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ニコンDfの発表会で後藤哲朗氏が企画説明

「肩の力を抜いて、写真に専念するカメラ」

 ニコンは5日、デジタル一眼レフカメラ「Df」の製品発表会を都内で行なった。本稿ではその模様についてレポートする。

ニコンイメージングジャパン取締役社長の五代厚司氏(中央)、ニコン 映像カンパニー開発本部長の山本哲也氏(中央左)、ニコンフェロー 映像カンパニー 後藤研究室長の後藤哲郎氏(中央右)
ニコンDf

 Dfは、35mmフルサイズ相当のCMOSセンサーを採用するデジタル一眼レフカメラ。メカニカルダイヤルによる操作感などを重視した、写真趣味層向けのモデル。店頭予想価格はボディ単体が28万円前後、特別デザインの50mm F1.8 Gが付属するキットで30万円前後。11月28日に発売する。機種についての詳細は、記事末のニコンDf関連記事リンク集より既報記事を参照頂きたい。

「肩の力を抜いて、写真に専念するカメラ」(後藤氏)

 ステージには、製品発表に先駆けニコンイメージングジャパン取締役社長の五代厚司氏が登壇。このところ日本国内のデジタルカメラ市場が好調に推移していると前置き、日本のカメラ・写真の文化には、愛好家、刺激を与え啓蒙する写真家、情報発信するメディアといった厚い基盤があると説明した。

ニコンイメージングジャパン取締役社長の五代厚司氏

 続いて、スクリーンには11月5日に先駆けて公開されたティーザー映像を上映。上映が終わり照明がつくと、壇上にニコンフェロー 後藤哲郎氏の姿があった。

 後藤氏は、新製品について企画・開発の背景を説明。こうして発表会で登壇するのは2007年の「D3」以来、6年ぶりのことという。新製品は自身が室長を務める後藤研究室で企画したもので、“ルーチン”で開発したカメラではないと説明。コンセプトを間違いなく伝えるために登壇した、とのことだ。

ニコンフェロー 映像カンパニー 後藤研究室長の後藤哲郎氏

 先駆けて行なわれたティーザー広告や発表会のようなイベントを見ると、会社として利益達成については本気だが、カメラ自体は「肩の力を抜いて、写真を撮ることに専念してもらう製品」と説明した。

 2009年に設立した後藤研究室のミッションは、デジカメ全盛の現在は旧来のカメラメーカーだけでなく電機メーカーとのサバイバルになっており、そこでニコンが生き残るには存在価値・ブランドイメージを向上させなければいけないと考えたため。「電気や電波といった“飛び道具”も必要だが、それだけではライバルメーカーに一歩劣る心配がある」と述べた。

 そこでニコンには光学、メカニズム、操作性、画像などアナログ的な独自性があると分析し、商品や作品を目にして、触って、動作音を感じて、といった言葉で表現しにくいものを形にすることを目指した。

 後藤研究室は日頃、製品や技術に関する提案を行なっており、ルーチンの機種開発にも助言するという。また、ユーザーの声を聞く活動もしているそうだ。その活動の中で、昨今のデジタルカメラは「どれも右へならえで、ロゴを隠せばみな同じ」と感じ、(カメラに)“使われ(ている)感”、があると考えていたそうだ。撮影枚数や歩留まりを意識するなら通常のデジタル一眼レフカメラでいいが、今回の機種はちょっと違う、と話す。

 今回の新機種(後述のニコンDf)は2009年の夏に検討を開始。研究室であっというまに製品の見た目も決まったそうだ。ニコン独自ではなく、普遍性のあるような性格のものを目指した。世間では“スローライフ”や“LOHAS”という言葉が流行っていた頃だそうだ。

企画コンセプト

 Dfのイメージを「D4やD800などを忙しく使っている方でも、日曜日はこれを提げてふらりと出かけて欲しい」と話す後藤氏。2009年の秋には実現性の高いスケッチが出来上がり、デザイナー有志と精密なモックを作成した。

 そして社内で反応を聞いて回ったところ、後藤氏が「30年やっていて、ここまでまっ二つに分かれたのは初めて」と語るほどの賛否両論だったと話す。“後ろ向き”、“アナクロ”、“そんなに暇ならもう1機種つくれ”などと言われる一方で、賛成意見も強かった。「工場も含め写真を撮っているメンバーからは大賛成。ぜひ開発したいというメンバーがあった。上層にも協力な賛同者があり、なんとか開発できた」と語る。開発は、自然災害や大物(D4など)を開発するミッションもあり、通常より長くかかったそうだ。

