新製品レビュー

OLYMPUS PEN-F(外観・機能編)

クラシカルデザインに最新の絵作り機能

オリンパスのマイクロフォーサーズ機には、OM-DとPENのシリーズがあるのはご存知の通り。一眼レフライクなスタイルで本格派の雰囲気を持つOM-Dに対し、PENは女性やビギナーなどライトユーザー向けというイメージだった。しかしエキスパート向けのプレミアムなPENが登場した。それが「PEN-F」だ。

これは1963年に発売された世界初のハーフサイズ一眼レフ、オリンパス・ペンFと全く同じ名前だ。これまでOM-Dには「OM-D E-M○」、PENには「PEN E-P○」と必ず番号がついていたが、そのままずばりPEN-Fというのは初めてだ。それだけオリンパスのPEN-Fへの気合いが感じられる。

外観

外観はPENシリーズらしく、上面がほぼフラットなデザイン。上面のシルエットや「PEN-F」のロゴはオリジナルのペンFを彷彿させるものの、PEN-Fはダイヤルなどの操作部が目立つ。その姿は、オリジナルのペンFよりレンジファインダーカメラのようだ。正面のクリエイティブダイヤルは、まるでスクリューマウントライカ(通称バルナック型ライカ)のスローシャッタースピードダイヤルを思わせる。

電源スイッチも、巻き戻しノブや巻き戻しクランクを彷彿させる。さらにAF補助光窓もファインダー窓を感じさせるなど、クラシカルな雰囲気がたっぷりだ。しかし本体外装にはネジが1本も見えないせいか、メカっぽさの中にもすっきりした感覚もある。それがレトロでありながら現代のデジタルカメラらしい形に繋がっているように感じる。

最新のPEN-F(右)と、1930年代に発売されたライカDIII(左)。PEN-FはオリジナルのペンFの形も受け継ぎながら、レンジファインダー機に近い雰囲気も併せ持つ。なおPEN-Fの本体はマグネシウム合金。ボディカラーにより仕上がりが異なり、ブラックの表面は梨地調で、シルバーは表面に凹凸がないサテン調。
OM-Dシリーズがフィルム一眼レフのOMを彷彿させる電源レバーなのに対し、PEN-Fの電源スイッチは巻き戻しノブや巻き戻しクランクを思わせる。PEN-Fがクラシカルに見える要素のひとつだ。

オリジナルのペンFには、ボディ正面に「F」の花文字がアクセントとなっていて、ペンFの象徴でもあった。デジタルカメラの時代になってからも、オリンパスからはFの花文字が入ったレンズキャップが発売されている。ところがPEN-Fには、本体のどこにもFの花文字は入っていない。せっかくPEN-Fという名前なのにとても残念だ。理由として、PEN-Fのマグネシウム外装は前面部分が薄く、複雑な花文字を刻印するのは不可能だったそうだ。

カメラらしさを味わえる操作系

手にすると、小型ながら適度な重さがあり、高級感が伝わってくる。背面の親指が当たる部分はえぐれていて、ホールドするとわずかに薄く感じるのも特徴だ。上面のダイヤルは、シャッターボタンと同軸の前ダイヤルと後ダイヤル、モードダイヤルに加え、露出補正ダイヤルが独立した。前後ダイヤルはフラッシュ調光補正やISO感度、WB変更の割り当てができて、例えばフラッシュ使用時に、調光補正と露出補正の同時使用が可能だ。

シンプルなオリジナルと異なり、上面にはダイヤルが4つもある。しかし、それがメカらしさを強調し、デジタルの電子機器ではなく精密機械を感じさせる。ダイヤルはアルミ削り出しで質感が高い。
親指が当たる部分はえぐれていて、しっかり指が掛かると同時に本体が薄く感じる。また十字ボタンには機能が割り当てられていて、PENシリーズの操作を受け継いでいることがわかる。

背面の液晶モニターはフリーアングル式で、タッチパネルにもなっている。クラシカルなスタイルとデジタルカメラならではの機能の融合は、OM-D E-M5 Mark IIでも見られ、オリンパスらしさが感じられる。AFターゲットパッドも可能なので、EVF使用時は右手の親指で背面モニターをなぞって測距点選択が可能。ファインダーを覗いたまま測距位置が決められるのはとても便利だ。

