特別企画
寒空に輝く“冬花火”…その魅力を花火写真家に聞いてみた
2025年1月30日 07:00
冬の澄んだ夜空に打ち上がる花火。夏の風物詩と思われがちな花火だが、近年は冬季に開催される花火大会が注目を集めている。
澄んだ空気、少ない煙、クリアな音、ゆったりとした観覧環境。夏とは異なる魅力を秘めた冬花火について、写真家の金武武さんに話を聞いてみた。
冬花火ならではの特徴
「年間を通して花火を追いかけていますが、冬の花火には特別な魅力があります」。30年以上にわたり花火撮影に携わってきた金武さんはそう語る。国内の年間花火大会件数は7,000件を超え、そのうち相当数が冬季に実施されているという。
「空気が澄んでいるため、色がよりクリアに見えるのです」と金武さん。湿度の低さから煙も少なく、夏場には見られない鮮やかな色彩を楽しむことができる。音の伝わり方も異なり、湿気の多い夏場の「こもった音」に比べ、冬は澄んだ「ドカン」という音が響き渡るという。
快適な観覧環境
冬花火のもう1つの特徴は、ゆったりと楽しめる観覧環境だ。日没が早い冬は、17時頃から打ち上げが始まるケースも。1時間程度の打ち上げなら、終了後も周辺での食事や観光を楽しむことができる。夏の花火大会で懸念される混雑や帰宅ラッシュの心配も少ない。
印象深い冬花火体験
「花火は体験するもの」と金武さんは強調する。写真で表現できるのは花火の美しさの表面だけで、本当の素晴らしさは現地でしか味わえないという。特に印象深い冬花火として、神奈川県箱根町の芦ノ湖で開催される2月の節分祭の花火を挙げる。
「15〜20年前は、誰もいない湖畔で静かに打ち上げられる花火でした。花火師が丹精込めて作り上げた花火が、人知れず夜空に咲く。その光景に心打たれ、涙を流しながら撮影したことを覚えています」
冬花火を楽しむコツ
冬花火ならではの注意点もある。寒さ対策はもちろんのこと、風向きにも注意が必要だ。夏場は南風が主流だが、冬は北風が中心となる。ただし、近年の気候変動の影響で、冬でも南風が吹くケースが増えているという。
撮影に挑戦する場合、広角レンズ(16-35mmクラス)と標準ズームレンズの2本があれば十分とのこと。冬特有の課題として、レンズの結露対策が重要となりレンズヒーターが必須だという。特に湖畔など、水辺での撮影時は要注意だ。
「花火との距離感」も重要で、4号玉なら300〜400m、尺玉なら500〜600m離れた地点から撮影するのが理想という。
設定については、マニュアル露出での撮影が推奨とのこと。「ISO感度は100前後に設定し、シャッタースピードはバルブかタイムを使用します。OM SYSTEMのカメラではライブコンポジット機能も効果的です」。
ホワイトバランスも使い分けている。「色鮮やかな洋花火は3,200K~3,300K、オレンジ色の和火や錦冠菊花火は4,300K~4,800Kが理想的です。ただし、切り替えが難しい場合は3,500Kで統一しても良いでしょう」。
ピント合わせも重要なポイントとなる。「最初に打ち上がった花火にAFでピントを合わせ、その後MFに切り替えることをお勧めします。手ブレ補正はOFFにし、長秒時ノイズ除去機能も無効にしておきましょう」とのことだ。
進化する冬花火の魅力
花火メーカー各社も技術革新を続けており、近年はパステルカラーなど中間色の表現に挑戦している。空気の澄んだ冬こそ、その繊細な色合いを堪能できる季節となっている。
規模は夏の大会に及ばなくとも、冬花火には独自の魅力がある。「地域の方々が大切にしている冬花火。その雰囲気を壊さないよう配慮しながら、ぜひ体験してみてください」。