交換レンズレビュー
ニコン「AF-S NIKKOR 58mm f/1.4 G」
美しいアウトフォーカス描写が堪能できる逸品
Reported by上田晃司(2014/3/18 08:00)
AF-S NIKKOR 58mm f/1.4 Gは、FXフォーマット対応の大口径単焦点レンズだ。58mmの焦点距離は、同社の銘レンズ「ノクトニッコール」を彷彿とさせる。
本レンズは、非球面レンズ2枚を含む6群9枚。非球面レンズを2枚採用することで諸収差を良好に補正している。また、絞り開放時に点光源が円にならず、カモメが羽ばたいているような像になってしまうサジタルコマフレアが発生しづらい点も魅力の1つだろう。
さらに、定評のあるナノクリスタルコートが施してあり、逆光に強いことにも注目したい。また、製品情報ページやカタログにあるMTF曲線を見ても同心円方向(M)と放射方向(S)が非常に近く優秀なレンズであることがうかがえる。
デザインと操作性
カタログやWebなどで写真を見るとやや大きめに感じられるが、全長70mm、最大径約85mm、質量は約385gで、F1.8クラスの中望遠レンズやAF-S NIKKOR 85mm F1.8 Gとサイズも重量も近い。また、デザインはAF-S NIKKOR 85mm F 1.4 Gに近く、近年のニッコールレンズらしいものとなっている。
D5000クラスのカメラに装着するとやや大きく感じるかもしれないが、D600やD800クラスであればバランスもよく使い勝手が良い印象だ。
AFだが、駆動用モーターにSWM(超音波モーター)を採用。高速で静粛性に優れているため、ストレスなくピントを合わせられる。駆動音も気にならないレベルだ。
本レンズはフルタイムマニュアル機能搭載しているため、AF中でもフォーカスリングを回すことでシームレスにMFでのピント微調整が可能だ。人物撮影やピント位置が思い通りにならかった場合に役立つので便利。
フォーカスリングは滑らかで適度なトルクがあり、操作しやすかった。
遠景の描写は?
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
細かく見れば、絞り開放で周辺に像の乱れが確認できるほか、同じく周辺部ではハイライト部分にパープルフリンジが確認できるなど、中央部分と比べるとややシャープさが足りない印象。F2まで絞るとかなり改善されるが、厳しく見ると画像周辺はシャープさが足りない。
一方、F2.8にするとD800Eでもレンズ中央から周辺まで像が安定してくる。F4~F8あたりは驚くほどの解像感があり、数km離れたビルの窓枠や観覧車の窓までしっかり解像していることがわかる。
F11くらいから回折の影響が出始めるが、F16まで絞らない限り気になることはなさそうだ。また周辺の光量落ちに関しては、カメラ側で補正していることもあり開放から1~2段絞ることで消えるため問題ないと言える。
絞り開放付近は厳しめに評価したが、開放F1.4ということを考えると圧倒的な描写力と言っても良いだろう。
ボケ味は?
二線ボケも見られず、素直なボケが楽しめるレンズだ。絞り開放時の描写力はややソフト目の印象を受けるが、D800Eの解像力にも十分対応できている。
最短撮影距離ではボケが大きくなるが、色収差が少し目立つ印象。F2.8まで絞るとコントラストが高くなり、像も安定する。ピントの合った部分はシャープな切れ味で表現したい部分をしっかり表現できている。
F4まで絞り被写体との距離が1mくらいあっても、FXフォーマットのカメラと組み合わせれば適度な前ボケ、後ボケを得られる。
逆光は?
逆光性能に関しては非常に優秀といえる。太陽が画面内に入るように撮影した画像と、太陽が画面外になるように撮影した画像のどちらともゴーストは確認できない。
フレアもほとんど目立たず、太陽が画面内にあっても高いコントラストを維持できており、改めてナノクリスタルコートの優秀さを感じさせた。
まとめ
今回、AF-S NIKKOR 58mm f/1.4 Gを使い様々な被写体を撮影した。58mmという慣れていない焦点距離ではあったが、使ってみると実に使いやすく筆者愛用のAF-S NIKKOR 50mm F 1.4 Gと変わらない撮影ができた。ただし、ボケの質は正直別物の印象。とろけるような美しいアウトフォーカス部分はこのレンズの最大の魅力だろう。
AFのレスポンスや操作感もシンプルで、撮影に集中することができた。ポートレートはもちろんのこと、スナップなどにも最適のレンズと言えるだろう。価格は高めの印象ではあるが、ボケや点光源をより美しく撮影したいユーザーには最適なレンズだろう。