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【特別版】この時期気になる「防湿庫」の仕組みと実際


東洋リビングで一番人気があるという「ED-82CDA」。光触媒を搭載した「オートクリーンドライ」シリーズのひとつで、内容量74リットルの中級クラスだ。標準価格は5万800円
 夏のボーナス時季の到来とともに、関東圏にある我が家は梅雨入りを迎える。室内がジメジメとしはじめ、なんとも寝苦しい季節だ。私事で恐縮だが、数年前にレンズを数本カビでやられた経験がある。そこでクリアボックスにレンズをしまい、その中に乾燥剤を入れてみた。乾燥剤の効果はてき面で、その後目立ったカビの被害はなくなった。

 しかし、やってみるとこれが面倒臭い。ひとつは「乾燥剤の取替え」だ。そしてもうひとつが「湿度の管理ができない」こと。というのも、乾燥剤は密閉された空間の水分を手当たり次第に吸収するため、例えば蛇腹を使うクラシックカメラだと、過度に乾燥した環境では蛇腹が劣化してボロボロになる。レンズであれば、ヘリコイド部のグリスなどに影響を与えるそうだ。つまり乾燥するだけでなく、適度な湿度も必要だということ。乾燥剤を自分で取り替えつつ、常に湿度をベストに整えるのは並大抵の努力ではない。

 そこで思い浮かぶのが、カメラ機材の収納で定番ともいえる「防湿庫」だ。見た目が少々大げさだし、設置場所もそれなりに必要、さらにクリアケースよりだいぶ値が張るわけで、その実力が気になるところだ。同じように悩んでいる読者もいることだろう。そこで、防湿庫メーカーの東洋リビングとトーリ・ハンの2社に話をうかがいながら、防湿庫の必要性を考えてみた。


全自動で適度な湿度にコントロール

こちらはトーリ・ハンの売れ筋モデル、ニュードライ・キャビ「H-110-DD」。110リットルで上下分割式の扉を採用。標準価格は6万6,000円
 ご存知の通り、庫内の湿度と温度を一定に維持する保管用キャビネットだ。主要な構成要素は、キャビネット、扉、そして湿度コントロールをアクティブに行なう「除湿ユニット」からなる。キャビネットは通常スチール製で、扉はガラス製。扉のふちは冷蔵庫のようにゴムでシーリングされ、ただのガラス棚より密閉度は高い。

 サイズは豊富で、保管する機材に合わせた容量を選べる。マンションへの入居率の高さや、デジタル一眼レフカメラの入門者が増えたこともあり、最近では薄型で卓上に置けるほどコンパクトなモデルが人気を博しているという。

 実売価格は、オーソドックスな12〜15本のレンズおよびカメラボディなどを収納できるタイプ(80〜100リットルタイプ)でおよそ4万〜5万円。18〜21本程度のレンズやカメラボディを収納できる比較的大型のタイプは、だいたい4万5,000〜7万000円となる。レンズ10本未満の小型タイプだと、3万5,000円程度で購入可能だ。

 そもそもレンズに生えるカビは、60%前後の湿度で発生するという。そこで湿度を40%以下にすることで発生を抑え、死滅できるそうだ。ただし、前述したように、湿度を下げすぎるといろいろと不都合もでてくるので、シッカリと管理できる環境が必要だ。防湿庫はそれらを自動的に行なってくれるわけだ。

 「湿気による“湿害”、つまりカビの発生や、金属部分の錆びを抑える効果が期待できます。また、湿度の調整もできます」。そう防湿庫の基本を語るのは、トーリ・ハン取締役社長の原章氏。また、単純に湿気を抑えるだけでなく、「気密性を重視しているので、ゴミやホコリの侵入を防げる」(原氏)という。なるほど、防湿庫の扉に隙間はほとんどないので、カメラやレンズの保管におけるもうひとつの敵、ホコリへの対策になるわけだ。

 ちなみに家庭用の除湿機でも、防湿庫と同じような湿度コントロールが可能だろうか。原氏によると、家庭用の除湿機では湿度を50%以下に設定できるものは少ないそうだ。

 東洋リビングの業務部担当部長、室井國雄氏も、同様の理由で防湿庫の優位性を説く。煩雑な湿度コントロールを自動的に行ない、さらに「マット付きの引き出し棚によって、レンズやボディをキズつけることなく収納できる」(室井氏)とのことで、カメラ機材に合わせた設計も特徴。整理整頓の面でもオススメできるという。


サイズ別ラインナップの例。東洋リビングのオートクリーンドライシリーズ。左からED-42CDA(38リットル/3万7,905円)、ED-52CDA(50リットル/4万2,286円)、ED-82CDA(74リットル/4万8,381円)、ED-102CDA(110リットル/5万5,429円)、ED-132CDA(130リットル/5万9,905円)、ED-152DEA(152リットル/6万5,043円)

こちらはトーリ・ハンのニュードライ・キャビHD-B型。デジタル湿度計を備えた上位シリーズ(後述)もある。左からHD-60B(55リットル/4万4,100円)、HD-80B(75リットル/5万1,800円)、HD-110B(106リットル/5万8,900円)、HD-130B(131リットル/6万7,900円)

