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ニコンZ5IIは「“新しいスタンダード”と感じるハイレベルさ」……フォトグラファー別所隆弘が開発者に聞く

ニコン Z5II

ニコンが発表した最新のフルサイズミラーレスカメラ「Z5II」。小型軽量なフルサイズ機として人気を得た「Z5」(2020年発売)の後継機種として、どんな進化を遂げたのか。デジカメ Watchは、その公式YouTubeチャンネルの動画撮影現場に潜入。フォトグラファーの別所隆弘氏が一足先にZ5IIを使った印象をもとに、ニコンの開発者にインタビューする模様を見学してきた。ここでは別所氏のインプレッションと開発者の回答についてお伝えする。

左から映像事業部第二開発部岡野康介氏、設計プロジェクトマネジャー濱崎淳氏、企画プロジェクトマネジャー櫻井萌那氏、別所隆弘氏、映像事業部第二開発部藤田祐介氏

Z5IIの開発背景とコンセプト(企画プロジェクトマネジャー櫻井萌那氏)

——(聞き手:フォトグラファー別所隆弘氏)Z5IIは「Z5」というフルサイズの“エントリー機”の後継ですが、「Z8」のようなハイエンド機を使う僕でも、新しいスタンダードだと感じるハイレベルなカメラに仕上がっていました。どのようなコンセプトで企画されましたか?

別所隆弘氏

櫻井:1番はお客様の声からです。特にZ5ユーザーから寄せられた声を優先して反映しました。Z5は小型ながら本格的なフルサイズ撮影ができると好評でしたが、動く被写体へのAF追従や、夜景のノイズが気になるといった点に改善のご要望をいただいていました。そこで、Z5の小型さは意識しながらも、暗所性能やAF性能をパワーアップさせたいと考えました。

企画プロジェクトマネジャー櫻井萌那氏

——どのような目標を設定していましたか?

櫻井:長時間持ち歩いていても苦にならない小型軽量性を担保しつつ、画質や撮影機能に妥協せず、表現したいイメージや気分に応じて色味を変更できる機能など、お客様のパートナーになれるカメラを目指しました。初心者からスキルアップしていっても物足りなさを感じないカメラに仕上がったと思います。

——撮影者の良いパートナーになるカメラですね。ずばり、Z5IIの特徴とは?

大きく3つありまして、1つはAFです。高性能になり、高速連写にも対応しています。Z5のAF追従連写は最大約4.5コマ/秒でしたが、Z5IIでは最大約14コマ/秒にアップしました。これで絶対に逃したくない瞬間を捉えられます。

2つ目は、豊富な画作り機能です。Z6IIIに引き続き、クラウド連携機能の「Nikon Imaging Cloud」に対応しています。またカメラ本体に「ピクチャーコントロールボタン」を搭載し、初心者の方でも気軽に画作りを楽しんでいただけます。

モードダイヤルの右側に「ピクチャーコントロールボタン」を搭載

3つ目は暗所撮影能力です。高感度性能が高まり、手ブレ補正も強力です。暗いシーンを手持ちで撮影しても、シャープで美しい写真が撮れるのが魅力です。

——僕が特に魅力を感じたのは、AFと高感度でした。被写体である飛行機が画面に入ってから被写体として認識されるまでの速さに驚きましたし、日没の暗いタイミングでもシャープに写せたことに感動です。Z5で課題とされていた部分を全て解消してきたなと感じました。

櫻井:このZ5IIの企画がスタートしたとき、私は販売店で販売員としての研修を受けていました。そこで“ニコンの人間である”ということは明かさないまま、従来機種のZ5に対するお客様のご感想やご意見を耳にしていたため、「この声を次の製品に絶対反映するぞ!」という気持ちで取り組んだことが形になっています。ですから私にとってZ5IIという製品は、お客様との架け橋です。

決定的チャンスを逃さないAFと高速連写(映像事業部 第二開発部 藤田祐介氏)

——AFの進化はどのように実現しましたか?

櫻井:従来機種Z5の低輝度時AFについても、ファームウェアアップデートで合焦時間などを一部改善してきました。その上で性能改善のご要望をいただくことがあり、Z5IIに向けての大きな課題と認識していました。そこでフラッグシップ機の「Z9」にも搭載される画像処理エンジン「EXPEED 7」をZ5IIにも継承し、AF精度の向上、AF点数の増加、追尾AF機能「3D-トラッキング」の搭載を実現しました。

また、新たに裏面照射型CMOSセンサーを採用しています。これにより連写のコマ速が大幅に向上し、動体への追従性能も向上しました。この組み合わせとAFアルゴリズムの改善により、これまでは難しかったシーンでも速く正確なAFが可能になっています。

——ここまでAFを進化させられた理由とは?

