デジカメ Watch
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ニコン おもしろレンズ工房

ほとんど教材? ユニークな格安レンズセット

左から「ぎょぎょっと20」、「ぐぐっとマクロ」、「どどっと400mm」
 今回、中古ショップで手に入れたニコンの「おもしろレンズ工房」は、20mm対角魚眼レンズ「ぎょぎょっと20」、120mmマクロレンズ「ぐぐっとマクロ」、400mm望遠レンズ「どどっと400」の3本をセットにした製品で、発売は1995年。ニコン子会社の株式会社ニコン技術工房という企業が発売元らしく、現在この企業は特許開発支援や光学製品の分析などを主な業務としている。

 この製品のコンセプトとは、「交換レンズの面白さを一眼レフユーザーに伝える」こと。なるほど、アマチュアにとって魚眼、マクロ、望遠の各レンズは「高価」、あるいは「使用頻度が少なそう」という理由で、購入まで至らない可能性が高い。そのためか、おもしろレンズ工房は発売当初、かなりの人気を博し、2000年には外観を一部変更した再生産モデルも登場した(2003年に生産中止)。なお、購入価格は3本あわせて18,000円だった。

 この3本、コスト要因となる機構をなるべく簡略したため、オートフォーカスは当然ながら、絞り機構まで省略している。つまりF値は固定で、「開放F値=唯一の絞り値」となる。もちろん、露出も非CPUレンズだと内蔵露出計が動作しないD100、D70、D70s、D50、FinePixシリーズでは、マニュアルで設定する。18,000円でレンズ3本が入手できると思えばまあ仕方がない。


貴重な(?)ニコンロゴシール。魚、イカ、クジラがかわいい
 3本とも鏡胴は金属製で、最低限の意匠を残したシンプルなデザイン。しかし最近のプラスチック鏡胴に慣れた身には、黒の金属鏡胴というだけで十分高級に感じるから不思議だ。フォーカスリングのローレットもちゃんとラバー製になっている。ただしマウント部は樹脂製。このあたりのギャップが激しい。

 面白いのは、同封のシール。A4サイズにニコンロゴやレンズ名が大量に並んでいる。「自分でロゴや銘板を貼り付けろ」ということだろう。シンプルな鏡胴にいわゆる「ステッカーチューン」をしろということらしい。謎のキャラクターもいることから、どちらかというと若年層に向けた製品だったことがうかがえる。ただしロゴのバリエーションは豊富で、「ニコンあこがれ」な人ならシールだけで魅力を感じるかもしれない。実際、「売ってくれ」という編集スタッフがいたのには驚いた。


ぎょぎょっと20(Fisheye Type 20mm F8)

 一番シンプルなのがこのレンズ。1mからのパンフォーカスなので、絞りどころかフォーカスリングもない。ただの太い棒といった趣で、カメラにつけるとどことなくスパルタンだ。レンズ先端にネジ溝はなく、フードやフィルター類は装着不可。そのため、鏡胴先端ギリギリに装着された前玉(保護ガラス?)を傷つけないようにと、気を使う場面が多い。

 ニコンのデジタル一眼レフで使用すると、画角は焦点距離1.5倍換算の30mm相当になる。そのため、対角魚眼レンズの面白みといえる周辺部がトリミングされ、要するに「大げさな歪みを伴った30mm相当」に。さらに、フォーカス調整ができない上、過焦点距離が35mm判カメラより遠くなるので、魚眼ながら被写体にあまり寄れないという難しさもある。

 歪みを生かせばほかのレンズで得られない面白い写真になりそうだが、私にはちょっと使いこなせそうもない。見た目が格好良いだけに少々残念だ。


D100に装着したぎょぎょっと20。スパルタンでかっこいい!! マウント部は樹脂製。豆粒のような後玉が見える

※作例のリンク先は撮影画像をリネームしたものです。
※作例のキャプションは使用ボディ/レンズ/解像度(ピクセル)/露出時間/F値/露出補正値/ISO感度/35mm判換算の焦点距離を表します。


D100 / ぎょぎょっと20 / 3,008×2,000 / 1/640秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 30mm D100 / ぎょぎょっと20 / 3,008×2,000 / 1/320秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 30mm

D100 / ぎょぎょっと20 / 3,008×2,000 / 1/800秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 30mm D100 / ぎょぎょっと20 / 3,008×2,000 / 1/640秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 30mm

ぐぐっとマクロ(Macro 120mm F4.5)

 1.5倍換算で焦点距離194mm相当のマクロレンズ。F値は4.5。もちろんフォーカスはマニュアルだ。マクロレンズを名乗るだけあって、近接撮影時の写りはたいしたもの。フォーカスが合えば下手な最新ズームレンズよりキリっとした描写が得られる。最短撮影距離は0.64m。撮影倍率は1/3倍となっている。