クラシカルなデザインとは対照的にデジタルらしさを感じるフリーアングル液晶モニター。このタイプはモニターを開くと画面と光軸がずれるため好みは分かれるが、縦位置でもハイアングルやローアングルで撮りやすいのは便利だ。タッチパネルで、測距点選択やタッチシャッター、再生時の送り、戻り、拡大などがタッチ操作で行える。
OM-D E-M10 Mark IIから搭載されたAFターゲットパッド機能。右目でファインダーを覗く人に限定された操作だが、ファインダーを覗きながら右手の親指で測距点が選べるのはとても便利だ。PEN-Fはファインダーが本体左端にあり、液晶モニターに鼻が接触しないため、モニター全面でAFターゲットパッドが有効だ。
背面モニターを裏返して閉じると、今までの機種は「OLYMPUS」のロゴが現れていたが、PEN-Fは全面シボ革貼り。高級感があり、まるでフィルムカメラのようだ。あえて反転させて、フィルムカメラの感覚で使うのも楽しそうだ。もちろん背面モニターのライブビューやタッチ操作、AFターゲットパッドは使えないが、メニュー画面や再生画面はEVFに表示できる。

PENシリーズ初の内蔵EVF

PEN-FはPENシリーズではじめてEVFを内蔵した。236万ドットの有機ELで、ファインダー倍率は約1.23倍(35mm判換算約0.62倍)。このクラスとしてはやや倍率が低く、視野が小さいのが気になるが、とても高精細でクリアな視認が得られる。トップカバーに筒状のファインダーブロック部分が出ているのも、これまでのPENとは異なるのを主張しているようだ。

PENシリーズで初めて搭載されたEVF。円筒形のデザインがEVFの存在を強調している。しっかり構えて撮りたいときには、やはりEVFは欠かせない。
EVFのアイピースから軸はずれているものの、レンジファインダー機のファインダーを思わせるAF補助光窓。オリンパスのデザイナーのこだわりが伝わってくる。
OM-Dで搭載されているOVFシミュレーションモードも装備。色味や露出は反映されないが、ダイナミックレンジが広く、光学ファインダーの感覚で撮影できる。
ファインダー内イメージ:OVFシミュレーションモードOFF
ファインダー内イメージ:OVFシミュレーションモードON

オリンパス初の2,000万画素機。ハイレゾショットは50Mに

撮像素子は新型の有効2,030万画素Live MOSセンサー。これまでオリンパスのマイクロフォーサーズ機は、OM-DもPENも1,600万画素までだった。PEN-Fはオリンパス初となる2,000万画素機だ。

画素数がアップしたので、連写合成のハイレゾショットもこれまでの40Mから50Mになり、より高解像力の撮影が可能になった。なお、これまでハイレゾショットのRAWは、Photoshopに専用プラグインをインストールしないと現像できなかった。しかしオリンパス純正のOLYMPUS Viewer 3でも、Ver 2.0からハイレゾショットの現像ができるようになった。

撮像素子の画素数が増えたことで、ハイレゾショットは40Mから50Mにアップ。またハイレゾショットで撮影したRAWは最新のOLYMPUS Viewer 3でも現像が可能になった。

もちろん5軸手ブレ補正にも対応。レンズ内手ブレ補正機構を搭載したM.ZUIKO DIGITALレンズ(現在はM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROのみ)との組み合わせでは、シャッター速度6段分という効果を得られる5軸シンクロ手ブレ補正も可能だ。

画像処理エンジンはOM-Dでお馴染みのTruePic VII。色収差補正や偽色低減処理を行いながらローパスフィルターレスの高精細な解像力を引き出す。さらにリアルカラーテクノロジーにより、エメラルドグリーンやイエローなどの再現性にも優れている。

PEN-Fを楽しむキーポイント「クリエイティブダイヤル」

PEN-F最大の目玉機能が、モノクロ/カラープロファイルコントロールだ。これまでもモノクロならフィルター効果として選んだり、アートフィルターの「ラフモノクローム」を選ぶことはできた。またカラーなら、ピクチャーモードのパラメーターで彩度やコントラストなどの調節はできた。しかしこの機能は、より細かく、クリエイティブな設定が行える。

まずはボディ前面のクリエイティブダイヤルを、モノクロなら「MONO」、カラーなら「COLOR」に設定。そして背面のモードダイヤル下にあるレバーを動かすと、モノクロ/カラープロファイル設定が表示される。

PEN-F最大の特徴であるクリエイティブダイヤル。向かって左側に回すと、モノクロ/カラープロファイルコントロール、右に回すと従来からあるアートフィルターとカラークリエイターになる。
モノクロ/カラープロファイルコントロールからレバーを動かすと、各セッティングが行える。また通常の撮影状態でレバーを動かすと、トーンカーブの調節ができる。

モノクロなら、フィルター効果を前ダイヤルで選び、後ダイヤルで効果の調節(OFF~Level3まで4段階)を行う。再びレバーを動かすと「シェーディング効果」の調節だ。周辺の光量落ちはレンズ技術的に一般的には良いとされていないが、画面を引き締める効果があり、作品に与える効果としては一概に悪ではない。暗室でのモノクロプリントでは、あえて周辺を焼き込んで落とす人も多い。逆に周辺を明るくすることもでき、個性的な効果が加えられる。

