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W KOMURA「24mm F4 (ニコンFマウント)」

~意外と使えるクラシックな広角レンズ

【注意】クラシックレンズの使用については、万が一、キズ、故障、破損などのトラブルが発生しても、一切の問題についてその責任は筆者もデジカメWatch編集部は負いませんのでご了解ください。


W KOMURA 24mm F4 (ニコンFマウント)
 今、レンズメーカーと言えばシグマ、タムロン、トキナーのほか、FマウントやライカMマウント互換のツァイスレンズをリリースしているコシナなどがある。1980年代以前には、現存する以外のレンズメーカーが多数あり、中でもメジャーな存在のメーカーとしてコムラーやサンがあった。

 過去の資料を調べると、コムラーは35mm判の交換レンズのほか、中判や大判カメラ用の交換レンズを発売していた。またリアコンバーターの代名詞的存在のテレモアというヒット商品もあり、名門ともいえる存在であったように思える。昭和40年代のカメラ雑誌の広告には、コムラー925(90-250mm)などのズームレンズも紹介されており、当時のレンズメーカーとしては相当の技術力があったようだ。


24mm F4という決して明るくないスペックながら、レンズのフィルター径が67mmと大柄。S5 Proにちょうどいい大きさ
 ブランド名はコムラーだが、メーカー名は三協光機。十数年前に中古で購入したコムラーレンズが、先日機材庫の奥から出てきた。レンズ名はW KOMURA 24mm F4とある。コムラーのレンズはマウント交換式だが、カメラの自動絞りに対応するものと、それ以前の自動絞りに対応せず、プリセット絞りのものがあるようだが、持っていたレンズはプリセット絞りのものだ。


プリセット絞り。かつてのオリンパスOMレンズのように、レンズ前方に絞り環がある。黒いリングであらかじめ絞り値をセット。撮影寸前に銀のリングを回して実際の絞り値をセットする
 作られた当時はまだ、モノクロが主流だったように思われるし、レンズ面を見るとアンバー系のコートが見えるだけなので、カラーで撮るのに対応できるのだろうか、と不安に思いつつも愛機FinePix S5 Pro(以下、S5 Pro)に取り付けてみた。

 単焦点レンズながら、フィルター径が大きめで迫力のあるデザインは、大柄なS5 Proとも似合う。24mm+F4という組み合わせなのだかこんなに径が大きくなくても良さそうなものだが、当時の技術で周辺光量を確保するためには仕方がなかったのだろうか。ピントリングのクラシックなデザインと、黒とシルバーの色のコントラストで、見栄えがする外観だ。


当時のニッコールレンズと並べてみた。ニッコールレンズのカニの爪が見える絞り環で、マウント部の径はW KOMURAよりも大きい
 ニッコールレンズは、1977年のAi化前後で大きく分けられる。Aiは開放F値自動補正方式、レンズの絞り環の切り欠きで絞りの情報をカメラに伝える。Ai以前のレンズが絞り環に設けられた、いわゆる「カニの爪」で絞りの情報をカメラに伝えていたのが、Aiで大きく形状が変わったのだ。

 Ai以前のレンズも、かつてニコンが改造によってAi化することは可能だったが、すでに受け付け期間は終了している。今のニコンのカメラ(ニコンがベースの富士フイルムFinePix S一桁シリーズも含む)は、AiまたはAi改造が行なわれたレンズしか取り付けることができない。Aiの連動ピンがそれ以前のレンズ絞り環の形状に干渉し、取り付けができないからだ。手持ちのW KOMURAは本来、Ai以前の仕様に準じているのでS5 Proに取り付けできないはずなのだが、プリセット絞りの関係で絞り環がレンズ前側にあり、マウント側は当時のニッコールレンズよりも細いため、Ai連動ピンに干渉しない。当時のレンズをS5 Proで試せるのは本当に偶然である。


レンズのマウントには、謎の赤と黄緑の点がある。マウント着脱式のはず? だが、外し方がわからない 偶然なのだろうか、このW KOMURAのマウント部は、Aiの連動ピンに干渉しない。ただし、この時代のレンズの使用は自己責任なので、慎重に対応したい

∞からほぼ一周ピントリングを回すと、最短撮影距離の0.18mとなる
 W KOMURA 24mmは、焦点距離は現在のデジタル一眼では標準ズームに含まれる範囲で、F4という開放絞り値も決して明るくない。35mm判換算で36mm相当といえば、ちょっとした広角というレベルだ。手にとってみると、金属にローレットを刻んだしっかりとしたピントリングで、じっくりピント合わせをしながら撮りたくなる印象だ。∞から、最短撮影距離まで、ほぼピントリングが一周する感じだ。最短撮影距離「18cm」は、単焦点ならではのメリットで、意外にクローズアップが撮れるという印象だ。


