ENJOY! PHOTO with M.ZUIKO PRO & PREMIUM
オリンパス交換レンズ特別レビュー(その2)
M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
お気楽なのに高画質!きっちり仕事をこなすプレミアムレンズ
Reported by 礒村浩一(2014/7/22 08:00)
「M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8」は、F1.8の大口径単焦点レンズながら、実勢価格は3万円台前半とリーズナブル。軽量コンパクトで扱いやすく、手軽に大口径レンズの世界が楽しめる製品である。
他のM.ZUIKO DIGITALレンズと同様、マイクロフォーサーズシステム規格準拠のデジタルカメラで使用できる。開放絞りはF1.8、最少絞りはF22。画角は35mm判換算で焦点距離90mm相当となる。レンズ構成は8群9枚で、うちE-HR(低分散高屈折率)レンズを2枚使用している。
※その1「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」はこちらです!
デザインと操作感について
開放F1.8の大口径レンズだが、全長46mm、フィルター径37mm、最大径56mmと、とてもコンパクトなレンズだ。質量も116gと軽量で、同じくマイクロフォーサーズ用のレンズであるオリンパスの標準ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R」とほぼ同等(113g)といえる。
このレンズ発売時にはOM-Dシリーズは存在しておらず、EVFが内蔵されていないPENシリーズとの組み合わせが前提であった。そのためデザインもPENシリーズとマッチングするよう、シンプルかつスマートなイメージでまとめられている。
それだけに、OM-Dシリーズのフラグシップ機E-M1との組み合わせでは、レンズが小さく感じるてしまうかもしれない。一方、OM-Dシリーズで一番小さなE-M10との組み合わせなら、バランスもちょうど良く感じる。
実際の撮影に入ると、E-M1との組み合わせでもレンズに手を添えた際のバランスはとても良く、手のひらでカメラごと包みこむようにホールドすることができる。
また幅広なMFリングは回すと程よい重みがあり、EVFを覗きながら、親指1本でも過不足なく自在にフォーカスを合わせられるのは快適だ。
なお、外装色は2011年9月に発売されたシルバーに加え、2013年6月にブラックが追加されたことにより、現在は2色から好みの外装色を選ぶことができる。
AFは高速で、かつ駆動音が静かなMSC(Movie & Still Compatible)機構を採用。EVFを覗きシャッターボタンを半押しした際は、明るいレンズ特有の浅いピントのなかでスッとフォーカスの合う様が心地よい。
AF駆動の音は非常に小さく、ボディ内手ブレ補正がONになっていると、その動作音に紛れるほどだった。
解像力とボケの傾向を見る
絞りの変化に伴う解像力とぼけ具合を見るため、カメラを三脚に据え付け、開放絞りのF1.8から最小絞りのF22まで絞りを変えながら撮影した。ピントは手前の花の中心にMFで合わせ固定している。
ここで注目したいのが、ピントが合った箇所の解像力の高さだ。開放絞りであるF1.8でもきっちりと解像している。そこからF2.0、F2.8、F4.0と絞っていくごとに解像力が向上する。それと同時に被写界深度が深くなることで画像全体の描写力が高まる。
またさらにそこからF5.6、F8.0、F11と絞り込んでも、解像力は安定したまま。F16、F22と絞り込んだ撮影でも、回折による解像力低下が非常に少ない。
これは被写界深度を得る必要がある撮影でも、画質の低下を必要以上に心配する必要がないということになる。とてもありがたいことだ。
また、被写界深度が浅いF1.8を見ると、ピントの合った箇所の前後のボケはとても自然に感じる。特にピント位置から後方へのボケの遷移は非常に柔らかく、ぼけた葉のエッジでも二線ボケなどは見られない。
そこから絞りを絞り込んでいくと被写界深度の幅も広がり徐々に背景にもピントが合っていく。それにつれて背景ボケのなかには葉と葉の隙間に作られた、光による玉ボケが含まれていたことに気が付く。
これはこのレンズの絞りが7枚羽根で構成された円形絞りであることで、ボケの形も円形に近い形で表現されることになったものである。
逆光性能を見る
本製品のレンズには、ZERO(Zuiko Extra-low Reflection Optical)コーティングと呼ばれるレンズコーティングが施されている。これはレンズ表面に多数の膜を生成することで光の反射率を低く抑えるというものだ。これによりレンズのゴーストやフレアの発生を極力抑えることができるという。
