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Tiffen 「Dfx」

撮影後にPCでフィルターワークを楽しめるソフト

「Tiffen Dfx」のロゴ
 米Tiffenは、アメリカを代表する写真用品メーカー。ガラス製のフィルターを製造・販売する会社として出発したが、現在ではゼラチンフィルターの代名詞であるKODAK WRATTENフィルターやカメラバッグのDOMKEなど、日本でメジャーな写真用品ほか、DAVIS&SANFORD三脚やSAUNDERS TRIMMERS(写真用のカッター)などのあらゆる扱う写真用品の総合商社に発展している。

 ムービーカメラ用の特殊機材である「STEADICAM」(移動撮影時のブレ防止機材)なども扱っており、日本の写真用品メーカーよりも総合的なプロ機材に強い商品ラインナップを構成している。


 デジタルの時代となって「今までのガラスフィルターのノウハウを活かした」ソフトを今年のNABショウ(アメリカの放送機材ショウ)で見かけた、との情報を聞き、チェックしたのがTiffenのデジタルフィルター「Dfx」である。

 デジタルフィルターといっても「デジタルカメラに適応する仕様とした」という、レンズ先端に取り付けるガラスの丸枠フィルターではなく、PCで使用する画像加工ソフトだ。

 最近のデジタル一眼の中にも、撮影した画像をカメラ内のデジタルフィルターで加工できる機種も出てきた。しかし、同社がラインナップした光学フィルター効果や、デジタルカメラのフィルター効果とは異なる種類のボカし、さらに赤外写真効果まで含む、合計1,000を超える画像加工バリエーションをもつDfxの代わりにはなりえない。また、同製品で画像に施した効果を見ると、「さすがにフィルターメーカーのソフト」と感じさせてくれる風合いがある。

 15日間使用可能なデモCDを入手したので、このユニークなデジタルフィルターと、実際のフィルターを使って撮影したものを比較しながらチェックしていきたい。


Dfxを立ち上げたところ。現在のところ英語版のみである File-Openから、画像を読み込む。JPEGのほか、RAWデータやTIFFにも対応している

画像の下にカテゴリー別に整理されたフィルターがある。フィルターを選択すると右上のところに効果のバリエーションが表示される ソフトフィルターは、表示のサイズによりソフト効果が違って見える。拡大表示や移動で気になる部分のフィルター効果をチェックできる

一つの効果を使ったあと、さらに別の効果をかけることもできる。ソフトの上に「金レフ効果」をかけている様子

 Dfxは、JPEG以外にTIFFやRAWといった形式のファイルも読み込み可能とある。実際に各メーカーのRAWデータの拡張子に対応しているように見えるが、私が常用している富士フイルムFinePix S5 ProのRAWデータは読み込めなかった。

 どうやら、FinePixのRAWデータの拡張子「RAF」に対応しているらしいのだが、S5 Proのような最新機種にはまだ対応できていないと推測できる。そのため、今回テストしたのはJPEGのみである。

 光学的なフィルターを使って、写真を加工するのは、フィルムカメラの時代から行なわれている。撮影時にその場で、自分の思い通りに写真をコントロールするための意図である。フィルムカメラでも、プリント時に色調や濃度などのコントロールは可能だが、主にプロ用途として使われているカラーリバーサルフィルムでの撮影の場合、プリントでなく現像してできたスライドが完成品のため、撮影するときにしか写真を加工できない。そこで、色調や反射、ソフト効果などをフィルターでコントロールしてきた。


 フィルムと違ってデジタルでは、PCで画像の後処理ができるが、写真を撮るということとはまた別のノウハウが必要だ。また、「PL」などPCでは調整できない効果を出すフィルターもあるため、デジタル時代になってもフィルターのニーズはある。

 フィルターのデメリットは「撮影時に必ず、フィルターを持っている必要がある」ことだ。光学的なフィルターは、レンズのフィルター径ごとに大きさが異なるので、複数のレンズを使用する場合はかさばって邪魔になることがある。

