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オリンパスペン・E-P1発売記念:知っておきたい「マイクロフォーサーズ」の現在とこれから


 いよいよ7月3日に発売される「オリンパス・ペンE-P1」。上質感にこだわり、スナップとポートレートに的を絞ったシンプルかつコンパクトなカメラだ。35mmという奥行きは、レンズ交換式デジタルカメラとして驚異的な薄さ。「マイクロフォーサーズシステム規格」(以下マイクロフォーサーズ)のメリットを説明するのに、格好のカメラといえるだろう。

 その一方で、マイクロフォーサーズシステム規格としては、パナソニックの「LUMIX DMC-G1」(2008年10月発売)、「LUMIX DMC-GH1」(2009年4月発売)が先行して発売され、好評を博しているのは周知の通りだ。

 銀塩ハーフ判一眼レフカメラの「ペンF」を想起させるE-P1と異なり、DMC-GH1/G1は現在のデジタル一眼レフカメラをスケールダウンさせたようなスタイリングであり、業務用ビデオカメラとほぼ同等といわれるEVFを搭載(E-P1はEVF非搭載)。金属外装にこだわったE-P1に対し、レンズ交換式カメラでは珍しい触感塗装や、赤を含めたカラーバリエーション展開を採用するなど、いまさらながら両社のコンセプトの違いが興味深く思える。

 このように同じ規格に則りながらも、コンセプトを異にするボディを実現できるところが、マイクロフォーサーズの自由度の高さともいえる。本稿では、改めてマイクロフォーサーズについてまとめると同時に、レンズをはじめとした現状のハードウェアについても紹介してみたい。

E-P1(シルバー) LUMIX DMC-GH1(コンフォートゴールド)

規格発表から製品化まで

 オリンパスとパナソニックがマイクロフォーサーズ規格を発表したのは、フォトキナ2009を約2か月後に控えた2008年8月5日だった。マイクロフォーサーズは既存の「フォーサーズシステム規格」の拡張規格であり、フォーサーズとの主な違いは次の3つになる。

  1. フランジバック(マウントと撮像素子との間隔)を50%短縮
  2. マウント外径を約6mm縮小
  3. マウント電気接点数を9点から11点に増加

 具体的なフランジバックは約20mm。このサイズにクイックリターンミラーを入れることはほぼ不可能であり、事実上「ライブビュー専用」の規格として出発したのだ。必然的にAFはコントラストAFのみとなり、つまり両社がフォーサーズ上で主導してきた「ライブビュー+対応レンズによるコントラストAF」路線を一歩進めたものといえる。

 また、1.のフラッジバックについては、オールドレンズファンにとって悲願ともいえるライカM/Lマウントの装着をはじめ、マウントアダプター遊びにおける格好のマスターボディとなることが期待された。事実DMC-G1の発売を受け、12月には宮本製作所がライカM用とキヤノンFD用のマウントアダプターの発売を予告。いずれも従来のデジタル一眼レフカメラへの装着が不可能だったレンズということで、当時オールドレンズファンの間で、DMC-G1の購入がちょっとしたブームに発展したのは記憶に新しい。

フラッジバックはフォーサーズの1/2 フォーサーズレンズ、マイクロフォーサーズレンズ、マウントアダプターの関係
マウント径を6mm縮小 通信用のピンを2つ追加
マウント径の違いを見せるサンプル。左がマイクロフォーサーズ、右がフォーサーズ

 3.も興味深い内容だ。発表当時、増設するピンはコントラストAFの強化と将来の拡張ためとされていた。DMC-G1の使用感で最も衝撃的だったコントラストAFの速度や、DMC-GH1およびE-P1のHD動画機能を見ると、このときの発表内容の意義が見えてくる。

 ちなみに、小誌が2008年8月に行なった「マイクロフォーサーズに期待することは?」と題したアンケートでは、8割の投票者が「小型軽量なボディ」に投票。以下、「高精度なコントラストAF」、「デジタル一眼カメラとしての基本性能」、「高画質かつタイムラグのないEVF」といった項目への投票数が伸びた。詳しくは該当記事を参照いただきたい。

