交換レンズ実写ギャラリー
キヤノン「EF-M 11-22mm F4-5.6 IS STM」
Reported by 北村智史(2013/8/26 12:00)
キヤノン「EOS M」のユーザーには待望の3本目。一眼レフでは大柄になりがちな広角ズームだが、フランジバックの短いミラーレスカメラだけに非常にコンパクトに仕上がっている。レンズ収納機構(沈胴式鏡胴)の採用、手ブレ補正機構を内蔵した広角ズームという、キヤノン初の特徴も持つ。
大きさは、最大径が60.9mm、レンズ収納時の長さが58.2mm。重さは220g。標準ズームの「EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STM」(最大径60.9×長さ61.0mm、210g)よりも少し短いほどで、開放F値を欲張っていないこともあるにせよ、一眼レフ用の「EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM」(最大径83.5×長さ89.8mm、385g)と比べると、それこそ大人と子どもほどに違う。価格はミラーレスカメラ用広角ズームでは最安の設定だ。手ごろな価格も手伝って、発売以来品薄状態が続いているようだ。
撮影時には、ズームリングにあるレンズ収納機構のロックレバーをスライドさせてズームリングを回し、レンズを繰り出す必要がある。最初のうちはちょっと辛気くさく思えるかもしれないが、たいした手間ではないし、すぐに慣れるだろう。AF駆動はリードスクリュータイプのステッピングモーター(STM)で、作動音はほぼ皆無。最新ファームウェアにアップデートしたEOS Mでは、快適なスピードでピントが合ってくれる(旧ファームのままだとカメラが動かなくなってしまうことがあるらしいので、ファームアップは必須である)。手ブレ補正の効果はCIPA基準で3段分。比較的手ブレを抑えやすい広角ズームとしてはまずまずのスペックだと思う。
実写では、絞り開放からシャープな描写が得られる。広角端の四隅は少しだけアマさがあるが、F5.6まで絞れば安定した画面になる。今回はレンズ補正を、周辺光量補正と色収差補正の両方ともONにした状態で使用したが、テスト的にOFFにして撮ったカットを見ると、周辺光量は広角端絞り開放の四隅で1.5段ぐらい落ちている印象だった。倍率色収差はあまり目立たず、補正機能をオフにしていても気になりにくいのではないかと思う。
一方、歪曲収差はちょっと大きめ。望遠端はほとんど気にならないが、広角端ははっきりしたタル型の歪曲収差が残っている。一眼レフ用のEF-S 10-22mm F3.5-4.5 USMはよく補正されていたから、もうひと頑張り欲しかったところだ。以前、あるメーカーの方に教えていただいたところによると、歪曲収差をきちんと補正するにはレンズを大型化しないといけないとのことだったので、このレンズは歪曲収差補正よりも小型軽量化を優先した設計なのかもしれない。もっとも、EOS Mに巨大なレンズの組み合わせも無粋なので、どちらか一方を選ばなくてはならないなら、歪曲収差を我慢することになる。まあ、わりと素直な曲がり方なので、後処理での補正はやりやすいはずだ。
最短撮影距離は0.15m。最大撮影倍率0.3倍と近接能力は高め。至近距離での撮影でも解像力は十分に高い。よったときの後ボケが少しばかりうるさい感もなくはないが、ひどく気になるほどではない。広角ズームの中には、近接撮影時に流れるようなボケになるものもあるから、そういうのよりはずっとあつかいやすい。
このサイズでこの画質と言うだけでも見逃せないが、価格まで手ごろさなのだから文句はない。これで歪曲収差のリアルタイム補正機能付きボディが出ればばっちりだ。
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- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。