付属のフードはネジ込み式の丸型。ごく浅いものなので、フード効果はあまり期待できない
 ファインダーが見やすいS5 Proなら、マニュアルフォーカスでも大丈夫。当時のレンズは当然、CPU連動タイプではないので、露出モードは絞り優先オートかマニュアルとなる。写真を撮るときにEXIF情報を入れようとすれば「レンズ情報」を設定し、焦点距離24mm、開放F値F4を設定する。こうすると、カメラの露出計のマルチパターン測光を使うことができる。

 Aiニッコールレンズレンズや改造Aiニッコールレンズレンズなら、絞り環を回すと、カメラのEXIF情報に書き込まれるF値が変化するが、W KOMURAは、絞り情報がカメラに伝わらないので、そのままだとF4のままになってしまう。それが嫌ならば、絞り値を変えるごとにレンズ情報の絞り値を変更しながら撮影すればいい。ちょっと面倒だが、あとで写真を整理するときに実際の絞り値とEXIF情報が違うよりも、気分はいいだろう。


 付属のフードは「丸型」で浅いもの。今では一般的な花形フードではないので、フード効果は弱そうだ。レンズのコーティングも当時のものなので、逆に「フレアやゴーストを活かして撮る」ということができそうな気もする。

 プリセットの絞りは、あらかじめ合わせたい絞りに黒い絞りリングをセットし、レンズは開放絞りの状態のまま、ピント合わせとフレーミングを行なう。撮影寸前に銀の絞りリングを回すと、あらかじめ決めた絞り値にセットできる。銀のリングをセットした状態でピント合わせとフレーミングをしてもいいのだが、ファインダーの視野が暗くなるので直前にセットするように考えられたのだろう。


実写作例

 実絞り値とレンズ情報手動セットの組み合わせで、絞り値を変えたことに対する撮影画像の明暗が不明なのだが、液晶モニターで露出の傾向を確認しながら撮影すれば大丈夫だろう。友人に見せると「デジタルにそのレンズはないでしょう」といわれるが、独特なゴーストの出方など、ユニークな点もあるので、機会があればまた使ってみたい。


※作例のリンク先は撮影画像をコピーしたものです。

※写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/撮影モード/ホワイトバランスを表します。


4,256×2,848 / 絞り優先AE / 1/750秒 / F4 / 0EV / ISO100 / WB:オート
計算上はF11のカットと同じ露出にならなければならないのだが、わずかに暗い。絞りはプリセット式なので、測光時との誤差は無いはずなのだが、不明だ
4,256×2,848 / 絞り優先AE / 1/90秒 / F11 / 0EV / ISO10 0/ WB:オート
EXIF情報はF4になっているが、実際はF11。白壁の周囲など、色収差も見られる

4,256×2,848 / 絞り優先AE / 1/40秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天
木の質感描写もいい。絞りF8だが、背景の葉のボケが円形に見えるのは、絞り羽根が9枚と多いからだろう
4,256×2,848 / 絞り優先AE / 1/20秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:晴天
子供に近づいて撮ってみた。顔の肌の質感がよく出ているように感じる

4,256×2,848 / 絞り優先AE /1/1,000秒 / F5.6 / 0EV / ISO100/ WB:オート
画面のわずか外に太陽がある、という状況だが盛大に虹状のゴーストが発生した。これはこれでユニーク。作品造りに活用できる方法を思案中だ
4,256×2,848 / 絞り優先AE / 1/1,140秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート
同じ場面で順光の位置から撮影。オートホワイトバランスなのだが、わずかに青っぽい色に再現された
4,256×2,848 / 絞り優先AE / 1/350秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート
順光で撮影。ツボミの質感、微妙な淡い色の再現もよい。ボケもきれいだ

4,256×2,848 / 絞り優先AE / 1/180秒 / F4 / +0.5EV / ISO100 / WB:オート
子供の木のおもちゃを撮ってみた。見た目に近づけるために+0.5EV補正をした
4,256×2,848 / 絞り優先AE / 1/8秒 / F22 / 0EV / ISO100 / WB:オート
最小絞りにセットし、レンズ情報も手動でセット。ノーマル露出のはずなのだが、F4の+0.5EVよりも明るめ


( 木村 英夫 )
2007/07/05 00:01
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