 マイクロフォーサーズ規格採用モデルの製品化の発表は意外に早く、同年9月12日にはパナソニックがDMC-G1を発表。DMC-G1の発売は2008年10月31日であり、規格の発表から約3か月でのスピード導入を果たしたわけだ。なお発表と同日、パナソニックはDMC-G1をベースにした動画対応モデルの登場を示唆している。これは2009年4月発売のDMC-GH1として結実した。

 一方オリンパスは、9月23日に開幕したフォトキナ2009で、参考出品ながら現在のE-P1に通じるモックアップを展示。このモックアップはその後、PMA09、E-30ユーザーイベント、PIE2009などで披露された。ハーフ判のコンパクトカメラ「ペン」をイメージさせるモックアップだったが、6月16日に正式発表された「E-P1」は、レンズ交換式の「ペンF」と良く似たシルエットだった。

フォトキナ2009で参考出品されたDMC-G1ベースの動画対応機。後のDMC-GH1だ 同じくフォトキナ2009での参考出品。スタイリングがかなり変わったのがわかる

 

それぞれに個性ある3モデル

 ここで改めて、E-P1を含めた3機種を紹介したい。

●LUMIX DMC-G1

 世界初のマイクロフォーサーズ機であり、発売前から懸念されたEVF(パナソニックではLFVと呼称)の性能にファンが驚いた第1号機。AFも高速で、コントラストAFに特化したマイクロフォーサーズ規格の素性の良さと、専用設計レンズの力を見せつけた。しかも、ライブビューと相性の良いフリアーングル液晶を採用。最初に登場したDMC-G1の完成度が高かったからこそ、マイクロフォーサーズへの現在の高い注目度があるのもしれない。

レンズキットにはLUMIX G VARIO 14-45mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.が付属 LUMIX G VARIO 45-200mm F4-5.6 MEGA O.I.S.が付属するダブルズームレンズキットも選べる

 コンフォートブラック、コンフォートレッド、コンフォートブルーのカラーバリエーションも衝撃的だったし、外装の触感塗装や、前ダイヤルの押し込めるギミックも新鮮だった。それでいて、ペンタ部を思わせる内蔵ストロボ周りのデザインやボディ上部のツインダイヤルなど、一眼レフらしさを前面に出しているのが興味深い。「女流一眼隊」によるプロモーションも奇抜で、新しい規格にかけるパナソニックの意気込みが感じられた製品だ。

 現在は兄弟機のDMC-GH1が登場し、実売価格はボディのみ5万7,000円前後、レンズキット6万4,000円前後、ダブルズームレンズキットが8万円前後まで下がった。動画が必要としないなら、DMC-G1の方がコストパフォーマンスは高い。

●発売日:2008年10月 ●撮像素子:4/3型LiveMOS ●有効画素数:1,210万 ●ボディ内手ブレ補正:なし ●ダスト対策:あり ●液晶モニター:3型約46万ドット(フリーアングル式) ●ファインダー(EVF):あり ●連写速度:約3コマ/秒 ●動画:なし ●記録メディア:SDHC/SD

 

●LUMIX DMC-GH1

 DMC-G1をベースに、AVCHDでのフルHD動画記録機能を搭載したモデル。加えてマルチアスペクトの画素数がほぼ一定となり、アスペクト比1:1の撮影が可能になっている。コンパクトデジタルカメラのLUMIXの進化に合わせて、最新機能の個人認証も備えた。

「DMC-GH1K」キットにはLUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.が付属。フルタイムAFでのフルHD動画記録が可能だ 「DMC-GH1A」キットにはLUMIX G VARIO 14-45mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.が付属

