ニコンD7000【第7回】

風で揺れる花はコントラストAFで!!

Reported by 吉森信哉


 ボクは、日常的に花の写真を撮ることが多いが、その際、ピント合わせには気を使う。特にマクロ撮影になると、わずかにピント位置がズレても、違和感のある作品になってしまう。

 一方、ある程度被写体が離れていても、ピント合わせが難しいケースがある。代表的なのが、風で花が大きく揺れるケースだ。屋外に咲く花の多くは、風の影響を受けやすい。特に、茎が細くて長い花だと、わずかな風でも大きく揺れてしまう。そうなると、狙った花を特定のフォーカスエリアで捉えるのは難しい。かといって、AFエリアモードをオートエリアAFに切り換えると、狙った花とは違う部分を捕捉してしまうケースが多くなる(狙った花の手前に別の花があると、ほとんどアウト)。

 ちなみに、そういった落ち着きのない花だと、手持ちでトライするより三脚を使った方が、落ち着いて撮影できる。その方が、構図も安定するし。

 で、そういう場合には、フォーカスモードをAFからMFに切り換えて、あらかじめピント位置を決めておき、風が収まるのを待って(花がその位置・距離に戻るのを待って)撮影する……という方法が現実的だろう。

 でも、実際には「待てど暮らせど風が収まる気配はナイ」というケースが多い。まあ、ピント位置にほとんど影響を与えない揺れ(前後方向の動きが無視できる程度)なら、MFでピント位置を決めて撮ってもいい。だけど、望遠レンズや中望遠マクロレンズでアップめに狙おうとしたら、どうしても前後方向の動きが気になってくるんだよなぁ……。

 あ〜、花が風に揺れていても快適にAF撮影をする方法はないものか!?

 ということで、そういう状況下でのD7000のAFモードやAFエリアモードなどの設定を考えてみるよ。

 前述のとおり、AFエリアモードは「オートエリアAF」だと、狙った花とは違う部分を捕捉してしまう可能性が高くなる。じゃあ、AFモードをAF-AかAF-Cに設定したうえで、ニコンが誇る「3D-トラッキング」を選んでみるか? ……う〜ん、ちょっと無理っぽいナァ(苦笑)。まあ、人物や乗り物の動きのパターンとは違うからねぇ、風で揺れる花は。

 そんな試行錯誤をしているうちに、な〜んとなく閃いたですよ。「ライブビューモードでのAF撮影なら、何とかイケるんじゃないの?」ってね。

 その理由のひとつは「画面内の自由な位置にフォーカスポイントを移動できる」ということ。そして、もうひとつは、D7000のライブビューでは「ターゲット追尾AFが選択できる」ということである。フォーカスポイントに被写体を重ねてOKボタンを押すと、その被写体の動きに合わせてフォーカスポイントが移動(追尾)する、という機能。おーっ、これは何だか良さそうだよ。

D7000は39点ものフォーカスポイントを備えていえる……が、画面全域をカバーしている訳ではない。その点、ライブビュー撮影なら、フォーカスポイントを画面全域の好きな位置に移動できる。構図を決めて(固定して)撮る三脚撮影では、とても有難いことである

 ちなみに、ファインダー使用時に選択できるAFエリアモードは、シングルポイントAF、ダイナミックAF(9点、21点、39点)、3D-トラッキング、オートエリアAF、である。一方、ライブビュー撮影時のAFエリアモードは、顔認識AF、ワイドエリアAF、ノーマルエリアAF、ターゲット追尾AF、となる。

 ボクが所有するコンパクトデジカメの中にも「ターゲット追尾AF」のようなAF機能を搭載するモデルがあるので、そちらの方ではたま〜に使用している。だから、D7000のターゲット追尾AFを試す前から、挙動や操作性に関しては「風で揺れる花とかにも良さそう」というイメージはあった。……でも、心配なのは「不規則な激しい揺れでも追尾するのか?」という点である。

 正直なところ、フォーカスポイントを被写体に重ねるのも難しい(それほど頻繁に動くということ)ような花だと、何とか追尾を開始しても、早めにギブアップするんじゃないかと思っていた。

 でも、なかなかどうして! 意外とやりますナァ〜。ゆっくりした動きはもちろん、けっこう激しい動き(しかも不規則!)でも、フォーカスポイントは動きに遅れず追尾してくれる。そんでもって、シャッターボタンを半押しすることなく自動的に追尾動作を続けてくれるのが超快適〜!