ただしどんなに高性能なレンズであっても、強烈な光が直接レンズに差込むような状況となるとゴーストやフレアの発生から逃れることはできない。ここで大切なのは、そのゴーストやフレアの発生をいかに効果的に写真に活かすことができるかということである。
下の作例は、強い逆光の元で人物を撮影したもの。わざとレンズに直射日光が差込むようにしている。画面全体を薄いベールのようなフレアで包み込ませることができた。
ただしこの状況でも解像力の低下はなく、人物の目元や髪の1本いっぽんまできっちりと解像していることが判る。
基本性能の高いレンズであれば少し無茶と思われる状況でも、それを活かした作品とすることもできるというよい例だ。
最短撮影距離での画質を見る
最短撮影距離は0.5mである。実はマクロレンズを除く90mm(35mm判換算)前後の中望遠単焦点レンズとして、0.5mというのはとても短い。多くは0.8m前後であることを考えると、このレンズは花や料理などの日常的なクローズアップ撮影にも向いたレンズだといえる
料理の皿に最短撮影距離まで近づき撮影したのが下の作例。浅い被写界深度となるので一部分にのみピントを合わせ目線を引きつけることができる。
またオプションのマクロコンバーターMCON-P02も装着可能である。その際は約24cmまでの近接撮影が可能となるので、ちょっとしたマクロレンズ的な撮影もできてしまうのだ。
レンズ単体よりもさらにクローズアップして撮影できるので、ネコの目元に思い切り近づいける。
作品集
レンズの画角を活かしたバストアップのポートレート撮影。人物の正面からストレートに向かい、開放絞りF1.8で人物の目元のみにピントを合わせることで背景を大きくぼかした。
人物から少し離れた場所から撮影。背景の建物を必要以上にぼかさずディテールを活かすためF2.8まで絞り撮影した。人物と草花、建物の遠近感を表現。
プライベートガーデンに咲く花の潤いを感じながらの撮影。人物とすこし距離を置き、緑のなかに佇む女性の姿を捉える。
細かな草葉が繁る背景だが、焦点距離45mm F2.0という組み合わせでボケすぎず煩すぎず、程よい描写とすることができた。
開放絞りF1.8にて撮影。人物の目元にしっかりとピントを合わせたバストアップ撮影。開放絞りでもとても解像力が高く人物が浮き立つ。それでいて背景のボケは非常に柔らかく、色が溶け込んだようだ。
室内での限られた明るさのなかでの撮影。ISO感度を400に合わせると共に、F1.8という明るいレンズを活かすことで部屋のなかの照明のみで撮影することができた。明るい単焦点レンズは地明かりのみで撮影したくなる。
アンティークな調度品に囲まれ静かな刻が流れる室内。窓外からの明かりと室内に設えたストロボ光とのミックス光撮影。それぞれの光量を整えながら最適なバランスを導きだす。
絞りは少し絞り込み、人物のみでなく室内の様子も判るようにピントの合う範囲も念頭において撮影した。
人物の顔にぐっと近寄り撮影。中望遠域となる画角なので、人物にゆがみを与えることもなくストレートな印象のままクローズアップすることができる。F2.0に絞ることで解像力も上がり、目元に宿る彼女の意思を感じることができる写真となった。
少し高めのカメラアングルから女性の表情を捉えた。絞りを開放のF1.8にセットし手前側の目元にのみピントを合わせることで、口元から胸元へのふわりとした描写とし彼女の柔らかな存在を導きだす。
まとめ
撮影に使用した「M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8」は、マイクロフォーサーズ用の単焦点レンズとして比較的早い時期に登場したものだ。シルバーモデルの登場からはすでに3年近くが経っており、筆者もこれまでにこのレンズで多くの撮影を行なってきた。
その度に感じるのが画質の高さと使い勝手の良さだ。開放絞りからキリッとくる解像感はとても気持ち良く、ポートレート撮影においても被写体の存在感と魅力を見事に引き出してくれる。
3万円代前半となる実勢価格は非常にコストパフォーマンスが高く、またシンプルで軽量コンパクトなサイズはとても扱いやすい。まさにコンパクトなシステムと高画質の両方を実現するレンズといえる。
オリンパスではこのレンズを「プレミアム」と位置付けると同時に「ファミリーポートレートレンズ」ともしている。手軽さと大口径レンズならではの表現、そのどちらも得られるレンズなのだ。
カメラと標準ズームレンズとの組み合わせに、この1本を追加するだけで写真の楽しみを増やすことができるだろう。初めての単焦点レンズとしても、そして本格的なポートレートレンズとしてもおすすめできるレンズだ。
制作協力:オリンパスイメージング株式会社
デジタルカメラマガジンでも連載中!
7月20日発売の「デジタルカメラマガジン 2014年8月号」でも、M.ZUIKO PRO & PREMIUMをテーマにした連載が掲載されています。あわせてどうぞ!