モノクロプロファイルコントロールの画面。フィルター効果が円形で表示され、前ダイヤルでフィルター選択、後ダイヤルで効果のレベルを選択する。
周辺光量の調節。明るくする(プラス)、暗くする(マイナス)共に5段ずつ効果が選択できる。

さらにレバーを動かすと、トーンカーブの画面になる。これは以前からも搭載されている「ハイライト&シャドウコントロール」機能だが、INFOボタンを押すと中間調のコントロールも可能になった。しかも背面OKボタンで呼び出すスーパーコンパネからは、フィルムライクな粒状感も加えられる(オフと弱、中、強の4段階)。また、従来から搭載しているセピア、ブルー、パープル、グリーンの調色機能もそのまま備えられている。

トーンカーブの調節。ハイライト側を持ち上げてシャドー側を落とすと、コントラストが高くなる。
INFOボタンを押すと、中間調のトーン調節が行える。
スーパーコンパネから粒状感の設定ができる。効果はオフを含めて4段階。
スーパーコンパネの「Mono Profile」から、プロファイルを選び、予め設定されているプリセットが呼び出せる。

カラーは12色の彩度コントロールが可能。全体の彩度調節から特定の色の調節が行える。例えば赤の彩度は抑えて、青は鮮やかにするなど、自分好みの色がつくれるのだ。さらにレバーを動かすと、トーンカーブになる。

カラープロファイルは、12色全体の彩度や、特定の色の彩度コントロールが行える。この場合は、赤の彩度を下げているところ。
モノクロと同じく、トーンカーブの調節が可能。INFOボタンで中間調のコントロールもできる。
スーパーコンパネの「Color Profile」から、プロファイルを変更してプリセットが選べる。

モノクロもカラーも、背面モニターやEVFで効果を確認しながらコントロールできる。しかし、いきなり好みの調子に、といわれても難しい。

このプロファイルコントロールは、モノクロ、カラー、それぞれ3つのプリセットを持つ。モノクロは、プリセット1が設定なし。プリセット2がコントラストと粒状感が強めのクラシックフィルム、プリセット3が赤外効果風のクラシックフィルムIRだ。

カラーはプリセット1が設定なし。プリセット2がクロームフィルムリッチカラー、プリセット3がクロームフィルムビビッド。オリンパスによると、リッチカラーはコダクローム64を、ビビッドはエクタクローム100を意識しているそうだ。

モノクロ/カラープロファイルコントロールは、モードダイヤル下のレバーで項目を呼び出す。
呼び出した各パラメータを前後ダイヤルで設定する。

またオリンパスのRAW現像ソフト、OLYMPUS Viewer 3(Ver 2.0以降)からは、編集機能にモノクロプロファイルとカラープロファイルが追加された。RAWで撮影すればパソコン上でプロファイルを作成し、保存できる。ただしこのプロファイル作成は、PEN-F以前の機種には対応していない。

RAW現像ソフトのOLYMPUS Viewer 3は、Ver 2.0からモノクロ/カラープロファイルコントロール機能が追加された。作成したプロファイルは保存して、別の撮影したデータに設定を読みこませることもできる。ただしPEN-F以前の機種のRAWには対応していない。

なおクリエイティブダイヤルには、オリンパスお馴染みのアートフィルターとカラークリエイターも備える。カラークリエイターは色相30段階と彩度8段階で、個性的な色調が得られる。またアートフィルターは、ライブビュー画面で効果を確認しながら選べるようになった。

お馴染みのアートフィルター。これまでは、フィルター選択画面はサンプル写真しか表示されなかったが、PEN-Fでは実際のライブビューで効果を見ながら選択できるようになった。

次回の「実写編」では、実際にPEN-Fで撮影した使用感や画質、カラープロファイルコントロールの使いこなしについて解説する。

バッテリーはOM-D E-M1やE-M5 Mark II、PEN E-P5などと同じBLN-1。SDカードは高速なUHS-II規格に対応している。SDカードスロットとバッテリー室が同じ場所なのもPENらしい。
端子カバーを開けると、USB端子とHDMI端子(タイプD)が現れる。
シャッターボタンには、ケーブルレリーズソケットがある。昔ながらの機械式ケーブルレリーズが使用可能だ。

藤井智弘

(ふじいともひろ)1968年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年、コニカプラザで写真展「PEOPLE」を開催後フリー写真家になる。現在はカメラ雑誌での撮影、執筆を中心に、国内や海外の街のスナップを撮影。公益社団法人日本写真家協会会員。