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ケンコー「ミラーレンズ 500mm F6.3 DX」

ビックリ価格の通販限定白レンズ

 ケンコーでは、以前から通販限定で「500mm F8 ミラーレンズ」を販売している。2万円程度という価格の安さと小ささ、軽さがメリットというレンズであった。

 この春のギフトショー2006春で、上位機種の「500mm F6.3 ミラーレンズ」を発表。いよいよ夏に発売するという。開放F値はF6.3ということで、従来の500mm F8より半絞り分明るくなった。今回の500mm F6.3も通販限定で価格は3万円強の見込みだ。早速このレンズをチェックしてみた。
 
 ミラーレンズは通常のレンズ(屈折式)と異なり、反射光学系を採用することで、コンパクト化と低価格を実現できるというメリットがある反面、AF化に向かないという大きな欠点がある。そのためマニュアルフォーカスレンズとして作り続けてきたが、シグマは最近製造を終え、タムロンもMFの交換マウント式のみが残されている。唯一独自技術でAF化されたコニカミノルタのものが「ソニー」として、この秋生まれ変わるのが明るいニュースといえる。一時期、ロシアからの輸入品がコストパフォーマンスの面から注目されたこともあったが、これも輸入するショップ頼みの商品であった。

 このような状況の中で、レンズメーカー品でなく光学メーカー品(ケンコーは写真用品メーカーとしてだけでなく、双眼鏡・望遠鏡メーカーとしての顔もある)として販売されるミラーレンズは注目を集める存在と思われる。

 500mmのミラーレンズは、開放でF8というのが一般的。超高価格のカールツァイスの500mm F4.5とニコンF時代初期の500mm F5を除けば、500mm F6.3というミラーレンズは「明るい」といえる。その割に700g程度とミラーレンズとして一般的な重さに仕上がっている。

 500mmという焦点距離は、よく使われる高倍率ズーム28-300mmの望遠端300mmの1.6倍以上と迫力の望遠効果を期待できる。28-300mmの300mm時の開放F値もF6.3だから、明るさに差はない。


高級感のある銘板 マウントはTマウント交換式

最短撮影距離は2m 正面から覗くと、奥にミラーが見える

Tマウントはマイナスネジ3カ所でピント指標の位置を調節できる カメラにつけた様子。ミラーレンズならではのコンパクトさ

 マニュアルフォーカスレンズということで、フォーカスリングはグリスの抵抗感で適度な重みがつけられている。最近のAFレンズに慣れている指には少し重く感じるかもしれないが、微妙なピント合わせには必要な仕様だ。ピントリングの方向は左が無限で、キヤノンと同方向。ニコンやペンタックスとはピントリングの回転が逆になる。

 マウントは交換式で、Tマウントを介してカメラに装着する。Tマウントとは42mm径、ピッチ0.75mmのネジ込み式マウント。M42(プラクチカマウント)とは口径は同じものの、ピッチが異なるため装着できない。ネジ込みマウントのため、ネジ込み終わったところで位置決めされることになる。ピント指標が真上にこないことがあるが、Tマウントの調整で位置を直すことができる。マウントが付く少し奥に、34mm径のフィルター溝がある。ミラーレンズは構造上絞りが取り付けできないので、光量が大きいときにはここにNDフィルターを装着して調整する。

 鏡胴外装は白い塗色で、キヤノンの高級望遠レンズを表す白レンズのイメージだ。でも、キヤノンはここに入る帯が赤帯。それに対しケンコーのミラーレンズ500mm F6.3 DXは、金帯で金の銘板付きだ。そのため全体の組み合わせはライトグレー塗装のニッコールといった雰囲気だ。この製品を企画した人は、マニア心をつかむのがうまいように思える。

 レンズを前から覗くと、真ん中にキャップ状のもの、周りの奥の方にミラーが見える。真ん中のキャップ状になっているところは、裏側がミラーになっており、レンズ奥のミラーに反射された光が中央部のミラーに集光され、カメラに導かれる。