 また、被写体の状況が変化する「人物」や「スポーツ」、風景でも「朝日」、「夕日」という被写体の場合、フィルターを付け外ししている間にシャッターチャンスを逃してしまう恐れもある。

 PC用ソフトのTiffen Dfxは後処理でフィルターワークが使えるため、フィルターを撮影現場に持ち歩かなくてもよく、被写体をベストな状態で撮影したカットが1枚あれば、思い通りのフィルター効果を繰り返し使うことができる。フィルターの効果が、ソフト内にわかりやすく収められているため、フィルムで長年撮ってきた人でも直感的にフィルター効果を操作できるだろう。


Polarizer(PLフィルター効果)

 風景写真の世界など、フィルターで最もよく使われているのが「PL」である。「画像処理ソフトでは再現できない」といわれているPLフィルターが、このDfxに収められているのにはビックリした。PLフィルターの効果として期待されるのは「反射を取り除く」ことと「空を青く写す」ことだが、実際のPLフィルターとの違いを実験してみた。

 まずは反射を取り除く効果を試した。


※作例のリンク先は撮影画像とDfxによる加工画像をコピーしたものです。

※写真下の作例データは、使用カメラ/記録解像度(ピクセル)/撮影モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/を表します。


標準画像(フィルター・加工なし)
EOS 20D / 3,504×2,336 / 絞り優先AE / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート
PLフィルター使用。窓ガラス部の反射がほとんど消えている
EOS 20D / 3,504×2,336 / 絞り優先AE / 1/125秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート

Dfxで加工した画像。窓ガラスの反射は消えず空の濃度のみ青くなっている

 続いて、青空の青をさらに濃く写し出す効果を試してみた。


標準画像(フィルター・加工なし)
D80 / 3,872×2,592 / 絞り優先AE / 1/60秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天
PLフィルター使用。空のトーンが落ちるとともに、葉の緑が鮮やかに写し出されている
D80 / 3,872×2,592 / 絞り優先AE / 1/15秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天

元画像をDfxで加工したもの。実際のPLより空のトーンの変化は少ない

 DfxのPL効果では、残念ながら反射を取ることはできない。そのため、被写体の表面反射を取り除くことはできず、葉の緑を鮮やかに写し出すという効果は期待できない。今回の2つのDfx使用例はいずれも「Polarizer」の効果としてプリセットされている中で最も強い「10」というのを使用している。擬似的にPLを試すには面白いが実際の効果とは微妙に異なる。

 その代わりDfxには本来、PLでは空が青くならない角度でも空に対する効き目がある」というメリットがある。窓と空の作例がその条件だが、光学的なPLフィルターでは、太陽の位置から90度の範囲が最も空が青くなる位置であり、その位置を外すと効果は出ない。しかし、Dfxなら90度の範囲以外でも空を青くする効果を出すことができる。


Enhancing(カラーエンハンサー効果)

 特定の色調を強調し、他の色に影響を与えないエンハンサーフィルターは、カラーリバーサル全盛期に流行したが、デジタルでは効果に違いがあるため、使いづらいことがある。ところがDfxは、エンハンサーの効果も搭載している。レッド、グリーン、ブルーの光の三原色に対応し、プリセットでの効果の強さは10段階が用意されている。光学的なフィルターが最大3段階であることを考えると、ソフトならではの数値化されたきめ細かい効果は便利なものだ。

 エンハンサーフィルターは、使ったかどうかわからないくらい自然な感じに使うのがよいこともあり、好みに合わせた微調整が可能なのは大歓迎だ。

 約1年前に、デジタル一眼レフ+レッドエンハンサーで梅を撮ったのを思い出し、Dfxとレッドエンハンサーの効果を比較してみることにした。過去にさかのぼってフィルター効果を使えるのは、大きなメリットだ。


標準画像(フィルター・加工なし)
EOS 20D / 3,504×2,336 / 絞り優先AE / 1/100秒/ F13 / 0EV / ISO100 / WB:オート
レッドエンハンサーNo.2使用。紅梅の赤みが増している。しかし画面全体はわずかに青みがかかっている
EOS 20D / 3,504×2,336 / 絞り優先AE / 1/100秒 / F13 / 0EV / ISO100 / WB:オート

