特別企画

旅×カメラ:キヤノンPowerShot SX280 HS

高倍率ズーム+DIGIC 6の実力は?

 間もなくゴールデンウィークが始まる。国内外問わず旅行の予定を入れているかたも多いことだろう。旅に欠かせないのは、大事な思い出を記録するカメラだ。

 今回、4月25日に発売された「PowerShot SX280 HS」(以下SX280 HS)を事前に使用する機会を得た。早速航空券を予約して筆者の大好きな街、香港へ2泊3日の旅に出発。それでは、実際にPowerShot SX280 HSを旅先で使用した使用感などを交えてレビューしていこうと思う。

 まず、簡単にSX280 HSのスペックを見てみよう。撮像素子には裏面照射型の有効約1,210万画素の1/2.3型高感度CMOSを搭載。画像処理エンジンは本機から搭載された最新の「DIGIC 6」だ。

 レンズは35mm判換算で焦点距離25-500mm相当の画角をカバーする光学20倍ズームレンズを搭載。開放F値はF3.5-6.8となっている。広角から超望遠までカバーするため、様々な被写体に対応する必要のある旅行での使い勝手にも期待がかかる。

 本体サイズは106.4×62.8×32.6mmで、重量は約233g。スマートフォンより少し大きいくらいで機動力はよく、1日中持って歩いても苦になるような大きさではない。20倍ズームレンズを搭載しつつこのサイズに収まっているところは、一眼レフカメラやミラーレスカメラに対して、決定的に有利な点だ。荷物をなるべく減らして身軽に動きたい旅において、この魅力は大きい。

 さらには、撮影地の情報を記録するGPS機能や、スマートフォン経由でSNSなどに写真を転送できるWi-Fi機能も搭載している。

動画性能を強化した「DIGIC 6」を搭載

 注目すべき点のまずひとつは「動画」だ。キヤノンが“動画コンパクト”と謳うだけあって、動画機能が非常に充実している。動画は写真と違い、音と動きで臨場感を伝えられる。それもあり、旅において動画を残したくなるシーンは多い。

 前機種のPowerShot SX260 HSも動画機能は優れていたが、SX280 HSは飛躍的に進化した。「DIGIC 6」は動画機能を強化した新映像エンジンであり、これにより滑らかで美しい60PのフルHD動画撮影が可能になっている。60P=1秒間に60枚の静止画を記録するということは、従来(SX260 HS)の24P=1秒間に24枚の静止画に比べ、滑らかな動きを再現できるということだ。実写の動画を見ていただくと一目瞭然だが、両機種を比較してみると、SX280 HSの方がスムーズなのがわかる。

 さらに、ビットレート35Mbpsでの記録を実現。記録はMP4フォーマットのため、様々なディバイスで再生することが可能だ。

※動画作例のサムネイルをクリックすると、未編集の撮影動画をダウンロードします。
※お使いの再生環境によってはスムーズに再生できない可能性があります

(動画)PowerShot SX280 HSで記録。なめらかに再生されている。PowerShot SX280 HS / 1,920×1,080 / 60P / 68.5MB / MP4 / H.264 / AAC
(動画)前モデルPowerShot SX260 HSで記録。24Pのため、SX280 HSより滑らかさに欠ける。PowerShot SX260 HS / 1,920×1,080 / 24P / 71.4MB / MOV / H.264 / PCM

 また、動画記録時の高感度ノイズ除去力も向上しているという。DIGIC 5搭載機と比べて約2段分相当のノイズ量を低減したそうだ(30P記録時)。高感度に強くなるということは、旅でいえば、コンパクトデジタルカメラでは難しかった、暗いレストランなど屋内での撮影が有利になる。手持ちでの夜景も、高感度撮影の画質が良くなるのはありがたい。

