特別企画

EOS 7D Mark IIにマッチする三脚を探る

3種類のカーボン三脚と望遠レンズの相性は?

期待のEOS 7D Mark IIがついに発売された。秒10コマの高速連写に加え、オールクロス65点AFセンサーの採用、被写体に合わせて選択できる7つの測距エリア選択モードなど、とにかく動く被写体には最適なカメラ。すでに購入された方や、今から購入予定の方も多いはずだ。

EOS 7D Mark II。発売は10月30日。実勢価格は、ボディのみ22万円前後、EF-S18-135 IS STMレンズキットが26万円前後、EF24-70L IS USMレンズキットが36万円前後(いずれも税込)

今回はこのEOS 7D Mark IIで動体を撮影すると同時に、そのときマッチする三脚について考察してみた。使用するレンズにあわせてどんな三脚を選べば良いのか、参考なると幸いだ。

その前に、動体撮影で三脚を使うメリットとは何か。まず、ファインダー像が安定する。そして、重量のあるレンズでも疲れにくい、といったところだろう。

軽量レンズにあわせたセッティング

まずレンズにチョイスしたのは、EF70-300mm F4-5.6 IS USM。幅広い焦点域ながら軽量な鏡筒を実現した人気を博し、望遠撮影の現場でよく見るレンズだ。

EF70-300mm F4-5.6 IS USM

これを装着したEOS 7D Mark IIをベルボンの三脚、ジオ・カルマーニュE535Mと組み合わせてみた。EOS 7D Mark IIとこのレンズの重量は計1,540g。三脚の推奨積載質量は3kg。これで空港に着陸する旅客機を撮ってみる。

EOS 7D Mark II+EF70-300mm F4-5.6 IS USM+ジオ・カルマーニュE535M

このレンズは広い焦点距離域を持ち、APS-Cサイズ機であるEOS 7D Mark IIで使用すると112-480mm相当のレンズとして使用できる。望遠ズームレンズとしては価格も抑えてあるので入門者には最適だろう。

一方、ジオ・カルマーニュE535Mは中小型に分類される比較的コンパクトなカーボン三脚だが、EV(エレベーター)無しで全高1,409mmあるため、使い勝手は悪くない。身長178cmの筆者の場合はEVを少し伸ばすことで対応できる。雲台も三脚もしっかりしており、安心して載せることができた。

ジオ・カルマーニュE535Mで撮影中。身長178cmの筆者だと、エレベーターを伸ばさなくてはライブビューできない。それを除けば、機材とのマッチングはベストだと感じた。造りの割に軽量なのもうれしい

動画用の三脚ではないが、パン(左右に振る動作)も自由に行なえ、安定したフレーミングのまま連写撮影が可能だった。

こうした撮影の場合、手持ちでも十分と思う方もいるだろう。ただ、三脚を使用するとファインダー像が安定するため、被写体を捉えやすい。より的確に被写体を撮影できるのが便利だ。

さらにこの三脚の縮長は665mmとコンパクトになるため電車移動もこなせる。EF70-300mmも軽量なので、気軽に撮影に出かけられる組み合わせだ。

EOS 7D Mark III/EF70-300mm F4-5.6 IS USM/ISO200/F8/1/1,000/-0.3EV/WB:太陽光/190mm/ジオ・カルマーニュE535Mを使用

超重量級レンズに適した三脚とは?

次に使用したレンズは、EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×だ。EOS 7D Mark IIに装着すると計4,530gと、かなりヘビーな組み合わせとなる。

EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×

EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×は、世界初となるエクステンダー(テレコンバーター)内蔵のレンズ。エクステンダーを使用するとテレ端の焦点距離は560mmになり、APS-C機であるEOS 7D Mark IIだと、896mm相当の超望遠レンズとして使用できる。

このクラスのレンズは300mm F2.8や500mm F4など単焦点が多いが、本レンズは2倍ズームを実現。近づいてくる飛行機などもズームしながらフレーミングできるのはとても便利。EOS 7D Mark IIのAF補足能力と連写性能にも助けられ、存分に撮影を楽しめた。レンズのAF速度も十分に速く、EOS 7D Mark IIとの相性は抜群のレンズだろう。

画質はズームレンズとは思えないほど高画質で、機体のディテールまでしっかりと描写。エクステンダーを使用しても、コックピットの中のHUD(B787などに搭載されるヘッドアップディスプレー)などまで確りわかるほど解像している。

ただし、計計4,530gの重量ともなると、やはり長時間手持ちで撮影するのは辛い。三脚があった方が断然楽に撮影できる。

まずは、持ち運びが楽な中型カーボン三脚ジオ・カルマーニュE645Mといっしょに使用してみた。

EOS 7D Mark II+EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×+ジオ・カルマーニュE645M

