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モノ・レイク(前編)
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雪が降った5月のセコイア
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春のデスバレー(後半)
[2008/05/07]

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[2008/03/26]

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冬のカーピンテリア
[2008/01/30]

12月のニューヨーク(後半)
[2008/01/16]


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カナディアン・ロッキー(前半)


SD14 / シグマ 18-50mm Macro F2.8(18mm) / F10 / 1/125秒 / ISO100 / オート
ボウ・リバー沿いを走る、1881年創業のカナダ太平洋鉄道。現在はほとんどが貨物列車だそうだ

※カメラはシグマSD14とキヤノンEOS 5Dを使用。すべてRAWで撮影後、JPEGに現像しています。
※写真下のデータはカメラ/レンズ(実焦点距離)/絞り/シャッター速度/レンズ(実焦点距離)/感度/ホワイトバランスです。
※写真をクリックすると、等倍の画像を別ウィンドウで開きます。


よく使ったシグマ120-300mm F2.8のレンズとEOS 5D。これだけの倍率の望遠ズームレンズでF2.8は、アウトドアではありがたい
 世界中を旅するフットワークのいいニューヨーク在住の友人から、4月の終わりにカナディアン・ロッキーに行くからジョイントしないかと誘われた。カナディアン・ロッキーの4月はまだ寒いから、花は咲いていない。スキー好きのその友人と違い、私はスキーをしないから春スキーにも興味がない。だからこの時期のカナディアン・ロッキーはとても行く理由は見つからなかった。それに予定がたてにくい仕事の話もあって、しばらくいい返事ができなかった。しかし仕事が5月に伸び、無理をすれば行ける状況になり、思い切って友人の誘いに乗ることにした。

 アメリカに住んでいると、カナダとはカントリーコードが要らずに電話が繋がるし、携帯電話もアメリカにいるのと変わらず繋がるので、とても身近に感じる。私の持っているアメリカ地図の本には、カナダとメキシコの国土が掲載されている。一昨年、隣の家がトロントに引っ越したし、子どもの仲のいい家族のお父さんもカナダ人なので、カナダに行くことは違う国に行く感じがしない。

 しかし、カナダからアメリカに入る時は、カナダの飛行場内でアメリカの移民局審査を受けるので、その分の時間をとって早めに飛行場に行かないとフライトに乗り遅れるから注意したい。実際カナダからアメリカに入る時に飛行機に乗り遅れた話は、私の知り合いだけでも数件ある。実は、私もバンクバーでアメリカ国内と同じ気分で1時間前に飛行場に到着して、フライトに乗り遅れたことがある。

 私の住むロサンゼルスからカナディアン・ロッキーまでは、アルバータ州にあるカルガリーに行くのが一般的で、直行便なら3時間と少しのフライトだから、苦にならない距離である。しかし、今回はニューヨークから来る友人のフライトと合わせるため、朝6時半ロサンゼルス発、サンフランシスコ経由、カルガリー行きのフライトになった。

 私を乗せた飛行機は、ロサンゼルス空港をオンタイムで離陸し、1時間あまりの短いフライトでサンフランシスコ空港に着いた。カルガリー行きのフライトまでの1時間、コーヒーを飲んで時間をつぶしていた私は、わずか10時間前にいた空港に再びいる自分がおかしかった。実は前日に同じ時間帯の朝のフライトで、サンフランシスコ空港に来て仕事をし、夕方の便でロサンゼルスに戻っていたのだ。最近は飛行機をバスのような感覚で頻繁に使用するビジネスマンも多いと思うが、私も飛行機なしでは生きられない人間の1人になってしまった。


写真1
SD14 / シグマ18-50mm Macro F2.8(18mm) / F8 / 1/500秒 / ISO100 / 晴れ
機内からカナディアン・ロッキーの一部が見えてきた
 サンフランシスコからカルガリーのフライトは、小さめの飛行機だったが快適だった(写真1)。移民局の審査は、今の時期は訪れる人が少ないのかほとんど時間がかからず、ニューヨークから少し前に到着していた友人を待たせることはなかった。私達はレンタカーを借り、国道1号線(トランス・カナダ・ハイウェイ)でロッキー山脈を目指し西に向かった。