 動画記録中のフルタイムAFを楽しむためには、「DMC-GH1K」キットに付属するLUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.が必要。それさえクリアすれば、レンズ交換式デジタルカメラでは、現在最強ともいえる動画AF環境が実現する。なお、ほかのマイクロフォーサーズレンズでも動画記録中のコンティニュアスAFは動作するが、その場合はフルHD以外の解像度を選択する必要があり、環境によってはAFが遅かったり、迷ったりする。静止画と動画の切り換えは、背面右上の動画ボタンで可能。マニュアル露出での動画記録にも対応している。

 カラーバリエーションは、コンフォートブラック、フォンフォートレッド、コンフォートゴールド。レンズキットはDMC-GH1Kに加えて、LUMIX G VARIO 14-45mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.が付属する「DMC-GH1A」が用意されている。実勢価格はDMC-GH1Kが14万9,800円前後、DMC-GH1Aが11万9,800円前後。

●発売日:2008年10月 ●撮像素子:4/3型LiveMOS ●有効画素数:1,210万 ●ボディ内手ブレ補正:なし ●ダスト対策:あり ●液晶モニター:3型約46万ドット(フリーアングル式) ●ファインダー(EVF):あり ●連写速度:約3.5コマ/秒 ●動画:1,980×1080ピクセル/60i(センサー出力24コマ/秒) ●記録メディア:SDHC/SD

 

●E-P1

 オリンパスがいよいよ投入する同社初のマイクロフォーサーズ機。35mmという薄さでボディ内手ブレ補正を搭載したところに、マイクロフォーサーズ規格とオリンパスの凄みを感じる。また、アルミ合金とステンレスを使ったボディは見れば見るほど豪奢で、オリンパスのいう上質感はかなりのもの。デザインも良く、女性を中心とした若年層に広がる「クラカメ指向」にフィットしそうな見た目だ。カラーバリエーションにホワイトがあるところや、最初からパンケーキレンズ(M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8)を用意するところも周到。ボディケースなどアクセサリーの充実度にも驚くばかりだ。

M.ZUIKO DIGITAL ED-14-42mm F3.5-5.6を装着。ボディカラーで付属するレンズの色が変わる こちらはパンケーキセットに付属するM.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8を装着したところ

 DMC-GH1/G1と異なり、内蔵ストロボもEVFも非搭載。さらに液晶モニターは固定式とシンプル。その代わり、オリンパスのレンズ交換式デジタルカメラとして初めて3型の液晶モニターを搭載した。操作部にもこだわりが見られ、サブダイヤルとメインダイヤルのツインダイヤルを備える。EVFはないが、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8が付属するキットには、光学式の外部ファインダー「VF-1」が付属する。VF-1使用時は、Fnボタンに液晶モニターの消灯を割り当てたい。

 E-30、E-620譲りとなる「アートフィルター」の搭載もトピック。E-P1では各アートフィルターをサブダイヤルで次々とプレビューできるようになり、選択時のストレスが軽減されている。また、720pのMotion JPEG動画にアートフィルターを施す「アートフィルタームービー」も搭載。アートフィルターによってはフレームレートが極端に落ちるが、それもまた効果として面白かったりする。

 レンズキットは3種類。価格はオープンプライスで、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6が付属するレンズキットが10万円前後。M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8が付属するパンケーキセットが11万円前後。両レンズが付属するツインレンズキットが13万円前後の見込み。

●発売日:7月3日 ●撮像素子:4/3型ハイスピードLiveMOS ●有効画素数:1,230万 ●ボディ内手ブレ補正:あり ●ダスト対策:あり ●液晶モニター:3型約23万ドット ●ファインダー:なし ●連写速度:約3コマ/秒 ●動画:1,280×720ピクセル、30fps ●記録メディア:SDHC/SD

 

