ニコンD7000【第5回】

18-55mmと16-85mmを比べてみる

Reported by 吉森信哉


 昨年の10月28日に、D7000ボディを入手したのだが、それまではD5000を所有して使っていた。このD5000用の標準ズームレンズとしてよく使っていたのが、ニコン製品のキットレンズとしてお馴染みの「AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR」(以下18-55mm)である。いや、使っていたというか、今でも使ってるんだけどね。

 ……でも、この18-55mm、D5000ボディとは釣合が取れてると思うけど、上位モデルのD7000ボディに装着すると、レンズがショボく見えて(18-55mmに罪はないが)、何だかさびしい気分になるんだよなぁ(苦笑)。そういう訳で、D7000にマッチする標準ズームレンズも欲しくなり「AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR」(以下16-85mm)を買いました。まあ、以前からD300を使ってるから、もっと前に16-85mmを買っても良かったんだけど、その時は高倍率ズームレンズの「AF-S DX VR Zoom Nikkor ED 18-200mm F3.5-5.6 G」(初代)を選んだのよね。

 18-55mmと16-85mmを比較すると、大きさや重さ、デザイン、広角端と望遠端の画角、手ブレ補正機構「VR」の性能差などなど、いろんな面で違いが見られる。その中でも、最初にボクが「あ〜、こんなに違うんだ」と実感したのが、ボディに装着した際の“全体の重量感”だ。もちろん、レンズ単体での重量差(16-85mmの方が約220g重い)はわかってたけど、実際にD7000ボディに装着して手にしてみると、予想以上に全体の重みというかバランスの違いが感じられた。

 18-55mmをD7000に装着した場合、ボディの比重が大きいためか、レンズの存在感があまり感じられない。だが、16-85mmを装着した場合には、見た目と同じように……いや、それ以上にレンズの重みを実感する。まあ、それを好意的に解釈すれば「D7000ボディと釣合が取れた標準ズームレンズ」ということになる訳だが、そのぶん18-55mm装着時のような軽快さはなくなってくる。

D7000にAF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VRを装着。フィルター径は52mmで、重さは約265g。フードは別売。可愛らしい組み合わせだAF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VRを装着。フィルター径は67mmで、重さは約485g。花型のフードが付属する。いかにも“高性能っぽい”組み合わせだよネ

 性能や仕様に関しては、まず搭載される手ブレ補正機構の性能が違う。18-55mmにはシャッター速度3段分の補正効果の「VR」が、16-85mmには4段分の補正効果の「VRⅡ」が搭載されている。それと、16-85mmの方には、揺れる乗り物から撮影する際にもブレ補正効果が得られる「アクティブモード」も搭載されている。

 それ以外では、16-85mmの方には、AF中でも切り替えナシでMF操作が可能な「M/Aモード」仕様だったり、EDレンズを採用していたりする。ま、このあたりの違いは、グレードの差というか値段の差ですナァ。

 実写の差も大いに気になるところだ。D7000に搭載される撮像素子は「有効画素数1,620万画素CMOSセンサー」と、現在のニコンDXフォーマットでは最高画素数を誇るので、これまで以上にレンズ性能が問われる。

 16-85mmは描写力が高く評価されているレンズである。一方の18-55mmも、実写してみた結果、予想以上に健闘。広角側の周辺部や、望遠側の開放あたりで「わずかにアマいかナ」という印象も受けたけど、全体的にはかなり優秀な描写性能だった。また、18-55mmは焦点距離やズーム倍率に無理がないぶん、歪曲収差に関しては16-85mmよりも素直な印象を受けた。なお、画質比較に関しては個体差の影響も考えられるので、今回の結果はあくまでも“ひとつの参考”として見てくださいネ。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
広角端 / D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約6.4MB / 4,928×3,264 / 1/100秒 / F8 / 0.0EV / ISO200 / WB:晴天 / 18mm望遠端 / D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約4.8MB / 4,928×3,264 / 1/100秒 / F8 / 0.0EV / ISO200 / WB:晴天 / 55mm