 空港から30分も走るとカルガリーの町を抜け、すぐに広大な景色が広がりだし、気持がいい(写真2)。宿泊地であるバンフ国立公園内にあるバンフの町までは、約130km、1時間半のドライブ。バンフの町は、カナディアン・ロッキーの最大の観光地で、ホテル、レストラン、ギフトショップも多く快適な町だ。4月はシーズンオフのようで、週末以外、町は静かだった(写真3)。バンフ国立公園は1885年にカナダで初めて国立公園に制定された、世界でも3番目に古い国立公園で、隣接する国立公園とともに世界遺産にも登録されている。飛行機はこの国立公園内の空を飛ぶことはできないから、しばらく飛行機の音を聞かないでいられるのが嬉しい。


写真2
EOS 5D / シグマ120-300mm F2.8(300mm) / F8 / 1/500秒 / ISO100 / オート
馬のはるか後方はロッキー山脈

写真3
SD14 / シグマ18-50mm Macro F2.8(21mm) / F13 / 1/125秒 / ISO100 / オート
今回の滞在で、ほんの数回しか青空が見えなかった。バンフの町にはいくつかの動物の名を付けた道がある。後ろに見えるのはバンフ駅。その背後の雪山は、標高2,998mのカスケード山。内蔵ストロボ使用
 私達は、着いた日は寝酒とおつまみの買出しを兼ねてバンフの町を少し観光しただけで、翌日から大自然を体験するために身体を休めておこうと、早めにホテルでくつろぐことにした。しかし酒好きの2人はその夜遅くまで飲んでいた。結局、私が最も避けたいと考えていた夜更かしは1日目の夜に始まって、カナディアン・ロッキー滞在中の毎晩続き、毎日が睡眠不足だった。

 昨夜の夜更かしにも負けず、私達は朝バンフの町から国道1号線を北へ約60km走り、カナディアン・ロッキーで最も人気のある観光スポット、レイク・ルイーズに行った。背後にそびえたつ標高3,464mのビクトリア山に広がるビクトリア氷河から溶け出た水で、エメラルド・グリーン色をしている美しい湖だ。氷河に含まれる細かい堆積物のせいでエメラルド・グリーン色に見えるそうで、その湖の色を見たかったが、4月の終わりのレイク・ルイーズの表面は凍っていた。凍っている湖の表面を歩いている人が数人いたので、一部溶けているところがあって少し不安だったが、歩いてみた(写真4~7)。

 1882年に鉄道測量隊のトム・ウイルソンがエメラルド・レイクと名付けたが、その後、ビクトリア女王の4女でカナダ総督夫人だったルイーズ・キャロライン・アルバータにちなみ、レイク・ルイーズと改名された。アルバータ州も名前も彼女に由来する。シーズンである夏には大勢の人が訪れるであろうが、平日だったこともあり、人は少なかった。


写真4
SD14 / シグマ18-50mm Macro F2.8(24mm) / F16 / 1/125秒 / ISO100 / オート
レイク・ルイーズとシャトー・レイク・ルイーズ
写真5
EOS 5D / シグマ24-70mm F2.8(24mm) / F16 / 1/125秒 / ISO100 / オート
4月下旬のルイーズ湖はまだ表面は厚い氷で覆われていて、その上を歩いても、湖の表面にいる気がしない

写真6
EOS 5D / シグマ120-300mm F2.8+2Xテレコン(600mm) / F11 / 1/500秒 / ISO100 / オート
写真5と同じポジションから、2倍のテレコンバーター付の120-300mmレンズに換えて撮影。三脚使用