 面白いのは、バラしてレンズの配置や方向を変えることで、1/1.4倍の「さらにぐぐっとマクロ」や、1/2倍の90mm F4.8ソフトフォーカスレンズ「ふわっとソフト」に変形すること。1本で3本分の働きをするわけだ。組み替える作業にはわくわくするものがある。レンズの位置や向きで、こんなにも性格が変わるとは面白い。

 ただし「さらにぐぐっとマクロ」にすると、周辺の流れが激しく現れるなど画質が大きく落ちるので注意。ちなみに「ふわっとソフト」は焦点距離90mm、F4.8になる。


標準形態「ぐぐっとマクロ」の状態 バラしたところ。組み合わせ次第で3通りのレンズに レンズの一部を組み替えて「さらにぐぐっとマクロ」に変身

 マクロレンズとして常用できるかというと、少し考え込んでしまう。いわゆる絞込み測光と同じ状態なので、ファインダー内が暗く、フォーカスをあわせるのがとても難しい。もちろんF4.5より被写界深度を稼ぎたいケースにも対応できない。

 個人的にはぐぐっとマクロより、ふわっとソフトの描写に惹かれた。焦点距離が90mmとあって、ポートレートに挑戦したくなる。そういえば、ソフトフォーカスレンズは絞り値によってソフト量が変化するが、このレンズに絞りはない。

 そこで説明書には、円形の穴を開けた紙をつくり、それを絞り代わりに使うテクニックが掲載されている。組み立て式のレンズといい、ほとんど夏休みの工作状態で微笑ましい。学習雑誌の付録教材のノリだ。


D100 / ぐぐっとマクロ / 3,008×2,000 / 1/100秒 / F4.5 / 0EV / ISO200 / 194mm D100 / ふわっとソフト / 3,008×2,000 / 1/125秒 / F4.8 / 0EV / ISO200 / 135mm

どどっと400mm

 最も気に入ったのがこのレンズ。開放F8と暗い割に、全長264.5mmと望遠比は振るわない。しかし、分割して収納すると151mmにサイズダウン。重量も500gなので、400mmのレンズだと考えると、携帯性能は高い。長い筒を回転しながら組み立てる作業も楽しく、スナイパーにでもなった気分だ。

 もちろん、EDレンズなどを多用した最近の望遠レンズに比べると、さすがに画質は劣る。しかし、きちんとピントが合えばそれなりに良い。機会があれば、携行性の面から純正テレコンを装着した200mmレンズと比べてみたいところだ。


兵器のようなどどっと400mm。鏡胴が細いだけに異様に長く感じる このレンズも分解が可能。2群4枚のレンズそのものは外した方に存在する 外したレンズ部を逆さまにして装着。半分の長さに

 もっとも、F8固定なのでファインダー内が暗く、ピントあわせに苦労するのはぐぐっとマクロと同じだ。焦点距離が長いだけあって、遠景なら何でも無限遠というわけにも行かない。大抵微妙なピント調整が必要になる。当然、よほどISO感度を上げるかしないと、手持ち撮影は基本的に無理。手ブレ補正といったハイテクも内蔵していない。

 それでも、600mm相当のレンズを予備として携帯できる魅力は大きい。どのみち三脚も持参する人なら、バッグの隅っこに常備しておくのも手だと思う。


D100 / どどっと400mm / 3,008×2,000 / 1/800秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 600mm D100 / どどっと400mm / 3,008×2,000 / 1/200秒 / F8 / 0EV / ISO800 / 600mm

D100 / どどっと400mm / 3,008×2,000 / 1/800秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 600mm D100 / どどっと400mm / 3,008×2,000 / 1/200秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 600mm

 以上、「あくまでも交換レンズの楽しさを広く伝える」というこの製品のコンセプトは十分に享受できた。最低限の構成のシンプルなレンズがここまで使えるとは正直驚きで、レンズについてもっと勉強したくなる。発売当時にこの製品が受け入れられたということは、ユーザーもメーカーも精神的に豊かな時代だったのだろう。

 もちろん、ぎょぎょっと20はともかく、三脚前提ならぐぐっとマクロとどどっと400mmは使い方次第で十分実用になる。マニュアル露出を強いられるが、絞りが1つなのでそれほど悩むことはないだろう。いまならデジタル専用で「おもしろ工房」を復活してほしいところだ。



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  ニュースリリース(再生産)
  http://www.nikon.co.jp/main/jpn/whatsnew/2000/omoshirol_00.htm


( 本誌:折本 幸治 )
2005/11/01 01:15
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