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魚住誠一×川辺優紀子:ソニー「FE 50-150mm F2 GM」フォトグラファー対談
全域でF2通しの望遠ズームレンズがもたらす、新しいポートレート撮影の世界をいち早く体験
- 提供:
- ソニーマーケティング株式会社
2025年6月20日 07:00
ソニーが5月に発売した交換レンズ「FE 50-150mm F2 GM」は、ズーム全域で開放F値2を実現した望遠ズームレンズ。これまでのラインアップになかったスペックの製品だ。
この「FE 50-150mm F2 GM」を2名のフォトグラファーに使ってもらい、その感触を聞いてみた。
撮影ジャンルはポートレート。明るい単焦点レンズを使うイメージのポートレート撮影で、「FE 50-150mm F2 GM」に対し、2人にどのような印象をいただいたのだろうか。
魚住誠一
愛知県生まれ。名古屋学院大学商学部卒。バンドマンとカメラマンの2足の草鞋を履く。主にポートレートを中心に雑誌、web、広告、写真展で作品を発表。月刊カメラマン表紙を6年担当。合同展であるポートレート専科を主催。現在、新しい写真表現を模索中。オーディオオタク。
川辺優紀子
大学卒業後上京し、モデル・タレントとして活動。
写真家高桑正義氏に師事し、2019年に独立。
ロケーションやスタジオライティングを用いての人物撮影・ワークショップ講師に加え、日常や旅先のスナップをライフワークとしている。
現在はモデルと写真家の二本柱で、精力的に活動中。
モデルならではの視点で撮影するポートレートは、撮られるのが苦手な方からも定評がある。
ポートレートにズームレンズ? の意外性
——本題に入る前にお聞きします。お2人がポートレート撮影で良く使用するレンズは?
魚住誠一(以下、魚住): 基本的には単焦点レンズが好きです。屋内や夕方など、薄暗いところで撮ることがあるため、F1.4の明るさは撮影の自由度につながります。ズームレンズだとどうしても諦める場合がありますから。もっとも最近はズームレンズの「FE 28-70mm F2 GM」ばかり使ってますけどね(笑)
川辺優紀子(以下、川辺): 私は「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」ばかり使っています。小さくて軽い上に、描写と立体感の組み合わせが気に入っています。私も単焦点レンズで撮るのが好きで、食わず嫌いというか、ズームレンズはなんとなく避けていました。
——今回使っていただいた「FE 50-150mm F2 GM」ですが、開放F値2ということもあり、フィルター径95mm、質量約1,340g(三脚座除く)とヘビー級のレンズです。大きさ・重さが気になることはありましたか?
魚住: 確かに重いレンズなのですが、ボディとのバランスは悪くないですね。僕の中では重さ的にFE 70-200mm F2.8クラスのレンズが上限で、あれ以上重くなると持てない。「FE 50-150mm F2 GM」はその範囲内に収まっていると思います。
川辺: 最初はびっくりしましたけど、慣れるものですね。見た目の割に重さは気になりませんでした。撮影に集中していたからかもしれません。
川辺さんの作品……画角の違いで増えるバリエーション
——では、さっそく川辺さんの作品を見ていきましょう。ボケが印象的ですね。
川辺: 望遠端の150mm、開放F値2で撮影しています。撮影の最初の方で撮ったカットですね。ファインダーでみたとき、このボケに「うわっ」と感動しました。
魚住: 良い露出ですね。ピントもバッチリ合っている。
川辺: 瞳認識を使っています。ピントが合っているところは解像していますし、髪の毛の質感もしっかり出ています。「これがズームなの?」と驚きました。
——次は一転してワイド感のある構図です。広角端の50mmですか? これも単焦点レンズっぽい作品に見えますね。
魚住: バリアングル液晶モニターを使ってハイアングルから撮っていますよね。そのおかげで整理された背景でないのが写真的に良いと思いました。ファインダーで撮ると完璧な構図にしようと意識しがちですから。
川辺: 頭にかかっているバイクは一瞬消そうかと思いましたが……(笑)50mmでもF2なら背景がしっかりボケてくれますね。ごちゃついていても、ぼかすことである程度整理できました。
魚住: 僕ならバイクを増やすかも(笑)想像できないもの、予想外のものが入るのが、街で撮る魅力だと思います。
——今度は下から撮った作品です。決まっていますね。
川辺: はい、モデルに近づき下から撮っています。顔にピントが合っているのですが、もう右手がボケています。この奥行き感がズームレンズで出せるのがすごいですね。
——かなりモデルに近寄っています。被写体に結構近づけるのもこのレンズの特徴です。
川辺: 50mmの最短撮影距離は40cmです。そこまではいっていませんが、思いっきり寄ってみました。撮影を見ている人がいたら、「そんなに長いレンズを顔に近づけて大丈夫?」という感じだったと思います(笑)。F2の立体感が際立っているのもお気に入りですね。
——こちらもボケが印象的です。望遠端ではなく98mmなのですね。
川辺: 背景の建物とモデルのバランスを試しながら撮った中の1枚ですね。単焦点レンズを使っているときの足で構図を探す感覚が好きなのですが、今回はズームレンズということで、さらに画角を微調整してしっくりくる構図を選ぶことができました。ふわっとした髪の毛の動きを強調する質感の再現性も好きです。