 かつてから「ニコンS3(銀塩レンジファインダー機)をデジタルで」「ニコンF(銀塩一眼レフ)をデジタルで」など声はあり、“市場でそっと探りを入れた”ところ、かなり賛同者が出てくると自信を持ったという。

 デジタルカメラでは本来カメラづくりの自由度が高くなるはずと考え、楽しみ方の多様性にこたえるのが今回の製品。あくまで肩の力を抜いて、大人の写真生活を楽しんでほしいと締めくくった。

 ニコンDfは13時に全世界同時発表。壇上でカメラと「Df」の名が披露されると、新製品の詳細説明に移った。

MFニッコールレンズの装着例

「カメラが精密機器であることを再認識させる造形美」(三浦氏)

 次にニコン 映像カンパニー開発本部長の山本哲也氏がDfの概要を説明。メカニカルダイヤル、フラッグシップ機画質、FX最小最軽量をキーポイントに、写真趣味層をターゲットとした。ニコンDシリーズの1モデルではあるが、独自の存在(ONLY ONE D-SLR)を掲げる。

ニコン 映像カンパニー開発本部長の山本哲也氏

 カメラ性能面では、小型軽量ボディにフラッグシップ機「D4」同等のセンサーを搭載。時間、場所、光量の制約から解放し、表現領域と自由度を拡大したとする。手応えのある操作性とフラッグシップ機画質をFX最小最軽量ボディに凝縮し、コンセプトをfusion(融合)名付けた。

Dfのターゲット
Dfのポジショニング

 続けてDfのプロダクトマネージャーであるニコン映像カンパニー 後藤研究室兼マーケティング本部 第一マーケティング部 第一マーケティング課の三浦康晶氏は、Dfの詳細解説を行なった。

ニコン 映像カンパニー 後藤研究室兼マーケティング本部 第一マーケティング部 第一マーケティング課の三浦康晶氏

 メカニカルダイヤルは、シャッタースピード、ISO感度、露出補正、露出モード、レリーズモードなどに採用。シャッター速度が1段刻みになるなどいくつかの機能が従来と異なってくるが、前後に備わるDシリーズらしいコマンドダイヤルで1/3段ステップの設定も可能。ケーブルレリーズに対応し、シンクロターミナルも備える。

メカニカルダイヤルについて

 外観は「フィルム時代のデザインテイストを継承できた」とし、その強調のために小振りなグリップにレザー調の外装を施し、直線部を基調としたペンタ部にはフィルム時代のレザー風外装を施し、従来のニコンフィルムカメラのオマージュとしている」と話した。

 撮像素子はD4と同じ有効1,625万画素の35mmフルサイズ相当(ニコンFXフォーマット)。常用感度はISO100-12800で、拡張ではISO50相当からHi 4のISO204800相当まで設定できる。画像処理エンジンもEXPEED 3でD4と同じとした。それらによる高感度画質、階調性、発色、シャープな描写を画質面での特徴とする。

 また、ボディは体積比でニコンFX機最小。これまで最軽量だった「D610」からも本体のみで50gの軽量化がなされている。

作例も示しながら説明した
FX最小最軽量も特徴とする

 外装は、上面、背面、底面にマグネシウムダイキャストカバーを採用。高い堅牢性を持つとする。カバーのあわせ部分にはシーリングやパッキン類を多用し、防塵防滴とした。シャッター耐久は15万回、コマ速は5.5コマ/秒とした。

 ファインダーはガラスペンタプリズムで視野率100%。丸型の接眼アイピースを採用し、既発の各種アクセサリーに対応するという。液晶モニターはD4と同じ3.2型92万ドット。強化ガラスを採用する。また工夫として、GUIデザインDfに合わせてモノトーン化し、上面の液晶バックライトもニコン初の白色を採用したと付け加えた。

 動画機能は非搭載。ライブビューでは3分割・4分割の格子線を利用可能。16:9、1:1の目安線も表示可能。ライブビュー画面上でホワイトバランスのプリセットができるスポットホワイトバランスにも対応。

 ボディカラーはシルバー、ブラックの2色。「往年の名機を彷彿とさせ、カメラが精密機器であることを再認識させる造形美」としている。既存のデジタル一眼レフカメラはエルゴノミックデザインで家電側に振れているのでは、との声があったそうだ。

