オリンパス・ペンE-P1の「アートフィルタームービー」を試す

Reported by上田晃司

E-P1

 「EP-1」は、オリンパスで初めてマイクロフォーサーズ規格に準拠した「マイクロ一眼」だ。レンズ交換式デジタルカメラとは思えないほどコンパクトなボディは、フルメタルの外装を採用しており高級感がある。オリンパスEシリーズのように光学ファインダーは搭載することなく、撮影はライブビュー画面を見ながら撮影することになる(外付けビューファインダーを除く)。

 撮像素子は、有効1,230万画素の4/3型ハイスピードLive MOSセンサー。定評のあるスーパーソニックウェーブフィルターを搭載しゴミに強い。また、センサーシフト式手ブレ補正機能を搭載しており最大で4EVまで補正が可能となっている。液晶モニターは、23万ドット、3型のハイパークリスタル液晶を搭載。撮影機能に関しては、基本的にオリンパスEシリーズとほとんど変わりない。多彩なシーンモードやマニュアル撮影モードを搭載。また、E-30やE-620に搭載されているアートフィルター6種類を搭載している。

 さらにE-P1は、オリンパスのレンズ交換式デジタルカメラ初となる動画撮影機能を搭載した。アートフィルターを使った動画撮影も可能となっている。今回は、アートフィルターを使った動画について紹介していこう。

独特の描写でひと味違った動画を

 まず、E-P1の動画撮影機能について説明しよう。E-P1に搭載されている撮像素子は、一般的なデジタルビデオカメラの1/6型や大きくても2/3型の撮像素子にくらべ大きいのが特徴。大きな撮像素子を搭載することにより、背景をぼかしやすく、また、ある程度暗い場所での撮影も可能だ。

モードダイヤルに動画ポジションを備える

 さらに、フォーサーズマウントアダプターを使用すれば、豊富なフォーサーズレンズ群を使用してさまざまな画角で動画撮影が可能になる。撮影記録画像サイズは、ハイビジョン画質の場合1,280×720ピクセルまたは、スタンダード画質の640×480ピクセルから選択可能。いずれも記録動画方式は、「AVI Motion JPEG(30fps)」となっている。最長録画時間は、ハイビジョンが7分、スタンダードが14分。動画撮影に使用できる撮影モードは、「プログラムオート」と「絞り優先」。さらに、6種類のアートフィルターを適用したアートフィルタームービーの撮影が可能だ。

 アートフィルターは静止画像同様に「ポップアート」、「ファンタジックフォーカス」、「デイドリーム」、「ライトトーン」、「ラフモノクローム」、「トイフォト」から選択可能。一部のアートフィルターとの組み合わせによりフレームレートが異なるので注意が必要。「ポップアート」、「デイドリーム」、「ライトトーン」は30fps、「ファンタジックフォーカス」、「ラフモノクローム」は6fps、「トイフォト」は2fpsとなっている。フレームレートが少なくなるとパラパラ漫画のようにカクカクした動きになるので被写体によっては向き不向きがあるかもしれない。

 撮影は基本的にカメラまかせになってしまうが、絞り優先モードを使用すれば被写界深度の調整も可能だ。そのほかのモードでは、露出補正を使って露出を調整することになる。動画撮影の場合はAEロックが使用できず、カメラをパン(左右に動かす動作)したときに露出が大きく変化する場合もあるので注意が必要。ちなみにAEロックボタンは撮影中AFとして機能する。そのほかにも、動画撮影中はいくつか注意しなければならない点がある。

 動画撮影中は露出補正や絞り値の変更はできない上、手ブレ補正は「電子式手ブレ補正」になってしまうので画角が若干狭まってしまう。手ぶれ補正は、「I.S.1」「I.S.2」「I.S.3」のいずれに設定していても「I.S.1」(上下方向の補正)の動作になる。また、動画撮影中は顔検出が使用できない。静止画撮影に比べ少し制限があるので覚えておくといいだろう。

“OLYMPUS”ロゴの両脇にステレオマイクを搭載動画モードの画面表示

 AFに関しては「シングルAF」、「コンテニュアスAF」、「MF」、「シングルAF+MF」がすべて使用可能。「コンテニュアスAF」にしておけば、録画中被写体やカメラの動きに合わせて自動的にピント合わせをしてくれる。ただし、カメラがピントを合わせる際にピントが1度大きくずれ、レンズの駆動音が録音されてしまうので注意が必要。スムーズにピントを合わせたい場合は、マニュアルフォーカスを使うのがベストだろう。