 ファインダーを覗いた感じは、F8モデルよりも格段にピントの山がつかみやすく、良く写りそうな印象。価格も1万円程度のアップならすごく割安感がある。数少ない欠点は、径が大きいことで、私のFinePix S2Proに装着したときにグリップ部に入る指がやや窮屈だ。



※使用したカメラは、富士フイルム 「FinePix S2Pro」です。

※作例のリンク先ファイルは、撮影画像をコピーしたものです。

※写真下の作例データは、露出時間/絞り値/ISO感度を表します。


1/350秒 / F6.3 / ISO400
最短撮影距離の2mで撮影。マクロレンズに近い撮影倍率だ。被写界深度がかなり浅いので、カメラを前後させてピント調整する。三脚使用
1/90秒 / F6.3 / ISO400
通りの向こう、30m先の風景を切り取る。肉眼とはかなり異なる世界だ。枝が二線ボケに見えるのはミラーレンズでは仕方がないところ。三脚使用

1/350秒 / F6.3 / ISO400
背景にミラーレンズ独特の“リングボケ”が入るように構図を工夫した。逆光のため、少しフレアっぽい。三脚使用
1/1000秒 / F6.3 / ISO100
太陽を入れるなら超望遠レンズだ。撮像素子面に“焦点距離の1/100”のサイズで写るからである。このレンズでは、撮像素子面に5mmに写っている。三脚使用

1/180秒 / F6.3 / ISO800
子供の顔のアップを撮ってみた。被写界深度が浅くピント合わせが難しい。チャンス優先のため感度をISO800にし、手持ちで撮影。慎重にシャッターを切る
1/180秒 / F6.3 / ISO800
シャッターチャンスを狙い、液晶モニターの確認では成功か、と思ったが手ブレ。超望遠のため、1/180秒でもブレる

1/180秒 / F6.3 / ISO800
近寄るとすぐ逃げる動物でも、遠くから狙えば大丈夫。8m先から慎重に撮影した
1/250秒 / F6.3 / ISO800
祭りの御輿の上にある鳳凰。これも近づけない被写体だ。背景の木まで距離があるので、後ボケのリングが小さく出ている

1/250秒 / F6.3 / ISO800
これもチャンス優先で撮影。S2Proでは露出計が働かないので、あらかじめ決めたシャッタースピードで撮影、ちょっとアンダーになった
1/350秒 / F6.3 / ISO800
祭りの提灯を撮影、背景の“屋台のノボリ”が近くに見えるが、超望遠ならではの圧縮効果である

 今回の撮影では、FinePix S2 Proを使ったが、ケンコーの500mm F6.3D Xには電子回路が組み込まれていないため、露出計は働かない。そのため、何枚か撮影して露出を決めたが、とっさの場合には露出を外してしまった。FマウントならD200を使えばこの点は問題ない。また、マウント交換式のため、キヤノン、ペンタックス、オリンパス、パナソニック、コニカミノルタ、ソニーの各カメラに対応できるし、マウントさえ買い足せば、後から自分でマウント変更できるのもメリットだ。

 また、軽くコンパクトでも“500mmの超望遠レンズ”であることには変わりがなく、ファインダーを覗いただけで画面がゆらゆらするのがわかる。手持ちではなかなか難しいので、シャープな写真を得るには、パイプ径が30mmくらいの太さの大型三脚がほしいところだ。ただ、三脚での使用を考えた場合、レンズに三脚座があればベターだった。

 白い鏡胴の仕上げが魅力的な、単に価格だけでなく、持つ楽しみもあるいいレンズだ。マニュアルフォーカスを使いこなす自信があれば、超望遠レンズを検討中の方に是非お薦めしたい。



URL
  ケンコー
  http://www.kenko-tokina.co.jp/


( 木村 英夫 )
2006/07/18 00:01
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