写真7
EOS 5D / シグマ120-300mm F2.8(300mm) / F4 / 1/1,000秒 / ISO100 / オート
ガイドブックによく見かける鳥の代表として紹介されていた、湖畔の道で出会った鳥、ナッツ・クラッカー。すぐに飛んでしまいそうなので、逆光でもシャッターを切ってみた。この後すぐに飛んでいった

 湖畔の高級ホテル、シャトー・レイク・ルイーズで軽いランチを食べた後、国道93号線(アイスフィールド・パークウェイ)を北に走り、ジャスパー国立公園内にあるコロンビア大氷原へ向う。アイスフィールド・パークウェイは、カナディアン・ロッキーと並行して走る感じで、雄大な山々と一体になった気持ちにさせてくれる。有名な登山家が、ここはスイスを50カ所集めたようだと言ったそうだが、山脈が切れ目なくどこまでも続いているようで、とにかく雄大な眺めである。

 コロンビア大氷原では、スノーコーチと呼ばれる特別な雪上車でのツアーに参加し、その入口のアサバスカ氷河まで行き、氷河の上に立つことができる。そこからはコロンビア大氷原の上の方は見ることはできないが、氷河の上に立つとそのスケールの大きさを感じることができる。高い峰や高原に降った雪が、年々蓄積され氷原が形成され、その雪が30mほどの厚さになると、下層部の雪は圧縮され氷となり、上部の積雪増えて氷がさらに厚くなると、ついには谷からあふれだし氷が流れ出す、これが氷河である(写真8~10)。


写真8
SD14 / シグマ18-50mm Macro F2.8(26mm) / F16 / 1/250秒 / ISO100 / 晴れ
雪上車が出るステーションから。アサバスカ氷河を登る雪上車が小さく見える。地球温暖化の影響で、氷河が少しずつ小さくなっている

写真9
SD14 / シグマ18-50mm Macro F2.8(18mm) / F16 / 1/320秒 / ISO100 / 晴れ
この日、上からは冷たく白い山風が吹いてきて、下は氷河だから冷凍庫にいるようだった
写真10
EOS 5D / シグマ120-300mm F2.8(247mm) / F8 / 1/1,600秒 / ISO100 / 晴れ
時々顔を出す太陽からの光がアサバスカ氷河の氷爆と氷の壁に当たり、神秘的な光景を作りだす。ここにいると距離感と大きさがわからなくなる。あたり一面が反射していて、露出も迷うが、それも楽しい経験

 この日、視界は悪くない方だとガイド兼ドライバーが言っていたが、あたり一面、白の世界で、空からが霧のように白い大気が吹き荒れているように感じた。氷河には約20分間いることができたが、その20分間をフルに活用し、写真を撮って雪上車に戻った私の身体は、冷凍庫から戻ったように冷え切っていた。約15人のツアー客のほとんどは、もうとっくに雪上車に戻っていた。

 「小さなゴミでも、捨てるとそこに太陽光が集まって氷河が溶け出すから、ゴミは禁物です」と、日本人観光客に付いていたガイドさんが話していたと、後で友人が教えてくれた。いくら踏んでも叩いてもビクともしない氷河は、実は人の心と同じように繊細で傷つきやすいのだと教えられている気がした。真冬の間はこのツアーはお休みで、4月の中旬から10月の中旬までの間しかオープンしていない。この先さらに北に行き、ジャスパーの町も見たかったが、この日は時間切れとなった。結局ジャスパーの町には今回は行けず、機会があれば必ず訪れたい町となった。

 翌日は、友人をサンシャイン・ビレッジ・スキー場に降ろし、私は1人で写真を撮る予定だったが、せっかくスキー場まで来たので、スキーリフトのある山の中腹までゴンドラで上がってみた。そして、昨夜カナディアン・ウイスキーを飲みすぎて2日酔い気味だった私はゲレンデにある休憩場で、ガイドブックを読みながら友人のスキーが終わるのを待つことにした。1度滑って来た友人が、山の上の景色は最高だからリフトで上がるべきだと言うので、スキーなしでカメラを首からぶら下げ、リフトに乗って山の上に登ってみた。おそらくこの日、スキーかスノーボードなしでリフトに乗った人は、スキー場で働く人以外、私だけだったと思う。