藤田:AFの進化には画像処理エンジン、撮像素子(イメージセンサー)、AFアルゴリズムの全てが貢献しています。EXPEED 7は従来のEXPEED 6に比べて約10倍の処理能力があり、AF演算を高速化しています。このため、より複雑なAFアルゴリズムの搭載や、AF演算点数の増加が可能になりました。

左:映像事業部 第二開発部 藤田祐介氏

裏面照射型CMOSセンサーのおかげで、Z5に対してノイズの低減や読み出し速度の向上を実現しています。画像処理エンジンの進化と裏面照射型CMOSセンサーの新搭載により、動体予測や検出性能も改善し、合焦時間の短縮や-10EVという低輝度AF性能も達成しました。「Z5では心配だったシーンでも、Z5IIであればピントを合わせられる」といった進化を遂げています。

——画面内に小さく見える飛行機を撮影していて、被写体検出の性能が高まっているなと感じました。

藤田:フラッグシップのZ9と同等の、ニコン独自のディープラーニング技術によるAIを活用した被写体検出機能を搭載しています。人物、犬、猫、鳥、車、バイク、自転車、電車、飛行機の9種類を高精度に認識し、最適なAFを行えます。人の多いシーンなど被写体が混在するシーンでは特に効果的で、撮影者が構図に集中できるようになりました。

——動体を追いかけながらの撮影にも強いですよね?

藤田:はい。メカシャッターで最大約14コマ/秒の連続撮影ができるため、スポーツシーンや動物といった動きの速い被写体の撮影に役立ちます。AF追従性も向上し、3D-トラッキングで選択した被写体を追尾撮影できます。

——従来だと、被写体の手前に物があったり、コントラストの低い部分ではピントが外れやすかったです。ですがZ5IIでは、連写中に雲の切れ間から太陽が画面内に入るような意地悪な条件でも、狙った被写体を追尾したまま一切離さなかったことに感動しました。

藤田:AF-Aモード(AFサーボモード自動切り換え)では、1度ピントを合わせた被写体が急に動き出しても、自動的にAF-Cモード(コンティニュアスAFサーボ)に切り換えてピントを合わせ続けられます。

——これならカメラを始めたての人でも、“動きもの”を撮る醍醐味が味わえますね。鳥の被写体検出も高精度だというので試してみましたが、鳥の専門家ではない僕でも撮影を楽しめました。

藤田:Z9同等の鳥検出性能を持っています。ミラーレスカメラなのでAFエリアのカバー率も高く、画面内の90%でAFが機能します。これは一眼レフカメラの「D750」と比べると大幅に広く、画面の端にある被写体でも確実にピントを合わせられるため、構図の自由度も向上しています。

——藤田さんがZ5IIを一言で表現するなら、何ですか?

藤田:Zシリーズの先陣を切ってくれるオールラウンダーです。

ミラーレスの魅力(映像事業部第二開発部岡野康介氏、設計プロジェクトマネジャー濱崎淳氏)

——ニコンの一眼レフカメラを使っている方々に、ミラーレスカメラであるZ5IIの魅力を伝えるとすれば?

櫻井:ミラーボックスを省略したミラーレス構造のため、D750と比べて約20%の軽量化を実現しています。旅行やストリートスナップなどカメラを持ち歩く機会が多い方にとって、ミラーレスカメラのメリットになるかと思います。

——僕は撮影しながら1日に3万歩ぐらい歩くこともありますが、そうなると50gや100gの差でも体の負担としては大きな違いになってきます。ちなみに、Z5と比べて高感度性能が良くなっていますよね。

櫻井:Z5IIでは、ISO 6400〜12800という使用頻度が高い感度域の画質向上に注力しました。これに最大7.5段分の強力な手ブレ補正を組み合わせることで、三脚を使わない手持ち撮影でも、夜景や星空、室内でクリアな写真が撮れます。

——暗い早朝の撮影で、ISO 12800でもシャッタースピードが下がっていく中、三脚を立てる余裕がなかったので手持ちでシャッターを切ることがありました。それでも解像感や色乗り、ノイズの少なさには驚きました。

岡野:7.5段分の手ブレ補正によって、従来では困難だった低速シャッターでの手持ち撮影も可能です。暗い場所での撮影や、スローシャッターで水の流れを表現するなど、三脚を使わずとも表現の幅が広げられると考えています。

映像事業部 第二開発部 岡野康介氏

——ミラーレスカメラのファインダーについて、どのようにお考えですか? 一眼レフカメラユーザーの中には、その光学ファインダーの素晴らしさを楽しんでいらっしゃる方も多いと思います。

濱﨑:仰るとおり、一眼レフカメラの光学ファインダーのほうが魅力的だと考えられていますが、ニコンのミラーレスカメラの電子ビューファインダー(EVF)は、“自然な見え味”にこだわった光学系を搭載しています。さらにZ5IIのEVFには最大3,000cd/㎡(カンデラ)という高輝度な表示パネルを採用しているため、D750のような光学ファインダーと比べても、より明るく鮮明な視野が得られます。晴天下や逆光の環境でも、被写体や露出を正確に確認できるほどの明るさです。

設計プロジェクトマネジャー濱崎淳氏

——逆光で太陽が目の前にあるようなシーンで、その輝かしさをEVFでも感じながら撮影できました。ミラーレスカメラのファインダーの強みはどこにありますか?

