タムラック「ジップショット」

自動で脚が展開する斬新な三脚

 今回は、米タムラックの一風変わった三脚「ジップショット」(ZIP SHOT)をレポートしたい。世の中に三脚は数あれど、これほど変わった製品も珍しいだろう。

ジップショットを開脚したところ。オープンプライスで、実勢価格は5,980円前後。国内ではケンコーが扱っている

 三脚の利点は色々あるが、反面持ち運んで使うのにはそれなりの負担がある。重い、かさばる、設置や収納面倒……などだ。筆者も、これらの煩わしさは仕方のないものとして諦めていた。その点、このジップショットはそうした問題を解決した斬新な三脚と言えそうだ。

キヤノンPowerShot G11を装着したところ。全高は112cm、縮長は38cm。モデルの身長は178cm

 ジップショットのもっとも大きな特徴は、セッティングと収納が非常に迅速にできる点だろう。ゴムの張力を利用して脚を固定するという独自の構造を採用しており、片手でもってぶら下げるだけで自動的に脚パイプが繋がる仕組みだ。そのため、節ごとにナットやレバーを操作する必要がない。従来の三脚よりもかなり素早く展開できること請け合いだ。実際に脚が繋がる様子は動画をご覧いただきたいが、束ねているゴムに手を掛けてから設置するまではわずか7秒ほどだ。

 折りたたむのも簡単で、パイプを引き出して束ねていくだけでよい。ジップショットは4段なので、3回折りたたむと収納でできる。脚をゴム紐で束ねるのも簡素な仕組みだが使いやすかった。

パイプ内部にゴム紐が通っており、この張力でパイプを引いて固定する仕組み
脚を束ねるのもゴム紐。シンプルだが使いやすい2カ所のゴム紐で束ねる

 全高は112cmと一般的にアイレベルには届かないが、液晶モニターを見ながら撮影する分には問題ないだろう。縮長は38cmなので、収まるトートバッグなども多いと思う。重さは実測で308g。一般的な三脚と比べて、脚ロックパーツや三脚の本体部分が無いため軽量なようだ。

重量

 雲台は自由雲台を装備。脚パイプに直に雲台が付いているような構造になっている。なお開脚のロックはないため、一番開いた状態で安定するようになっている。

小型の自由雲台が付属している雲台は脚と繋がっているため雲台の交換はできない。また、開脚のロック機構も無い

 ジップショットのWebサイトによれば、コンパクトデジタルカメラだけでなく一眼レフカメラに対応しているとある。ただ、一眼レフカメラ(ニコンD700+AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8 G ED)を載せてみたところ脚に大きなたわみが見られた。また、自由雲台が小型のため固定力が弱くレンズ側に動いてしまった。コンパクトデジタルカメラまたは、標準ズーム程度のミラーレス機での使用にとどめた方が良さそうだ。

E-PL1と標準ズームレンズでは、セルフタイマーを使えば望遠端でもブレなかった石突はゴム

 なお、マイクロフォーサーズ機(オリンパス・ペンE-PL1+ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6)で試したところ2秒のセルフタイマーを使用すれば問題なく使用できた。しかし、いずれにしても脚にたわみが出やすいためシャッターボタンを直接押すとブレが発生する。ケーブルレリーズやリモコン、またはセルフタイマーを使うなどしてブレには注意したい。

カメラバッグのハンドル部分に赤色のゴム紐を掛けて持ち運ぶこともできる脚を伸ばした状態で、赤色のゴムを二重に廻して固定すると一脚としても使えた

 コンパクトデジタルカメラと一緒に持ち歩いて使える軽量な三脚として、試してみる価値があるだろう。カメラの手ブレ補正機構や高感度性能が進化しているとはいえ、夕景や夜景などまだまだ三脚が必要なシーンは多い。また記念撮影をするにもすぐにセッティングができるため、周りの人を待たせる時間も少なくなるはずだ。一見キワモノに見えるが、試してみると良く考えてあるアイデア三脚だ。




(本誌:武石修)

2010/11/2 11:46