 あいにくこの日は、雲が厚くかかっていて、視界はあまりよくない。しかも上に行くほど風が強くなり、気温がかなり下がる。後日、別のスキー場で出会った地元の少年が、「サンシャイン・ビレッジは見晴らしがいいけど、風が強く寒いので、自分は行かない」と言っていたが、予定外の行動で防寒の用意もなく薄着だった私が、標高3,000m近いスキー場のトップに上がるのは無謀だったのかもしれない。その寒さで2日酔いがいっぺんに吹っ飛んでしまったのも、予定外だった(写真11~14)。

 スキー場からバンフの町までの帰り道は、ボウ・バレー・パークウェイと呼ばれ、景色もよく動物が多く現れると言われている道を走った。そして、私はこのボウ・バレー・パークウェイをとても気に入ったのだった(冒頭の写真と写真15~18)。


写真11
EOS 5D / シグマ120-300mm F2.8(300mm) / F16 / 1/250秒 / ISO100 / 晴れ
スキー場のトップは、標高が高いから木が育たないのか、大きなオープンスペースが広がっている
写真12
EOS 5D / シグマ120-300mm F2.8+2Xテレコン(600mm) / F5.6 / 1/1250秒 ISO100 / オート
このリフトで、ここから見えない先のトップまで行く

写真13
SD14 / シグマ18-50mm Macro F2.8(18mm) / F11 / 1/500秒 / ISO100 / 晴れ
予定外の行動で久しぶりに乗るリフトは、山の斜面からの高さを感じ、ぎこちなかった。雲が切れたのはほんの一瞬だけで、トップに行くと風と寒さは別世界だった

写真14
SD14 / シグマ18-50mm Macro F2.8(21mm) / F11 / 1/500秒 / ISO100 / オート
カルガリーから父親と来た女の子。地元の子どもでも、冷たい山風で目が開いていられない。私の薄い手袋と毛糸の帽子から、容赦なく刺すような冷たい風が侵入して来た
写真15
SD14 / シグマ18-50mm Macro F2.8(50mm) / F5.6 / 1/40秒 / ISO100 / オート
花は見られない季節だと思ったが。何の花だろうか

写真16
EOS 5D / シグマ120-300mm F2.8(186mm) / F8 / 1/400秒 / ISO100 / オート
直角に近い岩壁は壮大。巨大な石を見ているようで、ここでも物の大きさと距離感覚がおかしくなる
写真17
EOS 5D / シグマ120-300mm F2.8(300mm) / F3.2 / 1/400秒 / ISO125 / オート
エルク。私にはカリブーとの違いが、まだよくわからない。動物には名前は関係ないことだが
写真18
EOS 5D / シグマ120-300mm F2.8(186mm) / F4 / 1/80秒 / ISO400 / オート
春から出てきた雄エルクの枝角は、今の時期、ベルベットと呼ばれる柔らかい皮膚にカバーされていてまだ小さい。枝角が大きく成長する8月にはベルベットは取れる。枝角自体は、1日2.5cmも伸び、長さ1.2m、重さは18kgにもなり、冬には落ちてしまうそうだ


URL
  バックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dialy_backnumber/



押本 龍一
(おしもとりゅういち)東京品川生まれ。英語習得目的のため2年間の予定で1982年に渡米する。1984年、ニューヨークで広告写真に出会い、予定変更。大手クライアントを持つコマ―シャルスタジオで働き始める。1988年にPhotographerで永住権取得。1991年よりフリー、1995年LAに移動。現在はLAを拠点にショービジネス関係の撮影が主。日本からの仕事も開拓中。 http://oshimoto.net

2007/05/30 01:28
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