【新製品レビュー】パナソニックLUMIX DMC-G2
「LUMIX DMC-G2」(以下DMC-G2)は、ミラーや光学ファインダーを持たないライブビュー専用の「マイクロフォーサーズシステム規格」第1弾として人気を博した「LUMIX DMC-G1」(以下DMC-G1)の後継モデルである。マイクロフォーサーズならのコンパクトなボディを継承しつつも、今回のモデルチェンジではタッチパネル液晶モニターや動画撮影機能の搭載、部材の変更による操作性の向上など多くの進化が図られている。
販売形態はDMC-G2ボディ単体、標準ズームキット、標準ズームと望遠ズームのWズームキットとなる。このレビューでは、そのうちのLUMIX G VARIO 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.が付属する標準ズームキットにトピックを当てる。執筆時における本キットの大手量販店での実売価格は、8万9,800円前後(税込み)。ボディカラーはコンフォートブラック、コンフォートレッド、コンフォートブルーの3色がチョイスできる。
■操作系の見直しで使い勝手が向上
モデルチェンジの大きな特徴のひとつが操作系の見直しだ。最初にカメラを手にして気づくのが、コマンドダイヤルの位置である。DMC-G1ではグリップ側、シャッターボタン前方に備わっていたが、DMC-G2ではLUMIX DMC-GF1(以下DMC-GF1)と同様、背面部に設置される。もともとこのダイヤルはプッシュ操作にも対応し、押し込むことで露出設定/露出補正の切り換えとメニューの選択画面を呼び出すことができる。ところが、従来の位置では人指し指で操作するためシャッターボタンを押すタイミングが遅れてしまうことや、操作自体に少々の違和感があったことは否めなかった。DMC-G2で親指による操作に変わり、操作性が大きく向上したといってよいだろう。実際使っていても、こちらのほうが自然な操作感でたいへん使いやすく思える。
撮影モードダイヤル内にあった「おまかせiAモード」が、専用の独立したボタンとなったことも特筆すべきところ。他の撮影モードに設定した状態でも、素早くiAモードに切り替えることができるからだ。モード設定中はボタンの縁が青く点灯し視認性も良好。このモードでは、新開発の画像処理エンジン「ヴィーナスエンジンHD2」による「超解像技術」(I.R超解像)のほか自動シーン判別、暗部補正、追尾AF、全自動逆光補正などによりシーンに応じた最適な設定がカメラ任せで得られる。ベテランユーザーは使うことのない撮影モードのように思うかも知れないが、スナップなどちょっとした撮影では意外と便利で重宝する。ボタンはカメラ上部、撮影モードダイヤル脇に備わり、その近くには後述する動画用のON/OFFボタンも配置される。これまであった「Q.MENU」ボタンはカメラ背面部に移動、「FILM MODE」ボタンは廃止された。
同じくカメラ上部、ファインダー左側にあったフォーカスモードダイヤルは、被写体の位置や数に応じてピントの合わせかたを選択するオートフォーカスモード選択ダイヤルに変更となった。フォーカスモードは顔認識、追尾AF、23点、1点の4つが備わる。また、フォーカスモードの選択は、そのダイヤル外周のレバーで行なうようになった。いずれもメニューのなかに設定があるよりも視認性はよく、素早く設定ができる。デジタルカメラは、ボディサイズの小型化もあって設定の多くがメニューに入り液晶モニターを介して行なうものが多くなっているが、このようなアナログ操作を見直す動きは、ボタン、レバーの数は増えてしまうものの、使い勝手からいったら歓迎すべきことである。
アナログといえば、P/A/S/Mモードで露出補正、絞り、シャッタースピードの設定を変更する際、自動的に液晶モニターまたはEVFに露出メーターが表示されるようになった。絞りとシャッタースピードの組み合わせが一目で把握できるアナログ表示で、エントリーユーザーは便利に感じることと思う。
先代のDMC-G1と同じ有効1,210万画素Live MOSセンサーだが、ノイズ対策が強化されるなど若干仕様が異なっている | カードスロットはコンパクトモデル同様バッテリー室に備わる。使用メディアはSD/SDHC/SDXCのほか、アダプターによりminiSD/microSD/microSDHCにも対応 |
DMC-G1ではカメラ前面のグリップにあったダイヤルは背面部へ移動した。回転のほか押し込む操作もあるが、こちらの位置のほうが使い勝手はよい | フォーカスモードの選択はレバーで、オートフォーカスモードの選択はダイヤルで行なう。視認性がよく直感的で素早い設定が可能だ |
カメラ上部、撮影モードダイヤル脇には動画撮影ON/OFFボタンとiAボタンが新たに備わった。動画撮影ボタンはシャッターボタンと押し間違えそうに思えるが、実際そのようなことはない |
「I.R超解像」機能は、Gシリーズとしては初めての搭載となる。より高い解像感や色再現性が得られるもので、OFF/弱/中/強から効果を選ぶことができる | ダイナミックレンジ拡大機能として「暗部補正」を搭載する。他社ほどの強い効果は得られないが、反面、自然な仕上りが得られ眠い調子になることはない |
