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ケンコー「ウォームエンハンサー」

秋の「コウヨウ」に使えるフィルター

 秋といえば紅葉の季節。秋の早い時期から、中禅寺湖などの紅葉スポットの情報が、毎日のようにテレビで報道される。地元でもそろそろ葉が赤くなり始めたが、紅葉の撮影にはまだ少し早い。そこで、長野県・富士見高原へと紅葉を求めて出かけた。

 ただ“コウヨウ”といっても、モミジの「紅」だけではない。「黄葉」と書く“コウヨウ”もあるわけで、今回の撮影では、どちらの“コウヨウ”もきれいに撮れるよう、フィルターワークに工夫をしてみよう、といくつかのフィルターを持って出かけた。

 デジタルの撮影の場合は、もちろんPCでの後処理で、思い通りの色調調整ができるわけだが、撮影現場で思い通りに色演出をするには、フィルターを使うのもひとつの方法。フィルムカメラの時代には、この季節「レッドエンハンサー」という赤み強調フィルターが季節商品のようによく売れたものだが、レッドエンハンサーでは「紅」葉にしか効かないことになる。このレッドエンハンサーフィルターは、春に梅の撮影で使ってみたが、レッドエンハンサーNo.2は、確かにデジタル一眼で効果があった。

 赤、オレンジ、黄色、茶色というようなウォームトーンを強調するには、ひとつの方法としてホワイトバランスを調整する方法がある。ホワイトバランスを「曇天」(または「日陰」。色を調整する幅は「日陰」の方が強くなる)にすることにより、画像全体をアンバーに調整することができる。ホワイトバランスの曇天は、青っぽくなる色調をアンバー方向に調整することで色のバランスをとるのが本来の使い方だが、晴天下では、画面全体にアンバーをかけることに使えるのだ。

 ところがホワイトバランスによる色調整では、画面全体がアンバー調になるという問題がある。そこで、ケンコーのレッドエンハンサーの姉妹品である「ウォームエンハンサー」をメインで使ってみることにした。比較で使ってみるためにフィルムカメラ用の曇天相当の色味となるアンバー色フィルターである「MC W2」、さらに強度のアンバーフィルターとなる「MC W10」も用意、ウォームトーンの強調に使えるか試してみた。

 カメラは富士フイルムのFinePix S2 Pro、レンズはトキナー 12-24mm F4(AT-X 124 PRO DX)。アンバー系のフィルターの効果をカメラ側でコントロールしないよう、ホワイトバランスは全て「太陽光」で撮影した。

 今回の撮影地では、モミジは「真っ赤」というよりは、きれいなオレンジ色。この色味と葉脈が透けてみえる様子を透過光で撮ってみた。葉の下側に回り込んで、葉を見上げるようにしながら構図を決定する。オレンジを赤く見せたいならレッドエンハンサーNo.2を使う方法もあるが、ウォームトーン強調フィルターを中心に試してみることとした。

※サムネールのリンク先は、撮影した画像です。
※写真下のデータは、絞り/露出時間/ISO感度/実焦点距離です。


フィルターなし
F11 / 1/60秒 / ISO100 / 24mm
ウォームエンハンサー使用
F11 / 1/60秒 / ISO100 / 24mm

MC W2使用
F11 / 1/60秒 / ISO100 / 24mm
MC W10使用
F11 / 1/30秒 / ISO100 / 24mm

レッドエンハンサーNo.2使用
F11 / 1/45秒 / ISO100 / 24mm

 試してみた結果は、オレンジ強調という面でMC W10、MC W2、ウォームエンハンサーの順で効果があった。

 しかし、アンバー系の色温度変換フィルターは青空にまで色影響が出てしまう。特にMC W10は、夕方近くになったような色調になってしまう。他の色に色影響を与えないとするエンハンサーフィルターのひとつであるウォームエンハンサーでも、青空の青さを少し薄くしてしまう。ただ、モミジの黄色みだけでなく、わずかに赤方向にも強調効果が見られるのがメリットだ。透過光ではない部分では、ウォームトーン強調効果によって明るい色調に再現している部分も見られる。

 比較として撮影してみたレッドエンハンサーNo.2を使ったカットでは、モミジの透過光部分で、オレンジが赤い色調に変化した様子もみられる。青空の色味は薄くなっていない。

 透過光のモミジはきれいだが、テレビなどの紅葉中継で見るのは「表から見る」状況、つまり順光になることのほうが多いように感じる。撮影地に近づいて車窓からみる風景も、順光、つまりモミジに日が当たった状態で見ることの方が多いだろう。そこで次に日が当たっているモミジを順光方向でとらえた。


フィルターなし
F8 / 1/125秒 / ISO100 / 12mm
ウォームエンハンサー使用
F8 / 1/90秒 / ISO100 / 12mm

MC W2使用
F8 / 1/90秒 / ISO100 / 12mm
MC W10使用
F8 / 1/90秒 / ISO100 / 12mm

 順光の撮影では、色効果の強さがMC W10、ウォームエンハンサー、MC W2の順となった。MC W10は、順光方向の濃い青空に対して色を濁らせてしまう結果となった。

 MC W2やウォームエンハンサーでもわずかに青空への色影響は見られるが、不自然な色調ではない。モミジと隣の松の幹の色変化を見ると、MC W2がどちらかといえばイエロー系への色強調に対し、ウォームエンハンサーは赤みへの色強調もあるのがわかる。フィルターなしの状況よりもモミジのイエローがきれいに見えるので、狙い通りの効果といえるだろう。

 紅葉の撮影地では、落ち葉を狙うのもいいだろう。落ち葉は背景に空が入らないので、他への色影響を感じることが少ないように思える。ウォームトーン強調フィルターを使ってみるのによりよい状況だろう。


フィルターなし
F8 / 1/20秒 / ISO100 / 12mm
ウォームエンハンサー使用
F8 / 1/20秒 / ISO100 / 12mm

MC W2使用
F8 / 1/20秒 / ISO100 / 12mm
MC W10使用
F8 / 1/15秒 / ISO100 / 12mm

 実際に撮影してみると、落ち葉だけではなく、木漏れ日や地面の色調への色影響があるため、フィルターを使った色影響が見える写真となった。MC W10を使ったカットでは、まるで夕方に撮影したように見える。昼に出かけて夕方の風景に見せるという意図なら使えそうだ。ウォームエンハンサー使用のカットでは、狙い通り、黄色・赤・茶色の色調強調ができている。もともとフィルムカメラ用に作られたフィルターでも、デジタルで十分活用できそうだ。

 今回はフィルター効果を見る狙いのため、MC W2という曇天効果用の色温度変換フィルターを使ってみたが、これはホワイトバランスの「曇天」で十分代用できる。秋の季節、ホワイトバランス調整でまず色調強調をやってみて、さらに独自の色調を狙うならウォームエンハンサーやレッドエンハンサーNo.2などのフィルターを活用するとよいだろう。



URL
  ケンコー
  http://www.kenko-tokina.co.jp/
  製品情報
  http://www.kenko-tokina.co.jp/filter/4961607035221.html

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ケンコー「レッドエンハンサーNo.2」(2006/03/16)


( 木村 英夫 )
2006/11/14 00:18
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