切り貼りデジカメ実験室

コニカARマウントレンズとOM-Dでマクロ撮影を試す

「OLYMPUS OM-D E-M5」にコニカARマウントの「Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing」を装着。レンズ改造は連載第1回目の「フォーサーズボディにヘキサノンARレンズを装着する」を踏襲している。このレンズは撮影画像にゴーストが写り込む致命的欠陥があったが、フードを装着するアイデアで何とか克服できた。

原点回帰と「ゴースト」が写り込むレンズの対処法

 振り返ると、この連載「切り貼りデジカメ実験室」の第1回が2008年2月28日に掲載されてから、もう5年目になる。毎回違うアイデアを考え、工作して作品撮影するのはなかなか大変だが、我ながら良く続いている。これもTwitterやFacebook、匿名掲示板などに寄せられる皆さんの感想や意見が励みになっているおかげで、あらためて感謝したい。

参考までに、連載第1回目を振り返って、このときフォーサーズマウントに改造した「HEXANON AR 40mm F1.8」を「OLYMPUS OM-D E-M5」に装着してみた。なかなかよく似合ってるし、当時使用した一眼レフのオリンパス「E-3」より格段にコンパクトでピント合わせなどの使い勝手も良い。

 というわけで今回は原点回帰という意味も込め、第1回目のネタである「フォーサーズボディにヘキサノンARレンズを装着する」と同じ方法を、別のレンズで試してみた。

 しかしそれだけではもの足りないので、今回は“レンズ遊び”にとって重要な問題について、その対処法も紹介しよう。それは、デジタル専用設計ではないレンズをデジカメに装着すると、時として撮影画像に発生する「ゴースト」の問題である。

 実は今回紹介するVivitar 135mm F2.8 Close Focusingは、デジカメに装着するとゴーストがどうしても発生してしまう。

 このレンズは第1回目の記事掲載からほどなくして中古ショップで手に入れた。さっそくフォーサーズマウント化したのだが、画面中心部に白いモヤのようなものがどうしても写り、ガッカリしてしまったのだ。

 これは致命的欠陥だと言えるが、恐らくレンズ構成の関係上、撮像素子との間に内面反射が生じるのだろう。もともとフィルムカメラ用に設計されたレンズで、デジカメでの使用を考慮されていないから仕方がない。ユニークなスペックの望遠マクロレンズだけに実に残念な思いがしていた。

 ところがつい最近、ふとその対処法のアイデアを思い付いてしまったのだ。さっそくE-M5に装着したところ、満足できる結果を得ることができた。これでようやくVivitar 135mm F2.8 Close Focusing本来の実力を、デジタルで堪能できるようになった。

 このゴースト対策は他の旧いMFレンズにも応用可能かも知れないので、興味のある方はぜひ参考にしていただければと思う。

―注意―
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レンズ改造とカメラへの装着

今回改造するのはコニカARマウントのVivitar 135mm F2.8 Close Focusingで、ご覧のようにコニカ製フィルム一眼レフカメラ「コニカFTA」などに装着できる。とは言えコニカ製ではなく、アメリカのサードパーティメーカーVivitarブランドだ(製造は日本のコミネだと言われている)。「Close Focusing」とあるが実質上マクロレンズで、最大倍率1/2倍の撮影が可能だ。
Vivitar 135mm F2.8 Close Focusと、オリンパスの最新マクロレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」(ライカ判換算120mm相当)とを比較してみる。こうして見るとVivitar 135mm F2.8 Close Focusがずいぶん大きく見えるが、スペックを考えると十分にコンパクトなレンズだと言えるだろう。
最大倍率の1/2倍撮影時Vivitar 135mm F2.8 Close Focusはダブルヘリコイドによって全長が1.5倍ほども伸びる。対してインナーフォーカスを採用したM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」は、撮影倍率によるレンズの伸縮はない。実用的にはインナーフォーカスの方が有利だが、にょきにょき伸びるヘリコイドにはカラクリ的な面白さがある。
さて、フォーサーズマウントへの取り付けだが、まずはコニカARマウントの連動レバーが邪魔なので、これを撤去することにする。
ネジを緩めて連動レバーなどのパーツを取り外す。このあたりの工作は、連載第1回目と同じである。
次に、1.5mm厚のABS板をカットしてスペーサーパーツを3個製作。裏には両面テープを貼り付ける。
マウントの3本爪の位置に合わせ、スペーサーを貼り付ける。これでフォーサーズマウントへの装着が可能になる。連載第1回目の改造ではスペーサーを4個貼り付けていたので、ちょっと合理化している。今回も可逆改造なのでもとのARマウントに戻すこともできる。
E-M5にVivitar 135mm F2.8 Close Focusを装着したところ。ライカ判換算270mm相当の望遠マクロになる。改造ARマウントレンズはあくまでフォーサーズマウントに装着可能なので、E-M5に装着する場合は「MMF-1」などのフォーサーズアダプターを介して行なう。ずいぶん大きなレンズのように思えるが、それだけE-M5が小さいカメラなのだ。
レンズを最大に繰り出すとかなりの迫力になる。このときの撮影距離は60cmだがマウント爪の関係から、レンズの距離目盛りがカメラ上面ではなく斜めの位置に取り付けられてしまう。まぁ、このへんは改造品ならではのご愛敬と言ったところだろう。
最大倍率の1/2倍で、10円玉がこの大きさで写る。ライカ判に換算すると1/1倍相当だ。ところが何かがおかしい……と思ったら、画面中心に白っぽくゴーストが写り込んでいる。実はこのゴーストはマクロ撮影時のみに発生し、照明の条件を変えても消えることがない。また、デジカメの機種を変えても発生するから始末に悪い。レンズ構成により撮像素子との間で内面反射を起こしているのかも知れない。
ゴーストの問題はデジタル専用設計でないことの弱みだろう。とすっかりあきらめていたのだが、つい最近ふと解決策が頭に浮かんだ。「内面反射でゴーストが発生するなら遮光してみよう!」というわけで手持ちのリング類を組み合わせてフードを作ってみることにした。
テスト撮影を繰り返しながらリングを組み立てた結果、このようなレンズフードができ上がった。
レンズにフードを装着し、さらに重量バランスをとるためE-M5本体に「パワーバッテリーホルダーHLD-6」を装着。ついでに付属ストロボ「FL-LM2」も取り付けてみた。
試写した結果、赤いゴーストも消えクリアな写りになった。これでこのレンズの本来の実力を、デジタルで堪能することができる。
さらにストロボを外付けの「FL-600R」に換装してみた。付属ストロボよりガイドナンバーが大きく、ワーキングディスタンスの長い望遠マクロとの組み合わせにはこちらの方が適している。加えて強力なLEDライトを内蔵しているので、夜間のマクロ撮影でも確実なピント合わせが可能だ。

