タイトル通り、鎌倉で撮影しました。普段、絶景を求めて撮影するのではなく、日常を撮っています。この写真は、棒の上に鴉が止まっていて、ちょっと寂しげな秋の風情が、ススキと鴉で表現できて、良い写真が撮れたなと思います。

選評
2軒のあばら屋の隙間に小宇宙が広がっている。オールドレンズ的小宇宙とでも名付ければよいのか。積層する時間と廃れる生活の匂い。その奥に見える青空と海は、我関せずと飄々としている。この一枚に潜む感情は重い。そうした光景をロシア製ハーフサイズ用レンズという蒙昧なツールで捉えるところに、単なるドキュメントを超えた作品性が見て取れる。

審査員長を務めた澤村徹さんによると、選考には相当苦労したという。

「今回、絞り込みがなかなか進まずに4次選考まで行いました。それだけ、見応えのある作品が多かったと感じています」

「選考の基準には2つの要素があります。ひとつが“作品性の高い写真”です。これは、言い換えれば“何らかの表現が宿っている写真”となります」

「もうひとつが“伝えるための努力”です。写真というのは意外とぶっきらぼうで、自分の伝えたいことをビジュアルの中で丁寧に表現するというのが重要になります。その要素は、構図であったり、被写体であったり、トーンの調整であったりとさまざまですが、そうした部分がポイントになったかと思います」

澤村徹さん

授賞式の後には、澤村徹さんによるトークショー「澤村徹のマイベストオールドレンズ」も開催された。トークショーでは、「取材」「家族写真」「作品作り」という3つにおける澤村さんのオススメレンズとその使い方について聞くことができた。

今回のコンテストは、第1回と比べ応募数も大幅に増え、海外からの応募があるなど、コンテストの規模が大きくなったという。また、第3回も予定しているそうだ。

飯塚直

(いいづか なお)パソコン誌&カメラ誌を中心に編集・執筆活動を行なうフリーランスエディター。DTP誌出身ということもあり、商業用途で使われる大判プリンタから家庭用のインクジェット複合機までの幅広いプリンタ群、スキャナ、デジタルカメラなどのイメージング機器を得意とする。