一目で撮影の設定状態が把握できるLCD撮影情報画面。DMC-G2ではタッチ対応となり使い勝手が向上した | 露出メーターは絞りとシャッタースピードの組み合わせが一目で把握できる。P/A/S/Mモードで露出補正、絞り/シャッタースピードの設定を変更する際に表示される |
■撮影スタイルを変えるタッチパネル液晶
タッチパネルタイプとなった液晶モニターは今回のリニューアルの売りのひとつ。設定や再生の操作はいうまでもなく、ライブビュー時の撮影スタイルを大きく変えている。フォーカスエリアの移動は画面へのタッチやドラッグで可能。ピントを合わせたい画面上の被写体に対し直感的かつ速やかにフォーカスエリアを乗せることができる。フォーカスエリアの大きさが3段階に切り換えできるのも便利だ。さらに、画面へのタッチでシャッターを切ることも可能だ。画面上の被写体に軽くタッチすれば、フォーカスエリアがその位置に移動し、AFの合焦と同時にシャッターが切れる。
測距スピードもソコソコ速く、スポーツのようなものでなければシャッタータイミングを見逃すようなことも少ない。片手でカメラを構える必要がため手ブレの心配は大いにあるが、家族やペットなどの気軽な撮影では活躍するはずだ。液晶モニターは従来と同じ46万ドット、3インチワイドタイプを採用。タッチ操作用にスタイラスペンが付属する。
フォーカスエリアを指で好みの場所に移動できる。構図にこだわりたい撮影の時など便利であるほか、追尾AFでも対応する。フォーカスエリアのサイズは大中小から選ぶことも可能 |
タッチシャッターは、画面に表示される同機能のONボタンを押した後、画面上の被写体に軽くタッチすれば、AF合焦とともにシャッターが切れる |
ヒストグラムもフォーカスエリア同様、ドラッグで位置移動ができる。タッチシャッターのときなど便利だ | タッチパネル操作用のスタイラスが付属する。液晶モニターは指先によるタッチ操作でも比較的反応はよいほうだ |
細かなところとして、DMC-G1ではグリップ側のボディ側面に備わっていたカードスロットが、DMC-G2ではコンパクトモデルと同様、本体底部のバッテリー室内へと変更になっている。三脚にカメラを取り付けた際などメディアの交換は少々面倒だが、ボディ側面はスッキリしたものとなった。コマンドダイヤルや動画用ON/OFFボタンの位置など同様、これもDMC-GF1と同じである。使用メディアはSD/SDHC/SDXCメモリーカードのほか、アダプターを介せばminiSD/microSD/microSDHCメモリーカードも使用可能だ。
■AVCHD Lite準拠のHD動画記録が可能
動画撮影機能についても触れよう。DMC-G1には同機能は搭載されていなかったが、今回のDMC-G2の登場でGシリーズの全てに搭載されることになった。気になるのは、先にリリースされているLUMIX DMC-GH1(以下DMC-GH1)およびDMC-GF1との違いだろう。
DMC-GH1は、AVCHDによるフルHD撮影に対応し、高品質な音声を記録するステレオマイクも内蔵している。一方、DMC-G2はDMC-GF1に準じたもので1,280×720のHD撮影は可能ながら、AVCHDを簡略化したAVCHD Liteとなる。内蔵マイクもモノラル記録だ。動画撮影機能により重きを置くDMC-GH1に対し、DMC-GF1と同じくDMC-G2の動画撮影機能は、どちらかといえば静止画の副産物的な位置付けといったところである。
右肩の「HD」ロゴが誇らしげだ。そのうえはセルフタイマーおよびAF補助光用のランプ | 動画の記録方式はAVCHD LiteとMotion JPEGが選べる。AVCHD Liteのファイルサイズは、1280×720ピクセル(SH:17Mbps、H:13Mbps、L:9Mbps)・60p記録(センサー出力30コマ/秒)となる |
しかしながら、DMC-G2も動画を楽しむには十分といって差し支えない。背景のボケ具合を操作できる「動画Pモード」を備えているほか、カメラが自動でシーンを判別し最適な画質を設定する「おまかせiAモード」にも対応。音声記録はドルビーデジタル方式を採用し、別売のステレオマイクロフォン「DMW-MS1」を使用すれば、ステレオでの記録にも対応する。動画撮影中のAFと静止画同時記録(1,920×1,080ピクセル)が可能なのも特筆すべきところで、液晶モニターへのタッチ操作による追尾AFなども含め静止画用カメラに付属する動画撮影機能としては侮れないスペックだ。
また、クロップ機能としてEX光学ズームを動画撮影にも適用。解像度劣化のない、約3.1倍(AVCHD Liteモード時)の望遠効果が得られる。キットのLUMIX G VARIO 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.であれば、43.4〜130.2mm(フルサイズ判換算で86.8〜260.4mm相当)の望遠ズームとして活用できる。
■高感度ノイズが低減
