イベントレポート
写真愛好家向けのNASセミナーが実施
むらいさちさん「気兼ねなく大容量を使えるのは魅力」
2017年1月13日 08:00
SynologyおよびSEAGATEが主宰する写真愛好家向けセミナーが12月15日、都内で開催された。
基本的なNASの構造や、外付けHDDなど他カテゴリーのストレージとの比較、NASを使う上で必要な基礎知識を中心にレクチャーする主旨のセミナー。初めて写真用ストレージとしてNASを使う場合のメリットや注意点について解説する、ライトユーザー向けの内容となった。
参加したのは、写真家のむらいさちさんと、むらいさんの呼びかけで集まった写真愛好家7名。
本セミナーで解説されたテーマは大きく分けて3つ。「保存媒体ごとの特徴の違い」、「写真用ストレージとしてNASを運用するメリット」、「実際の運用方法」について、Synology製品の国内販売代理店・株式会社フィールドレイクの小川将司営業企画部長がレクチャーを行なった。
データ保存媒体は一長一短
保存媒体ごとの違いについては、容量あたりの単価や携帯性、コストなどを軸として説明。写真を保存するうえで留意すべきポイントとしては「取り込みが簡単であること」、「大容量」、「データへの不正アクセスを防ぐ機能がある」、「データ移行が簡単である」、「モバイル連携機能がある点」を挙げた。
外付けHDDは、GBあたりの単価が手頃(4円/1GB)である一方、基本的にPCと接続して使うことを前提としていることから、デバイス単体ではデータの移動や加工に制限がある点をデメリットとしている。
PC内蔵HDDは、写真データを読み込ませた段階ですぐに加工できる点がメリットだが、その分PCごと買い換える際のデータ移行の手間や、故障リスクが問題になる。
クラウドストレージは、ユーザー側のハードウェアトラブルによって保存データが消失する心配もないが、サービスごとに定められたポリシーによってプライバシーが侵害されるおそれがあるほか、利用できる容量や費用もまちまちで、サービス内容が変更される可能性もゼロではない。
メモリーカードは、保存スペースをとらず携行性が高いことから運用の手間は小さいが、長期間保存しているうちに保存データが消失するリスクがある。
セミナーでは、PCとセットで使うことを想定したクラウドストレージ以外のこうしたデバイス群を指して「DAS」(Direct Attached Strage)と呼び、NAS(Network Attached Strage)との相違点も説明した。
DASに対するNASの特徴としては、複数のユーザーから同時アクセスが可能で、非常に大容量なストレージが利用できる点、ブラウザやアプリ上から独自のUIで様々な管理機能が利用できる点、また複数のストレージを搭載することで、RAIDによるバックアップ機能を有する点などを長所として挙げている。
一方で、DASのように接続後すぐに使えるわけではなく、多機能であるがゆえに初期設定がやや煩雑であるという短所にも言及した。
写真用ストレージとしてNASを運用するメリットとしては、利用可能な各種機能のうち、複数のHDDにバックアップ向けのRAID 1(ミラーリング)を挙げた。この中で、Synology製NASが搭載しているRAID自動管理機能「Synology Hybrid RAID」(SHR)も紹介。SHRは、ストレージの交換や増設を行なった際のリビルド中でも、比較的短時間でストレージを利用できるようになる点が特徴。複数NAS間でデータをバックアップする機能などが利用可能だが、RAIDシステムの自動管理を行なう特性から、RAIDについて深い知識がなくても使える点もメリットとして挙げている。
外付けHDDが山積みのストレージ運用を変えたい
本セミナーに参加していた写真家のむらいさちさんに話を聞いた。
――写真を保存しておくストレージはどのように運用していますか?
今は外付けHDDに写真をひたすら保存しています。それがもう10数台くらいありますね。年に1台ペースで増えていってるし、年々データ量も増大してきているので、そろそろなんとかしないといけないなとは思っていました。
そんな中、今回のセミナーを受講してみないかという話がきて、NASについて知る機会ができたのはすごくよかったと思います。
――今回、NASに関するセミナーを聞いて、ストレージに対する認識は変わりましたか?
今まで、NASという単語は聞いたことがあったのですが、正直PCにはあまり強くないので遠い存在だと思っていました。でも実際に詳しく話を聞いてみると、すごく便利だなという印象を受けました。初期投資はやや高めですが、やはり気兼ねなく大容量を利用できるのには魅力を感じます。
個人的には、検索機能があるのはありがたいです。仕事上、数年前の写真が必要になることもあるのですが、これまではかすかな記憶を頼りに、いくつかある外付けHDDの中からあたりを付けて探す、なんてことをしていたのですが(笑)、ちゃんとNASを運用していれば、そういうこともなくなりますよね。
――NASの機能の中で、魅力を感じたものはありますか?
機能という点でいえば、ぼくは年中ロケに出ていて、ほとんど家にいないので、モバイルで写真のやりとりができるのはすごく良いと思いました。これまでは、旅先で「以前の写真が欲しい」という連絡が来ても、ぼくが帰国するまで待ってもらったりしていたので……
同じ理由で、フォルダ共有機能も特に使ってみたい機能です。すでにストレージに保存している写真をクライアントに見せるだけなら、データを圧縮して、「宅ファイル便」とかにアップして、URLをメールやメッセンジャーで送る、といった手間が省けるので、仕事のスピード感が上がって良いですよね。
みんなの写真データをそのまま共有できる"場"にしたい
一般の参加者にも話を聞いてみた。
――NASを使ったことはありますか?
まだ、ありません。仕事場で、ファイルを共有できるツールとして、NASというものがあるというのは聞いていたのですが、実際に何ができて、ハードウェアとしてどういうものかというところまではよく知らなかったです。
こういうものに関して実際の使い方を深く聞ける機会というのもなかなかないと思うので、そういった意味でも、今回のセミナーは勉強になりました。
――普段、写真を保存するときはどうしているのですか?
外付けHDDを使っています。私は撮影データをJPEG+RAWで保存しているのですが、やはりデータ量も大きくなるので、残り容量をあっという間に使い切ってしまうのが悩みどころです。気付いたらすぐに2TBくらいに達してしまうので、撮影した写真を取捨選択してやりくりしています。
今回のお話を聞いた限りでは、NASを使って写真仲間に写真データをそのまま共有できる環境が構築できたらいいな、と思いました。
――写真データをそのまま共有するというのは、どういう用途を想定されていますか?
たとえば、みんなで同じ時間、同じ場所で同じものを撮ったときにリアルタイムで共有できれば、それぞれがどんな違いのある写真を撮ったのか見比べて、議論が深められると思うのです。
特に写真家の方が主催するワークショップに参加した時にそれができたら、面白いのではないかと考えています。講評のために提出した1枚とか2枚だけを見つめるのも良いのですが、みんなが撮ったそれ以外の写真をもっと見てみたいし、そこから学べることもあるのではないかと、いつも思っています。そうしたときに、撮影データをアップする場として活用してみたいですね。
――NASの機能の中で、これはいいな、と思った機能はありますか?
写真を共有する使い方の中で、個々のユーザーに権限を与えられる機能は便利そうでした。自分が把握しきれる、自分の管理下にある小さなネットワークの中ですべて完結させられるというのは、セキュリティ的にも安心ですよね。