 音声に関しては、デフォルトでステレオマイクを搭載しているので臨場感あるサウンドを録音することができる。音声記録方式は、サンプリング周波数44.1kHzのステレオリニアPCM(16bit)となっている。作例の動画の音を聞いてもらえれば分かりやすいが、外部マイクを使うことなく内蔵マイクだけでここまで綺麗な音を録音できるとは正直驚かされれた。ただし、レンズのそばにマイクがあるためレンズの駆動音などは拾いやすい。音を重視したい場合はMFを使うことをおすすめする。

動画時の設定はライブコントロールで変更可能。この画面でアートフィルターの選択も行なう。動画の解像度選択
録音の有無AFの選択
AF枠の選択上記の設定はメニュー画面からも行なえる

 実際にアートフィルターを使用しての動画撮影は、とても面白くハマってしまった。今回の撮影では、ビデオ雲台などは持っていかず一般的なの写真用の三脚を使用した。カメラはパンやティルトなどの動きをせずに写真を撮る要領で動画撮影した。静止画とは違い音や被写体の動きを記録できるので、静止画撮影のついでに動画で臨場感を伝えられて便利だと感じた。

作例


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※再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

アートフィルター無し(M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6)
絞り優先モードで撮影した。絞り優先モードは被写体を選ぶことなく使用可能。フレームレートは30fpsなので、動きのある被写体もスムーズに撮影することができる
ポップアート(M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6)
ポップアートは、色鮮やかな被写体を撮影する時に便利なフィルターだが、曇りや色が足りない被写体を撮影する時にも意外と重宝する。木々の緑や空の青など色を強調するには便利。30fpsなので動く被写体も問題なくスムーズに撮影可能
ファンタジックフォーカス(M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6)
ファンタジックフォーカスは、ソフトフィルターをかけた時のエフェクトを再現できる。被写体を柔らかく撮影したい場合や女性を撮る時には便利。ただし、フレームレートが6fpsになるので注意が必要だ
デイドリーム(M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6)
デイドリームを使用すればコントラストが低めで色がシアンにシフトするので青く幻想的な雰囲気になる。映像作品を幻想的に仕上げたい場合に有効なので、被写体を選ぶことなく使用可能。フレームレートは30fps
ライトトーン(M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8)
ライトトーンは、コントラスト低めなので暗部やハイライトが飛びにくい。ファンタジックフォーカスとはちがったソフトな効果を得ることができる。花や女性、古い街並などあまりコントラストを出したくない被写体に最適。フレームレートは30fps
ラフモノクローム(M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6)
ラフモノクロームはザラザラとした荒いモノクロ動画を撮影したい場合に最適。フレームレートは6fpsになるので大昔のフィルムムービーカメラで撮ったようなイメージになる。古い街並や工場など撮影すると味がある
トイフォト(M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6)
トイフォトは2fpsとかなりカクカクしてしまう。カメラを固定してパラパラ漫画のようなイメージにしたい場合に最適。トイフォトで撮影するとノスタルジックなイメージに仕上がるので、街や空、川など撮影すると面白い

 アートフィルターを使用して撮影すると、何気ない風景や被写体でも見栄えよく写るのでいろいろ撮影してしまう。最初は、フレームレートが低下するファンタジックフォーカス、ラフモノクローム、トイフォトなどは、使い辛いと思ったが、撮影してみると昔の映画のようにカクカクした動画を撮影できるのでノスタルジックな雰囲気に仕上げたい場合は役立った。

 静止画のアートフィルター同様、リアルタイムでエフェクトが適応されるので撮影時にどのアートフィルターが最適かどうか確認も容易だった。今回、意外と活躍したのがポップアート。筆者は、静止画でこのフィルターをあまり使用しないが、動画撮影ではとても役立った。というのも、動画は静止画にくらべ若干色が薄い印象があったのでポップアートを試してみたところ、見事イメージ通り鮮やかになった。

 E-P1の動画は、ほかの機種にに無い楽しみ方が色々あったが、個人的には、動画でもマニュアルモードが使用できるとなお良いと思った。また、感度のよいステレオマイクを搭載しているので音にはほとんど不満はないが、録音開始時の若干の音も記録してしまうので、次期機種には外部マイク入力端子も欲しいところ。それから、AEロックや静止画でとても役に立っているMF拡大表示なども動画で使用できるとさらに良いと感じた。この辺りは今後に期待したい。




(うえだこうじ)1982年広島県呉市生まれ。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強しながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。人物を中心に撮影し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影している。現在は、カメラ誌やWebに寄稿している。
ブログ:http://www.koji-ueda.com/

2009/9/8 00:00