テスト撮影

 Vivitar 135mm F2.8 Close Focusingの実力を確認するため、絞りを変えながら簡単なテスト撮影を行なった。被写体は某フィルムカメラから摘出した露出計パーツだが、何のカメラか分かったら相当のマニアだろう(笑)。

 また参考までにM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroのテストも掲載してみた。共に撮影倍率1/2倍で、ISO感度やWBなどの条件も同じだ。

 しかし両レンズはワーキングディスタンスが全く異なり、同一の照明を行なうことができず色調が違ってしまった。また、画角の
違いからアングルやピント位置も若干違っている。厳密な比較というよりあくまで参考程度に見ていただければと思う。

 Vivitar 135mm F2.8 Close Focusingは、旧いMFレンズとしてはなかなか優秀だと言えるだろう。絞り開放では若干ピントが甘く滲みもあるが、F5.6~F11にかけて良好な描写となり、F22では回折現象のため全体にピントが甘くなる。撮影倍率1/2倍でのワーキングディスタンスはフードを付けても約30cmでかなりの余裕がある。

 しかし最新のM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroと比較するとその差は歴然で、あらためて驚いてしまう。絞り開放からピントの合った部分はものすごくシャープでコントラストが高い。またVivitar 135mm F2.8 Close Focusingに比べて被写界深度がもっと深いのかと思ったら、このテストで見る限りそうでもない点も意外だ。撮影倍率1/2倍でのワーキングディスタンスは約13cmで、ほどよい使い良さだと言える。

F2.8 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing
F2.8 / M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
F4 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing
F4 / M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
F5.6 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing
F5.6 / M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
F8 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing
F8 / M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
F11 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing
F11 / M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
F16 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing
F16 / M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
F22 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing
F22 / M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro

実写作品とカメラの使い勝手

 作品撮影はおもに藤沢市の自宅近所で行なった。今年の冬は例年より寒さが厳しいが、その気になって被写体を探すと意外にもいろいろな花が咲いていることに気が付く。暖かい日には虫も若干見ることもできるし、鳥はいつでも元気に活動している。

 E-M5とVivitar 135mm F2.8 Close Focusingの相性はなかなか良く、すっかり気に入ってしまった。E-M5の内蔵EVFは高精細で、Fnボタンに登録した「拡大機能」と組みあわせると快適かつ確実なピント合わせができる。

 Vivitar 135mm F2.8 Close Focusingはマクロ撮影時に被写界深度が非常に浅くなり、それだけにE-M5の利便性が実感できるのだ。手ブレ補正の効きも良く「半押し中手ブレ補正」をONにするとファインダー像が安定しよりピント合わせしやすくなる。ちなみに拡大機能はシャッター半押しで拡大画面が解除される「モード1」が鳥や一般の撮影には便利で、シャッター半押しでも拡大画面が維持される「モード2」が花や虫などマクロ撮影に適している。これらはもともとAFレンズ用に用意されたモードのようだが、旧いMFレンズでも便利に使えるからありがたい。

 しかし正直なところ、E-M5は使い勝手が良い反面、同時に非常に使いづらい面も持ち合わせており、どうもちぐはぐな印象がある。

 例えば、「拡大機能」だがメニューからFnボタンに登録しなければ機能させることができず、説明書を見なければ設定することは難しいだろう。同じく拡大機能の「モード1」と「モード2」も項目がメニュー内にあり、瞬時に切り替えできず非常にもどかしい。

 こんな場合、モードダイヤルに「ユーザー設定登録モード」に相当する項目があれば問題解決するはずだと思うのだが、E-M5にはそれが無いのだ。この点さえ改善されればE-M5はまさに“無敵”のデジカメになると思うのだが、どうだろうか?