広角端 / D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約5.9MB / 4,928×3,264 / 1/80秒 / F8 / 0.0EV / ISO200 / WB:晴天 / 16mm望遠端 / D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約5.4MB / 4,928×3,264 / 1/80秒 / F8 / 0.0EV / ISO200 / WB:晴天 / 85mm

 歪曲収差をチェック。16-85mmは、焦点距離やズーム倍率を欲張っているぶん、広角側も望遠側も18-55mmより少し歪曲が目立つ。特に、広角側の歪曲は“陣笠タイプ”なので、被写体によってはちょっと気になるだろう。まあ、18-55mmの広角側のタル型歪みそれなりに大きめだが。

 なお、D7000には「自動ゆがみ補正」という機能があるので、これをONに設定して撮影すれば両レンズとも歪みは気にならなくなる(ゆがみ補正の効果が大きくなると、そのぶん画面周辺部はカットされるけどね)。今回は、レンズ自体の性能をチェックするため、この機能はOFFにして撮影した。

広角端 / D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約6.1MB / 4,928×3,264 / 1/8秒 / F16 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 18mm望遠端 / D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約6.7MB / 4,928×3,264 / 1/8秒 / F16 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 55mm

広角端 / D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約6.0MB / 4,928×3,264 / 1/5秒 / F16 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 16mm望遠端 / D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約5.9MB / 4,928×3,264 / 1/6秒 / F16 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 85mm

 次は絞り値を変えながら、広角端の画質をチェック。四隅以外はさすがに16-85mmの方がシャープだが、18-55mmも満足いく描写力(絞り開放はわずかにアマめだが)。ただ、画面の四隅をチェックすると、18-55mmの開放近くの描写は少し物足りないので、2段くらい絞りたくなる。

D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約9.1MB / 4,928×3,264 / 1/50秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 18mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約9.2MB / 4,928×3,264 / 1/50秒 / F4 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 18mm
D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約9.7MB / 4,928×3,264 / 1/30秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 18mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約10.1MB / 4,928×3,264 / 1/20秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 18mm
D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約10.2MB / 4,928×3,264 / 1/8秒 / F11 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 18mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約9.3MB / 4,928×3,264 / 1/4秒 / F16 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 18mm

D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約10.2MB / 4,928×3,264 / 1/50秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 16mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約10.4MB / 4,928×3,264 / 1/40秒 / F4 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 16mm
D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約10.7MB / 4,928×3,264 / 1/25秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 16mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約10.5MB / 4,928×3,264 / 1/13秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 16mm
D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約10.0MB / 4,928×3,264 / 1/6秒 / F11 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 16mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約8.9MB / 4,928×3,264 / 1/2.5秒 / F16 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 16mm

 最後に望遠端の画質を見てみる。18-55mmの方は、絞り開放で少しコントラストが低めな印象だけど、それ以外は問題ない。一方16-85mmは、全体的に安定した描写になっている。

D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約11.2MB / 4,928×3,264 / 1/1.3秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 55mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約12.6MB / 4,928×3,264 / 1.0秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 55mm
D7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約13.1MB / 4,928×3,264 / 2秒 / F11 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 55mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約12.8MB / 4,928×3,264 / 4秒 / F16 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 55mm

D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約11.6MB / 4,928×3,264 / 1/1.6秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 85mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約11.6MB / 4,928×3,264 / 1.3秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 85mm
D7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約11.4MB / 4,928×3,264 / 2秒 / F11 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 85mmD7000 / AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR / 約10.6MB / 4,928×3,264 / 4秒 / F16 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 85mm

 この2本を比較すると、まだまだ違いがあるんだよねぇ〜。ということで、次回はさらに踏み込んで……というか重箱の隅をつつくようなレポートをお届けしたいと思いマス。



吉森信哉
(よしもりしんや)1962年広島県庄原市出身。東京写真専門学校を卒業後、フリー。1990年からカメラ誌を中心に撮影&執筆を開始。得意ジャンルは花や旅。1970年代はカラーネガ、1980年代はモノクロ、1990年代はリバーサル、そして2000年代はデジタル。…と、ほぼ10年周期で記録媒体が変化。でも、これから先はデジタル一直線!? 自他とも認める“無類のコンデジ好き”

2011/7/22 00:00