湿度コントロールの仕組み

 除湿ユニットは防湿庫のキモであるだけに、各社工夫を凝らしている。

 例えば、トーリ・ハンの除湿ユニットの内部には、湿気を吸収するための乾燥剤が備えられている。この乾燥剤が庫内の湿度を下げる役目を受け持つが、永遠に湿気を吸収し続けることはできない。そこで乾燥剤が吸湿の限界を超えて庫内の湿度が設定以上になると、ポジスターと呼ばれる加熱体に信号が送られ熱を帯びる。乾燥剤の吸湿力が復元するとともに、加熱時に全長が変化するように作られた形状記憶合金コイルが長くなる。形状記憶合金コイルが伸びると、排気/吸気シャッターと連動するバイアスバネの長さが変化。排気/吸気シャッターが開閉し、庫内の空気が庫外へと排出される。


トーリ・ハン製除湿ユニットの機構概念図。中央の乾燥剤の吸湿力が落ちると、オレンジ色で示したポジスター(加熱体)が熱くなる。すると、赤いバネ(加熱伸張式形状記憶合金)の形状が変化。弁が開き、蒸気が庫外に排気される


こちらは東洋リビングの除湿ユニットの機構概念図

 一定時間後(約40分)、形状記憶合金の形が元に戻って排気シャッターが閉まり、吸湿を開始。と、意外にシンプルな仕組みだが、構造の単純化と信頼性の高いパーツを使っているのが特徴となる。東洋リビングでも、除湿ユニットの基本的な構造は同じだ。

 ただし東洋リビングでは、昨年から「オートクリーンドライ」シリーズの除湿ユニットに、光触媒を組み込んでいる。一般的に光触媒は、光を当てると強い酸化作用が発生し、有害物質などの分解を促すものとして知られる。触媒としては、酸化チタンの利用例が有名だ。


東洋リビング「オートクリーンドライ」の除湿ユニット。光触媒を搭載

 オートクリーンドライも酸化チタンを採用し、光源にはLEDを使用。その効果は、「空気中の有害な物質を死滅させることができます。より高い安心を提供できていると思います」(室井氏)、「デジタル一眼レフの撮像素子には、放置しておくとガスのようなゴミが付着するのですが、光触媒によってそれを防ぐことができます」(同)とのことだ。

 防湿庫は気密性が高いため、吸気や排気のとき以外、基本的に空気の流れはない。空気を触媒に当てない限り、光触媒の効果は現れないはずだ。しかしボジスターの熱による対流効果があるため、庫内の空気はゆっくりと循環しており、問題はないそうだ。

 ところで、防湿ユニットは家庭用電源で常時動作する。気になる電気代は「1カ月で30〜50円程度」(原氏)。ワンドリンクよりも安く、ランニングコストの面で大きな問題はないだろう。ちなみに、湿度の変化が多いほど電気を必要とするので、頻繁にカメラやレンズの出し入れをしている人ほど維持費が高くなるという。

 耐久性も高い。保証期間が5年の機種があることが、それを物語っている。取材中、約20年前から使われ続けた除湿ユニットを見せていただいた。「壊れているからメンテナンスをしてほしい」と依頼を受けたものだが、調べてみると正常に稼動する。壊れていたのは除湿ユニットではなく、湿度計だったそうだ。また、防湿庫は常時スタンバイ状態で設置されるものだが、ほとんど無音で揺れも感じられない。

 実用性が高く、簡便な製品に思えるが、何か注意することはないのだろうか。

「基本的に特別なメンテナンスをする必要はありません。ただ、ドライヤーなどを使って余計な水分を飛ばすと良いかも知れません。ホコリを落とすこともできますし、防湿庫内に入り込むゴミを減らすことができます」(室井氏)

「どうしても気になるのであれば、一度メーカーのチェックを受けることをオススメします。一度カビが生えてしまうと分解清掃以外に取り除くことは難しくなります。また、湿度を下げてカビを死滅させることに成功したとしても、死骸はレンズ内に残りますから注意が必要です」(原氏)


時代に合わせた新機能も

トーリ・ハンのH-DD型やT-DD2型は、庫内と庫外の湿度を同時表示するデジタル湿度計を備える。また、デジタル機器の充電用にトップコンセントを前面上部に搭載するモデルも
 壊れることが少なく、ものによっては約20年という長期にわたって使われ続けている防湿庫。構造や性能に劇的な変化はないものの、最近は新機能を備えた製品も存在する。前出の光触媒もそうだが、ちょっとしたアイデアが光る装備もある。

 「好評なのは、前面にバッテリーなどの充電に利用できるコンセントを備えたモデル。カメラやレンズの保管と、バッテリーの充電を一箇所で行なえるため便利だと思います。携帯電話の充電にもどうぞ。また、庫内と庫外の湿度をデジタル湿度計で表示できるので、湿度の変化をカンタンに把握できるのもポイントですね」(原氏)。

 その昔、防湿庫というのはあくまでもプロ写真家、カメラ販売店、大学などの各種研究施設、博物館などで業務用として利用された。前者は機材を守るため、後者は湿度の変化によって劣化してしまう資料類を守るためだ。カメラ系量販店が取り扱い出してからはハイアマチュアを中心に認知が進んだものの、その特殊性からコンシューマー層には浸透しづらく、高価な専門アイテムとして認識され続けているという。

 しかし、デジタル一眼レフカメラが低価格化して普及が進む中、機材と同等に保管場所にもこだわるのは悪いことではないだろう。取材を通して改めて、クリアボックスと乾燥剤では得られない、メンテナンスフリーのカビ対策に魅力を覚えた。



URL
  東洋リビング
  http://www.toyoliving.co.jp/
  トーリ・ハン
  http://www.dry-cabi.co.jp/


( 飯塚直 )
2008/06/13 00:04
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