新製品レビュー

PENTAX Q-S1

クラシカルなデザインがハマるシリーズ最新作

リコーイメージングから8月28日に発売された「PENTAX Q-S1」はQマウントを採用する超小型のミラーレスカメラです。実勢価格はボディのみが4万円前後、「02 STANDARD ZOOM」のレンズキットが5万円前後、「02 STANDARD ZOOM」と「06 TELEPHOTO ZOOM」のダブルズームキットが7万円前後となっています。

手前が今回の主役PENTAX Q-S1。旧PENTAX Qシリーズを後ろに従えて

また、Qシリーズらしくボディ5色(オンラインストアではさらに限定の2色も選択可能)とフロントシート8色を組み合わせて自分好みのボディをオーダーすることができます。「01 STANDARD PRIME」のレンズも本体色に合わせて5色用意されているので、レンズまで完璧にコーディネートできるのはカラバリの先駆、ペンタックスらしいサービスですね。

本機は合皮素材の革張りを施したクラシカルなデザインで、「ちっちゃいデジカメ」というイメージだったQ7のデザインから一変して、「ちっちゃい銀塩カメラ」のイメージになり、シックな装いになる秋冬に向けてファッション的にも購買意欲がくすぐられるデザインに仕上がっています。

撮像素子は1/1.7型のCMOSセンサーで、有効画素数は約1,240万画素、液晶モニターは3型で46万ドット、ISO感度は100~12800までで連写撮影は約5コマ/秒と、デバイスはQ7と共通です。電池もQシリーズが始まってから変わらずD-LI68を使用しているので、前機種をお持ちの方は電池の使い回しができます。

大きさは約105×58×34mmと、Q7より幅が約3mm、奥行きが0.5mmほど大きくなりました。重さも約203gと、Q7より約3gだけ重くなりましたが、本当に微々たる差なので使用時に重さや大きさを感じることはまったくありませんでした。

ひっかかりのいい突起状のグリップ

本機とQ7のデザインのテイストが違うのはもちろんですが、操作性での大きな違いはグリップ部の変更です。Q7には盛り上がったカメラらしいグリップがありましたが、本機はボディはフラットになり、代わりに丸い突起が付きました。ここに指を引っ掛けてグリップせよということらしいのですが、最初に見たときは、反対サイドにあるクイックダイヤルと同じような大きさなのでまるで目のように見えて、レンズ部が鼻と見ればいいのかしら?なんて冗談のように受け取ってしまいました。

指を引っ掛けることのできる突起状のグリップ。赤外線リモコンの受光窓の役割も兼ねています。

ところが意外にも使いやすかったんです、このグリップ! 右手の中指をこの突起に引っ掛けるようにすると、たいした力もいらずに安定感のあるグリップができ、縦位置の撮影でも横位置の撮影でもカメラボディをしっかりホールドできました。冗談なんて言ってしまってごめんなさい……。クイックダイヤルと同様にアルミ製なので見た目も触った印象も高級感があるのもうれしいところです。

Q7と同等の高画質

小雨の降る中、大井川鉄道の陸橋を臨む家山駅近辺より撮影。山の向こう側は白く煙っています。ISO200 / F4.5 / 1/125秒 / ±0EV / 5mm(23mm相当)
街中の込み入った情景も四隅まで綺麗に描き出しています。ISO100 / F5.6 / 1/40秒 / ±0EV / 5mm(23mm相当)

外観はずいぶん変わりましたが中身はQ7と同等。画像処理エンジンも「Q ENGINE」を採用しています。画質に関しては申し分なく、遠景の撮影でも高精細な画を作り出してくれます。特に大井川鉄道の陸橋のシーンでは白く煙る靄を繊細に描き出してくれました。

レンズは「02 STANDARD ZOOM」を使用しましたが、このレンズはワイド側で使用すると四隅に歪曲収差が出やすいので、ディストーション補正はONで使用することをお勧めします。

通常使用の最高ISO感度のお勧めはISO1600

薄暗い室内でカーテンの隙間からこぼれる弱い太陽光を受けるシチュエーションで撮影。手前のオブジェのてんとう虫をご覧ください。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800

ISO感度はISO800までまったく問題ありません。ISO1600になるとほんの少しノイズが乗ってきたかな?と感じますが、全紙サイズに印刷する訳でなければ気になりません。

ISO3200以降は画像に荒れが見られてくるので常用は避けたいですね。それでもISO6400は普通ならもっとがくっと画質が落ちるのに、よく頑張って粘っていると思います。暗いシーンでの記念写真などでは使用できるレベルでしょう。ISO12800に関しては緊急回避的にどうしても写したいシーンでのみの使用にとどめたいです。

新搭載のスマートエフェクトはレトロ&シック!

