デジカメアイテム丼
VANGUARD「ABEO Pro 283CGH」
フルサイズ一眼レフ対応の新三脚。“ピストルグリップ雲台”もユニーク
(2013/3/19 00:00)
機能的な三脚や個性的な雲台などを取り揃えるVANGUARD(バンガード)ブランドから、新型のピストルグリップ雲台「GH-300T」が発売された。カーボンファイバー三脚とのセットモデル「ABEO Pro 283CGH」で試用してみたので、三脚についてもあわせてレビューしたいと思う。
まず、ピストルグリップ雲台のGH-300Tから見てみよう。GH-300TはVANGUARDのピストルグリップ雲台としては第3世代目にあたり、先代のGH-200から、さらなる改良がなされている。
GHシリーズ共通の魅力は、見た目にもインパクトの強いピストルグリップにあるだろう。基本的な機構はボール雲台に近いが、グリップを握ることでボールがリリースされ、グリップを離すとロックされる仕組み。「握る・回す・離す」の3アクションでカメラアングルを調整するのが特徴だ。フリクションコントロールも搭載されており、カメラやレンズの重量が変わっても、最適なバランスに調整できるのもポイントだろう。
GH-200から進化した点としては、雲台とセンターコラムの間に、360度回転専用の機構がついたことだ。これまでもボール雲台の要領で横方向へのパンは可能だったが、360度回転機構のおかげで、よりスムーズなパンが可能になった。これにより、流し撮りや横移動する動体の撮影が簡単になったのは大きい。専用のロック機構もあり、緩めたり締めたりすることで、トルクの調整も可能だ。
実際にニコンD800EにAF-S NIKKOR 70-200mm F2.8 G ED VR IIを装着してみたが、重量級の装備でも十分対応できる印象。手持ちでは難しい流し撮りも、この三脚を使うことで簡単に撮影できてしまうのはうれしい限りだ。パンが容易にできるようになったということは、動画撮影にも使えるということになる。
ただしこの機構はパンのみ可能で、これを使ってのティルトはできない。水平方向の移動に限られることから、電車などの撮影に向いているといえる。また、やや動作が軽いので、動画撮影での利用を考えると、もう少しトルクが欲しいと感じた。
さらにGH-300Tのピストルグリップには、今回からシャッタートリガーが搭載された。これによりピストルグリップを右手に握ったままでの撮影が可能だ。被写体の不規則な動きに対応したり、素早い構図の変更も行なえるので、他の雲台に比べてシャッターチャンスを逃しにくい。
シャッターボタンで動画記録がスタートするカメラなら、ショルダーリグなどと組み合わせても使いやすいだろう。
シャッタートリガーの半押しでAFの開始も可能だ。少し軽め押し心地のため、使い始めは半押しと全押しの感覚がつかみ辛いが、慣れれば問題なく使用できる。
また、シャッタートリガーにはレリーズのホールド機構もあるため、連写をしたまま撮影したり、応用すれば夜景のバルブ撮影にも使用できる。
付属のケーブルレリーズはキヤノンEOS Kissシリーズ、ペンタックス、ニコンなどの一部機種に対応するが、キヤノンやニコンの上位機種、ソニーは別売のケーブルを用意する必要がある。
ケーブルはイヤフォンジャックのような形状になっており、ピストルグリップに刺すだけで使用できる。カメラを取り外す際もピストルグリップからシャッターケーブルを取り外すだけなので楽だ。
GH-200に続き、クイックシューの台座部分が360度回転するのも特徴。5度刻みに目盛があり、72段階で回転させることが可能だ。パノラマも容易に撮影できる。
クイックシューのシュープレートはアルカタイプを採用。汎用性があり使いやすく、落下防止用の安全ピンがあるのも安心だ。
グリップの角度は8段階に回転できる。例えば縦位置にしても、ピストルの方向を維持可能。グリップを回転させることで、被写体や個々の撮影スタイルに合わせることが可能だ。
ピストルグリップ特有の操作に慣れれば、GH-300Tの使用感はとても良い。特に、望遠レンズを使った撮影には最適だろう。グリップのシャッタートリガーのレスポンスも良く、違和感ないタイミングで撮影できる。
気になったのは、ティルトアップをするとすぐに台座と干渉してしまうこと。そんな場合は、MACC(マルチアングル センターコラム、詳しくは後述)を引き出してセットすることで、干渉せず使うことができるので覚えておくとよいだろう。
ABEO Pro 283CGHの三脚部は、6層のクロスカーボンファイバーを採用。さらに、MACC(マルチアングル センターコラム)システムを搭載する上位機種となる。MACCとは、引き出したセンターコラムを任意の角度で固定することで、俯瞰撮影などが可能になる機構のことだ。
三脚のスペックとしては、最伸高で171.5cm、縮長76.5cm、脚径28mm。耐荷重は6kg。35mmフルサイズのデジタル一眼レフカメラにも余裕で対応する。いままでVANGUARDにはこうしたサイズの三脚がなく、スタジオ利用がメインのACTUSシリーズか、フルサイズデジタル一眼レフカメラには若干物足りないALTAシリーズしかなかった。今回紹介したABEO Proを含むABEOシリーズは、その間を埋める新ラインナップという位置付けになる。
なお、動画撮影を中心に考えているなら、自重のあるアルミ脚のABEO Pro 283AGH(7万8,000円)も使いやすいだろう。価格もカーボンより安いので、自動車での移動がメインで重さにこだわらない場合などでも、アルミ脚を選択する意義はありそうだ。
開脚角度は80度、50度、25度から選択できる。80度まで開き、MACCを使用すれば地面すれすれのローポジションの撮影が可能になる。
石突は3種類に変更できる。通常のものから、いわゆるスノーシュー、スパイクに変更可能。撮影場所や状況に応じて選択できるので便利だ。
三脚の伸縮にはレバーロックを採用。瞬時に高さを変更できるのでスピード感の必要な撮影には適している。
ピストルグリップ雲台のGH-300Tを含む、ABEO Pro 283CGHを使用して感じたことは、動き物から風景などまで幅広く使える三脚だということ。特にピストルグリップ雲台は、慣れてしまえば動きものを撮影しやすい。一脚を使っての望遠撮影などとも相性が良く、ユーザーよっては、強力な相棒となってくれるだろう。
(協力:株式会社ガードフォースジャパン)