元画像をDfxの「レッドエンハンサー効果」で加工したもの。10段階の「+3」のためか、ガラスのフィルターをかけたものより、赤み強調は弱い

Soft/FX(ソフトフィルター/FX効果)

 Dfxに搭載された効果の中で、バリエーションが多いのがソフト系のフィルターである。「Hfx Diffusion」というカテゴリーの中に数々のフィルターがあるが、「ウォーム系+ソフト系」という組み合わせのものも多い。欧米でよくみられる肌の色を健康的に見せながら、肌の表面をソフトに写し出すポートレート用フィルターは、アメリカのメーカーならではの需要に応じたものなのだろう。

 光学的なソフト系のフィルターは、組み合わせるレンズの焦点距離によって効果が変化する。望遠レンズになるとソフト効果が増し、ワイド系になるほど、ソフト効果が弱くなる。フィルターによっては、光学設計の関係から、ワイド系で使えないものもある。その点撮影した後処理でのソフト効果は、レンズの焦点距離にかかわらず効果をコントロールできるので、好みの効果を出しやすいのではないだろうか。


標準画像(フィルター・加工なし)
S2 Pro / 4,256×2,848 / 絞り優先AE / 1/45秒/ F3.3 / -0.5EV / ISO400 / WB:オート
プロソフトンBを使用。画面全体がやや白っぽくなるとともに、ソフト効果となっている。暗部がややざらついたように見える
S2 Pro / 4,256×2,848 / 絞り優先AE / 1/60秒/ F3.3 / -0.5EV / ISO400 / WB:オート

元画像をDfxの「ソフト効果」で加工したもの。プロソフトンBに近くなるよう、効果「7」としたが、滑らかな美しいソフト効果が得られた

ND-Grad(NDフィルター効果)

ND-Gradはそのままだと、上から下までのグラデーションである。そこで、画面に出てくる四角いポイントで、フィルターの効果の位置を指定する。画像の上半分にNDのグラデーションがかかるように指定した。
 Dfxにはプロ用フィルターとされるゼラチンフィルターの効果や、角型のフィルターの効果も多数搭載されている。風景写真の世界で、明暗差をコントロールするのに使われるハーフNDフィルターもDfxに含まれるフィルターだ。光学的なハーフNDフィルターは四角いフィルターの半分が透明、半分がNDというフィルターで、ND部がND2、ND4、ND8などのバリエーションがある。Dfxには日本の一般的な表記とは異なるが、「ND.3」から「ND1.2」というND2からND16に相当するフィルターがある。

 夕暮れの空の明暗差を、光学フィルターとDfxでのハーフNDで比べてみた。


標準画像(フィルター・加工なし)
S5 Pro / 4,256×2,848 / 絞り優先AE / 1/14秒 / F11 / -0.5EV / ISO100 / WB:晴天
コッキンZ121M(ハーフND4)使用。空の部分にND4がかかるようにし、見た目の明るさに合わせた
S5 Pro / 4,256×2,848 / 絞り優先AE / 1/10秒 / F11 / -1.5EV / ISO100 / WB:晴天

元画像をDfxの「ND-Grad効果」で加工したもの。ND4相当の「ND.6」を空の部分にかかるように調整したもの。空の高いところと低いところでの濃度差が大きい

 光学的な「ハーフND」の場合、グラデーションとなっている部分が狭く、ND部分と透明部分が広いため、Dfxの効果とは差違が出た。実際のフィルターとは効果が異なってしまうものの、使いこなしの難しいフィルターだけに、ソフト上で何度も練習できるのはありがたい。


Vari-Star(クロスフィルター効果)