 

 

 

 もちろんこの方法は、ライブビュー撮影時のコントラストAFを利用するため、装着レンズによって結果が変わってくることに注意してほしい。今回試したAF-S DX NIKKOR 55-300mm F4.5-5.6 G ED VRでは、比較的スムーズな追尾が得られた。また当然ながら、静止した花を撮る場合より、シャッター速度は速めにしておく必要がある。

ライブビュー撮影では、レリーズするたびに再生画像が表示されると、撮影が中断される格好になって、けっこうイライラさせられる。ということで、再生メニュー内の「撮影直後の画像確認」を「しない」に設定しておきたいライブビュー撮影に切り換えた状態で、レンズ取り外しボタン下の「AFモードボタン」を押すと、AFモードとAFエリアモードが設定できる。メインコマンドダイヤル(後ダイヤル)でAFモードを、サブコマンドダイヤル(前ダイヤル)でAFエリアモードを設定する。今回の撮影では、AFモードはシャッターボタンを半押しするまでピントを合わせ続ける「AF-F 常時AFサーボ」に、AFエリアモードは「ターゲット追尾AF」に設定した
マルチセレクターを操作して、フォーカスポイントをピントを合わせたい被写体に移動させる。なお、AFモードが「AF-F 常時AFサーボ」だと、移動させてる最中にAF追尾がスタートして、とんでもない部分(遠方の風景とか)にピントが合ったりする場合がある。その際には、ボディかレンズのスイッチで一旦AFからMFに切り替えて、またAFに戻すといい(この際、フォーカスポイント枠は白色になる)。そうすれば、シャッターを半押しするまではAF追尾は開始されないフォーカスポイントをピントを合わせたい被写体に移動させ、OKボタンを押すと追尾が開始される。…が、直前のフォーカスポイント枠が白色だった場合には、フォーカスポイントが被写体を追尾するがAFはまだ作動していない。この際のフォーカスポイント枠の色は黄色である
そして、シャッターボタンを半押しすると、フォーカスポイント枠が緑色に変わりAF作動が開始する。……で、再度OKボタンを押すと追尾を終了してフォーカスポイントは画面中央に戻るが、AF作動は引き続き行なわれている

 なお、使用説明書の「ターゲット追尾AFについてのご注意」には、追尾動作が正常に行なわれない事例として「被写体が画面から外れた場合」が挙げられていたが、瞬間的に外れるくらいであれば、問題なく追尾を継続してくれることが多かったヨ。

 まあ、風に揺れる花を撮ろうとすると、シャッターボタン半押しによるAFロックからシャッターが切れるまでの時間差で、ピント位置のズレが生じる場合も出てくる。それでも、実際に撮影してみると、その影響よりも、ストレスなくAFで被写体が追尾できるメリットの方が大きいんだよね。フォーカスポイント選びで困惑したり、MFモードでピント調節に悪戦苦闘したり……そういう苦労から解放してくれる、この方法は、三脚を使った揺れる花の撮影で、けっこう実用的な撮影スタイルだと思うけどね。

 最後に作例を2点。AF-S DX NIKKOR 55-300mm F4.5-5.6 G ED VRを使用して、「AF-F 常時AFサーボ」+「ターゲット追尾AF」で撮影した写真。かなり被写体をクローズアップした撮影だったので、風が吹くたびに狙った花の位置が大きく変わる状況だった。でも、追尾機能は思い通りに働いてくれて、ピント位置もまずまず満足できる結果が得られた。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
D7000 / AF-S DX NIKKOR 55-300mm F4.5-5.6 G ED VR / 約6.2MB / 4,928×3,264 / 1/400秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO200 / WB:晴天 / 300mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 55-300mm F4.5-5.6 G ED VR / 約6.2MB / 4,928×3,264 / 1/400秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO200 / WB:晴天 / 300mm




吉森信哉
(よしもりしんや)1962年広島県庄原市出身。東京写真専門学校を卒業後、フリー。1990年からカメラ誌を中心に撮影&執筆を開始。得意ジャンルは花や旅。1970年代はカラーネガ、1980年代はモノクロ、1990年代はリバーサル、そして2000年代はデジタル。…と、ほぼ10年周期で記録媒体が変化。でも、これから先はデジタル一直線!? 自他とも認める“無類のコンデジ好き”

2011/11/30 00:00