 3機種の立ち位置を従来のデジタル一眼レフカメラのヒエラルキーに組み込んで考えようとすると、矛盾というか上手くいかない要素が出てきて興味深い。

 例えばE-P1は、ミドルクラスの成立条件ともいえるツインダイヤル(形状は一般的なものと異なるが)を装備。また、DMC-GH1/GH1とも液晶モニターは46万ドットの3型フリーアングルタイプとハイスペックだ。そもそもEVFなので光学ファインダーと比べるべきものではないかもしれないが、DMC-GH1/G1のファインダー視野率は100%であり、しかも下手なミドルクラスを凌駕する広さを持つ。加えて3機種ともダスト対策を装備。ボディ各部の造り込みも良く、特にE-P1の上質感はクラスというか時代を超えるものといえるだろう。

 現在、マイクロフォーサーズの弱点が露呈するのは、動く被写体の撮影時だ。デジタル一眼レフカメラの光学ファインダーの場合、シャッターレリーズ時はクイックリターンミラーが視界を一瞬遮るだけ。しかしDMC-GH1/G1では、レリーズするたびにライブビューがとまってしまう。静物をワンショットで撮るときなら気にならないが、動く被写体を連写するとコマ落ちビデオの様相となり、被写体の動きに追随してフレーミングすることが難しくなる。現状ではデジタル一眼レフカメラに比べて、スポーツなどの激しい動きを撮影するのは苦手といえそうだ。

 

何となくマニアックなレンズラインナップ

 レンズを使い回せるところも共通規格の長所だろう。パナソニックだけだったマイクロフォーサーズレンズに今夏からオリンパスが加わり、計6製品が揃った。加えて両社はレンズの発売に関するロードマップを発表しており、今後のラインナップ充実にも期待できる。

 さらにマウントアダプターを介して、無限ともいえるオールドレンズを楽しめるのもマイクロフォーサーズの魅力だ。画角が焦点距離表記の2倍相当になるのは正直つらいが、3機種ともMFアシストが使いやすく、銘レンズを気軽に楽しむには都合が良い。興味のある方は、中村文夫氏がDMC-G1とオールドレンズを試した一連の記事をご参照いただきたい。


●オリンパス

 E-P1本体と同時発売のレンズは次の2つ。

M.ZUIKO DIGITAL ED-14-42mm F3.5-5.6。ブラックとシルバーが存在する。価格は3万6,750円 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8。価格は4万9,875円

 上記に加えて、オリンパスでは「小型超広角ズームレンズ」と「小型高倍率ズームレンズ」を2010年春までに用意するという。

 

●パナソニック

 現在のラインナップは下記の通り。

LUMIX G VARIO 14-45mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.。価格は3万6,750円 LUMIX G VARIO 45-200mm F4-5.6 MEGA O.I.S.。価格は4万9,350円
LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.。価格は10万6,050円 LUMIX G VARIO 7-14mm F4 ASPH.。価格は12万4,905円

 今後のロードマップとしては、「20mm F1.7」と「45mm F2.8 MEGA O.I.S. Marcro」がアナウンスされている。

20mm F1.7をDMC-GH1に装着 45mm F2.8 MEGA O.I.S. Marcro

 いずれにしても、フォーサーズや他社のマウントと比べて選択肢は少ない。とりわけ大口径ズームレンズが手薄だ。ただし、薄型単焦点レンズが両社から出るところに、マイクロフォーサーズという規格の特色が良く出ていると思う。34mm相当と40mm相当から単焦点レンズが選べて、それぞれがAFに対応したデジタル専用。ペンタックスユーザーはともかく、他マウントのユーザーから見るとちょっと贅沢かもしれない。それよりも気になるのは、レンズ単体で購入した際の価格が比較的高価なことか。

 いずれにしても、現状ではスナップ派やカフェ写真派に魅力的なマイクロフォーサーズ。ミラーボックスやファインダーの制約がない有利・不利はあるものの、今後の発展を多いに期待したい。

 

【2009年7月3日】画像キャプション中、「フランジバックはフォーサーズの2倍」という記述がありました。「フランジバックはフォーサーズの1/2」に改めました。

(本誌:折本幸治)

2009/7/2 20:53


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