何がすごいの? キヤノンのアプリ

Vol.05 Neural network Image Processing Tool×長谷川ルウ

風景をクリアにして解像感をアップさせたい

キヤノン EOS R5/RF24-70mm F2.8 L IS USM/28mm/マニュアル露出(F11、1/30秒)/ISO 100/WB:オート
日中の風景でもノイズリダクションは効果があるのか?
レンズオプティマイザはノイズを増やさず解像感を上げることができるが、写真にノイズが残っているとその効果が弱くなる。レンズオプティマイザを使う場合は、同時にノイズリダクションも適用するとより効果が増す

自然風景を撮影する際、撮影環境や撮影設定によってどうしても画質劣化やノイズが発生してしまう。「Neural network Image Processing Tool」を使うことで写真が本来持っているクリアな解像感を取り戻すことができる。風景写真家の長谷川ルウさんに、その実力を体験してもらいました。

長谷川ルウ

1999年生まれ。父から小学校の卒業祝いにカメラをプレゼントしてもらったのをきっかけに、写真の世界に興味を持つ。独学で撮影方法や現像などを学び、主に関西圏の風景を撮影。美しい瞬間を写真に収めるために、日々撮り続けている。

※本企画は『デジタルカメラマガジン2026年1月号』より転載・加筆したものです。

ノイズを増やすことなく解像感が大幅に向上する

Neural network Image Processing Toolはキヤノン独自のディープラーニング技術を使い、撮影後のRAW画像にノイズリダクション、色補間、収差・回折補正を行う画像処理ツールだ。風景写真で特に効果的なのがニューラルネットワークレンズオプティマイザだ。

撮影時は回折現象や周辺のボケで解像度が劣化してしまうが、レンズごとの設計値を元に効果的に補正し、画像の解像感が見違えるほど上がる。その効果はレンズを買い変えたのかと思うほどだ。従来の解像感を上げるシャープネス処理では、同時にノイズも増えていたが、レンズオプティマイザではノイズを増やすことなく回折やボケのみを補正する。ハイライト部分の色にじみも補正されるため、一層クリアで緻密な写真に仕上がる。

Neural network Image Processing Tool
[対応OS]
Windows 11
macOS 13、macOS 14、macOS 15

[動作環境]
Windows
CPU:インテル Core-iシリーズ(推奨インテル Core-i7以上)
RAM:推奨16GB以上
GPU:DirectX12に対応したビデオカード(必須)
VRAM:4GB以上(必須)

Mac
CPU:Apple M1チップ以上(必須)
RAM:推奨16GB以上
[利用料金]
550円/31日間
5,500円/365日間

Neural network Image Processing Toolのノイズリダクション後に、他社製のAIノイズ処理で大幅にノイズを軽減する

バージョン1.5より出力ファイル形式にCR3が選べるようになり、レンズオプティマイザとノイズリダクションを適用したまま他社製RAW現像アプリで補正ができるようになった。他社製アプリに搭載されているAIノイズ処理をさらに適用できるため、より一層ノイズレスの写真になる。手間はかかるが、現時点ではこの方法が最もノイズが少なく、滑らかな写真を作る方法だ。

ノイズリダクションを適用するとほぼノイズが消える。さらにAIノイズ除去を組み合わせるとわずかに残っていたノイズすら消えて低感度で撮ったような写真になる

SCENE 01|紅葉を鮮やかにして立体感ある山並みを描く

黒部峡谷を走る黒部峡谷鉄道のトロッコ電車。トロッコの赤、橋梁の赤、そして紅葉の赤が重なり合い、渓谷が鮮やかに染まっていた。紅葉の最盛期だけあり各色が実に鮮やかで、力強い季節の息吹を感じる。レンズオプティマイザを使うと、ディテールが際立ち、葉の1枚1枚までが鮮明に表現されている。

キヤノン EOS R5/RF24-70mm F2.8 L IS USM/24mm/マニュアル露出(F4、1/200秒)/ISO 100/WB:オート
つぶれていた葉の1枚1枚までも緻密に表現されるようになった

SCENE 02|ノイズを消して花火の繊細さを引き出す

きほく燈籠祭の彩色千輪菊は、夜空に大輪の光を咲かせ、水面に鮮やかに反射する幻想的な花火だ。ノイズリダクションを使うと、空や水面に残ったノイズが消失し、微妙な光のグラデーションや花火の輪郭が鮮明になり、反射する水面の質感まで立体的に描写される。イルミネーション撮影でも光と色彩を際立たせる効果がある。

キヤノン EOS R5/EF24-70mm F4L IS USM/31mm/マニュアル露出(F14、20秒)/ISO 100/WB:オート
空に残っていたノイズが消えて花火のディテールが際立った

写真が本来持つ解像感がよみがえり、驚くほど鮮明でクリアな画質になる

普段は日本の四季折々の風景や自然を、特に逆光を生かして撮影している。木々の透過光や水面の反射など、光の質感や空気感を表現することを意識し、撮影時は光の向きや影、被写体との距離感に細心の注意を払っている。三脚を用いてカメラをしっかり固定し、解像度やシャープネスを最大限に引き出すことを重視してきた。

今回、「Neural network Image Processing Tool」を導入し、その効果に驚いた。直感的な操作だけで写真のディテールを高め、ノイズを大幅に軽減してくれる。花火や夜景の繊細な階調表現が鮮明になり、写真の空気感や立体感がさらに際立つ仕上がりだ。

まさに「写真を磨く」という印象だ。今後は朝霧や雪景色、川や湖の水景など、光と色彩のコントラストが印象的な写真でも積極的に活用したい。三脚を使ってじっくり撮る人や、解像度とディテールにこだわる人にとっておすすめのアプリだ。

長谷川ルウのメイン機材

RF24-70mm F2.8 L IS USM
EOS R5

EOS R5とRF24-70mm F2.8 L IS USMを愛用している。ボディとレンズの協調手ブレ補正により手持ちで2秒程度の長時間露光が可能だ。三脚なしでも夜景や水面の光跡もぶれずに撮影できるので、撮影表現の幅が大きく広がった。

長谷川ルウ