——同じ背景で、今度は50mmでしょうか。これもズームレンズっぽくないですね。
川辺: 立ち位置を変えず、広角端の50mmで撮ってみました。ポートレートにF2のボケはありがたいですね。いくつかの単焦点レンズを1つに集約できるのはメリットだと感じます。このときもバッグ1つでしたから、軽いフットワークで動けました。
魚住さんの作品……ズームレンズらしからぬ描写とボケ
——では続いて魚住さんの作品を見ていきましょう。こちらもボケがなめらかできれいですね。ピントの合った瞳も印象的です。
川辺: ボケがきれいですね。
魚住: 「FE 28-70mm F2 GM」はハイライトが背景に入ったときの出方が独特なので、このレンズもそうかと考えて試してみました。ボケの大きさだけでなく、ズームレンズらしくないボケ方だと思います。
——続いて全身の座りポーズです。60mm弱で、背景まで入りまとまっています。
魚住: F2とF2.8で撮り比べたうち、これはF2.8の方です。モノクロ的な高速道路が1番奥、続いて白い柵、手間にモデルという構図です。白い柵で樽型のゆがみが出るかも見ていますね。問題ありません。
川辺: 距離感の違いが現れているのか面白いですね。
——これは思いっきり近づいていますね。魚住さんの作品でよく見る構図です。
魚住: 広告の撮影なら衣装に合わせた数パターンだけで良いのですが、写真集にまとめるとなると、この手のカットがあるとインパクトを出せます。単焦点レンズでよくやる手法ですが、ズームレンズなのにそれができるのはこのレンズの良い点だと感じます。
川辺: こんなに寄れるとはすごいですね。ピントあわせがかなりシビアになりそう。
魚住: そうです。被写体までの半歩の差が作品に出ますからね。
——次はこちらに歩いてるシーンです。AFの精度や動作はいかがでしたか?
魚住: このシーンも含め、困る場面はなかったですね。いままでAF-Aを使うことが多かったのですが、このレンズはAF-Cで撮るのが良いようです。
川辺: 私もAF-Cですね。モデルが動いてもしっかり捉えてくれて、精度にも問題はありませんでした。このシーンはズームリングを回しつつ撮影されたのですか?
魚住: はい、モデルの移動に合わせて150mmから徐々に広角にしています。連写もしていますね。向かってくる被写体にAFを合わせ続けるのは難しいのですが、ちゃんと合っていて安心しました。
川辺: こういう撮影を何度も繰り返すとモデルが疲れてくるので、失敗せずなるべく少ない回数で決めたいものですよね。カメラとレンズの性能がしっかりしていることで、積極的に試したくなると思います。
——少し暗くなってきた頃のしっとりとした情景ですね。ボケもきれいですが、点光源が印象的です。
魚住: 少し絞ることで点光源がさらに丸くなる、それを見たかったので撮っています。絞った結果F2.5になっていますが、まだボケていますよね。髪の毛の質感もしっかり出ていて、こういう描写はこれまでのズームレンズでは難しかったのではないでしょうか。
川辺: これだけボケていると、雑多な場所でも撮りやすくなりますね。背景を取り入れても良いしぼかしても良い。選択肢があることで表現力がアップするレンズだと思います。
大三元と異なる新しいラインアップの可能性
——そういえば川辺さんは、三脚座を外して撮っていましたよね?
川辺: はい、手持ちでフリーに使いたかったので外してみました。取り外しやすく、戻すのも簡単です。カチッとしているのも付けたとき安心感がありますね。
——ポートレート以外の撮影ジャンルでも活躍しそうですか?
川辺: ペットの撮影で使ってみましたが、走る犬も撮りやすかったです。仕事の上では、例えばレンズ交換する時間がなく、それでいて作品性の高い写真を撮る必要があるブライダルの撮影などに合うのではないでしょうか。
——このレンズの前に出た同じ開放F値2の「FE 28-70mm F2 GM」と組み合わせて使うのも良さそうですね。
魚住: 単焦点レンズのうち50mmが好きな自分にとって、「FE 28-70mm F2 GM」と「FE 50-150mm F2 GM」はどちらも50mmを含んでいる。その前後を明るいまま使えるということで、僕にとってはベストの組み合わせといえます。2本のレンズで味が違うということもないので、両方を一緒に使うのは良い選択でしょう。
川辺: どの焦点域で撮ってもボケが等しくきれいですよね。色々な焦点距離で撮ってみたくなるのも、ズームレンズの良さだと思います。色々な構図やアングルを試す人なら、楽しいレンズではないでしょうか。
魚住: F2のボケに注目が集まるレンズですが、そもそもG Masterは圧倒的な解像力とボケ味の両立を謳っています。でもそれはどちらかといえば単焦点のG Masterにそのイメージが強かった。それがズームレンズにも本格的に広がってきた印象です。
川辺: G Masterの名には憧れの響きがありますね。描写に明らかな違いがあり、これさえあれば間違いないという信頼感も。
魚住: ええ、G Masterのラインアップが変わることで、新しい世界も広がると思います。古くから広角・標準・望遠のF2.8ズームレンズ、いわゆる大三元の3本を持っていれば間違いがないといわれていました。いま「FE 28-70mm F2 GM」に加えて「FE 50-150mm F2 GM」が出たことで、その図式が変化するのかもしれません。
製品・状況撮影:曽根原昇
ヘアメイク:松岡奈央子