この三脚、カタログでは推奨搭載質量は4kgとなっているが、使用感は悪くない。脚経も28mmあり、意外にも頼りなさは感じなかった。

三脚があると「待ち」の撮影が楽になる。重量級のレンズともなればなおさらだ。

ただ、さすがに重量があるためチルト(上下の動作)を少し締めつつ、適度なテンションをかけて撮影した方が楽な印象だ。また、全高が1,376mmなので基本的にはEVを少し伸ばして使用した方が楽な印象。となると、ブレも若干気になってくる。

EOS 7D Mark III/EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×/ISO200/F5.6/1/1,600/-0.3EV/WB:太陽光/506mm/ジオ・カルマーニュE535Mを使用

次に、ジオ・カルマーニュE740を使用してみた。これはかなり重量級のカーボン三脚で、脚径は32mm。堅牢製に優れ、雲代には大きなPH-275を採用している。推奨搭載質量は7kgと破格だ。

EOS 7D Mark II+EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×+ジオ・カルマーニュE740

そのため、EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×とEOS 7D Mark IIを搭載しても余裕がある。全高も1,660mmと高く、筆者でもEVを使うことなく撮影可能。飛行機のアプローチに合わせて素早いパンなどをしても、よじれもみられず安定した撮影が可能だ。

ジオ・カルマーニュE740の安定感は抜群。重いのが難点だが、自動車での移動なら問題ないだろう。

結論としては、この望遠レンズを使用するのであれば、E645クラスでもよいが、E740クラスがなお安心だ。

また今回は、ビデオカメラやフィールドスコープ用に作られた雲台FHD-71QNをE740に装着して使用してみた。

雲台をFHD-71QNにチェンジ。基本的には動画用の雲台だが、動きモノを撮るのにも都合が良い。レンズに三脚座があれば、縦位置での撮影も可能。

この雲台、オイルフリュードのため適度なトルク感があり、スムーズに飛行機を追従できる。パン方向だけでなく、チルト方向にも自由に動かせるので、動く被写体に対してより的確なフレーミングが可能だ。

EOS 7D MarkIIの秒10コマの高速連写と組み合わせて使用すれば、すべてのフレームに安定して被写体を写すことも可能だろう。雲台自体の推奨積載質量は4.5kgと、今回使用したセットも十分使用可能だ。

かなり贅沢だが、本格的に動体を追従したい場合はE740とFHD-71QNの組み合わせは、最高のな組み合わせといえる。

FHD-71QNを使い、迫りくる旅客機を連写しながら追う。しっかりした三脚(ジオ・カルマーニュE740)があってこその撮影だ。
EOS 7D Mark III/EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×/ISO400/F14/1/1,250/-0.7EV/WB:太陽光/570mm/ジオ・カルマーニュE740を使用
EOS 7D Mark III/EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×/ISO400/F11/1/1,250/-0.7EV/WB:太陽光/560mm/ジオ・カルマーニュE740を使用
EOS 7D Mark III/EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×/ISO400/F11/1/1,250/-0.7EV/WB:太陽光/560mm/ジオ・カルマーニュE740を使用

まとめ:7D Mark II、望遠レンズ、三脚の組み合わせは“○”

今回、旅客機をEOS 7D Mark IIで撮影して改めて思ったのが、動きものの望遠撮影で、ここまで使いやすいカメラはないのではということ。EF200-400mm F4Lの画質も素晴らしく、あらゆる被写体をこの組み合わせで狙ってみたくなる。

ただEF200-400mm F4Lについては、なるべく三脚と組み合わせて使いたいとも思った。これだけ重いレンズの場合、手持ち撮影に比べ断然楽で、長時間撮影していても体力の消耗度合いも少ない。

飛行機が肉眼で豆粒くらいで見える時からずっとフレーミングしても安定。また、被写体を追尾しながら構図などを考える時間も有効活用できる。作品の質にも良い影響を及ぼすだろう。

特に望遠レンズを使用した撮影に慣れていないユーザーは三脚を使うことでブレを抑えられるので、安心して撮影に臨むことができるはずだ。常に三脚が使えるとは限らないが、撮影に行くときは、可能な限り三脚を用意したいと感じた。

加えて、自身の使用する望遠レンズの大きさに合わせて、ある程度しっかりした三脚を選択することが大事。予算と体力の範囲内で、しっかりした三脚と雲台を選びたい。それだけで作品が変わってくるはずだ。

制作協力:ベルボン株式会社

上田晃司

(うえだこうじ)1982年広島県呉市生まれ。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強しながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。人物を中心に撮影し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影している。現在は、カメラ誌やWebに寄稿している。
ブログ:http://www.koji-ueda.com/