 動画撮影で重要な手ブレ補正は「5軸手ブレ補正」になった。回転軸、水平回転軸、縦回転軸、上下、左右補正を補正するため圧倒的な手ブレ補正効果を得られるという。

手ブレ補正がとにかく強力。歩きながらの記録に威力を発揮する。PowerShot SX280 HS / 1,920×1,080 / 60P / 62.8MB / MP4 / H.264 / AAC

 繰り返しになるが、動画の大敵は手ブレだ。手ブレのひどい動画は、見辛く、画面酔いしてしまいそうになる。しかし、SX280 HSだと歩きながら撮影しても、ほぼ完璧に補正してくれるのがすごい。

 実際に同じ条件でSX260 HSと比較してみたが、SX280 HSの手ブレ補正効果は絶大。簡易のカメラスタビライザーを使っているかのような動画を撮影できる。観光地を歩きながら撮影したり、子供を撮影したりする際には役に立つに違いない。ただし、手ブレ補正設定で、ダイナミックISを「2」から「1」にすると少し画角が狭まることを覚えておこう。

(動画)手ブレ補正機構の比較。PowerShot SX280 HS / 1,920×1,080 / 60P / 108.8MB / MP4 / H.264 / AAC
(動画)PowerShot SX260 HS / 1,920×1,080 / 24P / 99.7MB / MOV / H.264 / PCM

 動画撮影をしても編集するのは大変だ。そんなユーザーのために、写真と動画を同時に撮影する機能「プラスムービーオート」を搭載。写真を撮影した時にシャッターを押す約4秒前までを記録してくれ自動で1日分のムービーを作ってくれる。ダイジェストで1日の動きを記録してくれるのでおもしろい。ただ、撮影時は約4秒前からカメラを安定させた方がブレの少ない綺麗な映像を残せるので意識して撮影してみよう。

 また、動画撮影中でも光学ズームが使用できる。光学ズームなので画質の劣化もなく素早く被写体に寄ることができるので便利。ただし、ズーム音が録音されてしまうので注意が必要。個人的には、もう少しゆっくりズームができるとさらに良いと感じた。

(動画)動画記録中のズームにも対応。PowerShot SX280 HS / 1,920×1,080 / 60P / 69.8MB / MP4 / H.264 / AAC

旅で便利な光学20倍ズーム。画質も上々

 もちろん静止画撮影についても充実している。

 画質に関しては、このクラスのコンパクトデジタルカメラとしては高画質な印象。被写体のディテールもしっかり表現できている。

 特に高感度時のノイズは綺麗に補正されており、ノイズ感に関しては、(ディテールは少し失われややねむい印象になるが)ISO3200までは気にせずに使用できる印象だ。鮮やかな発色やシャープさが必要な場合は、ISO800くらいまでで抑えておくと良いだろう。

ISO80
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200

 レンズは光学20倍という高倍率ではあるが、広角から望遠まで比較的高い描写を堪能できる。遠景のディテールも筆者が想像していたよりも良好に描写しているようだ。

広角端(25mm相当)
望遠端(500mm相当)

 35mm判換算で25mmから500mm相当の幅広い画角をカバーできるため、風景から料理、乗り物、動物など被写体を選ぶことなく撮影できるので旅には最適だ。

PowerShot SX280 HS / 約3.8MB / 4,000×3,000 / 4秒 / F6.3 / 0EV / ISO80 / 4.5mm
PowerShot SX280 HS / 約4MB / 4,000×3,000 / 4秒 / F6.8 / 0EV / ISO80 / 90mm

 操作感に関しては、高倍率なレンズを積んでいるにもかかわらずコンパクトで機動力抜群。操作はモードダイヤルを搭載していることで直感的に行なえるため迷うことはない。メニューも整理されておりわかりやすい。ボタン類も押しやすく上手にレイアウトされている。グリップも指が引っ掛かるようになっておりホールド感に優れている。