濱﨑:暗所撮影時にもISO感度に応じた明るさで構図を確認できますので、夜景や室内といった暗い環境での撮影の幅も広がります。また、ピクチャーコントロールやイメージングレシピといった画作りをファインダー内で確認しながら撮影できるのも特徴です。

最大3,000cd/㎡という高輝度な表示パネルを採用。晴天下や逆光環境でも、被写体や露出を正確に確認できるという

——あと僕が衝撃を受けたのは、動画の4K60p撮影機能でした。4K30pだとN-RAWでも撮影できます。

濱﨑:4K60pではクロップが掛かりますが、4K30pモードではフル画角で撮影できます。また、N-RAWのSDカードへの内部記録が可能になりました。

——N-RAWにN-Logを組み合わせた時の、すさまじい階調の豊かさは魅力ですね。僕のように暗いところで動体を撮ったり、夜に花火を撮ったりする人には、これほどありがたい機能はありません。

濱﨑:複数の圧縮フォーマットにも対応していますので、撮影シーンや目的に応じて柔軟に撮影していただけます。

——お二人にとってZ5IIとは、どんなカメラですか?

岡野:手頃なのに本格的な、ちょっと贅沢なカメラです。

濱﨑:上位機譲りの機能を最適化して、ぎゅっと詰め込んだカメラです。

Zマウントの価値(企画プロジェクトマネジャー櫻井萌那氏)

——「感動画質」と形容されるZマウントですが、ずばりZレンズの特徴は何ですか?

櫻井:感動画質の実現には、大きく2つの要素があると考えています。1つは大口径55mmのレンズマウント径と、レンズマウントからイメージセンサーまでのフランジバックの短さです。これにより一眼レフカメラ用のFマウントレンズに比べ、より理想的なレンズ設計を行うための自由度が高まっています。例えば大口径レンズによく見られる周辺光量の“ケラレ”を抑えやすかったり、より複雑な非球面レンズも採用しやすくなっています。そうして「画面の隅々まで明るくクッキリ」を実現しているのがZレンズの特徴です。

——キットレンズの「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」でも撮影しましたが、こんなに小さなレンズでここまで写るのかと驚きました。色の分離が気持ちよく、現場で見たままの描写で、まさに感動画質ですね。特にZ5IIとの組み合わせで相性が良いなと思ったのは「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」でした。こうした大口径広角ズームレンズは現在各社が最も力を入れるところです。高倍率ズームの「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」も僕の周りで人気が高く、軽さと小ささが魅力ですね。櫻井さんからもおすすめはありますか?

櫻井:「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」です。これまでのF1.8レンズを上回る解像力で、色収差が少なく画面周辺まで鮮明に描写でき、ボケも綺麗に出ます。Z5IIに組み合わせていただくと、ボディとレンズのそれぞれの魅力が引き立てあうと思います。

小型軽量という点では「NIKKOR Z 17-28mm f/2.8」です。旅行先の風景撮影を広角で楽しみたいという方にもピッタリで、約450gの軽さで気軽に持ち運んでいただけます。これまでAPS-C機をお使いでしたら、フルサイズ機での広角撮影にご興味がある方も多いかなと思いますので、おすすめします。

——あとは「NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena」ですよね。このボケの丸さには本当に驚きます。

櫻井:ニコンとしても、PlenaはZ5IIと一緒に楽しんでいただきたいレンズのひとつです。絞り開放でも画面の端から端まで鮮明な写りで、ボケが美しく出ます。ポートレートや風景だけでなく、幅広い撮影にお使いいただけます。

——Zシリーズにおける、Zレンズを使ってこその魅力を教えてください。

櫻井:多くのZレンズにはコントロールリングが搭載されていて、操作するパラメーターのカスタマイズも可能です。高画質のみならず、お客様の撮影スタイルに寄り添った操作性を実現できるのも、ミラーレスカメラ用Zレンズの大きな魅力だと考えています。

ライター。本誌編集記者として14年勤務し独立。趣味はドラム/ギターの演奏とドライブ。日本カメラ財団「日本の歴史的カメラ」審査委員。YouTubeチャンネル「鈴木誠のカメラ自由研究