パナソニックLUMIX DMC-GH1【第7回】

動画・静止画両対応の雲台を試す

Reported by 本誌:折本幸治


 いまさらではあるが、DMC-GH1最大の特徴といえば、動画機能だろう。スムーズなコントラストAF、滑らかに変化する露出、そしてAVCHD準拠のフルHD記録。LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH.が付属するレンズキット「DMC-GH1K」は、大型センサーによるボケとスムーズなAFを両立したことで、発表当初は大変な話題になった。

 しかし動画を撮らない筆者にとって、フルHD動画機能はまさに宝の持ち腐れ状態。イベント取材で動画機能を多用するものの、基本的に640×480ピクセルのSD記録。旅行中にも使用するが、記録用途なので雑な撮り方だ。

 いまいち動画にのめり込めない言い訳のひとつは、「動画用の雲台を追加購入するのが面倒」というもの。ご存知の通り動画用の雲台といえば、オイルフリュードタイプの製品が知られている。静止画の雲台は、「角度を変える→確実に止める」ことが重要で、加えて動画向けの雲台、「動かしながら止めずに撮る」という、アナログな操作感が必要。そこで動きが滑らかなオイルフリュードタイプの雲台がクローズアップされる。

 スムーズな動きのオイルフリュードタイプの雲台は、動画だけでなく、超望遠撮影やデジスコ撮影でも有用だ。そのためDMC-GH1を使い始めた頃、マンフロットの小型ビデオ雲台を思い切って買おうかと考えたことがある。しかしビデオ雲台は一般的にパンハンドルのみで、サイドティルトハンドルを備えていない。つまり縦位置で撮影できないのだ。遠出するたびに静止画用と動画用の2種類の雲台を持つのはやっかいなので、動画用雲台から意識を遠ざけていたわけだ。

 ただし今春、スリックが「SH-736HD」(1万2,600円)という雲台を発売してから事態が変化した。この製品、SHの型番からわかる通り、一見普通の3ウェイ雲台。しかし、可動部にオイルフリュードとフリクションコントロールを採用しており、「動画にも使える」というのが売り文句だ。

 今回はSH−736HDを採用する3段三脚「プロ500 HD」(3万5,805円)をお借りし、着陸しようと降下する旅客機を撮ることにした。撮影ポイントは、目の前を旅客機が一定の速度で通り過ぎ、ほぼ180度近くのパンニングが必要。動画修行にはもってこいだろう。

静止画・動画両対応の雲台「スリックSH-736HD」。グレーのつまみがフリクションコントロールプロHD500の脚部は、DMC-GH1を使うには少々大げさな高さと自重。ただしカメラを振り回すことを考えると、最低これぐらいは必要かも

 プロ500 HDは、最大パイプ径26.8mmの中型三脚で、脚パイプはAMT合金。全高1,649mmで重量2,680gという、カーボン三脚に慣れた身にはヘビーに感じる製品だ。レンズ交換式デジタルカメラとして軽量なDMC-GH1には少々オーバースペックに感じるが、カメラを大きく動かすことを考えると、三脚自体に自重がある方が有利だろう。また、手すりの内側という撮影ポイントだったため、ある程度高さがあるのも結果的には助かった。

 早速着陸する旅客機をフルHDで撮影。目の前を通り過ぎるのはたったの数秒だし、速度もほぼ一定、上下方向のティルトもほぼ必要なしということでタカをくくっていたのだが、これが情けなくなるほど上手くいかない。もちろん手持ち撮影より格段に良いが、旅客機の速度とカメラのパンをシンクロさせることが、こんなにも難しいとは。とにかく、プロのビデオカメラマンのすごさを思い知らされた。

 何十回とトライするうちにわかってきたのは、腕や上半身だけでなく、足腰をうまく使うこと。ほとんど武道やスポーツの心得だ。また、三脚はより重くて安定していた方がいい。パン棒を継ぎ足して長くするのも手だろう。何よりも、自らの運動神経を鍛え直すのが肝要かもしれない。

 SH-736HDの操作性について述べると、一般的な3ウェイ雲台に比べて動体を追いやすいのは間違いない。自信喪失中の自分がいうと説得力がないが、これが普通の雲台だともっとひどいことになっていたはずだ。あまりきめ細かいフリクションコントロールができなかったりと、本物のビデオ用雲台には敵わないところもあるが、オイルフリュードによる滑らかさをこの値段で享受できるのはありがたい。

 静止画用としても優秀で、例えばフリクションをきつめにしておけば、パンハンドルを不意に緩めても、カメラが前にがくんと倒れるのを防いでくれる。何もよりも縦位置にできるので、静止画用途でも支障がないのがうれしい。静止画、動画両対応ということで、DMC-GH1にうってつけなのではないだろうか。

 DMC-GH1の設定は、おまかせiAで動画ボタンをオンにしただけ。レンズはLUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH.を使用した。機体の大きさや撮影者との距離にもよるが、望遠端から少し戻した位置(120mm前後)でちょうど良い画角になった。

 大抵の場合、機体が豆粒のように見える状態からピントが合い、その後、視界から消えるまでAFが外れない(ほとんど無限遠だが)。ただし周りが暗くなるにつれ、ごくたまに、最後までピントが合わないケースが出てきた。それでもヒット率は高いと思う。コントラストが低いのは、曇り空で夕方だからだ。30秒前後の動画を40本近く撮影し、周囲が暗くなったところであきらめて帰宅した。

 自分の修行不足で残念な結果になったものの、動画の面白さは手持ち撮影ではわからないと実感。今回の組み合わせで、動く被写体に再チャレンジしたい。






本誌:折本幸治

2010/8/10 00:00