ホールド感を高めてくれているのが、このパーツ。さりげない見た目で、SX280 HSのシンプルなフォルムを損なわない

 GPSやWi-Fiもメニューから簡単に設定できる。GPSではロガー機能を使用可能。撮影画像に位置情報がつくだけでなく、地図アプリ上で移動した軌跡をたどれるのは魅力的だ。旅行が終わっても自分の旅した軌跡やどこで写真を撮影したかわかるのは楽しい。

 SX280 HSのGPSは感度が良く、GPS測位時間も前モデルよりぐっと短くなった。あらかじめネット経由でGPSアシストデータを利用しておくのがポイントだ。GPS機能の消費電力も少なくなったとのことで、以前より積極的に使えるのがうれしい。

GPS機能を本体に内蔵。撮影した位置の情報が写真に記録される

 旅といえばWi-Fi機能も活躍する。カメラから直接スマートフォンやWi-Fi搭載カメラに写真を転送できるので、旅先でSNSに直接写真をアップしてコメントをもらうのは楽しいものだ。スマホと違い、20倍ズームレンズによる望遠撮影ができるので、被写体をぐっとアップにした写真をSNSに公開できる。

Wi-Fi機能を搭載し、スマホに画像を転送できる。旅先からいつものSNSに投稿できる

まとめ

 今回、SX280 HSとともに丸2日間旅をしてみたが、コンパクトで機動力もあり、香港の観光スポットを疲れることなく回ることができた。気軽にさっと取り出して使えるため、撮った写真の枚数も多い。

 また、動画撮影時でもブレにくいため、普段はあまり数多くは撮影しない動画もチャレンジしている。臨場感ある香港の動画を見返すたびに、写真とは別の感動がよみがえる。

 一眼レフカメラには一眼レフカメラの良さがあるが、SX280 HSを使って、コンパクトデジタルカメラならではの良さがあることを再認識できた。できれば予備バッテリーも購入し、たくさんの写真を残して欲しい。

 これからGWや夏休みといった旅行シーズンが始まる。旅のカメラで悩んでいるユーザーに、お勧めしたい1台だ。

作例(静止画)

PowerShot SX280 HS / 6.2MB / 4,000×3,000 / 1/125秒 / F4.5 / -0.7EV / ISO80 / 12.7mm
PowerShot SX280 HS / 5.6MB / 3,000×4,000 / 1/60秒 / F4 / -0.3EV / ISO80 / 4.5mm
PowerShot SX280 HS / 2.9MB / 3,000×4,000 / 1/160秒 / F5 / -0.7EV / ISO500 / 31.2mm
PowerShot SX280 HS / 5.5MB / 4,000×3,000 / 1/60秒 / F4.5 / -1EV / ISO1600 / 13.8mm
PowerShot SX280 HS / 3.2MB / 3,000×4,000 / 1/40秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO3200 / 41.4mm
PowerShot SX280 HS / 2.8MB / 4,000×3,000 / 1/60秒 / F3.5 / 0EV / ISO125 / 4.5mm
PowerShot SX280 HS / 4.0MB / 4,000×3,000 / 1/125秒 / F3.5 / 0EV / ISO80 / 4.5mm
PowerShot SX280 HS / 3.3MB / 3,000×4,000 / 1/60秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO400 / 4.5mm
PowerShot SX280 HS / 4.0MB / 3,000×4,000 / 1/15秒 / F4 / -0.3EV / ISO800 / 8.3mm
PowerShot SX280 HS / 4.3MB / 4,000×3,000 / 1/1,000秒 / F3.5 / +0.3EV / ISO400 / 4.5mm
PowerShot SX280 HS / 2.6MB / 3,000×4,000 / 1/125秒 / F5 / 0EV / ISO100 / 23.6mm
PowerShot SX280 HS / 4.3MB / 4,000×3,000 / 5秒 / F5 / 0EV / ISO80 / 7.5mm

(協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社)

上田晃司

(うえだこうじ)1982年広島県呉市生まれ。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強しながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。人物を中心に撮影し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影している。現在は、カメラ誌やWebに寄稿している。
ブログ:http://www.koji-ueda.com/