畑の隅に生えていたホトケノザ。早春の訪れを告げる花だがもう咲いていた。浅い被写界深度を活かして撮影したが、同時に複数の花にピントを合わせることを心掛けた。E-M5 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing / 約7.1MB / 4,608×3,456 / 1/400秒 / F4 / -0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:5,300K / 135mm / 撮影倍率1/2
田んぼのあぜ道に割いていたハルジオン。十分に開ききっていないので普通とはイメージが異なり、何の花だろうと思ってしまった。E-M5 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing / 約7.1MB / 4,608×3,456 / 1/500秒 / F4 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:5,300K / 135mm / 撮影倍率1/2
同じく田んぼのあぜ道に生えていたタネツケバナ。天候は腫れだったが、わざと自分の陰に入れて撮影。花曇りと言われるようにしっとりとした描写になった。E-M5 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing / 約5.6MB / 4,608×3,456 / 1/250秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / Manual / WB:5,300K / 135mm / 撮影倍率1/2
住宅地内のプランターに植えられていたサクラソウ。日影で暗めの条件の撮影だが、何とかISO200でブレずに撮影できた。E-M5 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing / 約6.1MB / 4,608×3,456 / 1/90秒 / F4 / 0EV / ISO200 / Manual / WB:5,300K / 135mm / 撮影倍率1/2
同じく、街中のプランターに植えられていたヒナソウ。花が微風で揺れてしまうので、やむを得ずISO800で撮影。しかし思った以上に画質の低下は少なく、驚いてしまった。E-M5 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing / 約6.7MB / 4,608×3,456 / 1/250秒 / F4 / 0EV / ISO800 / Manual / WB:5,300K / 135mm / 撮影倍率1/2
気分を変えて、畑のブロッコリーを撮ってみた。実はこれも花で、蕾の状態が野菜として食されるのだ。E-M5 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing / 約7.1MB / 4,608×3,456 / 1/250秒 / F2.8 / -1EV / ISO1250 / 絞り優先AE / WB:5,300K / 135mm / 撮影倍率1/2
近所の里山に行ってみたら、田んぼの用水路でシマアメンボが泳いでいた。夏の時期より動きが大人しいが、レンズを近づけて撮ろうとするとけっこう俊敏で、撮影が難しい。感度は思い切ってISO1600まであげているが、けっこう見られる画質だと思う。E-M5 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing / 約7.5MB / 4,608×3,456 / 1/1000秒 / F11 / 0EV / ISO1600 / Manual / WB:5,300K / 135mm / 撮影倍率1/2
雑木林のコナラの樹液をなめに来たハエの仲間。冬でも日が差して暖かい日には、意外にも小さな昆虫が活動しているのを見ることができる。逆光だったため付属ストロボ「FL-LM2」を発光させてみたが、絞り込んで撮ったカットは光量不足になってしまった。E-M5 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing / 約5.3MB / 4,608×3,456 / 1/125秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / Manual / WB:オート / 135mm / 撮影倍率1/2
同じ雑木林を夜中に行ってみると、キバラモクメキリガというガを発見。外付けストロボ「FL-600R」のLEDライトをオンにしているので、暗がりでも簡単確実にピント合わせができて非常に便利だ。レンズは絞り込んでいるが、もちろん光量不足もない。E-M5 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing / 約5.5MB / 3,456×4,608 / 1/200秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / Manual / WB:オート / 135mm / 撮影倍率1/2
同じキバラモクメキリガだが、倍率を落として全体を撮影してみた。冬に活動するガは体液が不凍液のように凍らないと言われている。E-M5 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing / 約8MB / 3,456×4,608 / 1/200秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / Manual / WB:オート / 135mm / 撮影倍率1/3
ふと頭を上げると電線にスズメが止まっていた。あまり大きく写ってるとは言えないが、等倍で見るとピントはなかなかシャープだ。あらためて見ると周辺光量が不足しているが、取り付けたフードのせいだろう。実はこのレンズはマクロ以外の撮影ではフード無しでもゴーストが発生することはないのだった。E-M5 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing / 約6.3MB / 4,608×3,456 / 1/1500秒 / F4 / 0EV / ISO200 / Manual / WB:5,300K / 135mm
スズメとは違う鳥の声がするな、と思ったら目の前にメジロがいた。小さな野鳥を270mm相当の望遠レンズで撮影するのはなかなか難しいが、拡大機能のお陰もあってピントはシャープだ。E-M5 / Vivitar 135mm F2.8 Close Focusing / 約7MB / 4,608×3,456 / 1/500秒 / F4 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:5,300K / 135mm

糸崎公朗