中身はQ7とよく似た本機ですが、レトロなイメージの「アンティーク」と、プリントが退色したような「フェードカラー」という、2種類のスマートエフェクトが新たに搭載されました。

フェードカラーを選択した画面。実際は縦位置で撮影しているものを文字を読みやすいように、画像を横にしました。
アンティークの設定画面。十字キーの左右で、さらに2パターンのエフェクトを選択することができます。

スマートエフェクトの設定はボディ前面のクイックダイヤルに割り当てて行います。ダイヤルには4種類のエフェクトを登録することができます。また、フェードカラー、アンティークそれぞれに2パターンのエフェクトがさらに選べるようになっています。操作方法は、エフェクト選択後に十字キーの下を押すと画面中央部下寄りに十字キーの左右で選択できる項目が現れるので、そこで設定します。

アンティーク(上)の画像仕上げはカスタムイメージのクロスプロセス(下)をベースにしているようです。上はパターン1を選択した画面。ふたつのパターンの違いはデータ上の表記には見られませんでした。
フェードカラーの画像仕上げは銀残しをベースに使用しているようです。その色調をシアン(上)とオレンジ(下)のパターンに分けて作画しているようでした。

作画の色調としては新しいスマートエフェクトは両方ともシックな大人っぽさを感じます。アンティークはフェードカラーよりも温かみのある色合いに仕上がり、パターン1よりも2のほうが明るく淡く仕上がっているように見えました。フェードカラーのパターン1はシアン系なので色が抜けてクールなイメージに、パターン2はオレンジ系なので少しアンティークに似た温かみのある色の抜け方を表現した作画でした。

まとめ

Q7と同等の画質でデザインは通好みのクラシカルとくれば、購買意欲をくすぐられている方は多いと思います。その通り中身の問題点はほとんど見当たりません。レンズによってディストーションが気になることもありますが、ディストーション補正を常時ONにしておく弊害は特にありませんので、その方法での使用をお勧めします。

また、新搭載のスマートエフェクトは文句なしに楽しく、クイックダイヤルで簡単に切り替えもできるので気軽に使用することができます。どちらのエフェクトも変更するのがめんどくさければパターン1のままで撮影して、2種類の違いを見て楽しむといいでしょう。

筆者のクイックダイヤルの割り当てのお勧めは、アンティーク、フェードカラー、あでみやび、ハードモノクロームです。この順番で登録して撮影することにより、アンティークでノスタルジックな気分に浸り、フェードカラーで少し寂しくなり、あでみやびで一転してあでやかな気分になって上昇して、ハードモノクロームで硬派な世界に……そして忘れずに通常撮影モードに戻して本来の自分に戻りましょう。本機のオーナーになった方は、良かったら試してみてください!

作品集

スマートエフェクト:フェードカラー・パターン1。青白い光をさらにクールに見せるフェードカラーがハマるシチュエーションでした。ISO3200 / F5.6 / 1/25秒 / ±0EV / 5mm(23mm相当)
スマートエフェクト:あでみやび。筆者の好きなエフェクトのひとつがこの「あでみやび」です。ビビッドとは違う鮮やかなでも派手過ぎない色調は特に青空を綺麗に描いてくれます。ISO100 / F5 / 1/125秒 / ±0EV / 5mm(23mm相当)
スマートエフェクト:アンティーク・パターン2。直射日光が当たってギトギトした色合いの被写体も「アンティーク」を使用すれば優しいムードに仕上がりました。ISO2500 / F4 / 1/40秒 / ±0EV / 5mm(23mm相当)
コーンにかぶりつく子供。じっとしていない子供も素早いAFで捉えられます。ISO100 / F2.8 / 1/100秒 / ±0EV / 5mm(23mm相当)
スマートエフェクト:アンティーク・パターン1。手前の木の印象を強くするために淡いながらも色味を残すアンティークのパターン1を使用。ISO100 / F5.6 / 1/320秒 / ±0EV / 14.9mm(69mm相当)
スマートエフェクト:ハードモノクローム。大井川鉄道の千頭駅にて。懐かしさを醸し出す情景にはスマートエフェクトのハードモノクロームも似合いますね。ISO200 / F5.6 / 1/50秒 / ±0EV / 5mm(23mm相当)
スマートエフェクト:アンティーク・パターン1。アンティークは逆光のシチュエーションがとても似合うと思いました。ISO200 / F2.8 / 1/250秒 / ±0EV / 5mm(23mm相当)
スマートエフェクト:フェードカラー・パターン1。フェードカラーはシックなイメージになるので色数が少ない被写体をメインにするとまとまりがよくなります。ISO400 / F4.5 / 1/160秒 / ±0EV / 14.9mm(69mm相当)
スマートエフェクト:アンティーク・パターン1。蒸気機関車の蒸気をアンティークでノスタルジックに!ISO400 / F4.5 / 1/320秒 / ±0EV / 15mm(69mm相当)

水咲奈々

(みさき なな)東京都出身。知り合いの写真家の作品撮りにモデルとして関わったことがきっかけで写真に興味が沸き独学で写真の勉強をし、作品を持ち込んだ出版社に編集として入社。2010年独立。現在はカメラ雑誌の編集やWebでのカメラレビュー、写真講座の講師として活動中。「Pentax+」でも記事を連載。 Twitter:@cosaruruブログ:http://misakinana.com