 また、従来のニコンフィルム一眼レフを彷彿させるような工夫として、Dfの発売に合わせて用意したキットレンズは、シルバーリングが特徴的な「AF-S NIKKOR 50mm F1.8 G」の特別バージョン。光学系は同じだが、シルバーリングのほかにフォーカスリングのゴムローレットをAi・Ai-Sレンズのものとし、鏡筒部もカメラに合わせたレザートーン塗装にしたという。軽量でDfのデザインに合うとしていた。

 Dfでは非Aiのニッコールレンズへの対応も行なった。同社デジタル一眼レフで初という可倒式レバーを備え、絞り値を手動選択する必要があるものの、オールドレンズの味わいを最新のデジタル一眼レフカメラで楽しめるとしていた。

 Dfに向けたレザーストラップと革ケース各2色も別売で用意する。

Df用のレザーストラップとケース。各2色
名入れサービスも行なう
NIKKOR80周年記念の第3弾で進呈する「NIKKORレンズクロック」。対象レンズを購入した中から抽選で1,000名に贈る。フォーカスモードスイッチがアラームのオン/オフになっており、アラーム音はD4のシャッター音を忠実に再現したという。
スタンド部にシリアルナンバーがある
NIKKORレンズ発売80周年プロジェクトについては、既報の通り

「売れれば、またできる」(後藤氏)

 質疑応答では、Dfの製品化で苦労したポイントについて後藤氏が「自然災害などあり、開発の予定も狂った。沈静化まで時期を待った。また、D4やノンレフのNikon 1も同時に立ち上がっておりヒト、モノ、カネを集めるのに大変苦労した」と話した。図面上や生産上の苦労もあったものの、何より進行が一番の苦労だったという。

 また、Dfの満足度について尋ねられた後藤氏は、「正直、次に何をするとわかってしまいそうなので答えられない。F3からD3まで担当したが、いわゆる『あすなろ』で、“次はやるから今回はカンベンね”、の所存なので、担当したカメラに一度も100点をつけたことはない。今回もとても及ばない点がある」とコメント。また、「(Dfが)予定通り・予定以上に売れてニコンブランドが向上し、反対派がいなくなれれば、またできる。そのときはやりたい」と抱負を述べた。

 Dfのようなカメラを今出した意義について問われると、ニコンマーケティング本部 第一マーケティング部ゼネラルマネジャーの笹垣信明氏が回答。「Dfをやることになった決定要因は、高機能・多機能カメラもよいが、写真はやはり文化で趣味性の非常に高いもの。よくプロが“写真の歩留まり”という話をするが、効率よく写真を撮るだけでなく、カメラを持ち歩いたり、1日の会心の1枚が撮れるようなカメラがあってもいいのではないか。こうしたカメラを今後増やすかというとそうでもないと思う。だがカメラは両面あり、よりよい写真と、写真文化を広げるカメラ。これらを組み合わせることでカメラ産業の市場を広げていきたい」と述べた。

ニコン マーケティング本部 第一マーケティング部ゼネラルマネジャーの笹垣信明氏

 Dfのデザインモチーフについて尋ねられた後藤氏は、「日本中、世界中のカメラを参考にしたが、ニコンの商品なのでニコンのモチーフを優遇している」とし、「とはいえ、それらもドイツやイタリア、フランスから来ているものなので、“ニコンの”というものでもない。特にニコンを彷彿させるデザインにこぎ着けた」と語る。

 続けて三浦氏が「特定機種は真似ていないが、セルフタイマーはF3に合わせた。底カバーの電池蓋ロックはF2の裏蓋のロック部分に似せた。前面のプレビューボタンなどはF2、FM系のボタンデザインで、そうした“わかる人が見ればわかる”ような工夫はしている」と説明した。

 ペンタ部の特徴的ないわゆる「縦ロゴ」については、後藤氏が更に補足。「ニコンのロゴは決まっているので、社内でも通すのに苦労した。全体のフォルムを見た時に、どうも斜めのロゴは似合わない。縦ロゴ、ゴシックの力強い方がいいだろうと判断した」と経緯を語った。自身の率いる研究室が企画した製品とあってか、質疑応答においても後藤氏が自ら率先して回答していたのが印象的だった。

ニコンDfに込めた思いを語った後藤氏(質疑応答にて)

(本誌:鈴木誠)