クロスの線を調整するには「パラメーター」を調整する必要がある
 夜景撮影などで光源を彩るフィルターとしてよく使われるクロスフィルターも、DfxにVari-Starとして搭載されている。光学的なクロスフィルターは、ガラス面に筋をつけて光を拡げるため、光源から出るクロスの線は必ず偶数だが、Dfxは4本から12本まで、1本単位で調整できる。ソフトによる効果ならではのメリットだ。

 クロスの本数はプリセットされているが、クロスフィルターを回転させて調整するような、クロスの向きの変更にはパラメーターを調整する必要がある。実際にクロスフィルターを使って撮った画像に近づけるべく、パラメーターをいじってみたものの、できた画像は全く違うクロスとなった。


標準画像(フィルター・加工なし)
S5Pro / 4,256×2,848 / 絞り優先AE / 6秒 / F11 / +1.5EV / ISO100 / WB:オート
クロススクリーン使用。点光源から「X」字状のクロスが出るように調整した。クロスは細く長く出ている
S5Pro / 4,256×2,848 / 絞り優先AE / 6秒 / F11 / +1.5EV / ISO100 / WB:オート

元画像をDfxの「Vari-Star」で加工したもの。派手にクロスを出現させた。光学的なクロス効果とは異なるが、華やかな印象となる

その他の効果

 Dfxには、本来のフィルター効果ではない「レフ板による効果のシミュレーション」、「赤外写真」、「ナイトスコープで覗いたような画像の効果」など、一般的な画像処理ソフトではおよそ考えられない効果も多数搭載されている。効果の種類を選び、プリセットされている効果のパターンを選べば、簡単に画像に反映できる。


 ナイトビジョンで覗いたような効果を試してみた。


標準画像(フィルター・加工なし)
D80 / 3,872×2,592 / 絞り優先AE / 1/60秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:オート
元画像をDfxの「Night Vision」で加工したもの

 鉛筆画のような効果を試してみた。


標準画像(フィルター・加工なし)
COOLPIX P5000 / 3,648×2,736 / プログラムAE / 1/34秒/ F2.7 /0EV / ISO64 / WB:オート
元画像をDfxの「Pencil」で加工したもの。「5」を使用

 Dfxはソフトによるフィルター効果のため、従来の「光学フィルター」ではフィルター効果を使えなかった特殊レンズでも、フィルター効果を使うことができる。フィッシュアイレンズや一部の超広角レンズでは、レンズの形状により、レンズの前面にフィルターを取り付けることはできない。一部のレンズで、レンズの後ろ側に「ゼラチンフィルターホルダー」を設けているものもあるが、ゼラチンフィルターでは実現できない効果の一つに「PL効果」がある。そこで、フィッシュアイで撮影した画像にPL効果を試してみた。


標準画像(フィルター・加工なし)
EOS Kiss Digital X / 3,888×2,592 / 絞り優先AE / 1/80秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:オート
元画像をDfxの「Polarizer」で加工したもの

 ほかにも、本来ならフィルターが取り付けられないコンパクトデジタルカメラでの活用も考えられそうだ。

 Tiffen Dfxは、全てのフィルター効果が搭載された「Complete」と機能が限定された「Select」の2種類があり、アメリカでのそれぞれの希望小売価格は299.95ドルと99.95ドルだという。今回は単体での使用のみだが、製品版の「Complete」では、ライセンス登録をすることでPhotoshopのプラグインとしても使えるという。対応するOSはWindows XP、Windows Vista、Mac OS X 10.4。

 機能が限定された「Select」バージョンでもPL効果が使え、さらに価格は口径が大きなデジタル用PLフィルターと変わらないことを考えれば、お買い得感がある。実際の光学的なフィルター効果とは異なるものがあるものの、Dfxで気に入ったフィルターを現物のガラスフィルターで購入すればいいと思えば、フィルターのサンプル的な使い方もできそう。大変ユニークな製品なので、日本での日本語版の発売を期待したい。



URL
  米Tiffen(英文)
  http://www.tiffen.com/
  プレスリリース(英文)
  http://www.tiffen.com/dfx_software_press_release.html


( 木村 英夫 )
2007/06/07 02:16
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