カメラ部に関する主な変更点としては、最高ISO感度がある。搭載するイメージセンサーは4/3インチ、有効1,210万画素Live MOSセンサー。先代のDMC-G1と基本的には共通となる。ただし、本モデルに搭載されるものは、フォトダイオードをシリコン深部に埋め込む構造の採用で基板表面に発生するノイズを受けにくくしているという。そのため最高感度はISO6400を達成している。手元にDMC-G1がなく厳密に比較することはできなかったが、ISO400からISO1600あたりのノイズレベルは従来よりも改善されているように思われた。
EVFは評価の高い144万ドットフィールドシーケンシャルタイプを引き続き搭載する。解像感の高さ、広い色再現性などこれまでのEVFの概念を覆したほどの圧倒的な見えのよさだ。光学ファインダー絶対主義者も、このEVFを覗いた瞬間、考えを改めてしまうほどに思える。フィルター機能として「マイカラーモード」を備える。選択できるのは、ポップ、レトロ、ピュア、シック、モノクローム、ダイナミックアート、シルエット、カスタムの計8つ。静止画のみならず、新たに加わった動画撮影にも対応する。
LUMIX G VARIO 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.はキット専用レンズだ。似たような焦点距離を持つLUMIX G VARIO 14-45mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.と比較すると、テレ端がわずかながら短く、マウントはプラスティック製。また、光学式手ブレ補正機能が搭載されているもののON/OFFスイッチの類いは省略されるなど簡略化されているところがいくつか見受けられる(手ブレ補正のON/OFF等はカメラ側から行なえる)。
描写は、周辺部の画像の流れやわずかな色のにじみなどないわけではないが、クラスを考えると不足のないもの。逆光にも強く、ゴーストやフレアは最小限に抑えられている。何より標準ズームとしてたいへんコンパクトだ。レンズ単体の重量は165gで、DMC-G2本体を加えると593gと軽量に仕上がる。
標準ズームレンズキットに付属するLUMIX G VARIO 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.のマウントはプラスティック製。 | 光学式手ブレ補正機能を内蔵するが、ON/OFFスイッチなどは省略されている。ON/OFFやモードの選択はカメラ側で行なう |
■まとめ
DMC-G2は、操作性を大きく向上させるとともに動画機能を加え、着実な進化を遂げた。静止画撮影に関する機能の際立った変更はなかったが、これは先代のDMC-G1の基本性能が高かった証といえる。
今年はマイクロフォーサーズ以外のミラーレスモデルの登場がいくつか予想されるが、十分張り合うことのできる実力を持つといえるだろう。秀逸なつくりのEVFをはじめとする使い勝手のよさは、これまでの一眼レフユーザーもきっと納得できるものである。少しでも気になる向きは、ぜひ店頭やショールムームなどで手に取ってみることを強くオススメしたい。
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
・超解像
・感度
ISO6400 DMC-G2 / LUMIX G VARIO 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S. / 約5.6MB / 4,000×3,000 / 1/3200秒 / F11 / -0.7EV / WB:オート / 14mm |
・アスペクト比
・暗部補正
※共通設定:DMC-G2 / LUMIX G VARIO 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S. / 約4.5MB〜約4.8MB / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 14mm
オフ | 弱 |
中 | 強 |
・マイカラー
シルエット DMC-G2 / LUMIX G VARIO 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S. / 約5.4MB / 4,000×3,000 / 1/640秒 / F13 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 33mm |
・背景ボケモード
・動画
- サムネイルをクリックするとダウンロードを開始します。
- 再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。
AVCHD Lite / 55.3MB / 1,280×720 |
AVCHD Lite / 39.8MB / 1,280×720 |
AVCHD Lite / 32.0MB / 1,280×720 |
・歪曲収差(LUMIX G VARIO 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.)
・そのほか
2010/5/11 00:00