特別企画
ポートレートレンズの王道“85mm”!
タムロンSP 85mm F/1.8で女性モデルを撮影してみた
解像力・ボケとも好印象 手ブレ補正機構「VC」もうれしい装備
Reported by上田晃司(2016/4/18 10:49)
近年、ポートレート撮影においては広角寄りの写真も人気があるが、王道のポートレートレンズと言えばやはり85mmだろう。85mmの画角は、人間が一点に注視した時の視野角に近いと言われ、背景を整理しやすく、大きなボケを得やすい。
また、被写体とのワーキングディスタンスは適度で、歪みも少ない点が85mmがポートレートの王道レンズと言われる由縁だろう。
タムロンから3月24日に発売された「SP 85mm F/1.8 Di VC USD(Model F016)」は、まさにポートレート撮影が似合うスペックの新しいレンズ。35mmフルサイズ対応でニコン、キヤノン、ソニー用が用意されている(ソニー用は発売時期未定)。
シンプルでありながら洗練されたデザインは好印象。レンズ外装には金属を使い高級感が感じられる。そして、ルミナスゴールドと呼ばれる上品な金色のブランドリングがひときわ目立つ。操作系もよく考えられており、AF/MFの切り替えスイッチやVCのON/OFFスイッチも大きめで操作しやすい。
質量はキヤノン用で700g、ニコン用で660g。少し重めではあるがフルサイズデジタル一眼レフカメラとの相性は良い。今回は筆者愛用のニコンD750と組み合わせて使用したが、バランスもよく不満は感じなかった。
数多くの85mmレンズがある中、本レンズはデジタル一眼レフ用の85mm F1.8で初となる、手ブレ補正機構VC (Vibration Compensation)を搭載している。明るさに加えてさらに手ブレ補正が効くことで、カバーできるシーンがより広がった印象だ。補正効果は約3.5段と効きも良い。
本レンズは中望遠のため、やはりブレには注意したいところ。理論値で言えばシャッター速度は1/100秒よりも速い必要があるが、3.5段分なら単純計算しても1/8秒前後でも手ブレしない計算になる。ポートレートの場合は被写体ブレも考慮する必要はあるが、屋内やローライトシーンなどでも間違いなく役立つだろう。もちろん、ファインダー像の安定感は他の85mmと比べても手ブレ補正機構VCを搭載していることで安定感抜群だ。
解像力・ボケとも好印象
実際に撮影してみると、AFは静音性に優れ、俊敏にピントを合わせてくれる。撮影中のピント合わせに掛かる時間は撮影のテンポにも関わる重要な部分だが、本レンズで撮影中にストレスを感じることはなかった。ピントの精度も高く、思い通りにピントを合わせることができた。
気になる画質に関しては絞り開放からピント位置は極めてシャープ。目にピントを合わせて画像等倍で見てみるとまつげの1本1本までしっかり解像している。柔らかさとシャープさを両立しており、ポートレート撮影に向いているレンズだ。
もちろん、F2.8くらいまで絞るとさらにシャープネスが増し、コントラストも高くなる印象。レンズにはLD (Low Dispersion: 異常低分散)レンズとXLD (eXtra Low Dispersion)レンズを採用していることもあり、収差なども気になることはなく、ハイライト部分に発生しやすい色滲みなどもほとんど確認できなかった。
ボケに関しては、絞り開放ではとろけるような大きなボケを楽しめる。ウエストアップくらいでも中望遠らしい大きなボケで被写体を際立たせることが可能だ。
丸ボケを活かした撮影でも9枚の円形絞りのおかげで綺麗なボケを堪能でき、丸ボケのエッジ部分である輪線も自然だ。描写、ボケ共にとても好印象だ。
VCを活かした作品を撮りたいと考え、交通量の多い道を背景にモデルを撮影してみた。シャッター速度を1/13秒前後に設定して、背景を横切る車をぶらして動感を表現してみる。中望遠レンズで1/13秒はかなりつらいシャッター速度ではあるが、VCのおかげでぶれることなく撮影できた。ポートレート撮影以外でも風景やスナップなどでも必ず役に立つだろう。
85mmの単焦点レンズは数多く存在するが、本レンズは最新の設計であり、さらに手ブレ補正機構というアドバンテージを持つ。解像感に関しても絞り開放から高い描写力を堪能できボケもとても綺麗だ。高画素機と組み合わせてもなんら不満を感じることはないだろう。
開放F値は少しおとなし目ともいえるF1.8ではあるが、手ブレ補正機構を搭載している点や、絞り開放から極めて高い描写力のレンズということを考えれば、価値の高いレンズと言える。画質、機能面のトータルバランスもよい。
ポートレート撮影をすでにされている方はもちろん、これから挑戦する方も、新しい選択肢に本レンズを挙げてほしい。期待は裏切らないはずだ。
モデル:Ai
制作協力:株式会社タムロン