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海岸で女性ポートレイトを撮る


写真1
 LAは1年中暖かく、いつも晴れていると思っている人が日本には多い。しかし10月後半から朝晩はかなり肌寒くなり、雪は降らないもの、1月、2月は雨もよく降る。もちろん半袖で汗をかいてゴルフができる日もあるが、晴天で暖かい気候を期待して日本から来られても期待外れのお天気になる可能性も高い。

 だからLAの秋から冬のロケは、気を付けないとえらく寒い思いをすることがある。海辺や砂漠ではとくに要注意。アメリカは公衆トイレも日本のようにそこら中にあるわけでなく、寒さでトイレが近くなるのも考えてその場所をあらかじめ探しておかないと、女性モデルの撮影の時は大変なのだ。僕は撮影中に何度もちびりそうになった経験がある。

 そんなLAの晩秋に、しかも太陽が沈む直前のサンタモニカビーチで女性ポートレイトを撮影した。まだそれほど寒いという感じではなかったが、じっとしていたら海風でかなり寒く、モデルは大変。鳥肌が立ってしまい、肌寒さが表情にも出てしまう。

 しかもこの日は夏時間から冬時間へ移行した日、つまり、昨日までの午後2時がその日を境に午後1時へ変更する日だった。そんなことも忘れていた僕は、スタートから1時間遅れで撮影時間はあまりない。だんだんと海に落ちて行く太陽を横目に、ビーチ到着後すぐにモデルとメイクを岩場まで走って誘導。足場のいい岩を見つけて、海をバックにモデルを座らせた。メイクさんがすばやく顔のタッチアップをして(写真1)撮影準備OK。


写真2
 モデルは、目鼻立ちのはっきりしたエキゾチックな顔立ちの18歳。今回は顔中心だから背丈は関係ないが、180cmほどの長身で、街中で見かけるとかなりの存在感がある女性だ。そんな彼女のエキゾチックな顔を利用して、パンチのある写真を撮ろうと思っていた。

 ライティングは、太陽光を鏡に反射させた光をモデルの顔に当て、バックは海に反射した太陽光を写し込む作戦だったが、鏡からの太陽の反射がまぶし過ぎ、長い間目を開けていられず、ストロボ光に変更した。太陽はモデルの右肩後方。まずバックの露出を計り、少し暗めなバックにして白い顔を引き立たせたかったので、バックの露出をアンダーに設定する。次にカメラに着けたストロボのパワーをバックの露出に合わせ調節する。小さいストロボは正面から当てると顔が光ってしまうことが多いので、ストロボには光をやわらかくするために透けた白い布で作った自作ソフターを付けた(写真2)。


写真3
 まず1枚撮影。すぐにカメラの液晶モニターで確認。夕方でも野外では見にくいので、着ていたジャケットの下からカメラをもぐらせ、液晶モニターを見る。太陽光がヘアーと背中にいい感じに当たっているのを確認し、すぐに撮影再開。モデルに付けた長い髪で顔の周りを覆ってしまうアイディアだったが、付け毛がバックの岩に溶け込んでしまっている(写真3)。モデルはまだ18歳、背中の肌もきれいなので、ヘアーを軽くし、背中をもっと強調する写真にすべきだった。付け毛も意味がないし、細かいところまで入念に観察しないと反省の1枚。

 前髪は特殊なグルーで固定しているが、それでも風で少しみだれ気味。気になるが、日も暮れかけ寒さも一段と増してきたので、撮影を続行。バックとモデルに当てるストロボ光の露出を間違うと、上がりがまったく変わってしまうので、画像を確認出来るのは非常にありがたい。フイルムカメラだとポラロイドを撮りにて確認するが、今回のように時間がなく待ち時間が貴重な撮影は、デジカメの恩恵大。いい感じで写真が撮れていると信じて、今度はカメラを完全に逆光になるアングルに。付け毛で顔の周りを覆い、レンズに太陽の光が直撃状態だが、レンズにできるおもしろい反射を期待して、ストロボなしと(写真4)、とストロボ使用で撮影(写真5、6)。


写真4 写真5 写真6

写真7
 今回の撮影では、岩の上のため、足場が安定しないので(写真7)、足を滑らせて怪我をしないよう気を付けた。今まで僕は転んだり、滑ったりして撮影中に怪我をした事は幸いないけど、何故か撮影中におでこにカメラをぶつけた痛い思いは数回あり。機材を壊したことは、三脚に足を引っ掛けて、三脚ごと倒れてレンズを1本だめにしたことと、ストロボのスタンドにこれもまた足を引っ掛けて、ライトをだめにした。

 とにかく撮影中は集中していて周りの事が目に入らないので、危険な場所ではカメラもカメラマンも怪我をしないよう気をつけたい。

●撮影データ
カメラ:キヤノン EOS 20D
レンズ:シグマ 24-70mm F2.8 EX DG MACRO(70mm相当で使用)
感度:ISO100
ホワイトバランス:太陽光
AF:ONE SHOOT
ストロボ:松下電器 PE-320S


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押本 龍一
(おしもとりゅういち)東京品川生まれ。英語習得目的のため2年間の予定で1982年に渡米する。1984年、ニューヨークで広告写真に出会い、予定変更。大手クライアントを持つコマ―シャルスタジオで働き始める。1988年にPhotographerで永住権取得。1991年よりフリー、1995年LAに移動。現在はLAを拠点にショービジネス関係の撮影が主。日本からの仕事も開拓中。 http://oshimoto.net

2006/01/26 11:07
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